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VTuber 2026.03.31

個人VTuberでもここまでできる! PortalgraphのAR技術を活用した小鳥遊こばと1stワンマンライブ「虹色Endless dream」レポート

2026年3月28日、東京・渋谷のライブハウスにて、VTuber・小鳥遊こばとさんによる初の単独ライブ「虹色Endless dream」が開催された。

本公演の最大の特徴は、株式会社Portalgraphの技術を導入したARライブであることだ。3Dメガネを通して、ステージ上に実在するかのように立ち現れた彼女の姿は、スクリーンの内側と外側の境界を曖昧にするような視覚体験を観客に提示した。

個人VTuberの枠組みを超え、自らの手で理想のステージを形にしてみせた記念すべき晴れ舞台。その挑戦と熱狂の模様をレポートする。

3Dメガネで立体感を演出!ただの1stワンマンにとどまらない、個人VTuberの晴れ舞台

ライブハウスに足を踏み入れると、そこには従来のVTuberライブとは異なる、独特な光景が広がっていた。着席した観客の多くが3Dメガネを装着し、期待を込めてステージを見つめていたのだ。

ライブが始まると、ステージ上に小鳥遊こばとさんが登場。大きなスクリーンに投影された3Dモデルの姿で歌い踊る姿は、一見すると、同規模のライブハウスで行われる「VTuberの音楽ライブ」と大きな違いはないように見える。

しかし、3Dメガネを通して視線を向けた途端、ステージ上の彼女の姿が、立体的に浮かび上がった。

VRヘッドセットで3Dアバターを見たときのような奥行きは感じられないが、たしかに「ステージ上に立っている」ように見える。平面のスクリーン内を動いているのではなく、地に足を付けてパフォーマンスをする一人のVTuberの姿が、そこにはあった。

立体的に見えるのは、こばとさん本人だけではない。パフォーマンスを彩るエフェクトや背景演出の多くも、3Dメガネによって空間に浮かび上がる。従来の音楽ライブともVRライブとも異なる、独特な臨場感を伴うステージの幕が上がった。

全15曲を次々に披露!客席のファンも一体となって盛り上げたライブ本編

小鳥遊こばとさんは、個人で活動するメイドVTuberだ。VTuber活動を始めるためのクラウドファンディングを2021年に実施し、100万円を超える支援を集めて翌年にデビュー。「Zeppでのワンマンライブ」を目標に掲げ、一歩ずつ、だが確実にその歩みを進めてきた。

特に近年の躍進は目覚ましく、2025年2月の3Dお披露目配信ではSNSでのトレンド入りに加え、スーパーチャットランキングで日本1位、世界2位という驚異的な記録を樹立。同年にはチャンネル登録者数5万人突破やポップアップストアの成功、さらには制作費500万円を投じた3Dバースデーライブの開催など、快進撃を続けている。

そんな彼女の記念すべき1stワンマンライブの開幕を飾ったのは「初恋サイダー」。

続く2曲目「どきどきキュン!で大暴走♡」と合わせ、前日の配信で「限界値を突破してパフォーマンスする」と宣言した通りの全力投球なステージで、会場のボルテージを一気に引き上げた。

2曲を歌い終えたところで、客席へ呼びかけるこばとさん。

「私が晴れ女だから、今日がんばって天気にしたよー!」と声を上げるが、音響トラブルで聞き取りにくい。音声が乱れるたびに「なんてー!?」と聞き返す“こばリス”(ファンネーム)との気取らないやり取りに、彼女ならではのアットホームな距離の近さが感じられた。

「夢を追いかけるメイドVTuberの、小鳥遊こばとでーす!」と改めて自己紹介をしつつ、「見えますか!? この異様な光景!」と、3Dメガネを装着した観客が並ぶ会場に言及。本公演が株式会社Portalgraphの協力によるARライブであることを説明し、立体的に見える自身の動きをコミカルにアピール。会場の笑いを誘っていた。



3曲目の「花ハ踊レヤいろはにほ」では、彼女の手元に扇が出現。舞い散る花吹雪の中で華麗に舞う姿に、観客のコールもより一層熱を帯びる。

さらに「睡蓮花」では、サングラス姿で登場。客席からは「俺! 俺! 俺! 俺!」の大声が巻き起こり、ステージ上では吹き出し花火が噴き上がる。タオルを振り回してステージを跳ね回る、季節を先取りしたようなアツいパフォーマンスを披露した。

5曲目「始まりは君の空」では、曲の後半にサプライズが用意されていた。

こばとさんが光に包まれ、本ライブのキービジュアル衣装「虹色ブレイブフリル」へと変身! 初お披露目となる新衣装の姿に、会場からは一際大きな歓声が上がった。

こばと「ずっとメイド衣装のままだと思った?」
観客「うん!!」
こばと「……『うん』って言った!? 今!」
観客「(笑)」

こばと「『新衣装が来るんじゃね?』って密かに思ってた人、きっといるんじゃないかな〜?」
観客「「「はーーーい!!」」」
こばと「……勘の良いガキは、嫌いじゃないよ」


そんなコミカルなやり取りも見られたMCを経て、「明日の私に幸あれ」と「星座になれたら」の2曲を連続で披露。

ポップで楽しい演出が光るステージから一転、エモーショナルなロックナンバーでは、星空を背に響く彼女の歌声に、多くのファンが静かに聞き入っていた。これらは配信でもリクエストが多かった曲だそうで、「この日まで大切に温めてきた」という言葉に、ファンからは「ありがとー!」「明日からお仕事がんばれる!」と口々に感謝の声が飛んでいた。


ライブ後半はバラードコーナーへ。椅子に座ってしっとりと歌い上げた「seeds」、そして自身にとって特別な曲であると紹介した「らぶこーる」を披露した。

憧れの声優が輝いていた姿に自身を重ね、「自分が輝ける瞬間に、この曲をステージで歌いたかった」と語る彼女の純白の衣装が、温かな拍手の中に溶け込んでいった。


ライブはいよいよ後半戦へと突入。彼女の2ndオリジナルソング「僕らのFuture song!!」が放たれる。

客席から一斉に沸き起こった歓声とクラップに応えるように、ステージ上の彼女も、弾けるような歌声で会場を席巻していく。「聞かせて! みんなの音!」という呼びかけに、観客は全身全霊のレスポンスで応酬。曲を通じて交わされる歌と声援、そして絶え間ない拍手が、会場の一体感をさらなる高みへと押し上げていく。

そのボルテージを維持したまま、次なる楽曲「不屈のアイドル」へ。

心ない言葉や幾多の困難に直面しても、決して屈することなくステージに立ち続けるアイドルの矜持を描いたこの曲を、彼女は高らかに、そして情感たっぷりに歌い上げる。その力強い歌声には、これまでの歩みを肯定するような確かな重みが宿っていた。

さらに間髪を入れず披露されたのは、「この世界の楽しみ方」。

応援ソングとしての性質も色濃い自身のオリジナルソングに始まり、ステージに立つアイドルと、夢に向かって邁進するすべての人に寄り添うHoneyWorksのカバー2曲を、畳み掛けるように歌う。目の前のファン一人ひとりを、そして世界のどこかで踏ん張る「誰か」を鼓舞するかのような熱い選曲の連なりに、胸が熱くなる。


「それでは……ラスト! 盛り上がっていくぞー!」

弾けるような咆哮とともに放たれたのは、彼女の代名詞とも言える1stオリジナルソング「ヒロインになりたいっ!」。

クラウドファンディングを通じてファンと共に創り上げた、VTuber・小鳥遊こばとを代表する1曲だ。初のワンマンライブを締めくくるのに、これほど相応しい楽曲はないだろう。ステージから放たれる「届けーっ!」という叫びに呼応するように、会場の熱気は最高潮へ。渾身のコールが響き渡り、本編の幕を華やかに飾った。


最後の曲を歌い終えた直後、数秒と待たずに巻き起こったアンコールの声。その切り替わりの早さときたら、本人が後のMCで「どちゃくそ早いアンコールだったな!?」と苦笑するほどだった。

その熱意に導かれるように再びステージに現れた彼女が披露したのは、配信の待機曲として親しまれている「こばラップ」だ。

今回は待望のフルバージョン初披露となったが、驚くべきはファンの適応力。初めて聴くフレーズにも即座にコールで反応する練度の高い“こばリス”たちによって、とても初披露とは思えないほどの一体感で会場が満たされた。

歌唱後のMCでは、重大発表として小鳥遊こばと1stシングル「捧げて♡無限大LOVE」のリリースが告知された。楽曲を手掛けるのは、数々のVTuber楽曲を手掛けてきたIOSYS。「こばラップ」のフルバージョンも同CDに収録されるという。この朗報に、客席からは割れんばかりの拍手が贈られた。

最後の1曲を歌う前に、大切なファンに向けて感謝を述べようとするこばとさん。「さっきまではぜんぜん、涙腺大丈夫だったんやけどな」と声を詰まらせる場面もあったが、客席から飛ぶ温かな声援に支えられ、彼女は“こばリス”たちへありったけの感謝を言葉にした。

「みんなのおかげでこんな素敵なライブを開催することができました! 本当にありがとうございます! 私がまだ何者でもなかった、誰も私に興味がない空気の中で歌ったあの時よりも、すっごく楽しかったし、最高の景色が見られました! 自分のためにファンのみんなが集まってくれて、全力で声をあげて、手を振ってくれて。こんな景色を独り占めできることが、本当に最高です! 次は、もっと大きなステージで、たくさんのお客さんの前で歌えるようにがんばるので、引き続き応援よろしくお願いします!」


初ワンマンのフィナーレを飾るのは、発表されたばかりの1stシングル「捧げて♡無限大LOVE」。

楽曲の中で何度も“ご主人様”へと呼びかける、IOSYS節全開の超ハイテンションな電波ソングだ。初披露の新曲を見事に歌い上げるこばとさんに対し、“こばリス”たちもスクリーンに表示されるコール&レスポンスに即座に適応。熱気が最高潮に達した会場で、1stワンマンライブは幕を閉じた。

没入感を支える技術と工夫――個人VTuberが示す「XRライブ」の新たな可能性

1人のVTuberがライブハウスのステージに立った、記念すべき1stワンマンライブ。

現在、VTuberによるリアルイベントは決して珍しいものではなくなった。企業・個人を問わず、毎週のようにどこかのステージでVTuberが歌い踊り、ファンとの邂逅を果たしている。

しかし今回の「虹色Endless dream」は、そんな数々のVTuberイベントの中でも挑戦的な試みだったと言える。個人で活動する小鳥遊こばとさんが、自身の初ワンマンという大舞台において、独力でARライブを実現させたからだ。

https://x.com/kobatonooyatsu/status/2037760398854930761

この前例のない挑戦を技術面から支えたのが、株式会社Portalgraphの提供するAR技術である。

「VR体験の民主化」を掲げるPortalgraph社は、高価なヘッドセットを必要としないVR空間投影技術「Portalgraph」などの開発を行う企業だ。3D地図を自在に操作・俯瞰できる「Geo Portal」のほか、最近は立体投影された等身大のVTuberとトークができる「ホログラム1on1 ポータルミート」を展開している。

今回の企画について特筆すべきは、XREALのような高価なARグラスや裸眼立体視ディスプレイではなく、比較的安価で導入しやすい3Dメガネを採用している点だ。スクリーン上の映像をメガネ越しに見ることで一部を立体化させるという、シンプルながらも効果的な演出が施されていた。


デバイス自体に映像を投影するARグラスに比べれば、正直なところ、その立体表現は控えめだと言わざるを得ない(※)。しかし、まったく臨場感がなかったかとも言い切れない。そこには、3Dメガネの「慣れ」と会場の一体感がもたらす、独特な没入体験があった。

開演直後こそ「なんとなく浮き上がって見える」程度の認識だったが、パフォーマンスに身を委ねているうちに、自分がその視覚情報を当たり前のものとして受け入れ始めている。そんな感覚があった。次第にスクリーンの存在が意識から消え、彼女が「そこに立っている」という実在感がじわじわと空間を支配していくのだ。

(※立体感が控えめに感じられたのは、筆者とステージの距離が離れていたことも影響しているかもしれない。翌日に行われたライブの同時視聴配信によると、見る場所によって立体感が損なわれる懸念があったため、客席をなるべく中央に寄せる形で配置していたそうだ)

ただし、その没入体験を実現するには、没入感を削ぐ要素を排除する必要がある。VTuberの姿が乱れて「映像」であることを再認識してしまったり、装着しているデバイスがズレたり、周囲の観客とぶつかって我に返ったり、といったノイズは避けなければならない。

その点において、今回のライブは非常に「没入」しやすい構造だったと言える。

映像トラブルが皆無だったのはもちろん、着席してライブを楽しむスタイルだったことで、周囲との激しい接触を気にせずステージに集中できる環境が整えられていた。それでいて、法被やグッズを身に纏った“こばリス”たちのコール&レスポンスは熱く、会場全体に「ライブ」の空気が醸成されていた。

3Dメガネに関しても、外見や重量は一般的なメガネと遜色なく、普段使いのメガネの上から重ねても違和感がない。筆者も自分のメガネの上に重ねる形で、約90分間のライブを通して装着し続けていたが、疲労感を覚える場面は一度もなかった。

昨今、リッチなAR技術を用いて、あらゆる角度からVTuberを鑑賞できる事例も増えつつある。しかし、今回こばとさんが提示した手法は、より手軽かつ効果的に「VTuberを現実のステージに立たせる」ための、極めて現実的で普及性の高い選択肢に感じられた。

これまでは大手企業の主導で行われることが多かったXRライブを、個人VTuberが、企業と手を取りながらも、独力で形にする。その高い壁を乗り越えて完遂された「虹色Endless dream」は、VTuber・小鳥遊こばとの輝かしい門出であると同時に、独立した表現者が最新技術を手に自ら未来を切り拓く、新たな時代の到来を予感させるライブとなった。

【セットリスト】

  1. 初恋サイダー
  2. どきどきキュン!で大暴走♡
  3. 花ハ踊レヤいろはにほ
  4. 睡蓮花
  5. 始まりは君の空
  6. 明日の私に幸あれ
  7. 星座になれたら
  8. seeds
  9. らぶこーる
  10. 僕らのFuture song!!
  11. 不屈のアイドル
  12. この世界の楽しみ方
  13. ヒロインになりたいっ!
  14. こばラップ (Full ver)
  15. 捧げて♡無限大LOVE

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