「現実世界で推しのVTuberを目の前で見たい」
そんなことを思ったことはないでしょうか。もちろん、自分がバーチャル空間内に入れば、VTuberに近づく機会もあるでしょう。しかし、自分のいる現実空間にVTuberが来てくれたら、どうでしょうか?
現実のアーティストでもなかなか難しい、そんな体験ができるイベントが、2026年3月17日におこなわれました。今回は、Mawari主催の「mmWAVE DE VTuber〜凪乃ましろ スペシャル3Dトークライブ」の体験会に参加してきたので、その模様をレポートします。
ARグラスを通して、等身大のVTuberを間近で見られる体験
体験会では、参加者ひとりひとりにスマートフォンが接続されたARグラス「XREAL Air 2 Ultra」が配布されました。このグラスをつけた状態で、中央の何もない円状のステージを見ると、VTuberの凪乃ましろさんが現れるとのこと。実際に試してみます。
装着してみると……。
目の前の空間に等身大の凪乃ましろさんが現れました! しっかり3Dモデルの立体感があり、リアルタイムに返答しながら色々動く様子を目撃すると、本当に同じ部屋にいるかのような感覚に襲われました。
今回の体験イベントの価値は、それだけに留まりません。そもそも「等身大の3Dアバターをリアルタイムで目の前に映す」だけであれば、大きめのディスプレイに映すといったように既存技術でも実現可能です。
しかし今回の体験では、「360度好きな角度から」見ることができたのです。その衝撃に、参加者の同じグループの中で筆者が一番グルグル歩き回っていたと思います。従来の映像とは異なる、3Dアバターを360度好きな角度から眺められる体験は、それだけ新鮮でした。
また、足元に注目してみると、キャラクターが地面から浮くこともなく自然に地面に立っていました。「目の前にいる感覚」を実現するためには、こうした不自然さがないことが前提なのだと実感しました。床面に落ちる「影」の描写もあり、「凪乃ましろさんがそこに実在している」という感覚が強く伝わってきたのを覚えています。
体験中、凪乃ましろさんはMCの方と「どんなゲームをするか?」といった軽快なトークを繰り広げていました。その間も動きに遅延は見られず、 これだけの高精細な3Dデータをリアルタイムで動かしながら、自然なコミュニケーションが成立している点に、今回のイベントを実現させた技術力を体感しました。
一方で、参加人数の多さゆえと考えられますが、デバイスの準備に時間を要したり、途中で接続が途切れてしまったりといった課題も見受けられました。
しかしながら観覧エリアでは、参加者が思い思いの場所からましろさんを眺め、和気あいあいとした雰囲気が流れていました。ARグラス越しに頑張ってスマホを連写している参加者もおり、その技術に強い関心を寄せているようでした。
「どこにいても、すぐそばに推しがいる」という未来のエンターテインメントの形を、肌で感じることができた体験でした。
体験会の終わりには、ましろさんも「同じ空間に存在できたことが本当に嬉しいです!」とコメント。同じ時間をともに過ごせるという感動を、VTuber側もしっかりと抱いているようでした。
今回の技術はどのように実現したのか? カギとなるのは「5Gミリ波」×「ARAWA」
今回のイベントを支えたのは、KDDIの高速通信「5Gミリ波」と、Mawariのリアルタイムプラットフォーム「ARAWA」の組み合わせです。本来、高品質な3DアバターをARグラスに投影(※レンダリング、コンピュータがデータから画像や映像を生成するプロセス)するには、高性能PCでの処理が必要でした。
しかし今回は、クラウド側で映像を生成し、その膨大なデータをミリ波で瞬時に転送しています。これにより、スマートグラスようなデバイスでも、そこに本人がいるかのような遅延のないリアルタイム投影を実現しています。
そもそも、KDDIの「5Gミリ波通信」とは?
5Gミリ波通信は、通常の5G(Sub6)通信よりも高い周波数帯を使った通信技術です。高い周波数帯(波の数が多い)によって、同時に扱えるデータの量が増えます。
大容量のデータを送るには、太いパイプが必要になります。通常の5G(Sub6)通信では他のユーザーと帯域を奪い合って映像がカクつく可能性がありますが、ミリ波なら余裕を持ってデータを流すことができます。
ただし、5Gミリ波通信には高周波数帯で通信するがゆえの課題もあります。周波数が高くなるほど、直進性が弱くなる(障害物の影響を受けやすくなる)点です。この課題を解決するために、KDDIでは通信範囲をカバーするための中継器による通信エリア拡大の試みをおこなっています。
(5Gミリ波通信の特長と課題)
(中継器を使ったエリア拡張の詳細はこちら)
今回の実験でも、その増設した基地局が活用されているために実現されています。KDDIはミリ波通信を使った次世代コンテンツを試す実験場を今後提供予定です。
Mawariが新たに提供するプラットフォーム「ARAWA」とは?
今回の体験を支えていたもう1つのプラットフォームがMawariが公開した「ARAWA」です。3Dコンテンツの制作から収益化までを一気通貫で支援する、次世代プラットフォームです。主に3つの機能があります。(※制作ツールは現在パートナー企業のみに配布されているとのことです。)
手元のスマートフォンやタブレットをかざすだけで、現実の風景と3Dモデルが違和感なく融合。街角のあらゆる場所が瞬時にハイクオリティな「MRスタジオ」へと変わります。
アプリの最大の魅力は、デジタルな存在であるVTuberが「そこにいる」という圧倒的な実在感です。ミリ波通信による低遅延な配信が、キャラクターとのリアルタイムな対面を可能にし、まるで同じ空間を共有しているかのような没入感を生み出します。さらに、その場で体験した驚きは、YouTubeやSNSへシームレスに共有可能です。
場所を選ばず誰でもMR撮影ができる特性を活かし、VTuberが「ご当地キャラクター」のように各地を訪れるといった展開が可能になります。それに対し企業が広告支援を行ったり、撮影した限定MRビデオを販売したりすることで、新たな収益モデルを確立する狙いがあります。
推しを目の前に存在させる技術
今回イベントを主催したMawariは、没入感のある高品質な3D体験を世界中に届けることで次世代のXR体験を推進しています。以前から「目の前に推しを存在させる」ための試みをおこなっており、2025年1月にVTuberとリアルタイムで会話するデモ体験(VRヘッドセットMeta Quest 3を使用)を実施しています。
他社でも同様の取り組みがおこなわれています。2025年2月には、ANYCOLOR社の実証実験として、にじさんじ所属、加賀美ハヤト社長のトークライブが開催されました。このイベントでは、参加者はVRヘッドセットMeta Quest 3を装着して参加。リアルタイムでのトークを実現していました。
今回取材したイベントも趣旨としては同じですが、「XREAL Air 2 Ultra」というVRヘッドセットよりも軽量な「ARグラス」で実現した点が大きな違いです。VRヘッドセットであれば、特に映像面のスペックは高く、より没入感や実在感がありますが、トークライブのように長時間付ける必要がある場合には、参加者の疲労が懸念されます。
一方でARグラスでは、視野角の狭さや解像度の低さなどが足を引っ張ってしまう点は否めません。現状では、どちらのデバイスにも利点と課題があり、利用目的や体験時間に応じて使い分けるといった運用に落ち着くだろうと思います。
それでも、目の前で推しを感じる体験が進化していくことには期待したいところ。今後の技術発展に目が離せません。
ARAWA 公式サイトはこちら。
ARAWA 公式Xアカウントはこちら。
参考
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000070300.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000070300.html

















