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VTuber 2026.02.18

フィクションの中で、“VTuber”はどのように描かれるか? 『超かぐや姫!』『真夜中ハートチューン』『夜のクラゲは泳げない』等から見る現在の表現

劇場公開も決まり、SNSで話題になりつづけているNetflix配信作品『超かぐや姫!』(‎2026年)。キャラクターたちのはつらつとした魅力、作画面のクオリティの高さ、ド派手でワクワクするアクションとライブシーン、有名ボカロPによる音楽の親和性、ハッピーエンドに向かうストレスフリーな明るい展開、繰り返し観ることによって気付かされるエモーショナルな物語など、話題になる理由が山程ある豪華な作品だ。

「ライバー(配信者)」が、誰もができる表現手法として題材になっているのも、ポップな部分のひとつだろう。本作で”日常的にあるエンタメ”として描かれているライバーの配信は、ほとんどがアバターを用いた配信者スタイル、いわば「VTuber」型だ。

今回は『超かぐや姫!』におけるライバーのVTuber的な描かれ方を追いつつ、その他のフィクション作品におけるVTuberの表現についても掘り下げてみたい。

(以下、一部『超かぐや姫!』等、扱っている作品のネタバレを含むのでご了承ください)

推し活が生活の一部になっている『超かぐや姫!』の、自由なVTuberのあり方

ライバーの配信を見て”推す”のが日常になっている『超かぐや姫!』の世界。作中表記によると2030年が舞台らしい。メインヒロインの女子高校生・酒寄彩葉(さかより・いろは)も、成績優秀な学生として生活し、アルバイトで自分の学費を稼ぎつつ、トップライバー月見(るなみ)ヤチヨを”推す”ことで日々の癒やしを得ている。彩葉がヤチヨに夢中になっているシーンは特別感を出さずに「アイドルに夢中な子」とくらいの感覚で描かれているので、初見でも飲み込みやすいはずだ。

ヤチヨというキャラクターの設定は、ある程度VTuber文化のノリを知っていると、さらに楽しい。公式解説によると「歌って踊って分身もできる8000歳(という設定)」のAIライバーであるヤチヨ。この「という設定」の文言を見てクスリと笑える人はVTuber慣れしている人だろう。

実在のVTuberは、なんらかのキャラクター背景を持っている場合が多い。高校生だったり、天使だったり、鬼だったり、ロボットだったり。それらの発言を見て「うそでしょ?」とわざわざツッコミを入れる野暮な人はまずいない。本人が仮に「8000歳」だというのなら、そう信じる姿勢を取って相手の話(ロールプレイ)に向き合うのが、VTuberを見る時の”暗黙の了解”だ。

ヤチヨは前半では謎多き存在として描かれているが、その正体が誰か、という部分に対しては誰もツッコミを入れていない。この際、8000歳であろうとなかろうと、さらに言えばAIであろうとなかろうと、どちらでもいいのだ。それよりもヤチヨが面白い話題で笑顔を提供してくれることや、メタバースである「ツクヨミ」を管理してみんなに娯楽を提供してくれているという事実の方が重要だ。わざわざ「という設定」という文言を入れたことで、この世界のライバーに対しての”暗黙の了解”が、作品視聴者にも一発で伝わるようになっている。

作中ではヤチヨの他にも数多くのライバーが存在している。ほとんどのライバーは仮想空間「ツクヨミ」のアバターを用いて、自分の本来の姿は表に出さずにエンタメを提供する、3D配信スタイルを取っているようだ。

その一方で、実際のVTuberでよく見られるような、視聴者たちと向き合う形の2Dモデルでの配信も描かれている。わざわざ映像でこの雰囲気を再現するために、Live2Dモデルが実際に制作されているほどだ。

メインヒロインのひとり、月からやってきたかぐやは「ヤチヨカップ」という、新規ファンを一番多く集めるライバーのイベントでトップを狙うべく、0からライバー活動をスタートする。

かぐやの配信スタイルは「仮想空間内ツクヨミでの路上ライブやダンス動画やゲーム実況(3D)」「PCのWEBカメラを用いた、アバターでのトーク配信(2D)」「自身の姿をそのまま写した配信(実写)」の3通り。かぐやは顔出しに抵抗が無いようで、その日のノリでアバターを使ったり使わなかったりしている。

「ヤチヨカップ」では、ツクヨミのライバーであることが参加の条件にはなっていたものの、実写とアバター両方で活動する彼女のやりかたでもOKなようで、厳密な定義はされていなかった。

この懐の広さこそが『超かぐや姫!』の世界における、表現者の生きやすい環境の描写につながっているように感じられる。その人が何を表現したいかで、アバターを使うかどうかは自由に決めて構わない。人の心を動かしたのであれば、それで十分にOKなのだ。「アバターは配信の際のツール」くらいのライトな感覚で『超かぐや姫!』という作品のキャラクターたちはのびのびと自己表現をしている。

かぐやは「踊ってみた」動画などを撮るなどしてアバターをフル活用してはいるものの、料理配信も頻繁に行っているため、実写スタイルでの活動も重視しているようだ。彼女の料理へのこだわりが、後に物語のキモになっていくのは見逃せないポイントだろう。

『超かぐや姫!』の世界ではプロを含むゲーマーによるゲーム実況が人気の様子。とはいえ人気ライバーたちの活動は、バリエーションが多い。ちらっと登場するライバーだけでも、癒し系アイドル、ハイスペ資格オタクなど、活動スタイルはバラバラ。また「アートを楽しむch」「誰も知らない世界の神秘ch」「ヒストリー情報局」のような知識系ライバーのチャンネルも人気があるらしい。音楽やゲームなどの流行こそあれども、各々が好きなことを自由に発信し、ファンを獲得している様子が垣間見える。

仮想空間「ツクヨミ」で表現活動をするときに、心を動かすと運営から「ふじゅ~」という通貨を得ることができる。「ふじゅ~」を用いて他の表現者を応援(例・ライバーの配信への投げ銭など)することができるらしい。「ふじゅ~」は現実社会でも使えるようだが、そこの換金システムなどについてははっきりとは描かれていない。ただ「自己表現することで生活ができる」という、表現者にとってありがたすぎるシステムがこの世界にあるのは間違いない。

かぐやがライバーとして、人気とお金の面で、ものすごいトントン拍子で成功を掴んでいく様子は、演出のスピード感も相まって見ていて痛快。現代版のおとぎ話として、夢と希望に溢れている。

夢は大きくトップVTuber!『真夜中ハートチューン』

2026年にアニメ化されたコミック『真夜中ハートチューン』(‎2023年コミック1巻発売)は、声を使った夢に進んでいく女の子たちの姿を描いた、青春ラブコメ漫画だ。歌手、声優、アナウンサーを目指すヒロインと並んで、トップVTuberを目指すヒロイン・霧乃イコが登場する。

自作のアバターを用いて「すめらぎイコン」として活動する、完全個人勢VTuberの霧乃イコ。チャンネル登録者数は3万人。個人活動者であることを考えるとかなり人気がある方だが、とはいえトップ層まではいっていない、という絶妙な立ち位置だ。

主人公の少年・山吹有栖(やまぶき・ありす)が一念発起し、声を使った活動を夢見る4人のヒロインに対して「俺がプロまで導いてみせる」と豪語するところから物語が始まる。

作中で霧乃イコがメインになる回では、VTuberとして成功するため、作戦を練り努力していく様子も描かれている。たとえば山吹有栖は、VTuberとしてのアバターをまとっているがゆえに、本音や素の感情が見えるところに、魅力を感じるのだと指摘する。これは現在の配信主体のVTuberの間でも実際に見られるポイントだ。

有栖「視聴者はお前と感情の共有がしたいんだ キーバインドでアバターを笑わせることもできるがそれじゃダメだ お前が本気で笑ったり起こったりする姿をみんな求めてる それは必ずアバターにも現れるんだ」
(1巻より)

もちろんこの考え方は解のひとつで、トップVTuberになるための最適解として描かれているわけではない。作中にはチャンネル登録者数300万を誇る百歳あおというVTuberも登場している、こちらはピアノに料理など多芸で、イベントを開いた際には全員に気配りできるまめさも持ち合わせ、3Dモデルを活かして歌い踊ることができるプロフェッショナルとして描かれている。ビジュアルや企画力などの実力を持っていることも、VTuberの成功に必要なのはちゃんとおさえた上で、4巻で山吹有栖がたとえとして「なぜ技術でプロ野球より下の甲子園が人気だと思う?」と語る場面がある。

有栖「球児達の頑張り 出場に至るまでのドラマ 未成熟が故に起こる予期せぬ展開 技術の巧拙だけが人の心を動かすわけではない」「VTuberもそうだ 努力や思いが伝われば そこを好きになってくれる人もいるし 時には短所すら武器になる」

成長コンテンツとしての魅力を持っているジャンルとしてのVTuberを洞察した発言だ。他にもこの作品では、2Dアバターはパーツの変形・入れ替えで3D以上に豊かに感情表現できる点や、長時間配信は「ながら見」になることが多いため、声質が重要であることなど、VTuberが成功する際考えるべきポイントを、ロジカルに分析している。

シビアな表現者たちの魂の叫び『夜のクラゲは泳げない』


©JELEE/「夜のクラゲは泳げない」製作委員会

とある事件がきっかけでイラストを描くのをやめた光月まひる。炎上してしまったことでアイドルをやめた山ノ内花音。音楽的な才能を持っていたものの孤立しがちだった高梨・キム・アヌーク・めい。人気VTuber「竜ヶ崎ノクス」として活動している渡瀬キウイ。アニメ『夜のクラゲは泳げない』(‎2024年放映)は、4人の少女が集まって音楽ユニット・JELEEを結成し、ネットに自分たちのMVを発信しようと情熱を注いでいくジュブナイルストーリーだ。

VTuber「竜ヶ崎ノクス」として活動をしている渡瀬キウイはパソコンに詳しく、映像編集の技術が高いゆえに、JELEEの動画制作担当を担うことになる。幼少期の頃は最強のヒーローを目指し突き進み、みんなのリーダー的存在だった彼女。アニメの序盤では「高校で生徒会長をやっている」という嘘をついていた。実際は高校デビューに失敗して孤立してしまい、今では不登校。そんな自分が嫌でVTuberをはじめた。「竜ヶ崎ノクス」の表現に関しては、このような経緯があるため、扱いはかなりナイーブだ。

VTuber「竜ヶ崎ノクス」は、ヒーロー系として活動している。チャンネル登録者数は8万人近くで動画再生数も毎回数万。VTuberとしての注目度はかなり高い方だろう。中性的で一人称は「俺」。アバターも渡瀬キウイ自身が作っていることが明かされている。美男美女アバターのVTuberを描くフィクション作品が多い中、竜ヶ崎ノクスのようなスタイルのVTuberキャラクターはかなり珍しい。

なぜこのようなスタイルなのかは、作中で丁寧に描かれている。たとえば3話。彼女が他人から女として性的な目線で他人から見られることを嫌悪する描写が一瞬だけ入る。彼女の抱えている生きづらさがよく現れているシーンだ。

11話で、ヒロイックなVTuberをやっている渡瀬キウイに対して辛辣な言葉を浴びせる同年代のキャラクターたちが登場したとき、彼女はこう叫んでいる。

キウイ「見た目も声も体型も性格も、居場所もエピソードも、全部全部自分を好きになれるように自分だけで作ったんだよ! だから俺を否定するな、俺が作った大好きな自分のことを、誰にも否定させるもんか! 俺は天下無双の最強VTuber、竜ケ崎ノクス、なんか文句あるか!」

渡瀬キウイにとっての「なりたい自分」であり、アイデンティティを守るためのVTuber「竜ヶ崎ノクス」。その活動の様子は、作中では特別な美化や批判的な描写に偏ること無く、あくまでも「ひとりのエンターテイナー」としてフラットな目線で描かれている。

配信活動や音楽発表やイラスト公開など、ネットを通じた表現は楽しいことも多いが、傷つけられることも多々あるだろう。軽率に悪意を持って攻撃してくる存在が描かれているのは、この作品の特長のひとつだ。

たとえばVTuber竜ヶ崎ノクスの配信中に「渡瀬キウイ」の本名がコメント欄へ書き込まれるシーンがある。彼女はすぐにNGワードに「渡瀬」「キウイ」を設定する。れっきとした、荒らし行為だ。このようなぎょっとする行動を深く考えずに行って、心に傷を負わせてくる人間がいるのを、本作は生々しく描く。他にも人を貶めるタイプの暴露系配信者が登場するなど、「ネットの表現者に対して悪気のある行動をとる人間が存在する」という事象が、現在の表現者たちを襲う現実として描かれる。

本作ではそれらの人を悪として戦うことをしない。そういう人もいる、という現実を突きつけられながら、4人のヒロインは自身の生き方と表現を見つめ直し、乗り越えて、目指すべき表現のあり方に進んでいこうと成長していくから、この物語は見終わった後にしっかりとしたカタルシスがある。


(公式ページ12話紹介より)©JELEE/「夜のクラゲは泳げない」製作委員会

作中ではバーチャル機器の表現でもこだわりが見られる。終盤、プロジェクションマッピングでバーチャルアバターを動かしてライブを披露するシーンがある。ここでは頭と両手足、背中にセンサーをつけるタイプの、モーションキャプチャーデバイス「mocopi」にそっくりな機器を身につけ、3Dアバターをリアルタイムで動かしている。外でのライブパフォーマンスを行いながら同時にキャプチャも実施しているこの機器はおそらく動きを感知するタイプのIMU(慣性計測ユニット)形式だろう。

ちなみに9話では「3Dアバターによるバーチャルライブ」の例として、実際に活動しているVTuber・HACHIの姿が登場している。

VTuberだけがテーマの作品ではないが、ネットで自己表現をする際のツールの一種として、しっかりとVTuberの現在のあり方にもフォーカスを当てようとしているのが伝わってくる意欲作だ。

推しVTuberが遠くに行ってくれない件『VTuber草村しげみ』

登録者数130万人突破、同接3万人以上、大手VTuber事務所「からライブ」所属の人気VTuber、草村しげみ。雑誌やテレビで活躍し、リアルライブも行っているほど売れっ子になった彼女。個人活動をしていた時代からの第一号古参ファン「ナナシノ」から見たら、すっかり遠くまでいってしまったような気持ち…のはずなのだが、草村しげみ側がナナシノのことを好きすぎて、距離感が自分に対してだけやたら近い…他のリスナーも山ほどいるのに、いいのかそれで!? というVTuber側が一人のリスナーにヘビーな愛を注ぎまくるラブコメ作品『VTuber草村しげみ~遠くに行ってしまった気がした推しが全然遠くに行ってくれない話~』(1巻は2025年発売。Xでの初出は2023年)。

実際のVTuberあるあるネタはかなり多め。「Minecraft」や「Q REMASTERED」のようなVTuberがよくプレイしているゲームで遊んでいたり、「好きな惣菜発表ドラゴン」などのトレンドネタを雑談で話していたり、案件配信をしたり、ASMRボイスを販売したりと、VTuberを見た経験のある人なら心当たりがあるであろうシーンがてんこ盛りだ。

コメントはニコニコ動画スタイルで、横にコメントが流れる、いわゆる「弾幕」スタイル。コメントひとつひとつも、現実にいそうな名物リスナーのノリ(配信でのプロレス的やり取りが上手い人、悪ノリに全力で乗っかる人、ひとつのことにやたら詳しい人など)がうまく再現されていて、それらを読んでいるだけでも楽しい。

ほとんどのコマがVTuberの配信を見ているリスナーの視点で描かれているため、草村しげみリスナーの一人になったようなノリで読むことができる。草村しげみのナナシノに対する恋(?)を、ついついコメント欄の面々と一緒に一丸となって応援したくなってしまう。

現実のVTuber事情に寄せて描かれている本作は、草村しげみのアクター、いわゆる「中の人」を一切描いていない。もちろんVTuberなので、たとえば離席したらアバターが動かなくなるなどメタなネタもあるが、あくまでもナナシノに恋をしている女の子はVTuberとしての「草村しげみ」である、という部分は徹底されており、リアル側(草村しげみのアクター)の配信外の様子はほとんど出てこない(なお、リスナーであるナナシノ側は、リアルの生活や会社の様子などもかなり多く描かれている)。

これによって、配信で話しているととても近い存在に感じられるのに、実際はバーチャルであるがゆえに遠い、というVTuberの距離感の独自性がうまく表現されている。

VTuberとリスナーの距離感のマナーを、草村しげみとナナシノ、そして無名のコメント欄のファンたちがよく把握しているがゆえに成立している作品、とも言える。草村しげみは配信ではナナシノへの愛を隠すこと無くバンバン出しているものの、直接的な接触(SNSのリプライやDM等)では一線を引いて動いており、リアルでの手出しは一切しない。これは、配信は自分のフィールドだから自由にやってしまえるけれども、それ以外は相手の領域だから侵犯してはいけない、というVTuberとしての良識に根ざして行動しているからだ。

どんなに近い感覚でいようとも、VTuberとリスナーは次元の違う存在で、距離を保っているからこそエンタメが成立する、という考え方が、草村しげみ、ナナシノ、コメント欄住民の”暗黙の了解”として機能している本作。配信者とリスナーの間の統率の取れたやり取りは、コミカルなだけでなく、信頼関係でなりたつ美しさすらある。

草村しげみがかつてチャンネル登録者数1人、ナナシノ以外のリスナーがいなかった時代があったのも回想的に描かれている。駆け出し新人VTuberが、一人のコメントに勇気をもらって配信を続ける様子を見てから、本編での読みきれないほどのコメントに囲まれているシーンを見てほしい。「成長コンテンツ」としてのVTuberの魅力が伝わってくるはずだ。

VTuberをフィクションで表現する際、「中の人」を描くかどうか

2020年代に入ってから、VTuberをテーマにしたフィクション作品は数多く発表されている。いくつか例を挙げてみたい。

教育実習に行った大学生の教え子ギャルが実は推していたVTuberで、アバターをつくる「ママ」になり巻き込まれていく『推しVが教え子で私がママで!?』(2021年1巻発売)。

普段元気いっぱいな少女は実は人気のアイドルVチューバー(※作中表記)をやっており、メタバース上で出会った少年に恋をしてしまう『青のアイリス』(2021年1巻発売)

たまたま出会った地味な少女が実はVTuberで、配信の手伝いをしながら距離を縮めていくラブコメディ『下の階に住んでいる引きこもり美少女は大手事務所の新人VTuberでした』(「小説家になろう」初出2022年、コミカライズ2024年1巻発売)。

人気VTuberの義妹が配信を切り忘れてしまい、兄である主人公との会話が事故で流れて話題になってしまう『有名VTuberの兄だけど、何故か俺が有名になっていた』(ノベル2023年1巻発売、コミカライズ2025年1巻発売)。

書籍化された作品だけでもかなりあるので、Amazonで「VTuber」と入れて検索してみてほしい。

VTuberを題材にすることで描ける利点のひとつが、二面性だ。VTuberとして人気なあの子が実は…という「自分だけが知っている」感は物語を生みやすい。リアルの姿、いわゆる「中の人」を描くことは、キャラクターの魅力に多面性を持たせる点では非常に強力だ。70歳男性が美少女アバターでVTuberをはじめる『バ美肉おじいちゃん』(2023年)などは、そのギャップの面白さがうまく貫かれている例のひとつだろう。

逆に「バーチャルはリアルと一線を引いてこそ」という、VTuber文化に対してのこだわりが強い作品もある。先程紹介した『VTuber草村しげみ』はその筆頭のひとつ。レトロな話題をトークネタにする美少女VTuberを描いたコメディ『あきらかに年齢を詐称している女子高生VTuber』(2024年)も、リアル側の表現が全くないわけではないが、「中の人」の顔を極力描かないよう徹底されている。いわば「VTuberのリアル」よりも「VTuberの配信の面白さ」の側に作品の主軸を寄せた作品だ。

清楚系で売っていたVTuberが配信を切り忘れて酔いつぶれたところ、そのギャップで人気が出てしまう…というアニメ化もされた作品『VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた』(2021年)は、リアル側の生活を描くシーンも多い。ただ、そのリアルの姿がノベル版の挿絵、コミカライズ版、アニメ版共に、VTuberのアバターと同じになっている、という変わった表現方法を使っている作品だ。読者目線を「VTuberリスナー」から切り離さないため、言うなれば夢を壊さないためのちょっと変わった手法だ。

第19回小学館ライトノベル大賞の優秀賞を受賞した『1/nのワトソン』(2025年)も、VTuberがメインの題材でありつつ、VTuberのアクターは一切描かれない作品のひとつ。探偵VTuberに舞い込んでくる依頼を、視聴者が解決して”正解”を競い合う、という探偵ものでありつつミステリではない「アンチミステリ」形式のこの作品は、VTuberの炎上、卒業、転生などの問題を、エンタメ要素を交えながらも鋭く描く。

VTuberやメタバースについての専門的な用語が大量に用いられている本作は、VTuberあるある要素を十分楽しめるだけでなく、実際のVTuberファンに対して「VTuberとはどのような存在なのか?」という問いを投げかけている作品でもある。その一方で、主人公はVTuberに興味がなく、VTuber専門知識はVTuberファンの幼なじみから教えてもらう、という物語構造になっているため、読者側にVTuber知識がなくても、すんなり娯楽作品として楽しめるバランス感も持っている。

同じ作者の『鈴波アミを待っています』(2022年)も、VTuberとリスナーの関係性に非常にこだわりを持って描かれた、フィクションでありつつVTuber批評的要素も併せ持った作品なので、特にVTuberファンはあわせて読んでみて欲しい。

現実世界でのVTuberは、デビューすること自体に特別感があった2020年代初頭に比べ、今や子供のなりたい職業としてベストテンにランクインするくらいメジャーな活動になってきた(ソース・【調査結果】なりたい職業で「VTuber」が「YouTuber」を上回る人気に!1位は小学生「イラストレーター」、中学生「学校の先生」 | ニフティ株式会社のプレスリリース)。『超かぐや姫!』で誰もができる「楽しいお仕事」として「ライバー(VTuber)」が、ごく普通の表現活動として描かれたように、今後のフィクション作品の中でVTuberが特別な扱いではなく、一般的な職業のひとつとして、さらっと出てくる可能性は高くなりそうだ。


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