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VR体験施設 2025.08.13

子供たちを夢中にさせた新たなスポーツ観戦のかたち「XRフェンシング」とは?【体験レポート】

夢中になってMRヘッドセットを覗き込む子供たちの姿に、未来の新しい「スポーツ観戦」の形を予感させられる――。8月上旬に開催された「汐留サマースクール2025」の会場の一角に、そんな光景を見られるブースがありました。

子供たちがデバイス越しに見ていたのは、大迫力のフェンシングの試合。フェンシング金メダリスト・松山恭助選手が目の前に現れ、本当に目の前で試合が行われているような体験ができる、MR(複合現実)の映像コンテンツです。

このブースを出展したのは、キヤノン株式会社とJTB株式会社。一見すると事業領域の異なる2社ですが、なぜ「XRフェンシング」を手掛けようと考えたのでしょうか。両社の担当者に話をうかがいました。

剣の軌跡が見える!キヤノン「MREAL」でフェンシング観戦はどう変わる?

「スポーツ観戦の未来を体験、XRフェンシング」と題して、汐留サマースクールに出展したキヤノンとJTB。ブースではMRヘッドセット越しにフェンシングの試合を観戦することができるほか、松山選手ご本人も登壇。子供たちとの交流を楽しむ光景が見られました。

体験に使われていたのは、キヤノンのMRシステム「MREAL」。頭に“かぶる”タイプのヘッドマウントディスプレイではなく、キヤノンのMREAL Displayを手で持って覗きます。


(【活用事例】フェンシング男子フルーレ団体日本代表 松山恭助選手のフェンシング競技をXRで体感【MREAL × MIRAI VALUE】【キヤノン公式】 – YouTube)

ヘッドセットを覗き込むと、まずはフェンシングのルール説明からスタート。初めて試合を見る人でもわかるように、簡単なルールと見どころを立体的なビジュアルで解説してくれます。

説明が終わると、暗闇から2人の選手が登場。視界が現実世界に切り替わり、まもなく試合が始まります。選手が剣先を激しく速く交え合う姿を、実際の試合では不可能なくらい至近距離で見られるため、迫力と臨場感は想像以上でした。

見ていておもしろかったのが、素人には目で追うのが困難な剣先に、“軌跡”を表すエフェクトが付与されていたこと。選手ごとに異なる色で剣の軌道が示されていて、スロー再生でのリプレイ場面もあったため、視覚的にもわかりやすくなっていました。一種のアクションゲームを見ているような印象もあり、子供たちも目をそらすことなく楽しんでいました。

なぜ異業種がタッグ?キヤノンとJTBに聞く「XRフェンシング」の狙い

XR領域では初めてのコラボレーションとなる、キヤノンとJTB。

両社の担当者に話をうかがったところ、以前から2社で一緒に何かできないかと考えており、「JTB所属のフェンシング選手・松山恭助氏」と「キヤノンの最先端XR技術」を掛け合わせることで、今回の共創が実現したそうです。

MR映像の制作にあたっては、キヤノンのボリュメトリックビデオシステムとモーションキャプチャ技術を採用。選手2人が実際に試合を行う様子を撮影し、その動きをデジタル化しています。

ブースでの話によれば、撮影に臨んだ松山選手にとっても今回の取り組みは新鮮に感じられたそう。自分の姿を俯瞰して360度どこからでも見ることができ、自身の立ち姿や動きの癖はもちろん、選手からは見えないところまで表現されていることに驚かれていました。

今回のような映像よりもリアルに近い、臨場感のある体験ができる場を増やすことで、フェンシングに興味を持ってもらうきっかけになるかもしれない。ブースでは子供たちとの交流を純粋に楽しんでいらっしゃった松山選手ですが、このような取り組みを介したフェンシングの認知拡大にも期待を示していました。


(キヤノンのボリュメトリックビデオスタジオと制作事例)


(松山恭助選手)

また、技術提供をしたキヤノンとしても、この共創からは得られたものが多く、手応えも感じているとの話でした。

ボリュメトリックビデオに関しては、スポーツや伝統芸能などさまざまな分野での実績も豊富な同社。ですが今回、「フェンシング」という動きの速いスポーツの試合をデータ化するにあたっては、いろいろと工夫が必要な場面もあったそうです。

どうすればわかりやすくルールを伝えられるか。細い剣を精細にデータ化しつつ、その動きをどのように映像で見せるか。フェンシングを知らない人に向けた伝え方や見せ方のみならず、プロ目線でもおもしろく感じてもらえるように、細部までこだわって制作されたそうです。

一方、そうして作られた映像を「体験プログラム」として提供するJTBとしても「これはすごく可能性がある」と、今後の展開も見据えて考えているとのことでした。CP+2025に出展した際には長蛇の列ができ、会期中に2,000人以上もの人に体験してもらえたそうです。

将来的にはスポーツだけでなく、同社の主要事業である観光分野や、各地の伝統芸能や文化遺産の記録にもこの技術が活用できるのではないか。今回の取り組みで得た知見と両社の強みを生かしつつ、まだ始まったばかりの共創事業を共に模索しながら進めていければ、と考えているそうです。

気軽にMRを体験できる日常へ

筆者は今回がMREAL初体験だったのですが、何より印象的だったのが、その手軽さです。

今回の展示では手持ち用にセッティングされていて、覗き込むだけでMR映像が楽しめる。髪やメガネ、化粧を気にする必要がないのは大きなメリットです。スペース内を自由に動いて、好きな位置から見られるのも魅力だと感じました。

VRのHMDと比べればたしかに没入度は下がりますが、「本当に目の前にいるように見える!」という実在感は十分にあります。実際、ヘッドセットを片手で持ちながら、もう一方の手を伸ばしてみて、本当にそれが映像なのか確かめようとしている子供たちも多くいました。

加えて、展示ブース自体も非常にコンパクト。大きなスクリーンやハイスペックPCが何台も並んでいるわけではなく、この手のXR体験ができるブース出展としては機材も少なかったように見えます。それこそ、ショッピングモールの一角などでも体験会が開催できそうな印象を受けました。

松山選手も「こういう体験ができるイベントが増えることで、興味を持ってくれる人が増えたら」と話されていましたが、ゆくゆくはイベントやショッピングモールで、そして将来的には自宅でも、気軽にMR体験ができるようになる日が来るのかもしれません。

もしみなさんもどこかでこの体験を見かけたら、ぜひそのヘッドセットを覗き込んでみてください。きっと、まだ見ぬ“体験”の未来に胸が躍るはずです。


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