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企業動向 2024.09.25

【独占インタビュー】経済圏拡大・生成AI活用、進化し続けるメタバース「Roblox」の戦略の鍵は「クリエイター重視」

日本時間2024年9月7日、メタバースプラットフォームを運営するRobloxは年次開発者会議RDC2024でプラットフォームをさらに拡大するために非常に多くの発表を行いました。

すでに毎日7,950万人のユーザーがプレイしており、拡大を続けるRoblox。全てのワールド(Robloxではエクスペリエンスと呼ばれる)はクリエイターにより作られており、アバターや関連アイテムなどはRoblox内で取引が可能です。クリエイターに対して様々なマネタイズ手段が用意されていることも特長で、クリエイターのエコシステムを拡大させながら、プラットフォームとしても拡大を続けてきました。

ユーザーの多くが10代未満から10代。1日の起動時間は2時間と他のSNSと比べても圧倒的に高くなっています。人気を集めているワールドの累計アクセス数は500億回を超えており、没入型コンテンツの強さが伺えます。

そんな同社が掲げる最終目標は「毎日10億人がアクセスするプラットフォームの実現」。開発者会議の名の通り、技術的な発表もありますが、2024年のRDCの基調講演の発表では、これまで以上に「エコノミー」に繋がる話題が強調されていました。同社が2022年にナスダックに上場して以来、赤字を続けており、ようやくマネタイズに本腰を入れ始めたとも思えましたが、その真意はどこにあるのか。

基調講演の後の開発者向け講演にも登壇した同社のクリエイター・エンジニアリング担当VP ニック・トルノー氏にオンラインで直接話しを聴く機会を得ました。同社の戦略を深堀りします。

ニック・トルノー
マサチューセッツ工科大学でコンピュータ・サイエンスと電気工学の理学士号と工学修士号を取得。Twitterのプラットフォーム部門統括、Zynga CTOなどを経てRobloxでクリエイター・エンジニアリング担当VP。Robloxの世界的なコミュニティに没入型3Dゲームの開発に必要な技術やツールを提供するエンジニアリングチームを率いている。

新たな目標と実現のための3本柱

ーー今年のRDCの基調講演ではRobloxの新しい目標が掲げられました。詳しく教えてください。

トルノー:Robloxのビジョンは、人々が3Dの没入環境で健全で新しいインタラクティブな方法で集まる方法を再構築することです。そしてUGCプラットフォームとして、私たちはコミュニティ、特にクリエイターコミュニティを通じてそのビジョンを実現します。私たちの部署では、Robloxを動かし、クリエイターが体験を構築するためのツール「Roblox Studio」を開発しています。

私たちRobloxのミッションは、誰でもどこでもどんなコンテンツでも作れるようにすることです。つまり、人々が想像したことをプラットフォーム上でそのまま実現できるようにしたいのです。

トルノー:私たちは基調講演で次の目標を発表しました。ゲーム市場の全体の収益の10%のシェアを獲得することです。この目標を達成した時には、プラットフォーム上のアクティビティの約80%がゲームに、残りの約20%が買い物やその他のエンターテイメント、教育、チャットや交流といった他のコミュニケーション活動になると予想しています。

この新しい目標を実現するための大きな柱は3つあります。1つ目は、Robloxを他のエンジンやゲームプラットフォームよりもスムーズに動作させるための改善です。低スペックなAndroidデバイスでも動作し、ハイエンドなデスクトップデバイスにも対応できるスケーラビリティを持つようにすること。次に経済、つまりクリエイターがマネタイズする新しい方法です。そして3番目はクリエイターやユーザーのためにAIをさらに駆使することです。

低スペックな端末からも同じ体験を可能に

ーーではまずは1点目からお願いします。

トルノー:現在、Robloxには多くの体験があります。私たちがゲーム市場で10%のシェアを獲得するための成長戦略の一つは、プラットフォーム上で実行できる体験の種類を広げることだと考えています。

例えば、低スペックのAndroidデバイスで、インターネット接続が弱い場所からでも100人規模のバトルロワイヤルゲームをプレイするとか。私たちは、そんな未来像を描いています。

これを実現するための鍵となる技術の一つが「ハーモニー」と呼ばれる基盤技術です。ハーモニーはすでに数年前から存在していてRoblox内で動いており、改良を続けています。

(ハーモニーという名称は)ゲームや3D没入型の体験の各部分を楽器に例えています。没入型の体験には、テクスチャのLOD、音質、物理シミュレーションのペースなど様々な要素が複合的に組み合わさって体験が成り立っています。これを、低スペックのAndroidデバイスやハイエンドのデスクトップで動かさなければなりません。従来は、開発者がそれぞれの楽器を個別に調整しなければなりませんでした。

例えば、物理シミュレーションを維持するために音質を大幅に落とすことがありましたが、それは必ずしも最適な調和ではありません。ハーモニーは音声や物理、LODなどの各システムをRobloxのエンジン全体で統合して連携させ、それぞれの要素がデバイスの性能やその時々の状況に応じて、自動的に最適化するように調整しています。

ハーモ二ーにより、Robloxは非常に低スペックのAndroidデバイスでも動作し、起動時間が非常に短く、TTI(操作可能になるまでの時間)が非常に短くなっています。Robloxを起動し、数秒で体験に入り込み、そのデバイス上で快適に動作します。一方、デスクトップPCでは、よりリッチなグラフィックで世界が描画されます。

ーーゲーム制作において、クリエイターはデバイス間のデバッグや修正に苦労します。ハーモニーによって将来的には、こうしたデバッグや修正作業はゼロになるのでしょうか?それとも、クリエイターは今後もこの作業を続ける必要があるのでしょうか?

トルノー:誰もがどんなコンテンツでも簡単に作れるようにすることを目指すRobloxの理念に鑑みて、ハーモニーとツールの二側面でクリエイターの負担をできるだけ軽減したいと考えています。

Roblox側のプラットフォーム自体のパフォーマンスを向上させるだけでなく、クリエイターが自身の体験をあらゆる工程で最適化できるようにツールを改善し続けようと継続的に投資しています。コーディング、3Dオブジェクト作成、テクスチャ作成……。私たちは、クリエイターが自分の作品内でパフォーマンスを最適化するためのツールを提供し続けます。

ーーハーモニーは主に低スペックのAndroidデバイスや低スペックのスマートフォンに焦点を当てているとのことですが、それはダウングレードすることに主に焦点を当てているということでしょうか?ハイエンドPCやVRに向けたアップスケーリングについてはどうでしょうか?

トルノー:現時点では、低スペックなデバイスへの対応が中心です。クリエイターが作成したアセットをアップスケーリングすることは行っていません。クリエイターが非常に高精細なアセットをアップロードできるようにし、常にオリジナルを保存しています。システムでは、オリジナルのアセットをそのまま表示するかダウングレードさせて表示させます。

アップスケーリングに関しても検討はしています。生成AIによってどこまでアップスケーリングができるか、非常に興味深いですね。

さらに増える収益化手段

ーー続いて経済について、今回クリエイターに向けて新たなマネタイズの方法を発表しましたね。

トルノー:私たちは今回のRDCでクリエイターがプラットフォームで収益を得るために3つの新しいプログラムを発表しました。それぞれがプラットフォームに大きな変化をもたらすので、個別に説明したいと思います。

1つ目は「クリエイター・アフィリエイト・プログラム」です。このプログラムでは、クリエイターやインフルエンサーが共有リンクを作成し、体験をプロモーションできます。新しいユーザーがこれらのリンクを使ってRobloxに登録し、その後Robloxでお金を使った場合、その新しいユーザーの購入額の50%を、そのリンクを作成し配布した人に分配します。まずはパイロットプログラムで、9月6日から応募を受け付けています。そして、2025年には全てのクリエイターにこのプログラムを拡大したいと考えています。Robloxとクリエイター双方のインセンティブを一致させるために重要な取り組みです。

ーークリエイターやインフルエンサーとともにRobloxを拡大させて還元するということですね。

トルノー: コミュニティはRobloxを支えているスーパーパワーです。これまでは、クリエイターが新規ユーザーをRobloxに連れてくるためのインセンティブはほとんどありませんでした。このプログラムはクリエイターと私たちプラットフォームのインセンティブを一致させるものです。日本のRobloxのエコシステムに関連する例としては、クリエイターのまなと氏が展開している「顔から逃げるゲーム」は20億回以上の訪問を記録しています。彼が、Beetlejuiceとのコラボレーションしてプラットフォーム外からユーザーにプロモーションして新規ユーザーをRobloxに連れてきた場合、そのトラフィックに対して報酬を得られます。クリエイターが独自にRobloxに連れてきたユーザーが、時間をかけて収益化されることで、そのクリエイターにリターンが返ってくるのです。

トルノー: 2つ目のプログラムは「有料アクセス」です。現在、Roblox上の多くの体験は無料でプレイできますが、有料のコンテンツもあります。有料の体験をプレイするためには事前に料金を支払う必要があります。これまでは、無料体験と有料体験のどちらにおいても、クリエイターへの収益の分配率は(30%で)区別されていませんでした。しかし、新しい有料アクセスプログラムでは、もしクリエイターがゲームを作り、それを10ドル(正確には9.99ドル)で販売する場合、クリエイターは収益の50%を受け取ることができます。もし体験を29.99ドル以上で設定すれば、60%の収益を受け取り、49.99ドル以上で設定すれば、70%の収益を得られます。今回の分配方式の変更は、無料プレイ体験での収益化とは異なり、Roblox上で新しいマネタイズを実現します。

ーー手数料率が異なるというのは、Robloxにとって新しい展開ですね。

トルノー:経済に関する 3つ目のアップデートは「価格の最適化」です。Robloxのエクスペリエンスで販売されているバーチャルアイテムは、物価などにより同じ商品でも国によっては高く感じられることがあります。そこで、体験内のバーチャルアイテムの価格をグローバルに自動最適化する技術を導入します。

多くの場合、価格が最適化されることで、エクスペリエンス内のバーチャルアイテムの実勢価格は下がり、より高いコンバージョンや購入活動が促進されます。さらに、地域ごとの価格設定の実験も行っており、開発者が地域市場に適した価格を設定し、よりグローバルにつながった経済圏を実現できるようにしています。

トルノー:3つのプログラムの発表はすべて、Robloxを全体的に成長させることに関わっています。Robloxでクリエイターが収益化できるポイントが増えるほど、より多くのクリエイターに成功をもたらすことができます。プラットフォームの成長という点では、特に日本ではRobloxが大きく成長しています。2024年第2四半期には、日本は世界で最も高いユーザー増加率を記録しています。

クリエイターのためにAIをどう活用するか

――そして、3点目がAIのさらなる活用ですね。

トルノー: AIに関しては、クリエイターに向けた2つの新機能を公開します。ご存じの通り、Robloxはすでに自動チャット翻訳をサポートしています。そして、私たちは音声にも力を入れており、プラットフォーム上での音声とコミュニケーションをより自然で簡単にするための2つの新機能を導入します。それが『テキストから音声への変換』と『音声からテキストへの変換』です。

これらは新しいAPIとして提供されます。クリエイターは文字列を声で話して選択させたり、プレイヤーが話した内容を認識させたりすることができます。例えば、プレイヤーがコンソールやVRデバイスを使用していて、キーボードがない場合、音声で指示を出すことを好むことがあります。その場合、音声コマンドとして受け取り、ゲームがその言葉に応答することができるようになります。

トルノー:これは「Clip it」というコンテンツでの体験からのものです。このプラットフォームではユーザーがすでに短いクリップを作成し、それをコミュニティと共有しています。従来は、これらの音声エフェクトやキャラクターの声を使用することはできませんでした。しかし、これらの機能が「Clip it」のユーザーにも利用可能になります。ユーザーはこのプラットフォーム上で短いビデオを作成していますが、今後はテキストのナレーションを加えたり、面白い声を選んだりできるようになります。

トルノー: 次はAssistantについてです。AssistantはすでにRoblox Studioで動作しています。Assistantを使うことで、クリエイターはシーン構築において、超能力のような能力を発揮することができます。Assistantに自然言語で話しかけると、Assistantがその要望に応じてシーンを構築します。これまでAssistantは、コードの生成やドキュメントに関する質問に答えることに限定されていました。

我々は、Assistantが3Dの世界を実際に変更し、シーンや動作を導入できる機能をリリースしました。これにより、コーディングにとどまらず実際にゲーム全体を作ることができるのです。これから、その機能がどのように動作しているかを実際のコードで実演します。自然言語を使ってハロウィン用のシーンを作成していきます。

トルノー: 左側に表示されているのが初期のプロンプトで、最初の指示は『芝生を茶色にして』というものでした。次の指示は『頭蓋骨を追加して』、その後に『カボチャを追加して』という指示があり、それが今表示されている部分です。

カボチャがポップアップで表示されるのがわかりますね。そして、『柱の周りに緑の煙を追加して』という指示を出すと、Assistantが緑の煙を追加します。さらに、『木の周りに霧を追加して』と言うと、Assistantが霧を追加します。そして、明るすぎるので『夜にして』という指示を出し、時間を午後8時に変更します。

その後、『木の下にゾンビを追加して、プレイヤーを追いかけるようにして』と頼みます。そして最後に『プレイしよう』と言うと、プレイテストが始まります。

実際にゲームをプレイできます。わずか1分で作成された世界で、ゾンビがプレイヤーを追いかけてきます。繰り返しになりますが、これは現在稼働中のコードで、このビデオは速度を速めていますが、実際にはこのシーンを作成しプレイテストするのにかかった時間はわずかに約3分です。

強調したいのは、これがすべてAssistantだけで行われたという点です。すべてプロンプトで実行されました。コードは一切書かれておらず、シーン内でドラッグ&ドロップやボタンをクリックすることもありませんでした。ただ会話をしていただけで、そのゲーム全体とシーンを作成できたのです。

―――このプロンプトで世界を生成する機能はRDC2023でもデモを披露していたものですね。さらにあれからアップデートされたのでしょうか?

トルノー: 2023年のRDCで見せたのはモックアップのようなものでした。いまはもう利用可能なものとしてリリースされています。そして、今回のデモでは、ゾンビが追いかけてくるといったキャラクターのモーションを追加することはできませんでした。

――ありがとうございました。


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