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VTuber 2019.11.13

【ホロライブ】楽曲制作陣に聞く! AZKi初アルバム「without U」発売記念インタビュー

11月12日(火)に、ホロライブ内の音楽レーベル「イノナカミュージック」所属のバーチャルシンガーAZKiさんの1stアルバム「without U」が発売されました。

今回、MoguLiveではホロライブとのコラボレーションとして、アルバムのリリースを記念した特別企画と題し、アルバムに参加した楽曲制作陣のclocknote.さん・さめのぽきさん・ハムさんにインタビューを行いました。楽曲の制作秘話やAZKiさんの魅力、楽曲制作を通したバーチャルに対する想いに迫ります。

インタビュー参加者

clocknote.:グラフィックデザイナー&トラックメイカー。「without U」では「フロンティアローカス」をハムさんと共同制作しているほか、にじさんじJK組(月ノ美兎・樋口楓・静凛)の「dream triangle」も制作。

Twitter:https://twitter.com/clocknote

さめのぽき:バーチャル音楽ユニット「エルセとさめのぽき」として活動中。「without U」では「世界は巡り、やがて君のものになる」を制作。

Twitter:https://twitter.com/samenopoki

ハム:作編曲家。「without U」では「フロンティアローカス」をclocknote.さんと共同制作しているほか、AZKiさんの楽曲「Starry Regrets」を制作。

Twitter:https://twitter.com/hamu_lr

ツラニミズ:ホロライブの音楽レーベル「イノナカミュージック」主宰。今回は見学として参加。

Twitter:https://twitter.com/tsrnmz

佐藤ホームズ:VTuberを分析・考察するVTuber活動を行うほか、MoguLiveで編集者・ライターとしても活動。今回は司会として参加。

Twitter:https://twitter.com/satouholmes

コンポーザー陣に聞く、楽曲の制作過程

佐藤(司会):

今回は「without U」の公開インタビューということで、まずはコンポーザーの方々の制作された楽曲についてお聞きしたいと思います。clocknote.さんの方から、今回の楽曲のポイントなどをお伺いできればと。

clocknote.:

まず制作過程として、ハムさんにいくつかラフを出してもらったんですよね。

ハム:

最初にサビのメロディを3案くらい出して、clocknote.さんに「どれがいい?」とパスを投げるような形で案を共有し合いながら、どんな曲を作っていこうかというイメージ、最初の手掛かりを掴みにいきましたね。

clocknote.:

走り出しをハムさんの方からやって頂くと同時に、歌詞をメロディに当てはめる前に「こんな感じのことを言えたらいいかな」というイメージを箇条書き的にお送りしました。あとはラフを詰めて頂いた後に音源をもらって、自分でもDAW(※)に読み込んで、試しに曲の展開を触ってみることもしました。ハムさんの作ったものに自分の音を入れてみて、いい感じに2人の音が混ざるといいなあ、といったことを話しながら最初はやっていましたね。

※デジタルで音声の録音・編集・ミキシング・編曲などの作業を行える一体型のシステム

ハム:

音の作りからして、僕がバンドサウンド寄りで、clocknote.さんがシンセサウンド寄りという役割分担でやっていました。最終的に曲をMIXした時に結構びっくりしたんですけど、バンド部分だけ聴くとロックっぽくなっているし、シンセの音を聴くとclocknote.さんの音になっている。いい具合に混ざっていることが目に見えて分かって面白いなと。

clocknote.:

でもどっちも無いと足りない感じもあって、いい感じに相乗効果になりましたね。

さめのぽき:

2人で作っていて逆にギリギリまで決まらなかったというか……揉めるじゃないけど、「こっちの方がいいでしょ!」みたいなことは起きなかったですか?

clocknote.:

なかったですね……?

ハム:

なかったですね。というのも、お互いに作る曲調というか、得意なことが分かっている間柄ではあったので。

佐藤(司会):

今回共同制作するに至った経緯とかもお聞きできたらなと思います。

ツラニミズ(見学):

元々、彼らは東方アレンジの同人活動をしていて、その時に知り合った間柄なんですよね。

clocknote.:

そうなんですよ、元々は同人活動が最初で。一番最初にウチのサークルから出したCDに参加してたよね?

ハム:

そうだし、僕が同人で初めて個人で出したCDのデザインをやって下さったのもclocknote.さんです。それくらいの頃から、お互いにデザインなり音楽なりで一緒に作品を作るということはしていた間柄ではあったという。

clocknote.:

お互いの得意分野だとかやりたいことは何となく分かってるので、確かにそれでぶつからなかったというのはあるのかもしれないですね。

ハム:

今回のAZKiさんの楽曲制作の時も、お互いが出していく案をどんどん取り入れていきました。

さめのぽき:

大人だ。サメは絶対言うこと聞かない。

(一同笑)

clocknote.:

逆にぽきさんは、ProjectBLUEとかではどうなんですか?

さめのぽき:

あ、そう、全然自己紹介をしてなかったんですが、「エルセとさめのぽき」というバーチャル音楽ユニットをやってましてね。色んな音楽や映像をチーム(ProjectBLUE)で作ってます。

特にMVなんかはチームで作りますけど、揉めるとかじゃなくてずっと同じことを延々とみんなで言いまくったりしますね。映像の青色について1日ずっとチャットしてるんですよ。この青色はなんでこの青なのか、みたいな。奥行きがあるから海は奥に行けば行くほど暗くなっていくからこの青は……とか、いやファンタジーの世界でこの青だからこの青でいいんだ……とかウワーーーーって発狂しそうになりながら、みんなでOKってなるまで案を出すという。すんなり行く時と行かない時の差がすごいですね。

佐藤(司会):

なるほど……この流れでさめのぽきさんに今回の楽曲のポイントをお聞きできたらと思います。

さめのぽき:

改めて、今回は「世界は巡り、やがて君のものになる」という楽曲を作りまして、基本的に今回は作詞も作曲も編曲も1人で……1匹でやりました。ポイントとなると……すごく難産でしたね。今年で一番難産だった、確実に。実は3曲くらい全く違うテイストの曲を書いていたんですが、全然納得がいかなかったんですよね。これは歌詞についての話にも繋がるんですが、AZKiちゃんという存在が自分にとってどういうものなのか、ちゃんと自分で考えきれてない状態で曲を作るとすごいブレちゃうのがイヤで。せっかくさめのぽきが他のバーチャルシンガーさんに曲を提供するというのは初めてだったので、意味をちゃんと付けたかったんですよね。

まず自分の気持ちを整理することに本当に時間がかかってしまって。曲作ったり歌詞書いたりとかする前に、そもそも何なの?みたいな。たまたま仲良くしてもらって、じゃあ曲書いて下さいよ、だけじゃやっぱり書きたくないよな、という自分の中の気持ちが強すぎて。自分の中の答えを見つけるまでに一週間くらいいろんな時に考えました。整理がついてからはいつも通りの作業スピードでできたんですけど、整理がつく前が自分としてはすごい思い出深いですね。

佐藤(司会):

楽曲に取りかかる前の段階なんですね。

さめのぽき:

そう、心の整理みたいな。「エルセとさめのぽき」は自分のやっていることだから、こうしたい、これを見せたいって分かるけど、AZKiちゃんを自分が代弁する時の心構えはやっぱりそうやすやすとはできなかったので。

「バーチャルって何なのか?」楽曲制作に際した考察

佐藤(司会):

そんな難産だったという楽曲なんですが、実はインタビュー前に色々やり取りをする中で「深堀りできそうですよ!」と聞いていまして。

さめのぽき:

勝手に晒されてたぞ!ツラニミズに送った、「さめのぽきの秘密の考察PDF」っていうファイルが共有されてたぞ!!

(一同笑)

佐藤(司会):

なぜか参加者間で流通してたらしいですが、改めてお聞きしたいなと。

さめのぽき:

なんて説明したらいいか……曲を聴いて初めて完結するかもしれません。これはさめのぽきという名でここまで語っていいのか疑問なレベルまで踏み込んでますが、全然包み隠さず言いますと、さめのぽきにとって「バーチャルって何なのか」というのは活動の命題で。例えば「エルセとさめのぽき」という名前で活動してますけど、たまに「凄く上手だね、これだけ上手ならリアルでもいいんじゃない?」「リアルでデビューすれば良かったじゃん」というコメントがある。

一同:

あー!

さめのぽき:

多分それはVTuberの界隈とはちょっとずれた場所にいる人たちとかからのもので、悪意とかはきっと無い素直な気持ちであったりして。そういうのを見て(バーチャルって)本当に何なのかなと深く考えた時、AZKiちゃんと照らし合わせたんですよね。バーチャルとリアルの意味というものを。一つ自分の中で強く思うのは、「バーチャルでやって良かったんだから現実でやったら良かったじゃん」という思考、つまり「現実の方が意味がある、メジャーである」という方向ではなくなってくると思ったんですよね。

今はバーチャルやVRが技術面でもカルチャー面でもまだ生まれたばかりでニッチな時代だけど、じゃあ10年経った時に(リアルとバーチャル)どっちで表現するのが正しいのか。それは人それぞれだよね。それが自分にとってのバーチャルである答えで、世界の表現はしやすい方でやればいいと思っている。「エルセとさめのぽき」をやる中で、あの世界を見せたい、口で語るだけじゃだめでちゃんと目で伝えたいという想いがあって、映像だったりとかエルセやさめのぽきの形になっている、というのがさめのぽきの答え。

じゃあAZKiちゃんはどうなんだろうなと考えた時、それはAZKiちゃんに聞かないと分からないし、さめのぽきが語るのは違うなと。さめのぽきはまず、「AZKi」って2人いるんじゃないかな、と個人的に思ったんですよね。これはちょっと哲学に似ちゃうけども、AZKiちゃんという存在をみんなで考え付いた時、この世にいなかったものが生まれるわけですよね。「AZKi」というバーチャルシンガーが誕生する。その時のAZKiちゃんはどんな性格してるんだろうとか、どんな色が好きなんだろう、どういう食べ物が好きなんだろうってことは……これどこまで語っていいんですかね?

ツラニミズ:

全然大丈夫ですよ!

さめのぽき:

これは、VTuberにとってある種色んな角度から問われている――「魂」という表現で今回言いますけど――魂と、AZKiちゃんのビジュアルというかいわゆるバーチャル世界の本体というか……魂と本体があってキャラクターになっている。それが今までのアニメやゲームのキャラクターとは全く違う、魂と身体があって「AZKi」というものが100%であるという考え方、これが僕にとってのAZKiちゃんの答えなのかなと思っていて。なので、AZKiちゃんの魂に対して、本体であるAZKiちゃんが問いかけている曲にしようと思ったんですよね。

小難しい言い方で分かりにくいかもしれないけど、「世界は巡り、やがて君のものになる」っていうタイトルは、この世に生まれて誰が魂になるのか、どんな声色になるのか、どんな性格になるのか分からなかったAZKiちゃんが僕はきっといると思うんですよね。イラストだけだった・CGだけだったAZKiちゃんが必ず世界のどこかにいて、そのAZKiちゃんが魂であるAZKiちゃんのことを見てどう思うのかなと考えたんですよね。どんな声をかけるのかな、という想像だったら僕も書けるなと思った。それは誰にも想像できないことだし。

さっきも言ったように、VTuberって何なの、これからどうなっていくのという疑問はカルチャー外からも聞くし、カルチャー的にもビジネス的にも問われていくんだけども、本体のAZKiちゃんは魂のAZKiちゃんに対して祝福を贈るに違いない、と僕は確信している。そうじゃなかったらここまでAZKiちゃんはAZKiちゃんらしく生きてこれなかったわけだから。

その祝福の歌として、「世界は巡り、やがて君のものになる」……この世界がどう転がっていこうが、きっとAZKiがAZKiとして生まれたこの瞬間、絶対AZKiは君のものになる、2人は必ず溶け合って1つになる、という。突拍子もない話かもしれないけれども、僕はこのバーチャルの世界に対して思考を飛ばすとここまで行き着くのかな、ということに一週間かかって……やっと書けるなと思って書いたんですね。

ツラニミズ(見学):

このぽきさんからの曲が来る直前くらいのタイミングで丁度似たようなことを考えていました。企業ないしは複数の人たちが運営するVTuberにおいて、自我というものは祝福するべきものなのか忌むべきものなのか、みたいな感じです。音楽は結局人が作るものだから人の心が絶対に反映されるわけで、VTuberにおける自我は凄くいいことだと僕は思っているんですね。人の心の部分がすごく重要で、むしろ心の成長こそ人を感動させるものだと思っていたので、そのままのことが(さめのぽきさんから)考察PDFとして送られてきて……お互い1年くらいやって、そういう時期に来てるのかなと考えさせられましたね。

佐藤(司会):

VTuberでできることはすごく注目されてきたと思うんですが、バーチャルである意味やVTuberって何なのという部分は、あまり問われてこなかったですよね。こうして多くの人が考える時期にあるんでしょうか。

さめのぽき:

僕は視聴者にも考えてほしいなと思うことが結構多いです。VTuberは良い意味ですごく気軽に楽しめるカルチャーになってますよね。ただバーチャルというだけじゃなく、シンガーやタレントやアイドルといった色んなジョブが割り当てられてきている。気軽に楽しみを選択できるからこそ、視聴者側も少しそういう部分を味わいながら見ると、好きだったVTuberをより好きになれるきっかけが散らばってるんじゃないかなとも思います。

楽曲制作陣注目のAZKi楽曲

佐藤(司会):

では、少し違う方向から。ご自身が制作された楽曲以外で、好きなAZKiさんの楽曲やポイントをお聞きしたいなと思います。

さめのぽき:

僕は「のんびりと、」ですね。ずっとメンタル的な話をしてたから音楽的なことを言うと、音がすごく好きです。トリッキーな音の入り方がすごく強いじゃないですか。僕の曲は生音重視のダイナミックな感じで作るので、ああいう風に張り付いては離れ、みたいな音作りをきくとギュッとなりますね。自分にない発想だから。ギターをカッティングしたりオクターブ奏法で弾いてる音を切って、すごいスピードでLRに振ったりしてるじゃないですか。ギターを弾く人があれを狙って弾くことはそうないから、その時点で1つ違うベクトルでトラックを見てるなと感じましたね。個人的に何回もリピートするイチオシです。

clocknote.:

「without U」収録曲ではないですが、私は「シットデイズ」が大好きで、これがないと会社に行けないんですよ。

(一同笑)

clocknote.:

大体週明けや仕事で辛いことがあった時に聴きます。「シットデイズ」の最初の「非合法な生き方」という歌詞がめちゃくちゃ大好きなんですよ。生きてく中で、必ずしも正しいことだけやって、後ろめたいことが何もないわけではないじゃないですか。どうしても自分を責めながら「あれができなかったな」とネガティブに思うタイミングがあるけど、それでも何かやっていくんだというエネルギーをもらえるんですよ。そういう自分でもいいじゃない、やってこうぜみたいな気持ちにしてくれる。月曜日とかに「シットデイズ」を聴きながら電車に揺られて「頑張るか」と思う。もう生活の一部ですね。

ハム:

個人的にすごく心に響いた曲があって、「without U」6曲目の「ちいさな心が決めたこと」ですね。歌詞の内容がこの間の「レぺゼンエンタス」のアンコール手前のAZKiさんがしたお話に通じるところがありまして、それを踏まえてこの曲を聴いちゃうと、なんかしんどくなる。ただ前向きな意味での気持ちではあるんで、これもきっとライブで聴いたら印象も変わるだろうし、ソロライブを経て家に帰って聴くとまた印象も変わるだろうし、すごく深掘りできそうな曲だなと。ずっと楽しめる、色んな楽しみ方ができる視点の曲だと感じましたね。

ツラニミズ(見学):

ちなみに4thライブのタイトルは「ちいさな心が決めたこと」の落ちサビのフレーズから取って作っています。葛藤の中で進もうとしている気持ちがありつつも、生まれ変わっても同じ物語をしよう、という意味のフレーズがあって、すごく良いなと思いましたね。

楽曲制作陣から見たAZKiの印象・魅力

佐藤(司会):

先程はさめのぽきさんの思うAZKiさん、といった話をして頂きましたが、他のコンポーザーの方々の思うAZKiさんの印象や魅力を聞けたらなと思います。

ハム:

僕は普段ホロライブさんの白上フブキさんとかのお手伝いをしていることもあって、AZKiさん自体はデビュー時期から情報としては知っていましたし、オリジナル1曲目の「Creating world」から楽曲としても追っていました。VTuberの存在意義に突っ込むような歌詞だとか、初期から他のVTuberではあまり見ない独特な世界観があって、面白いなあと思っていましたね。ホロライブさんとの付き合いもある中で、1曲書いてみませんかという流れが起きて生まれたのが「Starry Regrets」という楽曲でした。

楽曲を作った後だと、「この人何でも歌えるな」と結構印象が変わりましたね。色んな曲調、それこそAZKi BLaCKのような楽曲もあればAZKi WHiTEのような可愛い・綺麗な楽曲もある中で、どれも歌いこなすんだけど、全部AZKiさんの独特の世界が出来上がっている。またライブを経てどんどん上手くなって成長したりと物語性を感じたのもあって、制作側でありながら普通にファンとしても追いかけているような状態ですね。

clocknote.:

私は元々加速サトウさん(AZKiのデザイン・モデリング担当)を知っていて、あの「加速ミク」の加速さんが携わったならしばらく見ておこうという感じでした。もちろんAZKi先生のことも見ているんですけど、もっと見ているのはAZKiカルチャーというか、開拓者(AZKiファンの総称)全体を見ているんですよね。雰囲気がすごく好きで、1stライブの一体感やコールの完成度に割と面食らったというか、このコミュニティはすごいかもしれないと感じました。その経験もあって、今回楽曲を制作する際は開拓者のことを特に意識して歌詞を書きましたね。歌詞に「なかまたちと」というコーラスが入ってるんですけど、歌詞カードを見ると分かりますが「開拓者(なかま)たちと」というルビが振ってあったりとか。

「フロンティアローカス」は、未来のAZKiから今のAZKiへ、というテーマで制作した曲なんですよ。これは頂いたお題だったんですが、凄く難しいなと。ただでさえ人のことを考えるのは難しいのに、その人の未来について考えるってかなり難易度高いじゃないですか。ただ、悩む中でも頭の中にずっと「開拓者たちとどこへ行くのか」ということを思い描いていて、歌詞に落とし込みました。私結構すぐネガティブなことも言っちゃうんですが、人生って上手くいかないことやトラブルが絶対あるじゃないですか。バーチャル界隈も、みんな手探りで頑張ってるから色々ある。それでも世界に対して爪痕というか足跡みたいなものを残していくことが活動かなと思っています。

未来について考えるということは、ほぼイコールで終わりについても考えないといけないと思うんですよ。終わりがなくて未来永劫続くものはおそらくないだろうし、少なくとも自分の意識は多分どこかで終わってしまう。じゃあ自分の存在する意味って何だろうと考えると、終わった後に残るのは爪痕や活動してきた仲間。AZKiというものを中心に集まった開拓者のコミュニティはたとえAZKiがいなくなったとしても消えない。「フロンティア」は開拓された土地、「ローカス」は場所や辿ってきた軌跡という意味で、この曲名の意味になっています。開拓した場所には開拓者がいるという意味を込めて、未来のAZKiから大丈夫だよと言ってあげる歌詞になっていますね。

clocknote.:

さめのぽきさんが2人のAZKiがいるんじゃないかという話をされていましたが、面白いことにこの歌詞にもAZKiが2人いるんですよ。これはお題にあったわけではないんです。あと、レぺゼンエンタスに行った方なら分かるかもしれないんですけど、最後の落ちサビで「見つけに行くよ」と歌った瞬間に衣装が変わる演出がありまして、実はあそこで未来のAZKiから今のAZKiに変わってるんですよ。そんなことも考えながら曲を聴いて頂けると、歌詞の意味合いが見えてくるんじゃないかなと思います。

ハム:

ちなみに「フロンティアローカス」に関しては、楽曲のサウンド部分は僕が比重多めに作らせてもらった分、作詞に関してはclocknote.さんのお気持ち優先です。一緒に作業する中で単語や歌詞の案出しは手伝いましたが、ほぼほぼ9割clocknote.さんに書き下ろして頂いた形になりますね。

clocknote.:

自分の中でバーチャルのテーマみたいなものがあるんですよ。バーチャルでもリアルでも変わらないものって絶対あるじゃないですか。私の中では「記憶」が変わらないものだと思っていて。私が別の機会に書いた「dream triangle」という曲の中にも「共に数えた時の流れは仮想ではなく現実(リアル)」という歌詞が入ってますけど、一緒に過ごした時間というのはバーチャルでも何でもなく同じものなんですよね。だからこそ今を大事に生きていこう、というのがテーマなんじゃないかと思います。

佐藤(司会):

AZKiさんやAZKiさんの楽曲に関連して考えていくと、やっぱり「バーチャルとは」という部分に行き着いていきますね。AZKiさんはやはり意義や意味が強く込められている存在ですし、思考がシンクロしていくのかなと思います。

本日は楽曲制作のお話だけでなく、VTuberってなんだろう?と考えるきっかけの一つとなるようなお話ができたと思います。みなさんありがとうございました!

今回のインタビューの内容は、AZKiさんのYouTubeチャンネルにて公開インタビュー形式の配信アーカイブとしても公開されています。

(参考)AZKi 1st ALBUM「without U」リリース特設サイト


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