日々クオリティの高い作品がアップされ続けている、VTuber(バーチャルユーチューバー)や、バーチャルクリエイターの動画。その中から独断と偏見で「この動画は是非見て欲しい」というものをご紹介。特にユニークな作品や技術力や企画力の高い作品、時事性のある作品などをさらに深掘りし、今のVTuberの面白さ、頑張り、才能をキャッチしていきます!
【リアルガチ】二人きりで無人島行ってみた。Deserted Island Training【#のぞメロ無人島】
狂蘭メロコと石神のぞみがふたりで無人島に行った様子を動画でアップしました。にじさんじで無人島に行った例は過去にもあるとはいえ、本来過酷すぎるもののはず。しかも二泊三日。ある程度装備を整えて行ったにしても、女子ふたりにはハードモードすぎる「ゆるキャン△」を目指しつつ全然ゆるくないキャンプの様子が観られます。
文明の利器を持っていったにもかかわらず、雨風という自然に太刀打ちできないしんどさの映像はものすごくリアル。疲労やじれったさが伝わってくるような内容になっているからこそ、後半晴れてからのアウトドアのカタルシスも半端ではないです。
狂蘭メロコの父親役にジョー・力一、ナレーションに宇佐美リトが入っていることで、エンタメ番組的な質がぐっと高くなっているのも見どころのひとつ。またANYCOLORが出しているライバーのぬいぐるみ「にじぱぺっと」を駆使することで臨場感を出しているあたりも含め、うまく自分たちの強みを活かしています。
とはいえ企業主導ではなくライバー個人主導企画でここまで大掛かりなことを、体当たりでやってしまうというのはかなりのチャレンジャー。エンタメだけではなく修行を兼ねているかのようにすら見えます。狂蘭メロコと石神のぞみの、極限だからこそ見えるふたりの個性が楽しめるのも見どころの映像です。
【VRChat】アバター軽量化・服貫通問題とたたかう初心者のつぶやき
今年はVRChatユーザーは一気に増え続けて、プレイヤー人口が定着した段階にまできているようです。プレイヤーの悩みのひとつといえばやはり、アバター改変。技術をすごい勢いで身につけている人が多いと同時に、軽量化という壁もあります。ピィ・ポニョンの動画は、そんな多くのVRChatプレイヤーを悩ませる問題に「あるある」とうなづいてしまうようなVlogです。
技術を教える動画ではなくて、あくまで初心者側の視点から、改変の悩みや努力を素直に語る動画です。だからこそ、聴いていてものすごく共感できる部分だらけです。話題になっている詰まりやすい部分や分かりづらい部分は、おそらく他の人も引っかかった経験があるところばかりのはず。そして出てくる改変ツールの名前も、使ったことがある人が多数のものだと思います。Unityで苦戦してきた人は、過去を思い出すような話題がいっぱいでしょう。
まるで友達とアバターの改変についてあれこれ話し合っているような気持ちになれる動画です。VRChat向けのUnity作業は孤立すると途端にしんどくなることがありますが、人と話すと「わかるー」「あ、そういうのもあるんだ」と、共通の会話として一気に楽しくなります。Unityで悩んでいる人ほど、是非ピィ・ポニョンの動画を見て、悩みを共有しながらおしゃべりしている気分で、ワクワクする気持ちで改変を楽しめるようになるはずです。
カルロ・ピノ失踪事件
カルロ・ピノの配信は、タイトルが「.」となっており、サムネイルも「失踪事件」と穏やかではないものだったので、ドキッとさせられるものでした。そして期待の中行われた配信は、視聴者や他のアップランドの仲間を巻き込んだ、非常に凝った謎解きイベントでした。
画面でぴこぴこ動きながらしゃべっているのは「からじゃがさん」。これはカルロ・ピノが2018年5月のデビュー時に自己紹介としてTwitterに描いてアップしたヘラクレスエクアトリアヌスのこと。ばあちゃるが「カラスジャガイモ」と呼んだことで、ファンとカルロ・ピノの間で「からじゃがさん」で定着し、はや6年以上になる長い付き合いの存在です。そんなからじゃがさんが初めてしゃべった上に、一緒に謎解きできるというのは、長いファンとしては感慨深いものがあるかもしれません。もちろん何も知らなくても、謎解きは楽しめます。
謎を視聴者が解きながら、カルロ・ピノの邸宅の探索、アップランドメンバーへの通話、日記の断片など様々な情報を集めていくことで、ラストに収束していく構造になっています。そして本編にはカルロ・ピノの「姿」は一切出てこない、というのも大事な演出になっています。
カルロ・ピノの「VTuberとはなんなのか」の思想が深く刻まれている、今後の彼女への見え方にも影響するような劇場型配信でした。
直接的につながっているわけではありませんが、アップされたばかりのカバーMV「Who?」をあわせて見ると、さらにカルロ・ピノの存在のありかたへの解像度があがるので、是非チェックしてみてください。こちらはかわいいダンスとウィスパーボイスのボーカルが魅力の作品。しかしそれだけでは終わらない、心に爪痕を残すものがしっかり織り込まれています。
【 #法律解説 】倫獄先生と弁護士Vtuberと学ぶ 魔女裁判と刑事手続【 #薬理凶室 #弁護士Vながのりょう】#弁護士
弁護士VTuberのながのりょうと薬理凶室の法務部の倫獄先生は普段から、法律面から世界の様々な事件事象にメスを入れていれています。今回のコラボでは「魔女裁判と刑事手続」という、事実とフィクションがごちゃまぜになりがちな、ちゃんと調べないとわからないことだらけの部分に深く切り込み、法的な部分から読み解いています。
正確な歴史資料だけを集め、フラットにかつ広い視野で事実をピックアップしている配信のため、内容はものすごく濃く、法律だけでなく歴史の勉強にもかなり役立ちます。
歴史に残る魔女狩りを想像で捉えるのではなく、事件性のあるものなのか、魔女は「例外犯罪」なのか、など冷静にまとめていくことで、ぼんやりしたファンタジー的なイメージから、しっかりとした過去の事実として解像度をあげています。
過去にあった決闘裁判や糾問主義、拷問と自白、魔女裁判の記録などを元にしながら、現在の逮捕規定、自白規定、反対尋問権、令状主義などを比較例として出すことで、なぜ今の法律にそれらが必要なのか、慎重に重要視されているのか、考えさせられる内容にもなっています。
過去の話を「法律」という観点で見つめることで、現在の社会を成立させるためには何が必要なのか理解できる、という考え方の手法を学べる配信です。
【オリジナル曲】ヨミボロシ/曇音ルカ
作詞作曲、ボーカル、映像まですべてひとりでこなすアーティスト曇音ルカの作品。今回も創造力にあふれ、世界観が練り込まれたMVになっています。不協和音多めでうねるようなトリッキーなメロディにあわせて、不安定さに対する恐怖に怯えているかのような歌声が、青い歪みの強い映像に重なっていきます。
タイトル「ヨミボロシ」は「黄泉の国は幻」という意味から来ているようです。このあたりは曲の深堀り配信を見てチェックしてみてください。
とはいえ聴く人の感性によって全く異なる捉え方ができる作品でもあるので、まずは解説を見る前に一旦曲を通して、映像を見て、歌声を聴いてみることをおすすめします。ときおり映像に入る歌詞ではない言葉にもドキッとさせられますし、謎の多い仕込みも気になるはずです。そして、この世界を構築するために研ぎ澄まされた曇音ルカの歌声の表現力に、ずぶずぶ飲み込まれる感覚を味わってください。
unlucky child / 飯田もえぎ
パワー系ぽっちゃりVTuberの飯田もえぎのオリジナルラップは、イラストの強烈さが色々な連想を引き起こし、綴られる言葉で心の深いところを抉ってくる生々しい作品です。テーマは「毒親」とのこと。気持ちのいい韻の踏み方に対して、トラックの不穏感と言葉の物騒さが心をざわざわさせてきます。
飯田もえぎの声自体が聴きやすくかわいらしいため、今回の呪詛のようなラップの歌い方はより一層インパクト抜群。キュートな歌と病みを抱えた歌の両方を歌っている彼女ですが、今回は病みに全振り。言葉ひとつひとつを叩きつけてくる迫力に満ちています。
ドキッとする要素は多いですが、とはいえ誰かを傷つけるタイプのラップではないのも、聞けばわかります。このリリックに通ずる悩みを持っている人がもしいるとしたら、寄り添い共感してくれる貴重な作品になるはずです。
飯田もえぎは2018年から活動している経歴の長いVTuberで、波乱万丈に所属や姿を変え、今年6月に正式にリデビューしました。加えて実際の生活はさらに命がけで超波乱万丈。このあたりはショート動画で赤裸々に語られているので、普段の聴きやすいトーク配信とあわせてチェックしてみてください。曲を聴いてからこれらのショート動画を見ると、一気に曲の聞こえ方が変わるはずです。
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