VTuberファンにとって大きなショックを与えることになる「卒業・引退」。こういった出来事が起きた際、多くのファンはどのように受け止めているのでしょうか?
今回、読者の皆様にご協力いただいたアンケート(有効回答数:872件)の結果と分析を公開します(今回の結果を歪めたかたちでの他プラットフォームでの発表は固くお断りします)。
回答者の約9割が「応援していたVTuberの卒業」を経験。一番辛いのは……
Q1. あなたが応援していた(推し活や積極的なコンテンツ視聴)VTuberが卒業・引退した経験はありますか?
| 回答 | 人数 | 割合 |
| 複数回以上ある(2度以上) | 589 | 67.5% |
| 1度ある | 166 | 19.0% |
| 経験したことはない | 101 | 11.6% |
| その他(自由記述) | 16 | 1.8% |
回答者の86.6%が、VTuberの卒業・引退を経験しており、そのうち約8割が複数回の経験を持っています。VTuber文化が成熟するにつれ、ファンにとって卒業や引退といったイベントは例外的な出来事ではなく、繰り返し直面する体験となっていると分かります。応援していたVTuber卒業の未経験者は約1割にとどまり、本アンケートの回答者層がこの事象への当事者意識を強く持っていると推察できます。
Q2.【自由回答】そのVTuberが卒業されたときの、当時のお気持ちをお聞かせください。
| 順位 | 名前 | 言及数 |
| 1 | 天音かなた | 147 |
| 2 | 湊あくあ | 92 |
| 3 | 紫咲シオン | 60 |
| 4 | 沙花叉クロヱ | 46 |
| 5 | 火威青 | 40 |
| 6 | 桐生ココ | 39 |
| 7 | 黛灰 | 36 |
| 8 | 夜空メル | 19 |
| 9 | 潤羽るしあ | 18 |
| 10 | 鈴鹿詩子 | 13 |
名前が多く挙がった上位10名は以下のとおりです。上位はホロライブ所属VTuberが占めています。昨年12月に卒業した天音かなたさんが最多の147件で、アンケート実施時期の影響が大きいと考えられます。湊あくあさん・紫咲シオンさんなど2024〜2025年に卒業したメンバーが上位に集中しており、近年のカバー社からの相次ぐ卒業が、ファンに強い印象を残していることがわかります。にじさんじからは黛灰さん・鈴鹿詩子さんが上位に入っており、カバー・ANYCOLOR2社からの卒業がインパクトを残していることが分かります。
Q3.【自由回答】そのVTuberが卒業されたときの、当時のお気持ちをお聞かせください。
「感情的な気持ちとしては絶望。論理的な気持ちとしては普通に考えて同じ会社に一生全員が残るわけがないという気持ち」
「ほぼ毎日配信を観ていたので、日常が壊れていくような感覚を得ました。そして、目標を未達成のまま去っていくことに心を痛めました。」
「卒業聞いた瞬間や最後の配信の時はプラスの方向で見送れた。一ヶ月や半年、一年と時間が経って突然居ないことに対する絶望が来て号泣してしまうことがある。」
「もっと一緒にいられると信じて疑わなかったし、もっと出来ることがあったんじゃないかって後悔してるし、多分今後もずっと引き摺る…けどそれくらい幸せで楽しかったんだって思ってる。」
「ずっと続いていた続くはずの道が、突然消しゴムで削り取られ、虚無が広がるようでした」
「卒業を知ったと同時に動画も全て削除されていて、とてもショックで”なぜ“という気持ちでいっぱいでした。卒業発表も当日で信じられませんでした。」
「悲しいけど本人が決めたことなので受け入れた」
「非常に残念だと思ったが、遅かれ早かれ卒業はいつか必ず来るものであり、それがその日であっただけ。卒業という体裁も取れずに活動を終えるVTuberもいる中で卒業という形で幕を下ろせるだけ恵まれている。」
「悲しい」「絶望」「虚無感」などの単語の含まれた回答が多く見られました。日常の一部だった配信がなくなることへの衝撃は、単なる「コンテンツの終了」を超え、生活の一部が欠けるような感覚となっているようです。
一方で「本人の選択を尊重したい」「仕方ない」と理性的に受け止めようとする声も見られ、感情の揺れるファン心理が浮き彫りになりました。また、運営企業への不信感を示す回答も一定数あり、卒業の「理由」や「経緯」によって感情が大きく変わることが分かります。
Q4. 卒業・引退を知った際、最も「ショック」を感じるポイントは次のうちどれですか?
| 回答 | 人数 | 割合 |
| 日常の配信(定期的な雑談やゲーム実況など)がなくなること | 381 | 43.7% |
| (場合によっては)生配信やSNSアカウントが消えてしまうこと | 168 | 19.3% |
| VTuberが活動中に掲げていた未達成の目標や夢が残ること(見届けられないこと) | 125 | 14.3% |
| ショック経験がない | 56 | 6.4% |
| ライブイベント等、本人と対面・交流できる機会がなくなること | 44 | 5.0% |
| グッズ等の関連商品が入手できなくなること | 10 | 1.1% |
| VTuberを通じて交流していた友人やファンコミュニティとの接点が減ること | 7 | 0.8% |
| その他(自由記述) | 81 | 9.3% |
最大のショック要因は「日常の配信がなくなること」で、4割超を占めました。VTuberの配信がファンの日常生活に深く組み込まれているため、その習慣が断絶されてしまうことで、強い喪失感を経験していると言えそうです。
次いで「存在の痕跡が消えること」が約2割を占めており、アーカイブやSNSの削除がVTuberの死に近い感覚を与えていることが読み取れます。その他の自由記述では「多くの場合キャラクターが二度と復活しないという事実」「曲が好きだったので、それが二度と歌われなくなること」などの投稿が見られました。
求められるのは「本人の口からの説明」と「労働環境の改善」
Q5. 下記の選択肢のうち、運営・本人からの「発表のタイミングや形式」として、最も納得感のあると感じるものは?
| 回答 | 人数 | 割合 |
| 1ヶ月以上の事前告知など、十分な期間を持った発表 | 343 | 39.3% |
| 卒業発表配信での本人からの直接の言葉と説明 | 333 | 38.2% |
| 納得感のあるものは無い | 78 | 8.9% |
| 詳細かつ明確な理由が記された運営からの文書 | 63 | 7.2% |
| 引退後に本人から理由や説明が語られること | 19 | 2.2% |
| その他(自由記述) | 36 | 4.1% |
最も納得感のある引退の発表形式についての回答では、「十分な猶予期間」と「本人の口からの説明」がほぼ同率で、それぞれ約4割を占めました。ファンは突然の別れを最も恐れており、心の準備をするための時間と、納得できる本人の言葉の両方を求めていると言えそうです。
一方で「納得感のあるものは無い」が約9%あり、どのような形式であっても別れそのものを受け入れがたいファン層も存在しています。運営からの公式声明を求める声は7%にとどまっており、ファンが重視しているのは組織の説明よりも本人の声であることが明確になりました。
Q6. 近年のVTuber文化のなかでよくみられる卒業理由として、あなたが最も「深刻(対策が必要)」だと感じる問題は何ですか?
| 回答 | 人数 | 割合 |
| VTuber活動に起因する業務負荷の集中・過重労働 | 241 | 27.6% |
| SNSなどの誹謗中傷や攻撃的な行為(ストーカーや暴露など) | 228 | 26.1% |
| 運営会社との方針や方向性の不一致 | 164 | 18.8% |
| 心身の健康問題(体調不良、燃え尽き症候群など) | 137 | 15.7% |
| 運営企業の倒産や事業縮小の影響を受ける | 22 | 2.5% |
| 収益化の難しさ、経済的な問題 | 18 | 2.1% |
| 学業やプライベートな生活など、ライフステージの変化 | 8 | 0.9% |
| 特に深刻だと感じない | 15 | 1.7% |
| その他(自由記述) | 39 | 4.5% |
「業務負荷の集中・過重労働」が27.6%で、上位を占めています。これは「Q2.【自由回答】卒業されたVTuber」でも掲載された天音かなたさんが引退理由のひとつとして語った理由となっており、直近の卒業のニュースが強いインパクトを残したと推察できます。天音かなたさんに限らず、VTuberの間では過度な業務負荷により体調を崩したり、長期の活動休止に至るといった例が散見されるため、ファンの間でも大きな問題として捉えられているようです。また「SNSの誹謗中傷や攻撃的行為」が26.1%となっており、こちらも大手企業を中心に対策の強化されている状況であり、実際に裁判にまで至っている事例もありますが、未だ根強い問題として残り続けています。
自由記述では「全部繋がっている問題」「上位4つは全て深刻」との指摘が複数見られました。経済的理由やライフステージの変化は相対的に低く、業界の構造的問題への危機感が非常に強いことがうかがえます。
Q7. 2025年から2026年現在にかけての、VTuber業界における卒業・引退のペースについてどう感じますか?
(1=非常に多いと感じる ~ 7=全く多くないと感じる)
平均値:3.34 / 中央値:3.0
| スケール | 人数 | 割合 |
| 1(非常に多い) | 164 | 18.8% |
| 2 | 210 | 24.1% |
| 3 | 164 | 18.8% |
| 4 | 103 | 11.8% |
| 5 | 75 | 8.6% |
| 6 | 39 | 4.5% |
| 7(全く多くない) | 117 | 13.4% |
1〜3の「多いと感じる」層が61.7%を占めており、過半数のファンが近年の卒業・引退ペースの加速を実感しています。特に2が最多の210件(24.1%)で、「かなり多い」という認識が最も一般的です。一方で7(全く多くない)も117件(13.4%)と一定の存在感を示しており、視聴するグループやジャンルによって、それぞれの体感が大きく異なることが示唆されます。
Q8.所属事務所やVTuber本人からの「大切なお知らせ」という言葉から、あなたがまず連想する内容は?(複数回答あり)
| 回答 | 件数 | 回答者に占める割合 |
| 引退・卒業 | 780 | 89.4% |
| 長期休止・活動停止 | 587 | 67.3% |
| ライブ・イベントの開催決定 | 110 | 12.6% |
| 新衣装・新モデルの発表 | 58 | 6.7% |
| チャンネル登録者数などの重大な目標達成発表 | 13 | 1.5% |
約9割が「引退・卒業」を連想しており、「大切なお知らせ」という言葉がVTuberファンにとって事実上の不吉な予告として定着してしまっていることがわかります。ポジティブな内容(ライブ開催・新衣装)を連想する人は少数にとどまっています。自由記述では「重大発表は良いニュース、大切なお知らせは大体良くないニュースと認識している」という声もあり、言葉選び自体がファンの心理に影響を与えている実態が見えてきます。
Q9. VTuberが卒業した後、過去の「アーカイブ」はどのように扱われるのが最も理想ですか?
| 回答 | 人数 | 割合 |
| 活動の軌跡として、全て永続的に残してほしい | 487 | 55.8% |
| VTuber本人の意向が最も優先されるべきである | 323 | 37.0% |
| 著作権フリーのオリジナル楽曲や歌枠など、一部(歌など)のみ残してほしい | 18 | 2.1% |
| 全てのアーカイブを一定期間(例:1ヶ月〜半年)後に削除してほしい | 11 | 1.3% |
| アーカイブは残らない方がよい | 4 | 0.5% |
| その他(自由記述) | 29 | 3.3% |
「全て永続的に残してほしい」が過半数の55.8%を占めており、アーカイブをVTuberの活動の遺産として保存したいという気持ちが見て取れます。「本人の意向優先」も37%と高く、自由記述では「本人の意向が第一だが、できれば全て残してほしい」という両方の気持ちを抱える声も寄せられていました。削除を望む声はごくわずかで、VTuberの活動記録が「かつてそこにいた証」として重要であると分かります。
Q10. 卒業を知ってから最後の日まで、あなたが実行したい(あるいは実行した)「ファン活動」は何ですか?(複数選択可)
| 回答 | 件数 | 回答者に占める割合 |
| 卒業ライブやイベントに参加 | 376 | 43.1% |
| 後悔がないよう、ひたすらアーカイブや動画を見返す | 356 | 40.8% |
| 特に何もせず、静かに配信を見届ける | 328 | 37.6% |
| 最期の思い出として、ファンアートやファンレターを投稿する | 289 | 33.1% |
| 感謝の気持ちを込めて、スパチャ・ギフトを贈る | 282 | 32.3% |
| グッズやボイス、アーカイブを積極的に購入する | 279 | 32.0% |
| SNSやブログ等でこれまでの活動の軌跡を記録する | 150 | 17.2% |
| 距離を置く | 61 | 7.0% |
上位にはイベント参加・アーカイブ視聴・スパチャ・グッズ購入など、能動的に「最後の時間を最大限に味わう」行動が並んでいます。特にアーカイブの見返しが40%超と高く、大切な思い出として記憶に残そうとする姿勢が表れています。一方で「静かに見届ける」も37.6%と上位に入っていました。「距離を置く」は7%で、別れに向き合えない層も一定数存在しています。
Q11. 卒業によって空いた「配信を視聴していた時間」は、その後どうなりましたか?(最も当てはまるもの)
| 回答 | 人数 | 割合 |
| 他のVTuberを見るようになった | 544 | 62.4% |
| 特に変化はない | 117 | 13.4% |
| VTuber以外の趣味に充てた | 93 | 10.7% |
| 配信プラットフォームの視聴時間自体が減った | 54 | 6.2% |
| 仕事・学業・プライベートに充てた | 20 | 2.3% |
| その他(自由記述) | 43 | 4.9% |
6割以上が「他のVTuberを見るようになった」と回答しており、応援していた特定のVTuberの卒業後も、視聴者はVTuber文化圏内にとどまる傾向が強いことがわかります。プラットフォーム自体の視聴が減ったという回答は6.2%にとどまっており、VTuber視聴そのものからの離脱は限定的です。
自由記述では「卒業VTuberのアーカイブを見返している」という、過去のコンテンツを繰り返し消費する層の存在も確認されました。
Q12. 卒業したVTuberが「別の姿(VTuber転生やリアルタレントとしてのデビュー等)」で活動を再開することについて、どう感じますか? 最も適切なものを選択してください。
| 回答 | 人数 | 割合 |
| 以前の姿とは別の人格として新たに応援したい | 236 | 27.1% |
| 静かに見守るに留め、積極的に追うことはしない | 210 | 24.1% |
| 複雑な気持ちはあるが、新活動を追いたい | 133 | 15.3% |
| 全面的に応援したい(以前の姿と同一視する) | 118 | 13.5% |
| 追わない | 58 | 6.7% |
| 新しい活動に関する情報を積極的に遮断する | 28 | 3.2% |
| その他(自由記述) | 89 | 10.2% |
最多は「別の人格として新たに応援したい」で27.1%でした。前の姿と同一視するのではなく、あくまで「新しい出発」として捉えるファンが最も多いことがわかります。「全面的に応援(同一視)」は13.5%にとどまっており、VTuberの転生に対しては一定の距離感を保つ姿勢が主流となっています。
「静かに見守る」「追わない」「情報を遮断する」を合わせると34%で、転生に消極的な層も約3分の1ほど存在しています。自由記述では「活動内容次第」「卒業理由による」など、一概には判断できないという声が多く、転生への態度は個別の文脈に強く依存しているようです。
Q13.【自由回答】卒業・引退したVTuberに対して、その後に声をかける機会があるとすれば、どのようなことを伝えますか?
「活動を通して非常に楽しく過ごさせてもらった感謝を伝えたい。後はただただ個人的な満足や幸福を追求して欲しい。極論、元気でいてくれればいい。」
「貴方に出会えたことに後悔は無い」、もう一言許されるなら「もう一度、貴方と日常を過ごしたい」
「VTuberにならなければ、たぶんあなたを知ることはありませんでした。VTuberになってくれて、幸せな時間を与えてくれて本当にありがとうございます。」
「何も言えないかもしれないし、思い出話としてその人を応援してた日のことを語るかもしれないし……。あるいは元気にしてくれていたなら良かった、と安心を伝えるかもしれないです。」
「今までの全員に言えるのは『楽しい思い出をありがとう』という感謝の言葉。『寂しい』など相手にとって負担になる事は言いたくない。」
卒業したVTuberへ贈る言葉として最も多く寄せられたのは、「ありがとう」と「幸せでいて」といった、ファンの真摯な声でした。一方で「もう一度会いたい」「戻ってきてほしい」という率直な本音も多く、理性と感情の間で揺れるファンの姿がここにも表れています。少数ながら「声はかけない」「別人なので伝えることはない」という割り切った回答もあり、別れへの向き合い方は多様であることがわかりました。
MoguLive編集部ノート
今回のアンケートの集計結果は、昨今目立っていた人気VTuberの卒業・引退について、ファンの方々の心境は一体どのようなものだったかをお聞きし、現在のVTuber文化の課題を浮き彫りにすることを目的としたものでした(中には、アンケートをきっかけとして辛い体験を思い出してしまったというコメントも見られました。それについては深くお詫び申し上げますと共に、それでもご回答に協力いただけたこと、厚く御礼申し上げます)。
結果をみると、特に運営企業とVTuberの間での過剰な労働バランスや方向性の不一致といった問題に対して、強い懸念を持っている視聴者の方が多いことがうかがえます。これらの背景には、VTuberと企業間でのコミュニケーションの不足やすれ違い等のほか、企業の目指す急速な成長スピードにVTuberがついていけなくなったといった課題も考えられます。VTuber企業それぞれでも、この問題を認識し、対策する姿勢を見せていますが、現状どのような体制が理想なのか、答えは出ていない状況です。
また、自由回答結果のコメントなどに目を通すと、普段からVTuberのコンテンツを日常的に見ている層であるほど、その喪失感の大きさが強く表れているように見えます。VTuberと同じ時間を共有できなくなる寂寥感、夢や目標を残したまま挫折してしまうことへの無力感といった旨のコメントが見られ、VTuberが視聴者との相互のコミュニケーションによって成り立っているコンテンツであると改めて感じさせられるとともに、その断絶に対するショックの強さは、とても推し量れるものでは無いことも認識させられました。
今回のアンケートの反省点として「VTuberの卒業について、動画や生放送のプラットフォームにはどの程度の影響や責任があるのか」や「長時間の生配信や頻度の高い動画投稿が常態化している現在の状況自体を、VTuberや視聴者はどのように受け止めているのか」といった、現在の配信環境に対しての課題に関する設問や意見も求めるべきだったとも思います。こういった点は、今後またVTuberへの直接のインタビュー等、別のアプローチも含めて検討し、掘り下げていく所存です。(編集者:ゆりいか)
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