VTuberの楽曲が数多くリリースされ、オンラインでの音楽イベントが盛んな中、急速に勢いを増しているのが、VTuber楽曲を流すDJイベント、通称「Vクラ」です。
VTuberフリークたちが結集したイベント「VIRTUAFREAK」やバーチャルアーティスト中心のDJイベント「SUPERCHAT」など、さまざまな企画が行われ、VTuberファンや音楽ファンに親しまれています。そこで、2020年にクラブで話題になった楽曲や、”現場”で音楽を聴くことの魅力について、VTuber好きなDJの方々に振り返ってもらいました。
座談会出席者
・大崎
宮城を拠点にDJをしているVtuberのオタク、界隈を推している。2020年9月にコンピレーションアルバム「Box in the back ∀lley / Club Turtle(#蟹亀 )」をリリース。
・大宮にいえ
Twitterをメインにバーチャルな人達の関係性を追うオタクをやっています。Vtuber楽曲DJとしてイベントに出演させていただくことが増えてきました。好きなVTuberは、MonsterZ MATE、somunia、Marpril、ヨシナ、ミソシタ、卯月コウ、観影みゆ、希来里パイ。
・夏灯
伝説のVTuber楽曲DJイベント #ぶいっと 主催。以前は北陸と関東を中心に活動するアニソン/ボカロDJだったが、現在はDJだけでなくVTuberとして企業案件を担当するなどその活動は多岐にわたる。
司会:ゆりいか
「推しの曲が流れないなら、俺が流してやる」
――今回出席いただいたのは、普段のDJ活動でVTuber楽曲を流している方々です。まず、みなさんがDJになった経緯をお聞かせください。
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夏灯:
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自分はもともとアニクラ(※アニソンクラブイベント)でDJをやっていたんですけど、とあるイベントでVTuberの楽曲を流すことが決まったので、色々聞いていたんです。そしたら、かしこまりの「ルーティン」って曲が涙が出てくるほど良い曲で…そこからどんどんハマっていきましたね。
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大宮:
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僕はにじさんじで月ノ美兎委員長に出会ったのがVTuberファンになるきっかけでした。そこからVTuberの音楽にも興味が湧いてきて、DJイベントの「VIRTUAFREAK」に参加したみたんです。そしたら、どんどん楽しくなっちゃったので、自分でもDJを練習してみるかと思い、活動をはじめました。
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大崎:
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僕もにじさんじからハマったのがきっかけでしたね。DJ を始めた明確な理由が一個あって、「Vクラ」(※VTuberクラブイベント)に行った時に、自分の推しの曲が全然流れてこなかったんですね。「そっか、流れなかったか…」って残念な気持ちだったんですけど、ふと「だったら、俺が流せばいいじゃん?」と気づいたんですよ。
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大宮:
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分かるわ、その感じ。
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夏灯:
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めちゃくちゃ分かる…。
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大崎:
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自分以外にもそんな理由ではじめた人は割と多いんじゃないかな。
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大宮:
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2018年ごろはVTuberの楽曲自体が少なかったから、有名な曲はだいたいクラブでも流れるって雰囲気だったけど、だんだん文化が拡大してくると「あの曲聴きたいのに流れない!」っていう現象が増えていって、こっちのフラストレーションがたまって、「じゃあやってろう!」となるんですよね。
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夏灯:
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いい流れだ。
――VTuberをきっかけにDJデビューされる方が多いとは驚きです。
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大崎:
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僕が知っている人でも、 14,5人はいますね。
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大宮:
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周りを見回しても20人くらいはいるかも。しかも、みんなデビューしたばかりなのに、上手いんですよ。
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夏灯:
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最近では、オンラインのDJイベントが多く、プロの方のパフォーマンスを気軽に見やすい環境なのも影響していると思います。プロの技を見た人たちが「あ、このレベルが普通なんだ」と思っちゃって、デビューまでに猛烈に練習してくるという(笑)。
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大宮:
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お手本が良すぎて、みんなのレベルが上がっちゃったんですよね。
今年クラブを盛り上げたVTuberと言えば?
――2020年、VTuber好きなDJの方々の間で、特に話題となった楽曲は何でしょうか?
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一同:
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(間を置かず)「BOOGEY VOXX(以下:ぶぎぼ)」ですね。
(「BOOGEY VOXX」…FraとCiによるバーチャルアンデッドユニット。毎週金曜日に楽曲を投稿。アルバムリリースと全国ツアー開催が発表されたばかり)
――今年は、その名前をよく耳にするようになりましたね。
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大崎:
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それこそ「D.I.Y」がリリースされた当初(2020年5月)は、リアルのクラブでも、めちゃくちゃ流されていました。Vクラだけでなくアニクラでも人気でしたね。
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夏灯:
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そうそう! アニクラでも、そのまま流していると「あのDJはミーハーだ」って思われてしまうくらいに浸透していました(笑)。
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大崎:
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「ラブライブ」の人気楽曲をそのまま流しているみたいな雰囲気になっていましたね。まだ1年も経っていないのに。
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大宮:
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気がついたら、そんな感じになっちゃってましたね。
――「BOOGEY VOXX」がこれだけクラブの中で愛される存在になったのは何が理由だったんでしょうか?
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夏灯:
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そもそも彼らの楽曲が良かったというのもありますし、ぶぎぼの方から音源をクラブでどんどん流して欲しいというアプローチがあったことも大きいですね。
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大崎:
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カバー楽曲の無料配布は影響が大きかったですね。
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大宮:
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アカペラ音源を配布してくれたことも珍しいですし、「自由に使って布教してくれ」と言ってくださったことで、DJ側も気軽に利用しやすかったと思います。
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大崎:
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クラブでふたりの曲を耳にしてハマっていった人も多いでしょうね。
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夏灯:
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「アンデッドアンラック」っていう、個人的に大好きなアンデッドものの漫画があるんですけど、あの作品がアニメ化されたら、OPにぶぎぼが起用されて欲しいんですよね。集英社さんお願いします!
――個人的に良かったVTuberの楽曲は何でしょうか?
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大崎:
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アルバム単位だと「蟹亀」というコンピレーションアルバムが非常に良かったです。というか、自分が主催した企画なので、俺が挙げなかったら、全部嘘になってしまう(笑)。特にラストトラックの「Groovy in the light」は思い入れがありますね。先ほど語ったぶぎぼも参加しています。
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彼女が「いつかライブをやりたい」って話した時に、僕の脳裏には式部めぐりの曲でアガっているクラブの様子が爆速で浮かんできて「あっ…!あっ…!(限界)」となっていました。
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大宮:
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推しの曲ですが、月ノ美兎委員長の「アンチグラビティガール」ですね。委員長×TAKU INOUEっていう組み合わせが最高でした。クラブで聴いても、一人部屋で聴いてもいい。彼女はササキトモコさん提供の楽曲も発表していますが、非常に豪華なメンツとコラボしていましたね。
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大崎:
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「アンチグラビティガール」は、クラブだと”締め曲”としてかかっていましたね。
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大宮:
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これをかけるとイベントがエンディングの雰囲気に向かっちゃうから、早々序盤にはかけられない(笑)。「Virtual to LIVE」も同様ですね。
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夏灯:
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DJ側からすると「神曲すぎて、この次に繋げられるような曲がない!」ってなっちゃうんですよね。
――曲調や雰囲気などによって「クラブで使いやすいかどうか」が変わってくるんですね。
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夏灯:
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例えば、イントロ(※導入部)8小節、アウトロ(※終結部)8小節の構成の曲は使いやすい印象ですね。
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大崎:
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曲を聴いていても「あ、これはクラブで流れるのを狙ってきているな」っていうのはなんとなく匂いで分かります。
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大宮:
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「D.I.Y」もそうですが、こっち側が叫ぶであろう場面まで想定して曲を作っているものは強いですね。もちろん、クラブごとの雰囲気もあるので、実際にその曲で盛り上がるかどうかはもう少し咀嚼して考えないといけないのですが、直感的に盛り上がりそうだなと思える曲はありますね。
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大崎:
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インパクト強めの音があったり、コールアンドレスポンスが想定されていたりとか、そういったところで(盛り上がり度合いが)変わってきますね。
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大宮:
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最近だと、電音部も全部の曲盛り上がりそうって感じがします。
(「電音部」…バンダイナムコエンターテインメント主導のキャラクタープロジェクト。「帝音国際学園」のキャラクターの声優をにじさんじ所属のライバーが担当している)
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大崎:
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「Hyper Bass」とかヤバい。
自分の好きなVTuberの曲をバカでかいスピーカーで聴ける場所
――今度はDJたちがパフォーマンスを披露している”現場”の話に移りましょう。そもそも、VTuberの曲がメインで流れる「Vクラ」の現場の雰囲気とはどういったものなのでしょうか?
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大宮:
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「アニクラ」とはまた違ったイメージだと思っていますが、どう思います?
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夏灯:
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アニクラはBPM帯(※Beats Per Minuteの略称、音楽のテンポの単位として用いられる)180~200と速めの音楽が多くて、みんなでガンガン盛り上がるライブっぽいイメージなんですけど、VTuberの曲は4つ打ち(※1小節に4分音符が4回続くテンポのリズム、ダンスミュージック系によく用いられる)も多く、BPM帯128のちょっとオシャレな曲調も多いですね。
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大崎:
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VTuberの楽曲ってどんなジャンルものでもあるので、DJのこだわり次第で、どんなクラブにもなりえるんですよね。みんなで最前列で腕を振り上げるような盛り上がる曲もあれば、まったりお酒を飲みながら聴くような曲もあって、本当に色々あります。
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大宮:
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ゆったりしてていいなーって思ってたら、急に陽気な曲が流れて、みんなが最前列まで押し寄せたり。
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大崎:
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酒を片手に「ソレソレソレソレ!」って言いながらね(笑)。
あー……
幸せだな……
#バーチャフリーク #clubasia #VIRTUAFREAK pic.twitter.com/9NuTQPf1SI— 大宮にいえ (@Omiya_Nie) December 27, 2020
――クラブに来るお客さんはどういった方々が多いですか?
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夏灯:
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20代前半の方が多いですね。18歳の方もいらっしゃる。
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大宮:
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たしかに相当若いですね。
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大崎:
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お酒を飲めない未成年の方が結構いますよね。クラブで乾杯する雰囲気になった時も「あ、僕達お酒飲めないので!」と言って、何人かが酒飲みの輪から外れていくんです。
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大宮:
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よく見ると、腕に巻いている帯の色が違うんですよね(※クラブスタッフが未成年と識別するために帯の色を分けている)。壇上に上がっている DJ の中にも、未成年の方がいますし、”大人”なイメージのクラブとはちょっと雰囲気が違うかも。
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夏灯:
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おそらく、Vクラ自体が昼のイベントの方が多いことと関係しているんじゃないかと思います。一般的なクラブって深夜から朝までの営業という形式が多いんですけど、10代はそんなに深夜まで外出できないですからね。秋葉原の「エンタス」もお昼頃からの営業をよくやっていますね。おそらく客層と時間帯がちょうどよい具合にマッチしているんだと思います。
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大宮:
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現場の雰囲気も若い方に馴染みやすい感じかもしれません。
――皆さんが考えるクラブに行くことの醍醐味とは何でしょうか?
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夏灯:
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曲の中にはクラブで大音量で流れることを前提で作られたものがあるので、そういうのを体感しにいく良さはありますね。
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大崎:
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自分の好きな曲をバカでかいスピーカーで強制的に聞けるわけで、そりゃ好きにはなりますよ(笑)。
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大宮:
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単純な話ですけど、自分の推しVTuberの曲がクラブで流れたら嬉しいし、それを聴いていた人たちが一緒に盛り上がっているのを見るのも嬉しいですね。「あ、この人たちもインターネットでの出来事を知っている人たちなんだ」って実感できるのは貴重ですよ。
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大崎:
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現場をきっかけに繋がりが生まれたりね。
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大宮:
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僕の中では「VIRTUAFREAK」の初回イベントがその原体験で、KMNZの曲が流れた瞬間に、みんなで合唱がはじまったんですよ。「VTuberの曲が好きな人達って、こんなにいっぱいいるんだ」と感動しましたね。
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大崎:
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自分の考える醍醐味としては、これまで触れてこなかったジャンルの音楽に出会えるっていうのがありますね。特にVTuber楽曲って、ヒップホップやクラブミュージック、バンドソング、ジャズと色んなタイプのものがあるので、現場にいると知見が広がります。これまで、ロックしか聴かなかった人がジャズにハマったり、Vクラをきっかけに電波ソングの良さに気づいたって人がいたりと、そんなことも起こっています。
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大宮:
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先日バンドサウンドオンリーのDJイベントに参加したんですけど、僕が思っていた以上にVTuberのバンド系の曲って豊富だったのは良い発見でした。
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夏灯:
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DJ側としても、「この曲を広めたい!」って想いからスタートしている人が多いので、自分のパフォーマンスをきっかけに知らないジャンルと出会ってくれるのは本当に嬉しいですね。
――クラブをきっかけに、さまざまなかたちでの出会いがあると。
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大宮:
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実際、リアルの繋がりだけで、VTuber好きの友人をつくるのはなかなか難しいですよね。クラブだと、初めて同士でお互い無言でも、空間に音があるからコミュニケーションが助かるんですよね。
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夏灯:
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オタクなので1対1で長時間知らない人と話すのは無理なんです(笑)。短時間でパッと喋れるところがクラブの良いところですね。
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大崎:
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唯一の問題点は声が通らない(笑)。
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大宮:
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「今何て言った?」の繰り返しになっちゃう(笑)。
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夏灯:
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それで、アルコールが入ったらもう終わりですよ。何も聴かずに「ソレソレ!」言いながら最前列に向かってしまうので。
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大宮:
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クラブの中はコミュニケーションに適してるんだか適してないんだか全然わからないですね。ただそういった曖昧だけど一緒に時間を過ごしている実感のある、非言語コミュニケーションが楽しいんですよね。隣で踊っているだけで友達という感覚で。
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大崎:
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クラブで知り合った人とは、どうせ次の日ににTwitterで喋っているので。
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夏灯:
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言うなれば、オタクのでかいオフ会みたいなイメージですね。
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大崎:
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人とのコミュニケーションが好きな人はハマると思います。
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大宮:
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常に自分たちの好きな音楽が流れているわけですから、話題に困ることもないです。
――2020年、特に印象に残ったクラブでの出来事は何でしょうか?
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大崎:
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4月頃からはじまった「Music Unity 2020」ですね。コロナウイルスの問題で、DJシーン全体が落ち込んでしまった状況のときに、「(この状況でも)クラブを盛り上げよう!」ということで、全国のいろんなクラブの方々がオンラインで出演したんですよ。このイベントの影響で、オンラインのDJイベントが活発化した印象があります。
(「Music Unity 2020」…秋葉原Mogra企画のDJイベント。江戸レナや桐谷こむぎなど、多数のVTuberが参加したことでも話題に)
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夏灯:
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このイベントきっかけで「オンラインでもこんなに盛り上がれるのか」という感じで、DJたちの配信が増えましたね。それに続く流れで「ぶいっと」も始まりましたし。
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大崎:
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コロナ禍以前もMograではオンラインでの配信が行われていましたが、当然オフラインのイベントが大多数で「DJのパフォーマンスを家で見る」のが日常ではなかったんです。「Music Unity 2020」がその流れを大きく変えたんだと思います。
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大宮:
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生配信をきっかけに、リアルの現場にも行くようになり、またそこで別のジャンルを知って、生配信を探していき…って感じで、ズブズブとハマっていくようになるんだと思います。
初心者がVクラを楽しむためのコツとは?
――この記事を読んでいる読者の方々の中には、「Vクラ気になるけど、どう楽しめばいいのか分からない」「ちょっと敷居が高いかも」という方も少なくないかと。そういった初心者の方は、現場でどのように楽しめばよいのでしょうか?
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大宮:
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とりあえず、自分の好きな曲が流れたら盛り上がる!
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夏灯:
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まずはそれが一番ですね。
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大崎:
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あらかじめ予習しておくと楽しいと思います。YouTubeにあるVTuberの音楽リストをひたすら聴いておくと、それが現場で流れたときに嬉しいんですよ。
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夏灯:
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出演している DJ の雰囲気が知りたいなら、その人がネットで公開しているMix Cloudを聴いてみるのもおすすめです。その人がどんな感じの曲を得意としているのか分かってくるので、好みのDJを見つけて、それ目当てで行くというのもアリですね。
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大崎:
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先程話した通り、DJの生配信も増えているので予習もしやすいです。
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大宮:
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そもそも、VクラのDJ はVtuberオタクなので「誰が推しなんだろう」と調べてみれば、どんな曲が流れるかの検討もつけやすいでしょう。
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大崎:
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もし、自分がどうしても聴きたい曲があれば、 DJ に直接リクエストすれば、応えてくれると思います。
――初心者が曲をリクエストしてもOKなんですね。
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夏灯:
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DJの中には事前にリクエストを受け付けている人も多いですよ。
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大崎:
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こちら側からすると、全然分からない曲ばかりかけてお客さんを減らしてしまうよりは、リクエストに応えてお客さんを増やしたいっていう気持ちです。
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夏灯:
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もし、ぶぎぼが好きだったら、今ならどのクラブでも流れていると思います(笑)。
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大宮:
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もし「この曲知らないな」ってときは「Shazam」を使うのがおすすめです。スマホに今流れている曲を認識して、タイトルとアーティスト名を教えてくれます。
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大崎:
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クラブでこれを使っている人かなり多いですね。「今、自分が盛り上がった曲ってなんだろう」って思ったら、「Shazam」で調べてメモってます。何もメモらずに覚えようと思っても、酒を飲んでいるから覚えてないんですよ(笑)。DJはお酒で潰れていても本能的に「Shazam」でメモる!
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大宮:
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たしかに! 検索した曲を勝手にプレイリストに入れてくれる機能もあるので、そういう意味でも便利ですね。
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大崎:
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それから「Vクラ」は、信頼できるVTuberオタクDJが選曲したものを流しているので、自分でわざわざ探さなくても神曲と出会えるのが魅力です。DJが厳選した40分の曲は、その人が「良い曲だ」と思って選んだわけなので、デカイ収穫はあると思います。
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夏灯:
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編集部さん、「Shazam」のリンクは記事にぜひ貼ってください(笑)!
Vクラの文化はどこまで拡大していくのか?
――最近では、にじさんじライバーの鷹宮リオンさんやミライアカリさん、電音部のメンバーなど、バーチャルの側にいる方々もDJイベントを積極的に行っています。DJの立場からは、その活躍ぶりをどう感じていますか?
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大崎:
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にじさんじのファンの方々の中には、クラブ文化にそもそも触れたことがないって人がとても多かった印象なんですけど、鷹宮リオンさんがはじめてくれたことで、「推しがやっているなら見に行こう!」と思った人は増えるんじゃないかと思います。これをきっかけにクラブにハマって、現場の客層が拡大してくれると良いですね。
――鷹宮さんのDJパフォーマンスは、大物DJの方々も視聴している様子でした。
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夏灯:
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ぶぎぼが現場で流行したのも大きいかもしれませんね。DJ側もVTuberをディグって、沼にハマった人が多いんじゃないかなと思います。
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大宮:
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それこそ「電音部」は、Vクラ文化をさらに躍進させるきっかけになるんじゃないかと常々思っていますね。Twitterを見てみると、彼女たちもめちゃくちゃ(DJを)練習している気配があるので。どんな曲が披露されるのかも気になります。
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夏灯:
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ワイは自分がVTuberなんですが(笑)、「自分の推しが出るから」を理由に現場にドンドン参加してきてほしいですね。クラブの魅力ってどうしても直接来てくださらないと伝わらないものなので。考えてみれば、VTuber文化だって「実際に視聴してみないと、その魅力が分からない」っていうタイプのものですよね。そういう意味では、VTuberとクラブ文化って非常に似ているところがあると思います。
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大宮:
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そういえば先日「VIRTUALIZE REALIZE」で、式部めぐりさんがDJに挑戦されていましたね。彼女が選曲することで「式部さんはこんな感じの曲が好きなんだ」と気付けるのは視聴者側としても親近感がより湧きますよね。「推しVTuberの推し曲を知れる嬉しさ」もDJの魅力としてあるんじゃないかと思います。
――これまでのお話を聴いていると「VTuberを推すファン文化」と「DJの推し曲を流す文化」はとても共通点が多いように感じます。
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夏灯:
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まさにそのイメージですね。「俺の推し曲を聴け!」って感じ。
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大宮:
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自分の好きなものを相手に布教したいってところは共通していると思います。
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大崎:
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そういう意味では、VクラはVTuberオタクの布教会です。DJは「これでハマってくれ!」って祈りながらターンテーブルのスイッチを押しているわけです。
――今後、このVクラはどのように成長していくのでしょうか?
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大崎:
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今はちょうどVTuberのDJとしてデビューするチャンスだと思っています。現状のクラブでは、定番曲が固定していないので、何でも自分の好きなものを発表できるんじゃないかと思います。
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大宮:
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最近は地方でもVクライベントは増えている印象ですね。 大阪や福岡、名古屋、広島、仙台でもよく開催されていますし、僕は先日福島のイベントに参加しました。
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夏灯:
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今後は各地方にVクラが増えすぎて、一箇所に人が集まらなくなっていくのではないかと予想しています。これまでは、会場も限られていたので「遠征してでも行こう!」って人たちも多かったのですが、来年後半ごろには、会場が乱立するあまり、一つひとつのクラブでの集客が難しくなってしまうのではないかと。
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大宮:
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逆に、それぞれの会場が、地方に根付いていくっていう方向性もありますね。
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大崎:
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絶対に47都道府県全部制覇する人が出てくると思います(笑)
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夏灯:
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たしかにマジで全国回っている人たちっていますよね。
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大崎:
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もし乱立したら、ブイクラ天下統一っていうイベントを開けばいいですよ!
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大宮:
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本当にやってほしいですよね。
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大崎:
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どうせ二年後には実現しています(笑)。
DJたちの選ぶ2021年の注目VTuberは?
――そろそろ座談会も終わりの時間が迫ってきました。ここで皆さんが2021年に注目しているVTuberについてお聞きしたいです。
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大崎:
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僕と夏灯さんは事前に打ち合わせしたら名前が被っていることが分かったので、「せーのっ」で発表しますか。せーのっ…。
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大崎&夏灯:
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「カクレゴ!」
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大宮:
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「てれかすちゃん!」
――大宮さんだけ違いましたね。
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大宮:
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僕はVRChatで活躍している方なんですけど、てれかすちゃんっていう…。
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大崎:
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分かる!!!!!(マイク音割れ)
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大宮:
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VRChatでの楽しみ方やインターネットでの人付き合いとか、そういうのをテーマに歌を歌ってらっしゃる方で、自分の現状とすごく近いので、共感というか、友達が歌っているという気持ちで聴けますね。
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大崎:
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「ふんわりDiscord」って曲があって、あれはくらっちゃった。
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大宮:
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僕は「ポピ横の狂人」も好きですね。VRChatに「ポピー横丁」っていうワールドがあるんですが、そこでみんなが夜まで遊んでいる様子を曲にしているんです。
――大崎さんと夏灯さんは「カクレゴ」でしたね。
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夏灯:
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圧倒的です。近いうちVTuberのロックサウンドが流行ると思うので、そういう意味でも大注目です。
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夏灯:
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パワフルでロックといえば同時期にデビューした拠鳥きまゆという声量お化けもおススメなので、よろしくお願いします!!!
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大宮:
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それから「AMOKA」も間違いない実力を感じていますね。
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夏灯:
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絶対流行るよ!
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大崎:
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流行んなければ、流行らせます!
――ありがとうございました。最後に皆さんの2021年の目標をお願いします。
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大宮:
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自分はこれまでオンライン配信や出演者のみ参加の会場でしか、DJを披露したことがなかったので、リアルのお客さんが入っているところでプレイしてみたいですね。大崎さんも多分、僕と同じなんじゃないかと。
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大崎:
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そうですね。 僕もオンライン配信でしか披露したことなかったので、東京のイベントに出たいです。もちろん地元もいいんですけど、より多くの人の目に入る場所で披露していきたいです。「東京に出る」ってことへの憧れがあります。
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夏灯:
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オンラインで活躍していたDJたちがリアルの現場でどう成長してくのか楽しみですね。おふたりのレポ待ってますよ。ワイは今「ぶいっと」のコンピレーションアルバムのクラウドファンディングを実施しているのですが、本当にすべての曲が”強い”ので、来年はクラブで流れまくってほしいです。全部がアンセム(※代表曲)になると思うので、ご期待ください!
――ありがとうございました。