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メタバース 2022.04.25

髪が揺れる! アバターに触れられる!VRChat新機能「Avatar Dynamics」を試してみた

ソーシャルVR「VRChat」に、大規模アップデート「Avatar Dynamics」がリリースされました。アバターの「揺れもの」を効率的に表現するのみならず、お互いに「触れる」ことも可能にする、VRChatユーザー待望の新機能です。

本記事では、「Avatar Dynamics」とはどのような機能なのかを紹介しつつ、実際どのようなことができるのか、体験するにはどうすればいいのかといった情報をまとめてお伝えします。

「Avatar Dynamics」とは?

「Avatar Dynamics」とは、アバターの表現能力を大幅にアップデートする新機能群です。2021年4月に概要が発表された後、2022年3月にベータ版にて提供開始。そして4月21日をもって正式リリースとなりました。主な機能として以下のようなものがあります。

PhysBones

「PhysBones」は、「VRChat」オリジナルの「揺れもの」を表現するための仕組みです。これまでのVRChatでは、「揺れもの」をアバターに組み込むには、Unityの有料アセットの一つ「Dynamic Bone」の導入が必要でした。「PhysBones」は無料で提供され、「Dynamic Bone」に置き換わる形で「揺れもの」を表現します。

最大の特徴は、「PhysBones」が設定された箇所にユーザーが「触れる」ことができるという点です。髪やケモミミ、さらにはしっぽや羽などに、自分のみならず他のユーザーも触れることができ、より一段深いコミュニケーションや表現が可能になります。

また、これまでMeta Quest版では仕様上見られなかった「揺れもの」も、「PhysBones」が設定されていれば視認できます。パフォーマンスも、「Dynamic Bone」と比較して約12〜20倍の改善が行われているとのことです。

Avatar Contacts

「Avatar Contacts」は、新しいアバターギミックのための仕組みです。アバターの特定箇所への接触などを検知して、様々なインタラクションを発生させることが可能です。例えば「背中をボタンを押すと爆発する」といったギミックを作ることができます。

従来よりもさらに幅広いアバターギミックを実現可能となるため、OSC入力を反映させる「Avatar OSC」と並び注目されている新仕様です。

上記のほか、アバターへの接触判定などを制御する「パーミッションシステム」や、「Dynamic Bone」の「PhysBones」への自動変換機能などが提供されています。なお、VRChat運営チームによれば、将来的には「Dynamic Bone」のサポートは廃止され、「PhysBones」へ移行されるとのことです。

具体的にはこんなことができる?

百聞は一見にしかず。「ポンデロニウム研究所」のオリジナル3Dモデル「桔梗」で試してみましょう。(※筆者がアップロードする際に「Dynamic Bone」から「PhysBones」へ自動変換を行った上での検証となります)

まず、「PhysBones」が設定されていれば、髪をこのように持ち上げられます。髪そのものに接触判定が生まれるため、「手で髪をかきあげる」といった所作をとることもできます。

また、動かした状態でトリガーボタンを押すと、状態を固定することも可能です。写真の桔梗ちゃんは「すさまじい寝癖」のようになってしまいましたが、前髪などに「PhysBones」を仕込めば、気分に応じて前髪をアレンジもできそうです。


衣服にも「PhysBones」は有効です。スカートであれば、実際に手でつかんで動かすこともできます。うまく設定すればカーテシーのような動きもできちゃいます。



(画像はVRChat公式記事より引用)

上記のような「触って動かす」といったことが、自分だけでなく、他人からも行えるようになるのが大きな特徴です。ただし、特定の人にしか触らせたくないという人に向けて、パーミッション設定を付与することもできます。

クイックメニューのトップには接触判定などを一律ON/OFFにできるボタンが設けられており、設定タブ(歯車マーク)には「Avatar Interactions」が追加され、「誰にも触らせない」「フレンドだけOK」といった細かな制御を設定可能です。

どうすれば体験できる?

「Avatar Dynamics」の中でも、特に「PhysBones」を体験するには、設定済みのアバターを用いるのが手っ取り早いです。一例として、4月22日にツクルノモリから発売されたオリジナルアバター「エルフィ」は、発売時点で「PhysBones」がデフォルト設定されており、アップロードするだけで「PhysBones」を用いて遊べます。

一方で、本記事執筆時点では、多くの市販アバターはまだ「Dynamic Bone」からの移行を完了していないのが実情です。そうした場合に備えて、「VRChat」内で「Dynamic Bone」からの自動変換も行ってくれますが、アバターアップロード時に「Dynamic Bone」を「PhysBones」に変換も可能です。

最新のAvatar SDK(2022.04.21.03.29)では、「Dynamic Bone」が導入されている場合、アバターアップロード時に自動変換をするかどうかを確認するメッセージが表示されるようになります(画像赤枠部分)。

「Auto Fix」ボタンをクリックすると、「プロジェクトはバックアップ済みか」を確認するダイアログが表示されます。問題なければ「Proceed」をクリックしましょう。


変換が完了すると、アバターの対応する箇所のInspectorに「VRC Phys Bone (Script)」が追加されているはずです。ここからさらに、個別に「Allow Grabbing(掴めるようにするか否か)」などを設定可能です。

なお「Dynamic Bone」と「PhysBones」の仕様の違いから、自動変換機能は完全な変換を保証するものではない点には留意するべきでしょう。


「いますぐに体験したい!」という人は、VRChat公式ワールド「Avatar Dynamics Hub」に行ってみましょう! 様々なギミックが設定されたアバターが設置されており、「Avatar Dynamics」のすごさを手っ取り早く体験できます。

「Avatar Dynamics Hub」へのアクセスはこちら(Meta Quest 2、またはPC接続型VRヘッドセット、高スペックPCが必要です)。
https://vrch.at/ee5evdyb

VRChatのコミュニケーションがより楽しくなる!ただし節度は守りましょう

これまでにないアバター表現も期待される「Avatar Dynamics」ですが、なにより最大の恩恵は「お互いに触れられる」ということ。「NeosVR」のような一部のソーシャルVRでしか実現できなかった、相手に触れている/触れられているような感覚を体験でき、より深いVRコミュニケーションを楽しめます。

しかし「親しい仲にも礼儀あり」。無闇やたらに触られると嫌がる人もいるはずです。また、触る箇所によってはセクハラにもなり得ます。自衛のためのパーミッション設定こそあるものの、不用意なおさわりはトラブルにつながることもあるため、現実世界と同じように、相手に「触れる」際はある程度慎重になるのがベターでしょう。

筆者も「PhysBones」を用いた「おさわり」はある程度体験してみましたが、本当に「触れられている」と錯覚するような体験は、VRの真骨頂ともいえる魅力を感じました。多少下準備は必要となりますが、「VRで互いに触れ合える」世界をぜひ体験してみてください!

(参考)VRChat公式


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