東京大学の研究チームが、バーチャル空間で実在しない猫と触れ合う際、空中超音波触覚フィードバックを用いると、リラクゼーション効果が高まるとする研究を発表しました。同研究は2026年4月13日〜17日にスペイン・バルセロナで開催された国際会議「CHI 2026」で発表されています。執筆者は、細井十郎氏・伴ゆき氏・割沢真一氏の3名です。
空中超音波触覚フィードバックとは、超音波を空中で集束させることで、装置を身につけることなく手や指に触覚を伝える技術です。本研究では、猫の呼吸リズムと毛並みを撫でる感触をこの技術で再現しました。
実験には22名が参加しました。参加者はバーチャル空間でバーチャルの猫と3分間触れ合うセッションを、「触覚なし」「コントローラーによる振動触覚」「空中超音波触覚」の3条件でそれぞれ体験します。各セッションの前には作業記憶に負荷をかける認知課題を行い、意図的にストレス状態を作り出しました。
生理指標の測定では、空中超音波触覚の条件においてのみ、セッション前後で心拍数の有意な低下が確認されました(p=0.010、Cohen’s d=0.72)。触覚なし・コントローラー振動の両条件では、有意な変化は見られませんでした。
主観評価でも、リアリティ・愛着・共感・エージェンシー・楽しさの5項目すべてで、空中超音波条件が触覚なし条件を上回りました。実験後のアンケートでは、参加者の72.7%が空中超音波による体験を最も好んだと回答。好んだ理由として「触覚を感じられた」「コントローラーを持たずに指を自由に動かせた」「体験がユニークで面白かった」などが挙がっています。
研究チームは、3分間という短い介入でも生理的なストレス緩和効果が確認された点を、短時間の休憩設計への示唆として位置づけています。一方、実験は短期間のセッションに限られており、実際の使用場面では異なる結果が出る可能性も指摘されています。今後は動物介在療法やウェルビーイング支援への応用に向けた研究の発展が期待されます。
参考
https://programs.sigchi.org/chi/2026/program/content/222309
https://dl.acm.org/doi/epdf/10.1145/3772318.3790818


