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VIVE 2019.01.11

自然な視線追跡が広げるVRの可能性「VIVE Pro Eye」体験レポ

現地時間2019年1月7日、ラスベガスで開催中のCESにて、HTCはPC向けのVRヘッドセットの新型「VIVE Pro Eye」を発表しました。「VIVE Pro Eye」は、プロフェッショナル向けに提供していたPC向けのVIVE Proに視線追跡(アイトラッキング)の機能を搭載したものになります。


(VIVE Pro Eyeを発表するHTCアメリカのゼネラルマネージャー、ダニエル・オブライエン氏)

次世代のVRヘッドセットの鍵となる機能とも言われている視線追跡。その性能はどの程度のものなのか、VRの体験はどの程度変わるのか、発表会の会場では、実機の体験ができたため、そのレポートをお届けします。

次世代のVRの鍵「アイトラッキング」

体験レポートに移る前に「VIVE Pro Eye」の目玉である視線追跡について説明をしておきましょう。アイトラッキングは、眼球の動きや瞬きを認識する機能です。VRヘッドセットでは、レンズの周囲に複数配置されたセンサーで認識します。


(VIVE Pro Eyeの外見はフロントのカメラ部分が水色に縁取られている以外はVIVE Proと同様)

この視線追跡によりVR体験が得られる効能は、操作に使えること、アバターにおいてより自然な人物表現ができること、ユーザーデータが取得できること、体験のバックグラウンドとなる処理負荷を軽減できることなど多岐にわたります。

デモブースでは、これら視線追跡の特長をVRコンテンツでどう活かすのかを示す先行事例を体験できました。

キャリブレーションは比較的カンタン

眼球の大きさや瞳孔の大きななどは個人差があるため、アイトラッキング機能を使うには最初にキャリブレーションを行う必要があります。VIVE Pro Eyeでは、ヘッドセットを装着後に瞳孔間距離をヘッドセット右下のツマミで調整する案内が表示され、指定された円の中に自身の眼球が収まるように調整します。その後、水色の点が4箇所に移動するのでそれを目で追い、10秒ほどで設定が完了しました。

なお、アイトラッキング機能では、“個人差”への対応が一つの技術的なハードルとなります。様々な瞳孔間距離と瞳の大きさに対応しなければならず、誰でも使えるようにするために精度をあげることが重要です。

VIVE Pro Eyeにはアイトラッキングを長らく研究開発し、製品を世に送り出してきた老舗Tobiiの技術が採用されており、アイトラッキングの精度は非常に高いものでした。

ヒートマップを表示、ユーザーの関心が分かる

まず最初に体験したのは、自動車産業向けのセールス・マーケティングツールを開発しているzerolight社のVRコンテンツです。BMWの車をVR内で実寸大で見ながら、レビューしていくというもの。外装、内装などをディテールに至るまで確認できます。

トランクやドアは操作可能。さらに色などのデザイン変更も手元で行うことができます。

VIVE Pro Eyeを使うことで、利用者がどこを見ているのか「見ているもの」のデータ取得が可能となり、ヒートマップの作成が可能になります。その結果、購入検討者がどこに関心を持っているのかが可視化され、より適したセールスを行うことができようになります。

非常に精細に作り込まれた自動車の3DモデルをVRで見るには、大きなグラフィック処理負荷がかかります。VIVE Pro Eyeでは、NVIDIAのGPU、RTXシリーズを使うことで、アイトラッキングを活かし、自分が見ている中心窩だけを高解像度で表示するフォービエイデッド・レンダリングが利用できます。「使っていることが感じられない(=目を動かしても解像度が変化することに気づかない)ほどに自然」に動いていました。

目の挙動でグッと増す「人間らしさ」

VRでコミュニケーションをとる際に使用されている「アバター」は、アイトラッキングによって瞬きや視線の表現が可能になります。瞬きや視線の表現があることで、3Dモデルの顔に人間らしさが生まれます。

これまではアイトラッキングを使わずに、推測によって人間らしい挙動を表現してきましたが、アイトラッキングにより、さらに自然な表現ができるようになりました。

体験できたのは「VIVE Sync」と呼ばれているVRコラボーレションツールでした。デザインはかなりシンプルなアバターですが、目線に魂を感じ、瞬きに人らしさが感じられることで「VR空間に一緒にいる」感覚は強まります。

日本では、VIVE Pro Eyeのアイトラッキングは、VTuberの表現量向上に大きく寄与すると考えられます。すでにVIVEに対応しているVTuberツール「バーチャルキャスト」のエンタープライズ版がVIVE Pro Eyeへの対応を明らかにしており、無料で配信されているコンシューマー版への搭載も発表されています。

本日発表がありましたHTC VIVEの新デバイス「VIVE Pro Eye」にバーチャルキャストエンタープライズ版は対応しております。
※一般配布Consumer版も対応予定https://t.co/k8gPTAq8sk pic.twitter.com/14MKWkXjkx

— VirtualCast@バーチャルキャスト (@virtual_cast) 2019年1月8日

視線で操作、その先にあるのは…

視線を使って、コントローラーを使わずにVRゲームを遊ぶデモは「Major League Baseball VR」という野球のVRゲームでした。「Major League Baseball VR」は、メジャーリーグ公式のVRゲームで、ホームランダービーをする、というシンプルなプレイ内容です。

バットの先端にVIVEトラッカーをつけてプレイするため、手元にコントローラーは持ちません。メニューの選択はすべてアイトラッキングを利用して視線で行います。

アイトラッキングを使わずとも頭を動かすことで擬似的に“視線”を使って操作をするインターフェースは一般的ですが、アイトラッキングはより自然に頭を動かすことなく操作が可能です。

アイトラッキングは、専用のコントローラーを使わずに手に何も持たずにメニューを選んだり、見ている先により正確にボールを投げるといった補助的な用途に使うことができそうです。

VIVE Pro Eyeは2019年1月の状況が続けば、最も手に入れやすいアイトラッキング搭載のVRヘッドセットになると考えられます。その用途は産業向けからVTuberまで様々ですが、まだ黎明期ということもあり、今後さらに多くの効能が発見(発明)される可能性もあります。

VIVE Pro Eyeのアイトラッキングが今後どういった活用をされていくのか、注目したいところです。


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