早稲田大学、東京都市大学、岡山理科大学、工学院大学、TIS株式会社が共同で、バーチャル空間におけるコミュニケーションの研究を実施。この研究では、バーチャル空間が現実世界やビデオ通話よりも自己開示(自分のことを相手に伝える行動)を促す可能性が示されました。
特に、自分自身に似ていない非リアルな外見のアバターを使用した場合、この傾向が顕著になることが明らかになりました。
研究では「リアル」「ビデオ通話」「本人に似たリアルアバター」「似ていない非リアルアバター」の4種類を比較。参加者は、これらの環境で個人的な話題について会話を行い、その際の自己開示の程度が評価されました。
結果、自己開示の程度は使用するコミュニケーション手段によって異なることが分かりました。バーチャル空間、特に非リアルアバター利用時は、現実世界に比べて個人的感情など話しにくい内容の開示が統計的に明確に増加しました。一方、現実世界とビデオ通話との間には、大きな差は確認されませんでした。
また、性別の組み合わせも自己開示に影響することが明らかになりました。どの手段を使った場合でも、女性同士の会話で最も自己開示が促進される傾向がありました。さらに、参加者が自分自身で評価する自己開示(主観的な評価)と、実際の発話内容(客観的な評価)が一致しない場合がありました。
今回の研究結果は、バーチャル空間においては特に意識することなく自己開示が進む可能性を示しています。そのため心理カウンセリングやキャリア支援、ストレス解消、1対1のミーティングなど、感情を素直に表現することが重要な場面への応用が期待されます。バーチャル空間が新しいコミュニケーション手段として、社会的な影響力を持つ可能性があります。
ただし今回の研究は特定の外見(性別など)のアバターを用い、初対面同士の限定的な状況で実施されたため、今後はより詳細にバーチャル空間でのコミュニケーション理解を深めるための研究が進められる予定です。
早稲田大学 人間科学学術院 市野順子教授のコメント
日本では2017年頃に広まり始めた「VRChat」というソーシャルVRサービスに当時アクセスしてみたところ、社交辞令的・表面的な会話が少ない様子や、大人の男性同士が美少女のアバターで仲睦まじく抱っこごっこをする様子を見て、その自由で率直なコミュニケーションに驚きました。「リアルな世界では、この人たちはまずこんなやりとりをしないだろう」と感じたところから、コミュニケーションの場としてのバーチャル空間に関心を持つようになりました。
今後、倫理的な問題が生じる可能性がありますが、バーチャル空間はうまく活用すれば、理想的な社会(ユートピア)を実現できるのではないかと期待しています。そのためには、多くの知見を積み重ねていく必要があります。
TIS株式会社 井出 将弘 セクションチーフのコメント
働き方の多様化が進む現代において、企業における円滑なコミュニケーションの実現は、重要な課題の一つとなっています。こうした背景を踏まえ、本研究はバーチャル空間が企業にとって実用的なコミュニケーション手段になり得ることを明らかにしました。TISはVR技術を基盤とする実験システムを構築し、主に技術的な側面から知見の創出に貢献しました。今後は、産学連携で得た成果をサービス開発などに活用していきます。
参考
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001798.000011650.html
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0144929X.2025.2507690
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