VRコンテンツの制作に関するノウハウ書は、比較的技術書が多くUnityやUnreal Engine 4の使い方を中心に記したものが発行されています。
2018年9月に発売された「バーチャルリアリティ映画制作ーハリウッドの実践テクニックとベストプラクティス」は、360度映像の制作ノウハウを中心にストーリーテリングなどいわゆるシネマティックVRの制作手法について書かれた書籍です。
著者である、Celine Tricart氏はハリウッドの映画製作者です。サンダンス映画祭で数々の賞を受賞したLucid Dreams Productionを創設し、「スターリングラード」や「トランスフォーマー/ロストエイジ」などの作品に携わり、直近ではVR作品の制作を手がけています。
本書は、いわゆる実写の360度作品の制作を中心にシネマティックVRの制作に関する要素がくまなく網羅されています。カメラのラインナップと選定から、編集方法、視聴環境であるVRヘッドセットの種類、プリビズや本番環境の構築など。他の技法書と異なるのは「映像作品を制作する」という目線で書かれているということ。
特に興味深いのは第5章「新たな芸術表現としてのVR」と第6章「ストーリーテリングのツールとしてのVR」です。
第5章では、演劇や彫刻、ゲーム、映画など既存のアートと比べてVRにどういった共通点や応用が可能なのかを考察しています。アートの側面からVR作品制作のノウハウが書かれています。
第6章では360度自由に見ることができるがゆえにストーリーを描くことが難しいとされているVRにおけるストーリーテリングの手法が、数々の名作からベストプラクティスが紹介されています。
また、随所にFelix & Paul StudiosやWevrなど著名なVR制作者のコメントがコラムのように挟まれています。
「バーチャルリアリティ映画制作ーハリウッドの実践テクニックとベストプラクティス」の目次は以下の通り。定価5,000円(税抜)でAmazon等で販売中です。
Part 1 理論とテクノロジーの基礎
Chapter 1 VRの歴史
Chapter 2 実写VR撮影とポストプロダクション
Chapter 3 ゲームエンジンとインタラクティブVR
Chapter 4 VRヘッドセットとヒューマンインターフェース
Part 2 バーチャルリアリティによるストーリーテリング
Chapter 5 新たな技術表現としてのVR
Chapter 6 ストーリーテリングのツールとしてのVR
Chapter 7 VR映画制作のワークフロー