DXを推進する企業は、今や多数派となりました。日本能率協会の2022年調査によれば、DXに取り組む企業は55.9%と半数を超え、大企業では8割以上といいます。
XR、メタバース、AI、ロボティクスをはじめとする技術の導入も盛んに聞かれます。しかし、時代に応じた新規事業の立ち上げに苦しむ企業は多く、人材強化や組織開発も後手に回りがちです。そこで、専門技術の得意領域を持ち、外部パートナーとして携わる開発会社が頼りになります。
スマートフォンアプリ、XRアプリ、TV系アプリの開発を中心に、企画から保守運用までを担うアップフロンティアは、まさにその一社です。特徴的なのは、XR領域への注力だけでなく、技術分科会でのR&D;(研究開発)や、社外への情報発信にも力を入れていること。
XR業界で働く人に「新しいもの好き」は珍しくありませんが、個々のエンジニアの興味関心に留まっているケースも少なくありません。しかし、アップフロンティアはそのマインドを企業カルチャーとして根付かせ、社内で蓄積したナレッジを具体的なプロダクトにもつなげていると言います。
XRアプリ開発の現場と、それを支える社内の活動について、代表取締役社長の横山隆之さん、チーフエンジニアの名倉丈治さん、エンジニアの鬼村遼太郎さんにお聞きしました。
ITベンチャー、ゲーム、アプリ、そしてXRへ。いつも未来へ近づこうとしてきた
──みなさんの経歴と現在の仕事について教えてください。
横山:2000年頃、勤務していた大手銀行でIT系のベンチャー企業を支援する組織の立ち上げに参画しました。エンジニア経験は全くなかったんですが、もともとのSF好きも高じて、サービスやテクノロジーはすごく好きで。
そこから約5年間、支援活動やアナリストのような動きをしているうちに、業界内外でのネットワークが広がり、良い仲間とも出会えたので会社を立ち上げることにしました。以前から自分でも会社をやりたいな、という思いもあって。2005年にアップフロンティアを創業しました。
名倉:アップフロンティアに入社する前は、主にゲーム業界で働いていました。ゲームボーイアドバンスなどのポータブルゲーム機や、ガラケー(フィーチャーフォン)向けのゲーム開発に携わってきました。 その後、iPhoneやAndroidの登場にともなってガラケー向けゲームや事業は縮小されていき、「これを機会に、それこそスマートフォンで何かやりたいな」と考え、2010年にアップフロンティアへ転職しました。
今は、XR部門を見るチーフエンジニアです。もともとは専門外でしたが、Oculus Rift DK1(※)を2013年夏に購入したとき、せっかくだし触ってみようかなと。そのころ社内で話題になっていたUnity4も通常業務の間で触っていたので、どちらもズルズルとハマってしまって、今に至る感じですね。
(※)Oculus Rift DK1:Facebook(現Meta)が買収する前のOculus社が最初に出荷したVRヘッドセットの初代開発機。当時弱冠20歳のパルマーラッキーが考案し、2012年にクラウドファンディングで240万ドル以上を集めた。VRヘッドセット普及へと繋がる発端となった。
鬼村:エンジニアとしては遅咲きだと思うのですが、28歳で専門学校へ通ってプログラミングを学び、30歳でゲーム会社に就職しました。ARやVRを扱っている部門にたまたま配属され、そこでOculus Rift cv1を初めて触って、「未来がきた!」と思いましたね。
横山さんと同じく、僕もSFが好きなのですが、『マイノリティ・リポート』のような時代の到来を感じたんです。今、その真っ只中にいるので、日々すごくワクワクしていますね。
もっと「未来のことを仕事にしたい」と転職を考え、アップフロンティアがXR案件に携わっていることを知り、2021年に入社しました。早速、現在も続いている清水建設さまとの『豊洲場外マルシェ用 ARガイドデモアプリ』(以下、豊洲場外マルシェARガイド)の制作チームに加わり、クライアントと議論を重ねながら開発を進めています。いろいろ任せていただいて、楽しくやれています。
日本未発売のガジェットを現場で導入。最新機種に触れる環境が活きた
──事例として挙げていただいた『豊洲場外マルシェARガイド』のプロジェクトとは、具体的にどういったものなのでしょうか?
【スマートシティ構想×Magic Leap 2】豊洲場外マルシェ ガイドアプリ
横山:清水建設さんからの「ユーザーに未来を感じさせるようなアプリを作れないか」といったご相談から始まりました。その一つとして、豊洲市場駅前の巨大なビルで、月に1回のマルシェが開かれているのですが、店舗情報をはじめとしたさまざまな情報をARの形で面白く出せないか、と。
去年の3月にAR/MRグラスNrealLightをベースとしたARアプリをリリースして、現在のフェーズ2では別のARデバイスであるMagic Leap 2を採用してバージョンアップさせていきました。
──プロジェクトの進め方について詳しくお聞きしたいです。
横山:こちらからクライアントへ様々にご提案しつつ、共に考えながら進めています。ご相談の時点では要件が定まりきっていない方が、逆に嬉しいくらいです(笑)。アップフロンティアとしても「やりたいこと」がいっぱいありますからね。
今回のプロジェクトでは、VPS(※)もデバイスもいろいろとあるなかで「何を使うと、どこまで実現可能か」を調査する段階からお手伝いしました。2ヶ月ほどで調査内容をまとめたうえで、デバイスの選定をしたとき候補に挙がったのがMagic Leap 2でした。
(※)Visual Positioning Service/System。ユーザーのカメラから送られた画像を用いて、利用者の現在地と向きを精確に測定するシステム。
当時、Magic Leap 2は日本未発売でしたが、開発元であるMagic Leap Japanさまと交流があり、連携がとれたおかげで、特別に導入できたんです。アップフロンティアでは新しいデバイスや必要なソフトウェアは積極的に社用で購入し、試用してみることが文化の一つになっています。Magic Leap 2も優れたデバイスだと思っていたので、実現できてよかったなと。
(Magic Leap 2の着用イメージ(提供:アップフロンティア))
──Magic Leap 2を採用した決め手は?
横山:このアプリは最初にVPSで自己位置を認識して、その後、歩きながら周りのさまざまな対象物の位置も認識していくのですが、今のVPSの技術だと位置が結構ずれてしまうんですよね。でも、Magic Leap 2だと条件にもよりますが、スマートフォンやNrealLightよりも高精度で反映されます。
あとは、輝度が非常に明るいのと、さらに映像を際立たせるために背景を暗くする「Dimming(調光)」機能がついていました。この機能もすごく良いんですよね。
──『豊洲場外マルシェARガイド』の開発体制について教えてください。
横山:プログラマーは鬼村のみです。テクニカルディレクターとして名倉が一部入っていましたが、メインは鬼村が一人で書いていますね。
鬼村:入社後1ヶ月間は研修をして、その後に別の案件を担当してからですが、入社3ヶ月後くらいからスタートしていました。
──プログラマーが一人となると責任が重い気もしますが、入社直後でも任せることはよくあるのでしょうか?
横山:ケースとしてはあまりないのですが、実力があれば任せない手はないじゃないですか。とはいえ、そこは名倉に口酸っぱく「大丈夫なの?」とは聞いていて。
名倉:研修の頃から、鬼村には安心して任せられる片鱗を感じていましたからね。本来であれば3ヶ月ほど研修するんですけど、約1ヶ月で終えて、案件に直接携わってもらったという感じです。
鬼村もそうですが、受動的ではなく、能動的に動いてくれる方は頼もしいものです。そういう方は、情報をすべて伝えずとも、1から3くらい説明しただけで、いろいろ汲み取って行動してくれます。すぐ実際の案件に入ってもらって、活躍してもらった方が会社のためだなと。
現地型AR開発は「アウトドア系エンジニア」が活躍する
(『豊洲場外マルシェ用 ARガイドデモアプリ』の表示イメージ(提供:アップフロンティア))
──開発においての苦労もあったかと思います。
鬼村:自己位置推定の認識精度は、「どれくらいの広さなら耐えうるのか」が現地で実際に歩いてみないとわからないんです。
──広さが耐えうるかどうか……というのは?
鬼村:室内はある程度閉じられた空間で変動が少ないので、自分の位置をデバイスが把握しやすい。一方、屋外となると、場所によっては人が行き交うので、風景が一定ではない場合もあります。実際に現地で動かしてみて、周囲の明るさや景観の具合によってどんな影響が生じるのかを検証しなくてはならず、現地を見ないとわからないことばかりですね。
ちょうどコロナ禍で入社後にリモートワークになったせいもあって、僕はこれまでオフィスに出社した回数より、調整で豊洲市場へ行った方が多いです(笑)。
名倉:「アウトドア系エンジニア」みたいなんです、本当に(笑)。フィールドワークをしながら、プログラミングをする感じですね。
──現地型ARを開発するにあたって、アップフロンティアならではの強みについてお聞きしたいです。
鬼村:豊洲市場の案件は、当初はNrealLightで開発していたのですが、現場でクライアントへ簡易デモを見せるためにスマートフォンやタブレットに入れたい、という声が上がりました。
異なるプラットフォームへどう移植しようか、となったんですが、弊社が開発した現地型ARに特化した内製ツールの「CFA(シーファ)」を使ったら、あっさり移植できたんです。CFAがあったからこそのスピード感だったなと思います。
横山:スマートフォン、NrealLight、Magic Leap 2など、いろんなデバイスでトライ&エラーを続けているので、社内にノウハウがたまっています。VPSはImmersalをメインにしているものの、Nianticさまにお声がけをいただき、「Lightship VPS」プライベートβテストに参加し、フィードバックしたこともあります。
VPSやARデバイスに関するさまざまな知見の蓄積によって、「何があれば、何ができるのか」をすぐ応答できるのが強みだと思います。そもそも現地型ARをやるためにはVPSとデバイスの選定がポイントになりますが、一通り把握できています。エンジニアにとっては世の中に出る前の最新のデバイスに触れられて、開発に生かせるというのも、強みのひとつかもしれませんね。
「あの世界」が現実になる日が来る
──横山さんに伺います。新規事業として新しいテック領域へ挑むに当たって、スタートアップ投資・起業などとも別種の経営判断が求められるように思います。XR領域への参入を決めたのはいつ、どういった理由からなのでしょうか?
横山:早川書房や東京創元社から新刊が出れば基本的には全部読んできたくらい、SFが好きなんです。Oculus Rift DK1が2013年の夏に出たときに輸入して、被った瞬間にもう、「あのタイトルの、あの世界がこれで…!」と未来が訪れたと確信しましたね。これをビジネスとして成立させるために、2014年の1月に、アップフロンティアで「とりあえず立ち上げよう」とVRの部門をスタートさせました。
スマートフォンアプリの次は、ARグラスのアプリ、いわゆる『電脳コイル』の世界になるだろうと予測して、今は事業投資をしているところです。重要性を感じつつも、ある程度は経営的に慎重に進めるスタンスです。
残念ながらXRの市場自体は、キラーデバイスやプラットフォームが出揃わないと、おそらく5年から10年はまだそれほど変わらないだろうと踏んでいます。それまでは耐えられる体制を取りつつ、「いざ勝負の時」と思える日までは先行投資をしていこうという感じですかね。
──アップフロンティアにおけるXR事業の規模について教えてください。
横山:売り上げ規模で言うと、今期は全体の5%から10%くらいを占めるまでになりそうです。ARの市場が、やっと少しだけ始まったかなと感じますね。
ARグラスが、ある程度スマホの代替になってきた世界では、街を歩きながらいろんな情報が付加されていくのを楽しむような使い方がメインになるでしょう。うちはそこをめがけて、特化している感じです。珍しさもあり、知名度が上がってきたので、企業からご相談いただける案件も増えてきました。しかも、単発で終わらず、継続的に一緒になって考えていくものが多いです。
受託開発ならではの魅力や、エンジニアの醍醐味もある
──自社開発、受託開発の両輪を回していらっしゃいますが、それぞれのメリットや違いはどこにあるのでしょうか?
横山:大きく違うのは、受託開発だと常に新しいことに、いろいろと触れられて飽きがこないところでしょう。あとは、自社では収益モデルが無いと成立しないようなことも、受託開発だと案件として開発を進められます。
──経営としても、XR市場の成長段階においても必要なことですね。
横山:絶対に必要だと思います。自社でARの実証実験をずっとしていたら多分続かないので、ニーズがあるところと一緒に開発ができるのはすごく良いことです。先進的で挑戦的な試みもどんどん提案できる。エンジニアにとっても受託開発の醍醐味ではないかという気がします。
──鬼村さん、名倉さんはどう感じていらっしゃいますか?
鬼村:社内から出てきた「やりたい」という意見に、実現可能性を考えると止まってしまうことがあるんです。けれど、クライアントから「どうしてもやりたい」と要望されたら、いかに実現するかにだけフォーカスできます。
名倉:身内だけで話すと、アイデアの発想から着地までが想像しやすい弊害もあって。ただ、受託開発は別業界の人と一緒になるので、自分たちでは思いもつかないようなアイデアが出てきたり、今までの固定観念を覆すような新鮮な意見を得られたりもします。未知のアプリを作っていくようで面白いと思いますね。
──積極的な意見交換を通じて、新たな開発にチャレンジしていくのですね。
横山:確かに市場やデバイスへの解像度は我々のほうが高いことが多いので、クライアントからも率直な意見を求められます。世の中にまだ正解がないことをやっていくときほど、どんどん意見を言わないといけないですし、「どういうことができるのか」を考えながら提案していくのは楽しいですよ。
「社員全員、研究員」がコンセプト。30の分科会が活動中、就業時間内も研究を進める
──アップフロンティアは社内活動としての技術分科会も盛んだそうですね。公式サイトにも載っている「超技研」とはなんでしょうか?
横山:もともとはXR領域の事業化に対して、やる気や興味のある人の意見を聞きたかったのが始まりでした。そこから、業務としてUnityに触れている人以外も集めて、就業時間内で分科会をやっていこうと。
最初は4つの分科会を立ち上げたのですが、他にもテーマがいろいろ出てきた。そこで、同じテーマで仲間を見つけて、2人以上の体制になれば、申請して「ミニ分科会」として扱うことにしました。ミニ分科会を立ち上げたら、日中のリソースが空いている時間でも研究などが許可されます。
必要なデバイスやソフトの購入制度も導入して、結果として約30のミニ分科会が立ち上がっています。これらの分科会をひっくるめて「超技研」と呼んでいるんです。
(分科会の活動で3Dプリンターに触れると、興味を持った人が集まってきた)
──具体的にどのような活動を?
名倉:活動自体は分科会によってさまざまで、まじめなものもあれば、VRチャットに入って1時間ただ遊んだり、議論という名の雑談が中心だったり。僕は、日常的にTwitterやGoogle Newsとかで好きなものを見て、まずは情報収集。レコメンドされたものも併せて、時間があればスマホで流し読みしながら興味を持ったものを社内の「超技研チャンネル」にペタペタ貼っています。
鬼村:去年はメタバース分科会が一番盛り上がりましたね。
横山:「そもそもメタバースとは何か」をアップフロンティアとして整理しようと立ち上げましたね。
──結果はどうなったのですか?
横山:一応の結論が出ました。私や名倉の中では、やっぱり2Dの画面で展開されるのはちょっと違うよね、と。例えば、『スノウ・クラッシュ』のようなVR空間で、まさに自分がそのキャラクターだと認識できる状態で、第二の人生を生きられる。その空間こそがメタバースであるべきだと。
──プロダクト開発まで実現した分科会もあるそうですね。
(出所:プレスリリース)
横山:AI分科会では、「超受付さん」という来訪者向けの受付システムを開発しました。50型テレビを縦置きして、目の前に立つと人感センサーで察知。来訪者がキャラクターとやりとりすると同時に、内線を鳴らせます。2回目以降は顔認識で来訪者を記録するので、来た瞬間に「〇〇さま、いらっしゃいませ、お繋ぎします」と知っている感じで対応されたら気持ちいいし、スムーズじゃないですか。
鬼村:実は、アップフロンティアに入ろうと決めたのが、「超受付さん」を見て、「こんなこともできる会社なんだ!」とすごく魅力的に感じたからなんです。入社して超技研に参加するようになって、AI分野をはじめ、ありとあらゆる幅を広げられている実感があります。
名倉:確かに、アサインされたプロジェクト以外で技術を学んだり、新しいことを知ったりする機会が会社の中にあるっていうのは新鮮でしたね。
横山:超技研は「社員全員、研究員」みたいなコンセプトでやっていこうと位置づけていて、モチベーションと技術力の向上を目的としています。『豊洲場外マルシェARガイド』で使ったツールのCFAも超技研から生まれたものです。それらの取り組みや成果については、エンジニア向けの自社情報サイト「ギャップロ」とnoteを通じて、積極的に発信しています。
(Segway Drift W1にうまく乗れるようになるための分科会が開かれたことも)
──他の社内での取り組みについてもお聞きしたいです。
横山:月に一回の全体会議では、リリースした案件の紹介や現状の業績を話したりしているのですが、他にも「5分間スピーチ大会」を開催しています。社員2名が、それぞれ興味を持っているテーマについてプレゼン対決をして、投票で選ばれた勝者は賞品がもらえるんです。
──鬼村さん、初めてやってみたときはいかがでしたか?
鬼村:仕事の内容と絡ませてMagic Leap 2の使い方をプレゼンして、勝ちました。XRチームは新しいデバイスを扱えるので、プレゼンも強くなってしまいがちとは思いつつ……(笑)。
横山:反則だよね(笑)。でも、みんなの前で5分間喋るって、結構大変なこと。特にエンジニア陣では苦手な人もいるので、社員同士やクライアントに対して意見を伝えるときを想定したトレーニングも兼ねています。
好奇心とフロンティアスピリットを持ち合わせて
──アップフロンティアにはどういう方が向いていらっしゃると思いますか?
横山:第一に「新しいもの好き」が大前提。向上心があって、能動的に動ける人を求めています。
今って、何かを作ろうとすればネットで検索したり、コードをちょっと引っ張ってきたりできるじゃないですか。でも、新しいものはそれが一切ない状態なので、自分で考えなければいけない。苦しいけれど、それがやる気につながる人には良い環境のはずです。しかも、業務時間内に「超技研」などで学べるわけですから。学ぶのが楽しい人には天国かもしれません(笑)。
鬼村:新しいもの好き、なおかつニュアンスや感覚が合っている人との仕事って、すごくやりやすいかなと思います。たとえば、未来感を表現したいけれど言葉にしにくいことが多いのですが、映画や漫画などの作品を共有できているとイメージも共有しやすい気がします。
名倉:あとは、一度でも構わないので何かを作り上げたことがある方。ビジネスでも、アプリケーションでも対象は問いません。やり遂げた際の体制や、プログラマーなら関わり方はどうだったのか、といった前提条件はあるにせよ、高く評価していますね。
──今後の展望についてお聞かせください。
横山:基本的にはARへ注力していきたいです。スマホアプリの次はARアプリだと見ていますから。加えて、BtoBtoCの受託開発だけではなく、BtoB向けのサービスも検討したいです。たとえば、ARアプリの開発会社が使いたくなるツールやサービスを提供していけたらと。われわれのような開発会社、つまり競合となるような他社向けのサービスは並行してチャレンジしていきたいです。
というのも、まだマーケットが立ち上がってない領域はプレイヤーがいません。Googleなどの巨大なところが参入してくるような領域のサービスだと、食われてしまうばかりなので、異なる領域でいかにサービスが立ち上げられるかどうかが大事ですから。
名倉:うちの事業って、まだまだスマートフォンでの開発がメインで、エンジニアやディレクターを投入している数も多いんです。本格的なコンシューマ向けのARグラスが、これからどんどん広まっていったら、うちのXRチームもそれに合わせて、人が増えていくだろうと。今は、不特定多数のエンドユーザー向けのARアプリを開発できていないので、それを作っていけるような環境を早く整えていきたいですね。
鬼村:扱っているデバイスは高価なものが多く、一般的ではありません。だからこそ、一般の方に体験してもらえるものを、何かしらの形で目指していきたいです。かなり未来の話にはなると思うのですが、気軽にかけられるメガネや、コンタクトレンズ型のARグラスのようなものがあったら、それを使った開発をぜひしたいです。
(インタビュー 統括: 笠井康平(Mogura)/ 企画制作: 森部綾子(インクワイア)/ 編集: 長谷川賢人 / ライター: 森部綾子/ フォトグラファー: 加藤甫)