5月27日~28日。東京スカイツリーにおいて「TSUMIKI COMMUNITY DAY 2025」が開催されました。3DCG、VR、ARといった最新のテクノロジーを活用したソリューションを提供する積木製作が主催した、完全事前予約制のXR B2B ビジネスイベント。積木製作と、パートナー企業がXR技術をどのように活用して課題を解決してきたのか。その成果を見て、体験できる稀有な場となっていました。

現地を取材し、特に興味深かったいくつかのブースをご紹介します。
大掛かりな設備が必要な訓練もVRなら連続トレーニングができる
離発着スケジュールを厳守することが求められる空港という現場において、航空機をエプロンから滑走路まで押して(または引いて)運ぶトーイングカー(写真左下の車両)の運転、旅客者が乗り降りするためのパッセンジャーボーディングブリッジ(搭乗橋)の操作、航空機に付着した雪や氷の除去などにも、高い技量が求められます。
しかし一日の離発着数が1000回を超えるような大規模空港の場合、訓練するための時間、場所、サポートスタッフを確保するのが難しいことから、積木製作とANAが共同でVR訓練シミュレータ「∀TRAS(アトラス)」を開発しました。
いくつかあるトレーニングメニューのうち、筆者はトーイング・プッシュバックの練習を体験。Meta Quest 3をかぶり、ハンドルコントローラを握って操作します。
VR視界のなかにはトーイングカーのハンドル角度を教えてくれるガイドが表示されますが、少しでも多めにハンドルを切ってしまうとコースから外れてしまいテスト中止となります。イメージとしては、トレーラーの後退を極限まで難しくしたものでしょうか。普通自動車の運転ならば何気なくクリアできるS字路であっても、押して運ぶことの難しさを実感します。
ブース解説員の方にお話を伺いました。
「実際の機材で練習するとなると、1回失敗したときに、改めて練習できる状況に戻すまでに時間がかかるんですよ。しかしVRであれば、ボタンを押すだけですぐに初期状態からリスタートできます。この利便性の高さがポイントです。また、トレーニング中の事故のリスクをゼロにする事ができる点や、教育にかける時間を減らす事ができている事も大きなメリットです」
確かに、操作ミスの感覚が身体のなかに残っているうちに、すぐにリトライできるVR教習のメリットが大きいと感じました。
ときどきしか起こらないからこそ事故への対応力をトレーニング
JR東海 × 積木製作共同開発の「JR東海新幹線ホームトレーニング」は、東海道新幹線ホーム上で起こりうる駆け込みや、柵から走行中の車両へ手を伸ばす、ドア挟まりなど、約40もの突発的かつ人的リスクに対応するためのVR訓練シミュレーターです。
頻繁におきることではないが、一度発生すると大事故につながってしまう。通常のホーム監視業務だけでは対応するのが難しい局面が多いことから、様々なケースを安全に再現してトレーニングできるように、VRを活用したそうです。
実際に体験してみると、列車の入線から発車までの一連の手順をリアルに再現してくれるのですが、ホーム、車両、乗客とその動きのすべてがリアルなことに驚きます。遠近感や距離感すらも現実さながらです。実際の駅をレーザースキャン点群+写真測量を行い、ミリ単位で再現したとのこと。VRによるバーチャルツインの追従性の高さが、高い没入感を作り出したのでしょう。
「従来は、実機を再現したモックアップと大型のサイネージを使用したシミュレーターを使用していました。また、サイネージには架空の駅が再現されトレーニングに使用していたため、設備以外の部分でリアリティに欠ける部分もあり、完全に再現された駅で体験することにより、より没入感のある訓練が可能となりました」
トレーニング中どのような人的事故が起きるのかは、事前に講師が設定します。天候や昼夜、可動柵有無の設定も行えます。駅も選択が可能。それぞれの駅に勤める駅員がトレーニングできるように設計されています。
講師がいない自主訓練であっても、トレーニング結果のログをVRビュー・PCビューどちらでも確認できます。
トラブルがランダムに発生するとしても慣れてくる方もいるでしょう。そこで講師が任意のタイミングで異常事態を発生させることも可能ですし、複数のトラブルが同時発生するなど難易度の高い状況も起こせるそうです。
初めての仕事相手に何の話をすればいいのかVRで学ぶ
生成AIによる音声認識技術を取り入れていたのが、オープンアップコンストラクションと積木製作が共同開発した「コミュニケーション教育VR」です。建設などの現場に新人社員が配属されたとき、「あいさつが小さい」「伝え方が曖昧」「相手の話を聞けていない」といった苦情が職人の方々から寄せられており、すでに現場で働いていた方々とのコミュニケーションが大きな課題となっていたそうです。
そこで「コミュニケーション教育VR」はXRヘッドセットで詳細な現場の雰囲気を伝えながら、新人社員が配属初日に直面しやすいシーンを再現。AIで制御されている職人アバターとの会話を練習できる新人研修用のコンテンツとして制作しました。
トレーニング項目は、あいさつや自己紹介、日常会話といった、親しみをもってもらうものから、情報の整理や報連相など、業務に直結するプログラムとなっています。またXRヘッドセットのセンサーを用いて体験者の姿勢もチェックすることで、聞く姿勢やリアクションの有無なども評価の対象としています。
「こちらはAIを活用したコミュニケーション教育コンテンツとなります。回答の良し悪しも、AIにチェックさせています。相手の話の流れを切る行為や、仕事中の話にはそぐわない回答に関しても✕となるように判断させています」
現時点では、体験者の発言をSpeech to Textで認識、正誤判定や対応力をChatGPTで評価させているとのこと。どんな対応がAI職人アバターの不評を買ったのか、VR視界内でフィードバックすることでコミュニケーション術を効率よく学べるようになっています。
1つのミスが事故を呼ぶからこそ事前のVRトレーニングが重要
東北から関西に至るまで、日本各地の建設現場に仮設機材をレンタルし、技術サポートや安全コンサルティングも行っている株式会社杉孝と積木製作が共同開発したのが「可搬式作業台_安全教育VRコンテンツ」です。
株式会社杉孝は、2018年という早い段階からVRを用いた研修コンテンツを開発してきたそうですが、電気・内装業といった設備業者から「高い所にはあまり上がらないので、室内作業向けのVRトレーニングコンテンツが欲しい」という要望があり、新たに設備業者向けのVRコンテンツを開発することになりました。
同コンテンツで筆者が体験したのは、手すりのついた可搬式作業台での落下事故シミュレーション。道具箱は作業台の上に置いてから登ること、そして足元の道具箱を気にかけながら作業するなど、周囲に気を配りながら作業しなければ、可搬式作業台が倒れて落下災害が起きてしまいます。VRであれば、そのシミュレーションを事前に行えるのです。
株式会社杉孝の担当者の方によると、従来の教育コンテンツは、PowerPointのスライドや動画・画像を使った座学形式ものが多かったとのこと。VRで体感できる形にしたことで、より実感を持って危険性や安全対策を学べるようになったといいます。
「VRで、自分自身が危険を体感することで危険度を改めて認識できたという声や、作業台の使い方をあまり知らない新入社員や現場未経験者にも安全対策の重要性が伝わり、協力会社の作業時にも知識を活用できるようになりました」
自分だけは大丈夫だ、と盲信しがちなベテランの作業員にとっても、VR教育コンテンツはルールや安全対策を守らないと災害に遭う可能性が高いことを伝えられるメリットがあります。
積木製作と顧客、パートナー企業が作るB2B事例の価値
B2Bの世界で活躍する最新のXR活用事例を見ることができた「TSUMIKI COMMUNITY DAY 2025」は、どのような目的で実施されたイベントなのでしょうか。積木製作 常務取締役 赤崎信也さんにお話をうかがいました。
「『TSUMIKI COMMUNITY DAY 2025』は、積木製作と、既存のお客様との関係性を強くしていくのが狙いのクローズドイベントです。我々とお客さまだけではなくて、お客さま同士、パートナーさま同士のつながりも強化し、ビジネス全体を大きくしていくことを目的としています。今回はパートナー企業さまのブースもありますが、今、世の中のトレンドにしてもお客さまの要望にしても、AIだったり求められるテクノロジーが多角化していますので、他企業とのコラボレーションというのは非常に大事だと思っています。我々一社ではリーチできないお客さまにもXRの取り組みが届くこともあると思っていますので、こういった「TSUMIKI COMMUNITY DAY 2025」の取り組みがさまざまなご要望に対しての答えのひとつともなっています」
クローズドイベントにも関わらず、初日の14時の時点で会場は満員といえるほどの来場者が集っていました。これも10年以上、B2Bの世界でVRに携わってきた積木製作の信頼の高さからきた強みなのでしょう。










