ラスベガスで開催中のCES2017では世界各国のエレクトロニクス企業が、往来する参加者の目を引き、立ち止まってもらうために様々な工夫を凝らしたブースを出展しています。その中でも一風変わったブースを発見しました。
どこが一風変わっているかというと、ブースを訪れると目に入るこの光景です。
2人の人が1つのゴーグルの両端を覗いています。
実際に何を見ているのか全く分かりませんが、デバイスは一見して新型のVRゴーグルのようでもあります。
2人は何かを話しています。
マッチングアアプリ「Tinder」が見せるリアリティ
このブースは、マッチングアプリ「Tinder」のブースでした。「Tinder」は、プロフィールを見ながら好みの人を判断して左右にスワイプしてお互いが好みだとやりとりができるようになるマッチングアプリです。
本来であれば出会いを提供するマッチングアプリが作ったVRゴーグルでは一体どういう体験ができるのでしょう?
筆者も試しに体験してみました。最初は1人だけだったので他の人が訪れるのを待ち……インド系の男性が現れたところでマッチング、ではなく体験がスタートしました。
ゴーグルは今回の展示のために制作された特製ゴーグルです。両端が覗き込めるようになっています。
装着して正面を見ると、相手がこちらを見ています。レンズで拡大された目がこちらを見ていて見返すことにになります。
間に見えるのはオレンジ色に揺らめく明かりです。
何が起きているのか分からないまま、
「これはなんでしょうね」
「何か始まるのかな」
「何が見えます?」
「あなたの目が見えますよ」
などとぎこちない会話が続いて1,2分が過ぎたところで体験は終了しました。
ゴーグルを外して狐につままれたような感覚に浸っていると担当者が1枚のカードを渡してきました。
そこに書かれているのは「今、体験してもらったのは、人間同士がやりとりをするということです、(Tinderでもっと探してみてください)」
との言葉。
知らない人間同士が出会ってVRを体験するという一連の流れを、VRゴーグルを使って“現実に”再現したようです。
Tinderの公式ブログには、今回の出展についての説明があります。
最近はVRゴーグルの使用がずいぶん当たり前になってきました。Tinderもテクノロジー企業として同じようなものを自社で開発したいと考えましたが、一つ問題がありました。Tinderは現実世界で人と人とのつながりを作り、体験を共有することを使命としています。相反する概念を持つVRとどのようにして並び立つことができるのでしょうか?
そこで「VR」から「V」を取り去ることにしました。
まるでエイプリルフールのような企画ですが、彼らは実際に実装してしまいました。
https://www.youtube.com/watch?v=6HXK90s2mlU
Tinderはマルチユーザー対応のVRゴーグルを開発しました。これなら現実の世界の相手と体験を共有できます。もちろんTinderアプリと同じように始めに双方がオプトインしてから開始となるので安心です。
(中略)現実の世界で誰かとつながる時、Tinderがその架け橋となれることをアピールできたと考えています。これが未来のコミュニケーションスタイル。大切なのは人と人とのつながりです。百聞は一見にしかず。ぜひお試しください。
組み合わせはブースを訪れた順にランダムで決まるため、男女で覗き込んでいる組もありました。
VRにあやかった、現実の関係を生み出すマッチングアプリらしいプロモーションでした。
(参考)