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VRヘッドセット 2025.01.16

衝撃のフィードバックで、もう一段上の没入感を。次世代フルボディハプティクススーツ「TactSuit Air」&「TactSleeve」性能レビュー

VRヘッドセットは、今や4〜8万円台の機種が家電量販店で購入できるようになってきています。トラッキングされた頭と両手を通して得られるVRへの没入感は身近なものになりつつあり、最近では両足も含めたモーショントラッキングデバイスの種類も増え、選択肢は増えています。

さて、ここで、もう一段階上のステージを体験したいと思いませんか?

VRゲームやメタバースを体験をしているときに感じる“衝撃”をコントローラーの振動だけではなく、体で直接受けてみたいと思ったことはありませんか?

今回紹介するのは、それを実現できるデバイス、次世代フルボディハプティクススーツ「TactSuit Air」と「TactSleeve」です。

「TactSuit Air」と「TactSleeve」は自分のボディと両腕に装着するタイプのデバイスです。
VRゲーム中のアクションの衝撃やオーディオの反応を、内蔵されたハプティクスモーターを通してプレイヤーの体に“振動”としてフィードバックします。これにより、VR体験中に攻撃を受けたり、メタバース中に誰かに触られたりといった触覚の反応を感じられるようになっています。

MetaQuestシリーズをはじめ、SteamVR対応のPCVR、PlayStationVRなど、幅広いVRゲームのプラットフォームに対応。対応ゲーム数も約280タイトルあります。

今回は、「TactSuit Air」と「TactSleeve」の着用感と、各VRゲームで使用した際の反応を見ていきたいと思います。

デバイスについて

TactSuit Air

「TactSuit Air」は、ベスト型の触覚スーツです。ゲーム側の演出に合わせてスーツに内蔵されたモーターが反応し、着用している人に振動を送ります。カラーは黒地に赤のラインが入った「Onyx」と、白地に黒のラインが入った「Ash」の2種。価格は、34,860円(税込)。

スーツの前面のチャックを外して着用できるようになっています。サイドにベルトが片側2つずつ付いており、ウエストを調節できます。スーツはフリーサイズになっているため、このベルトで大きさを調節します。ウエストは61 – 127cmで可変です。ベルトは着用した状態でも絞めやすいようになっているため、着た後でもサイズを合わせやすくなっていました。

体にフィットさせることで、よりモーターと接触でき、振動も綺麗に伝わります。VR体験中に大きく動いても本体が揺れることはありません。

重さは1.12kgで、着用していて重さをほとんど感じることがないほど、非常に軽くなっています。Bluetooth接続を使用するデバイスなので、ゲームの邪魔になることもなく、着用感は良いです。ケーブルにつなぐ必要もないため、自由に動き回れます。


(背中の部分に本体があり、電源ボタンを押すと起動します。USB Type-Cの口も本体に付いており、充電はここから行います。)

(スーツの胸から腹にかけて8個、背中に8個、計16個のハプティックモーターが内蔵されており、その部分から振動が伝わってきます。モーターは肩、脇腹には付いていません)

スーツの裏面はメッシュ生地になっています。マジックテープで貼られているため取り外しも可能です。スーツを着てVRゲームをプレイすると汗をかく場面が増えそうで、取り換えや洗濯がしやすいのはとてもメリットに感じます。

TactSleeve

「TactSleeve」は前腕にはめるスリーブ型のハプティック製品です。1つの「TactSleeve」には、ハプティックモーターが3つ搭載されています。「TactSuit Air」と同じくゲーム側の演出に合わせてスーツに内蔵されたモーターが反応し、着用している人に振動を送ります。価格は、27,860円(税込)。

見た目はやや大きく、少々ごつい印象を受けますが、重さを感じることはなく、両腕に付けていても違和感はないです。バンドは幅が広く、しっかり留めれば外れにくくなっています。 裏面は滑り止め防止のテープが貼ってあるクッションになっており、取り外しも可能です。


パッと見て、どちらが右用か左用か分かりにくいですが、電源を入れると緑色のライトが点灯するのが右用、青色のライトが点灯するのが左用になっています。

デバイスとVRヘッドセット/PCの接続について

今回はMetaQuest3との接続と、SteamVR(PC)との接続を行いました。基本的には「TactSuit Air」、「TactSleeve」どちらも接続手順の流れは同じです。

まず、MetaQuest3/PCに「bHapticsPlayer」アプリのインストールを行います。アプリは、MetaQuest3の場合はMetaStoreから、PCの場合は公式サイトから無料でダウンロード/インストールすることができます。

次に、「TactSuit Air」と「TactSleeve」の電源を入れます。接続させたいデバイスのBluetooth接続をオンにして、「TactSuit Air」と「TactSleeve」をデバイスとペアリングさせます。「TactSuit Air」にはBluetooth接続用のドングルが同梱されているため、Bluetooth機能がないPCでも安心です。(USBv3.0が必要)

「bHapticsPlayer」では、デバイスの接続管理やモーターの反応を確認することができます。接続ができたか確認してみましょう。

Quest版の「bHapticsPlayer」では、振動のデモが体験できるコンテンツが用意されており、振動の有無を比較することができます。リュックを背負ったり、缶を開けるといった日常の動作から、銃を撃った時の反動まで様々な動作で振動を体験可能です。

「bHapticsPlayer」には、対応したゲームを検索する機能もあります。bHapticsの様々なデバイスや対応プラットフォームごとに検索して、そのまま該当ゲームの購入ページに遷移することもできます。

画像はPCアプリの「bHapticsPlayer」

メタバース・ゲームで使ってみよう

今回は、SteamVRのメタバース「VRChat」とQuestのガンアクションゲーム「VENDETTA FOREVER」で使用しました。

VRChat

VRChatユーザーには、相手に触れられたときの感覚を得たいと考えたことがある方も多いのではないでしょうか。今回はその望みが叶うか検証したいと思います。

VRChatで使用するには、先述したセットアップとは別にOSCの準備が必要になります。公式から配布されているファイル「bHapticsOSC.exe」を立ち上げ、「bHaptics OSC for VRChat 」を起動。「bHapticsPlayer」との接続を確認します。VRChat側のOSC設定をオンにできたら準備はOKです。振動をデバイス側にフィードバックできる状態になります。
OSCの接続でポートの値が異なっている場合は、「OSC Connection」を一旦「STOP」して、VRChat側に表示された値と同じになっているか確認しましょう。

また、Quest版の場合、OSCは「bHapticsPlayer」の設定項目の一つになっているため、使用する際はオンにしましょう。

アバターにもbHapticsデバイスを使用するための設定が必要です。unityで設定する必要がありますが、手順や調整はとてもシンプルです。Unityのプロジェクト上にアバターデータと「bHaptics」関連のデータ2つをインポートさせます。後は「bHaptics」のコンポーネントをアバターに設定し、VRChatへアップロードすることで使用できる状態になります。

ここまでの準備は、全て公式が用意しているドキュメントに記載があります。英語表記ですが、翻訳ツールを通して読めば簡単な手順が書かれているため、とても分かりやすいです。Unityが使えない方でも、「bHaptics」公式ワールドには「TactSuit Air」の設定がされたアバターが展示されているためそちらでも使用可能です。

https://vrchat.com/home/world/wrld_7b1fed5e-50da-4263-b68a-81344fab1ac7/info

「bHaptics」の設定をしたアバターで実際に他のプレイヤーに触れてもらいました。

スーツの部分に触れられると、モーターがある部分が光り、実際のスーツに備わっているバイブレーションも連動して動きました。基本的には「相手から接触があると、どこの部分を触られているか、ブルブルとした振動で分かる」といった具合です。この感覚自体は新鮮なものでした。うまく活用すれば、例えば「相手から身体を掴まれたような感覚を得る」「後ろから背中をトントンされたことに気づいて振り返る」といった反応が可能になります。ボイスチャットができないユーザーに会うなど音だけで気づけない状況がありますが、このデバイスを着用していれば、それを回避することができるでしょう。今後それが新たなコミュニケーション手段にもなるかもしれません。なお、相手から強く叩かれた場合と優しく触られた場合とで衝撃に強弱はあるのかも試しましたが、バイブレーションの強さに影響はなく、触れた時間でオンオフが切り替わるような感じでした。自分で触れる場合も同様です。また、振動がマッサージ機のような感覚だったので、優しく撫でるといった感覚を得ることは難しそうです。

なお、ワールドに置いてあるオブジェクトには接触判定がないようです。ワールド側でも追加で開発が必要な可能性もありますが、現状は「他のユーザーから触れられた際に反応する」が基本になっていると考えて良いでしょう。

次に「VRC BOXING」ワールドで使用しました。このワールドでは、その名の通り対人戦でボクシングを楽しむことができます。

リングに上がり、いざ試合へ。

相手からのパンチを受けるとその部分に振動が伝わります。ボクシングというシチュエーションとバイブレーションは相性が良く、臨場感と没入感が上がりました。モーターの反応はデフォルトの状態で試しましたが、さらに強めに設定すれば、より臨場感が上がりそうです。両腕で相手の攻撃をガードをすると「TactSleeve」からも刺激が伝わってきます。

コントローラーからの振動がありましたが、それ以上に腕やボディからも刺激がくるのはボクシングとしてはかなり面白い体験となりました。素早くパンチをすると「TactSleeve」が少しずれますが、かなり早く拳を振り抜く必要があるため許容範囲内だと感じます。

結果として、自分や他の人がアバターに触れる体験では、スーツの性能を活かせそうです。ボクシングのようなスポーツ系のイベントで活用すれば、さらに試合が白熱することでしょう。しかし振動は押された速さや強さで、モーターの強弱が変わらない点には留意しましょう。

VENDETTA FOREVER

次に検証したのは、シューティングアクションゲームの「VENDETTA FOREVER」です。このゲームでは、プレイヤーのアクロバティックな動きで敵の銃撃を避けながら華麗な銃裁きを体験できます。「TactSuit Air」の機能をより活かせそうであるという理由で選んでみました。

ゲームでは一対多の場面で撃ち合うことが多く、被弾をした際にスーツやスリーブが反応しました。この反応が(そこまでの衝撃ではないものの)実際に銃撃されたときのような感覚を疑似的に得られ、試合の緊張が増し、よりゲームに熱中できました。武器の中には散弾銃のようなものもあり、それが被弾すると体の広範囲が振動するため、中々に衝撃を感じました。また、VRゲームは後方からの攻撃に気づきにくい場合がありますが、このスーツを使えば、どの方向から敵に撃たれたのかに気づけるといった点もメリットです。

なお、ゲームで使用する際は「TactSuit Air」と「TactSleeve」のどちらも、Meta Quest 3と接続するだけですぐに使用可能になり、OSCも不要です。PCに接続しないタイプのVRゲームであれば気軽に体験しやすいのもポイントと言えるでしょう。

音楽を体感するデバイスとしても使える!

「TactSuit Air」には、音声に反応して振動する「Audio-to-Hapic」機能があります。

例えばYouTubeで音楽を流すと、そのリズムに反応して「TactSuit Air」は振動を送ることができます。音楽のリズムやビートを体で直に感じることができるため、ライブの大音量を受けた時のような感覚だったり、ロックの重低音をダイレクトに感じるといった使い方ができるでしょう。

また「TactSuit Air」に対応していないゲームであっても、、この「Audio-to-Hapic」機能を使えば、疑似的にゲームでの衝撃を感じることもできます。「bHapitacsPlayer」では「Audio-to-Hapic」で聴く音声に合わせたプロファイルが用意されているため、相性の良いものを探してみましょう。

まとめ:アクションゲームやスポーツ系コンテンツでの活用をおすすめ

今回は「TactSuit Air」と「TactSleeve」の2種を試してみました。。セットアップの手順は簡単で、公式アプリをインストールして、デバイスをVRヘッドセットやPCとペアリングすることですぐ使えるようになります。

しかし、ゲームによってはOSCやMODなどが必要になるため購入前に調べておいた方良さそうです。マニュアルは英語であることがほとんどのため、翻訳して読む必要がある点も注意です。またこの記事を執筆していた時点で、ネット上に日本人のレビューや知見があまりなかったため、VRChatのような開発者機能に関する部分は自力で解決することが多くなりそうです。基本的には、VRChatなどにある程度慣れており、MOD導入などをやったこともあるような中級者・上級者の方におすすめできるデバイスです。

また、このデバイスが伝える反応は、モーターのバイブレーションのみです。筆者は先述したボクシングのパンチや撃ち合いの銃撃で受ける衝撃とマッチすると感じたため、シューティングやボクシングでさらなる没入感を感じたい方には、このデバイスはとても良いと思います。ただし、アプリ側から振動の強弱や範囲は調整できるものの、繊細な反応や圧感を求めている方とはマッチしない点は留意してほしいところです。基本的にアクティブな動きをする際の没入感・臨場感を高めるためのデバイスと考えたほうが良いと言えます。

bHapitacsからは、32のフィードバック(振動)ポイントのある「TactSuit Pro」なども販売されているため、自身の求めている体験と、金額感を考えて購入すると良さそうです。

このデバイスを購入することでVRのアクション体験は、これまでより向上することは間違いないでしょう。

公式販売サイトはこちら

TactSuit Air
価格 34,860円(税込)
大きさ ウェスト:61 – 127cm
重さ 1.12kg
内蔵モーター ハプティックモーター16個
バッテリー フル充電で2.5時間
接続 Bluetooth (BLE) & 3.5mm オーディオジャック
USB Type-C
カラーリング Onyx、Ash
TactSleeve
価格 27,860円(税込)
大きさ 本体:縦7.0㎝×横6.5㎝×高さ3.0㎝
バンド:フリーサイズ
重さ 185g(両腕370g)
内蔵モーター ハプティックモーター3個(両腕計6個)
バッテリー 10時間
(すべてのフィードバックポイントが最大強度で5秒ごとに1秒間動作している場合)
接続 Bluetooth (BLE)
USB Type-C

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