Snapchatを展開するSnapは、開発者会議Snap Partner Summit 2024にて新たなARグラス「Spectacles」を発表しました。視野角は対角46度。スマートフォン等やバッテリーなどに接続する必要のない完全に一体型のARグラスです。
第5世代にしてついに
Snapはこれまでも「Spectacles」という名前のデバイスを展開してきました。今回発表されたデバイスは第5世代の「Spectacles」となります。初代から3代目までは写真撮影に特化した眼鏡型デバイスでしたが、第4世代からは現実世界を認識する機能と表示のための光学系が搭載されたARグラスとなりました。
第5世代のSpectaclesは、視野角の狭かった第4世代と比べて性能が飛躍的に向上しています。「ARグラスは日常生活で使うことを想定する」としてスマートフォンや外部のバッテリーパックを必要としない完全に一体型のデバイスです。重量は226グラム。連続駆動時間は45分です。
光学系は独自開発したLiquid Crystal on Silicon (LCoS) マイクロプロジェクターを搭載したウェーブガイド技術を採用。対角視野角は46度で、1度あたりの解像度は37ピクセル。3メートル離れた場所に100インチのディスプレイ相当の表現が可能です。
屋外、屋内でも問題なく使えるようにレンズは偏光レンズを採用。光量に応じて自動的にレンズの明度が変化します。また、カメラは4基搭載。OSに搭載されたSnap Spatial Engineが常時現実空間をスキャンします。動いたときの表示までの遅延は13ミリ秒と人間が違和感を覚える16.6秒(60fps)を下回っており、自然な表示ができるとしています。
駆動させるプロセッサはクアルコムのSnapdragonのSoCを2基搭載。「消費電力を抑えながら没入感のある体験を可能にする」(Snap)とのこと。
OSは独自開発の「Snap OS」
Spectaclesは、Snapが独自開発したOS「Snap OS」で駆動します。手のひらの上にメインメニューを開くユーザーインターフェースで、手と音声での操作に対応。発表された基調講演の場では、ピンチ操作などこれまでの他のARデバイスとも共通の操作が見てとれました。
また、Spectaclesは「Shared」(共有)をコンセプトにおいており、同じ現実空間でSpectaclesをかけた人同士はARで表示されているものを共有して見ることができます。デモでは設定等は不明でしたが、平易な接続に期待したいところです。また、Spectaclesを持っていない人はスマートフォンでも共有して見ることが可能です。
スマートフォンはミラーリングも可能。他にもコントローラーとしての使用も可能です。
開発者向けには、Snapが展開するARコンテンツの開発プラットフォーム「Lens Studio」が無料で提供されます。Lens StudioからSpectaclesに瞬時にデプロイが可能とのこと。現在、ILM傘下のILM ImmersiveがStar WarsのAR体験を、他にもNianrticがスマホゲーム「Peridot」、LEGOグループがLEGOのAR体験を開発中など、様々な体験が今後登場するようです。
SnapのCEOエヴァン・シュピーゲル氏はAIとの連携を強調。「OpenAIとの連携を強めていく」とし、壇上のデモでは、音声から3Dモデルを生成するアプリ「Imagine」を体験する様子を披露しました。
Spectaclesは、Lens Studioの開発者向けのプログラムとして、月額99ドルの一年単位のサブスクリプションモデルで提供されます。
北米での展開が確定していますが他の地域については情報がありません。Snapchatのユーザーが多い国での展開が優先されると考えられます。日本での発売は不明です。
(参考)Snap、Snap Partner Summit 2024 Keynote