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話題 2023.01.24

ピューロランドの最深層――サンリオVfesクラブエリア「ALT3」で体験した現場の熱量

サンリオピューロランドには、地下5階が存在する。

降りた先には廊下が一本。行き止まりには昇降機がひとつ。

乗り込み、降りていった先は、ピューロランドの最深層だ。そこにはクラブフロアが存在する。その名は――

バーチャルピューロランドの最深層

「ALT3(オルトスリー)」は、メタバース音楽フェス「SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland」にてオープンされた期間限定のクラブフロアだ。地下に広がる設定のVRChat会場の中でも、最下層である地下5階に位置する。様々なアーティストがステージに立つこのイベントの中でも、ここは最もディープで、最もエッジな場所だ。

鉄骨やケーブル、壁面の岩肌まであらわになった、無機質で荘厳な空間。奥には天井にまで届く縦長のディスプレイと、DJブースが置かれている。「サンリオ」の世界観に対し、あまりに異質なこのエリアだろう。


(プレスリリース第2弾より、「ALT3」出演者一覧)

エリアをプロデュースするのは、バーチャルクラブ「GHOSTCLUB」主催の0b4k3さん。そして「ALT3」に立つのは、VRクラブシーンの第一線で活躍するDJ、VJ、アーティストたちだ。19時から24時まで、1時間ごとにDJとVJが入れ替わり、各自の感性がむき出しになったパーティーが止まることなく開催された。

2021年末に開催された「SANRIO Virtual Fes in Sanrio Puroland」でもオープンした「ALT3」は、ロケーションのすさまじさと、”大暴れ”としか形容できないパフォーマンスはもちろん、その「狭き門」も話題となった。入場人数上限がほんの一瞬で埋まり、「入ることすらままならない」という人が多くいたのである。

今回、「ALT3」は「RED」「BLUE」「YELLOW」の3フロアが用意された。それぞれで出演アーティストが異なるので、どれか一つを選択することになる。1フロアの上限は70人。3フロアあるので合計210人。関係者の人数も考慮すると、だいたい200人くらいは入場できただろう。

だが、今回もオープンと同時に一瞬で埋まった。体感では2分も猶予があったかどうか。フレンドの一部は別のインスタンスを作り、DJ・VRはいないが音楽と映像が流れる「サテライト会場」にいたように思う。

そして、仮に入場できたとしても、ワールド、映像、そしてフロア内にいる70人ほどのユーザーのアバターの全てを描画するべく、PCには大きな負荷がかかる。VRで参加する場合、左目と右目で別々の映像を描画するため、負荷はさらに大きくなる。状況によっては「VRChat」のアプリケーションが落ちることもめずらしくない。

様々な意味で、たどり着くまでが大変なエリアだ。そんなハードルの高さと、それを越えるに見合った強烈な体験は、「最深層」と呼ぶにふさわしい。

Day1

かくいう筆者はどうだったか。まず、Day1の入場は完敗だった。幾度もタイミングを見計らって入場を試みたが、足先すら踏み入れることは叶わなかった。飛ばされた先にある、誰もいない一人ぼっちのインスタンスが、筆者にとっての「CHILL PARK」だった。

チャンスは23時過ぎに訪れた。何気なく訪れた「サテライト会場」の一つで、突如ディスプレイに、タイムテーブルに存在しない組み合わせのDJとVJが映されたのだ。

「アフターパーティーだ」

誰かがそう言った。予告なし。しかし昨年実績あり。閉会後に訪れる、正真正銘のゲリラライブ。すぐさま公式Discordサーバーに張り付き、会場URLの掲示と同時にページを開き、5秒以内に「INVITE ME」を押し、会場へ飛び込んだ。

「Instance is Full(満員御礼)」のアラートは出なかった。負荷軽減設定を整えながら、アフターパーティーのフロアへ向かう。



暴れていた。DJのminawaさんは飛び跳ねているように見えた。呼応するように、絶え間なくつながるサウンドがフロアをめちゃめちゃに震わせていた。VJのRieさんによる映像も気絶しそうなほどにクールだった。

気がつけば、1時間ぶっ通して体が動いていた。楽しい。とても、楽しい。ひたすらに音楽に身を委ねる時間が、ただただ楽しかった。正直、まだ2時間でも3時間でも踊っていたい気分だった。


(暴れ終えたminawa(写真左)とRieさん(写真右))

Day2

翌日のDay2も、気がつけば開幕突入にチャレンジしようとしていた。アフターパーティーこそ見れたものの、やはりメインタイムテーブルも見てみたい。祈るような気持ちで、この日もオープンと同時に会場URLを叩いた。

入れてしまった。「BLUE」の19時スタート回。DJは0b4k3さん。VJは三日坊主さん。これ以上とない組み合わせのフロアだ。

開演30分前。すでに満員のフロアで、入場者の言葉数は少ない。「ALT3」のロゴを前に人々が静かに待ち続ける光景は、祈りを捧げる礼拝堂のようでもあった。そんなフロアを見ながら、0b4k3さんは和やかにアナウンスした。

「どうぞみなさん、前へ来てください。その方が楽しいですからね。ALT3は今日も楽しいですよ」

そして19時、Day2の宴が幕を開けた。



最初は水面のようにおだやかに。その雰囲気を崩すことなく、徐々にボルテージが上がっていくサウンド。音と見事にシンクロしていく幻惑的な映像も相まって、尻上がりにフロアのテンションが上がっていくのを感じた。声ではなく、全身の動きから。


終盤にはゴーストや雪の結晶のemojiが飛び交った。最高潮に達するサウンドとともに、emojiがフロアの熱気を鮮やかに彩っていた。音と視覚、そして自分の身体が、岩肌と鉄骨に囲まれた空間でひとつに溶け合っていくようだった。


1時間のパフォーマンスは一瞬で駆け抜けていった。言葉で言い表せない充足感は、その後も自分の体の奥深くを熱し続けていた。

0b4k3さんのDJは「GHOSTCLUB」のTwitch配信で何度か見たことがあった。だけど、その時とは楽しさが段違いだった。”現地”の熱量はなににも勝る。そこがたった2日しか開かない場所であれば、なおさらだろう。最高の体験を地下5階で得られたのは、本当に幸運だった。

また地下5階へ”帰ってくる”ことを願って


(2021年の「ALT3」)

筆者は前回のフェスでも一度「ALT3」に入場できた。その時の衝撃はいまだに脳裏に焼き付いている。「アンダーグラウンド」が形をなした空間と、その場にふさわしい音の奔流。これをVRで体験してしまうと、生半可なことでは忘れられなくなる。

今回の「ALT3」でも、その衝撃は健在だった。というより、この空間で味わう音楽に飽きるなどということは、そうそう訪れないだろう。また、フロアが新たに1つ新設されたことで、同時参加人数が少し増加し、その分大暴れできるアーティストも増え、前回よりもパワーアップしていたことは間違いない。

「SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland」は、1月29日(日)と1月30日(月)にタイムシフト再上演が行われる。B2、B3の有料ライブから、B4の無料体験パフォーマンスを、同じタイムテーブルで再び体験することができる。チケットを買い逃した人に向け、1月25日(水)までタイムシフト再上演に対応したチケットも販売される。

しかし「ALT3」のみタイムシフト再上演は実施されない。つまり「ALT3」を体験するには、まだ見ぬ次のフェスまで待たなければならない。前回もそうだった。正直筆者も、次に地下5階へ訪れる機会が待ち遠しくて仕方がない。

Day1にて入場に失敗したとき、一人きりの「ALT3」インスタンスへ飛ばされた。Invite Onlyのインスタンスには、自分が招待しない限り誰も訪れない。イベント会場としては少し寂しいものがある。

しかし、誰もいない、まだパフォーマンスも始まっていない地下5階が見えた瞬間、感激をおぼえた。思わず「帰ってきた」と口をついて出てきた。思い出の場所に再びやってこれた嬉しさを、バーチャルな空間に対して抱いたのだ。自分もこれには驚いたが、それだけの「場所」となっていることに疑いはなかった。

限られたときにだけ訪れることができる、伝説的なフロア。忘れられないほどの体験をもたらしてくれる特別な場所として、「ALT3」の名はこれからも誰かの口から語られるだろう。そして願わくは、また地下5階のエレベーターに乗り込む機会が訪れてほしいものだ。

ピューロランドの最深層は、いくら暴れても、暴れ足りない。


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