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Roblox 2025.03.03

これからのデザイナーに必要なのは、リアルとバーチャルの両立 文化服装学院生がRobloxでデジタルアイテムを制作 現地ファッションショーに行ってきた

今年の2月、文化服装学院が「デジタルファッションプログラム」の卒業制作を披露するファッションショーを開催しました。この企画は、文化服装学院と、株式会社電通グループ、Roblox Corporationが共同で実施したもので、バーチャルとリアルの両方の知識を持ったデザイナーを育成するために行われてきました。今回のファッションショーはその取組の総決算となるものです。

普段、現実の衣装をデザインしているデザイナー志望の学生たちが、バーチャルなファッションアイテムの制作にもチャレンジする。一見は、そもそもジャンルが違う取組のため、かなり難易度の高い企画にも思えますが、実際その結果はどうなったのか、現地を取材しました。

リアルなファッションショーとバーチャルな展示会場の両方を設置



ファッションショーは、保護者や学生、ファッション系の大手メディア、企業関係者も来賓として招かれ、会場内は超満席。各方面からの注目度の高さが伺えました。

ファッションショー自体も、お披露目される衣装はもちろんのこと、音響や照明に至るまでしっかりと演出されており、そうと言われなければ学生主体で制作されたとはわからないぐらい本格的なショーでした。本ファッションショーで披露された作品の一部が、メタバースプラットフォーム「Roblox」上でもデジタルファッションアイテムとして制作され、展示されています。ショー会場に隣接するギャラリーでも作品を見られました。


(現実でデザインしたファッションを、Robloxのアバター向けに調整。ファッションのコンセプトを崩さぬよう工夫されている)

Roblox内でも本卒業制作展示用のワールドが制作・公開されています。

Roblox内のワールドでは、比較的コンパクトな展示でありつつ、服のみならず、アバターやプロップ、背景などを含めた空間全体で、制作したアイテムの世界観を表現されていました。

展示されているファッションアイテムは、リアルの人間よりかなり等身が低めのRobloxアバター用の衣装という制約がありながらも、自身の作りたいアイテムや表現したい世界観をしっかり落とし込んでいる印象でした。

バーチャルファッションコース、並びにデジタルファッションプログラムの授業を受けるまではモデリングソフトやRobloxに触ったことがなかった学生も多かったという中で、たった1年の間でこのクオリティのアイテムと展示ワールドが制作できるのは見事です。


(ワールド内に展示されているアイテムはRoblox内通貨を用いて購入することも可能です)

学生の使える技術の選択肢を増やしたい

文化服装学院デジタルファッションプログラムのギャラリー現地にて、バーチャルファッションコース専任講師の徳岡慧さんと同コースの学生の方数名からお話を聞いたところ、今回のRoblox活用はそれ自体が目的というよりも、現実の服の制作のためにCLOやBlender等のモデリングソフトを扱えるようになった学生達へ、それらの技術を生かしたさらなる選択肢の提供といった側面が大きいように感じました。

CLOはフォトリアルな3D衣装をモデリングすることに特化しており、リアルの服を制作する前に3DCG空間上で再現することができるため、現在特にファッション業界で注目を集めているソフトウェアです。本プログラムでは基本的にはCLOを用いてファッションアイテムをモデリングし、その後汎用的な3DCGソフトであるBlenderを用いて、CLOでは操作しにくい部分のデータの調整を行っているようです。

取材時、話を聞けた学生の方からは「Robloxは今回の授業を通して初めて触れましたが、自分の制作したアイテムがRoblox内で一般のユーザーの方に実際に買ってもらえたので、『本当に買ってもらえるんだ!』という驚きと喜びが大きかったです。自分で在庫を作らなくても、自分のデザインした一着の服を色んな人に楽しんでもらえるのはバーチャルならではだと思います。」と、手応えと面白さを感じている様子が伺えました。

バーチャルファッションコースで、3Dモデリングやデジタルパーツデザインなどについての授業を行っている専任講師の徳岡さんによれば、今年度がRoblox活用の初年度だったということで、「Roblox向けのアイテムをどのように制作し、それをアップロードして販売するか」という技術面にフィーチャーするところが大きかったとのことでした。

今回のRobloxを活用した授業は来年度も継続する予定であり、来年度は今年度を踏まえて、「Robloxのファッションアイテム売買のマーケットはどういった市場なのか?」ということについての理解をより深めていきたいとの話でした。

また現状は同コースの人員不足のため、なかなか手が回らず難しいところではあるが、今後は徐々にRoblox以外のプラットフォーム・ストア向けのバーチャルファッションアイテムの制作や販売も視野に入れて行きたいとも話していました。

リアルとバーチャル両立のファッションデザイナー時代到来の気運

リアルの服の卒業制作がメインの場だったため、卒業制作ファッションショーや展示全体の中で割かれるRoblox内での制作物の展示は限定的なもので、あくまで実験も含めた「最初の一歩」という雰囲気でした。

ただ、これまでファッション関係の企業や、服飾や洋裁の素養のある個人がバーチャルファッションアイテム制作に意欲的に取り組む事例は各所で散見されていましたが、学校単位で、しかも服装教育において最も歴史のある文化服装学院がそこに取り組みはじめたというところに新たな時代の潮流と可能性を感じさせられます。

社会単位で見ても、従来は3DCGで制作される服やファッションは基本的にイラスト・ゲーム・アニメ等の業種の中で完結しているものでしたが、最近では元々3DCG上で制作されたキャラクター・アバターの衣装を、企業コラボやメディアリミックス等の過程で公式にリアルの人間用の服や衣装としても制作されるという事例はどんどん増えてきています。例えば人気ゲーム「学園アイドルマスター」のキャラクター衣装を担当声優が公式ライブで実際に着用したり、「ブルーアーカイブ」のゲーム内コスチュームがグッドスマイルカンパニーより公式アパレルアイテムとして販売されたりといった事例が現実に起きています。また、いわゆる2.5次元のミュージカルでは、原作イメージの衣装を利用することが当たり前となっています。

したがってリアルの布や縫製、ファッションデザインと3DCGの両方に精通している人材が求められるようになってきていることは明らかです。そこに応える新しい教育の形が芽吹きはじめているという印象でした。

また個人単位で見た場合も、服飾の学校を卒業していても自分のデザインしたリアルの服を量産して販売できる立場になるのは、企業ブランドのデザイナーを目指すにしても、個人で立ち上げたブランドのデザイナーになることを目指すとしても、かなり難しい道のりだという話を聞きます。

そんな中、前述の学生の方の話でもあった通り、自ら商品を量産して在庫を作らずしても一つの作品を多くの人に販売することができる「バーチャルファッションアイテムのデザイン」という道は、仮になんらかの事情でファッション業界での就業を選ばなかった・選べなかったとして、個人のままでも末永く作り手側としてファッションに関わり得ますし、さらにはその取組みを端に自身のデザインした洋服をリアルの洋服としても制作・販売する、という道も将来的に十分に開かれ得るものです。

実際に、個人ではVRoidやVRChat向けにバーチャルファッションアイテムを制作しているアトリエミレアのミレアさんがバーチャルファッションアイテム販売の収益を元に、元々バーチャルファッションアイテムとして制作したワンピースをリアル用のワンピースとしても制作し、記念カタログを刊行していました。

企業単位では、メタバースファッション専門アパレルブランド「ポリゴンテーラーファブリック」が、VRChat向けアバターの衣装をリアル用のアパレルグッズとして販売する試みを行っています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000088876.html

したがって学生の内にその選択肢と具体的なやり方について知ることができるのも、意義として大きなものだと感じました。

とはいえ、現地のファッションショーや衣装の展示を見ると現実の服の素材感を生かした細やかなデザインや縫製の美しさはどれも目を見張るものがある一方で、Roblox向けの制作となると、どうしても様々なデザインが大きく簡略化されてしまうことが惜しく感じられました。完成されたリアルのファッションアイテム群を見ていると、「バーチャル空間上でもこのリアルの服と同等の美しさを体感したい……!」という気持ちにはなってしまいます。

ただ、簡略化されているがゆえに最初の一歩としては制作しやすい・販売しやすいという側面があろうことも理解できますし、そういった点に関しては今後の展開に期待したいところです。

服飾や洋裁の専門知識・技術を備えた学生達が今後バーチャル上でどのような新たなファッションを生み出していくのか、文化服装学院バーチャルファッションコースや同コースの卒業生の今後の展開に注目です。


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