Home » 自分のガンプラが動く! 乗れる! 戦える! 3Dスキャン×VRで実現する「ガンプラバトルVR」の威力


VRゲーム・アプリ 2025.03.05

自分のガンプラが動く! 乗れる! 戦える! 3Dスキャン×VRで実現する「ガンプラバトルVR」の威力

もしも、自分のつくったガンプラが動いたら……。

アニメ『ガンダムビルドファイターズ』では「自作のガンプラが3D空間で自由に動き回る」世界観がすでに描かれているが、現実はその実現にはまだまだ遠い。しかし「自分が大事に組み上げたプラモデルが動き出して、まるでアニメの中のように飛び回り戦う姿を見たい」というのは、ガンプラ愛好者であれば、いつか実現させたい夢のひとつだろう。

しかし、その夢を実現するための企画は着々と進みつつある。バンダイナムコは「ROAD TO GUNPLA BATTLE」と銘打ったプロジェクトを2022年から立ち上げて進めており、「ガンプラバトルVR」というシステムの開発を続けているのだ。

この「ガンプラバトルVR」は、VRヘッドセットで3Dスキャンされたガンプラを原作の実寸サイズで見られる。しかも、乗り込んで敵と戦うこともできる。技術の力で夢を実現すべく取り組まれているチャレンジングなプロジェクトだ。

2月21日から23日に東京・新宿で開催された「GUNDAM NEXT FUTURE -FINAL-」では、そのバージョン2.0がお披露目。事前抽選で予約できた人のみと限られてはいるものの、体験コーナーが設けられた。今回、「GUNDAM NEXT FUTURE -FINAL-︎」の会場では一般公開に先立ちプレス向け内覧会で特別に体験することができたのでレポートしよう。

3Dスキャン×VRでリアルとバーチャルを繋ぐ

まずは、ガンプラバトルVRの流れから。

体験者は、自分のお気に入りのガンプラを会場に持ってくる。ガンプラを持ってきていない人には貸出もあるので安心だ。筆者は、会場に用意されていたRX78をスキャンしたもので体験した。

持ってきたガンプラを専用装置でスキャンする。このスキャン装置はロボットアームとカメラベースのスキャナー、深度センサーを組み合わせた大掛かりなもの。さらにガンプラと装備品を専用のアクションアームで固定した後に、360度自動で動かしながら撮影する。

1体の撮影にかかる時間は5分程度。わずか10~20cmのガンプラだが、満遍なくおよそ1,500枚ほどの写真を撮影。さらにリグと呼ばれる3Dモデルを動かすためのシステムを取り入れることで、ガンプラがバーチャルの世界で動くようになる。

撮影データを合成するまで時間がかかるので、体験者はその間にコックピット型の体験スペースに移動して、VRヘッドセットを装着する。装着が完了すると操作説明のチュートリアルがあるので、説明を聴きながら、試し操作をして時間をつぶす。

体験スペースは乗り込むガンダムのコックピットを模しており、アーケードゲーム『機動戦士ガンダム 戦場の絆』などでもおなじみの筐体だ。そして、操縦桿のレバーが左右それぞれにある。左右のレバーを動かして移動と旋回、足元のペダルでブーストを消費しての加速、レバー裏のトリガーを引くと攻撃、と操作方法も「戦場の絆」とほぼ同じだが、ロックオンやサブウェポンはないなどシンプルになっている。

チュートリアルが終わり、ガンプラのスキャンデータが読み込まれると体験がスタート。ガンプラに搭乗して敵を撃破するミッションに挑むという内容だが、体験は搭乗前の説明、格納庫での搭乗から発進シークエンス、ミッションの全3段構成となっている。

搭乗前では、ただミッションの説明をされるだけでなく、読み込んだガンプラを“読み込む”ところから始まる。ガンプラのモデルを自動判定し、攻撃力やスピードなどのステータスを付与、3タイプに分類して、適した戦い方を教えてくれる。

いよいよ格納庫へ移動。足場から自分のガンプラが実物大になった機体を見た。

愛着のあるガンプラが目の前に現れる”生々しさ”

……この感覚はなんだろう。お台場の等身大ガンダム像を初めて見た時の感覚だろうか。本来存在し得ない空想のものが目の前にある感覚だけではない……さらにその先にあるものだ。

VRでの体験に慣れきっている筆者にとって、ただ作品の中に出てくるキャラなどがVRに出てくる感覚はおなじみのものだ。しかし「手元の小さなガンプラ」が実物大になる感覚は、また違うものだと思い知らされた。

デカールのちょっとしたズレなど、プラモを作った時の粗はそのまま取り込まれるし、こだわりの塗装もそのままだ。ガンプラによっては経年劣化していることもあるかもしれない。それらが、何十倍にも拡大されるので、なんというか「生々しい」。そして自分の物がそんな風に目の前にあるというのは「愛着」や「懐かしさ」といった、これまでにない感覚に繋がるかもしれない。

リアルをバーチャルに取り込むことの威力を感じた瞬間だった。

ミッション自体は、ガンダムユニコーンから「ネオジオングを倒す」という内容で、小惑星帯を抜けつつ、敵のザクを倒し、最後に待つボス(ネオジオング)と戦うという比較的シンプルな体験だ。小惑星を避けてたり、ザクと小競り合いをしている間はサクサクと進むが、ネオジオングと対峙するとオールレンジで四方にビーム攻撃が飛んできて、一気に別のゲームに。まさにラスボス感満点だ。さすがに『ガンダムユニコーン』の敵役フル・フロンタルの声が聞こえるわけではないが、避けながら攻撃して戦うこと2,3分でネオジオング撃破となり、最後にはスコアが表示される。(撃墜されるパターンがあるかは不明)

スキャンからVRの終了まで最大20分程の体験だった。

夢の実現の鍵を握るのは3Dスキャン

ガンダム・ガンプラ好きにはたまらない体験だが、まだまだこのコンテンツにも課題がある。会場で株式会社BANDAI SPIRITSのホビーディビジョン 企画第二チームの稲吉太郎さんに話を伺った。

そもそもガンプラをスキャンする試みは2018年と7年前に遡る。当時は「リアルガンプラバトル、エピソード0」と銘打たれ、初めてガンプラのスキャンを実施。当時はまだスキャン装置もカメラでガンプラを囲むスタイルで、スキャン対象も会場に用意されたガンプラのパーツを組み替える程度。2022年に正式にプロジェクトがローンチ。ロボットアームでスキャンするシステムが初めてお目見えした。

ロボットアームでのスキャンに変更された理由は「頭頂部や足の裏などもスキャンするため」とのこと。ガンプラを余すことなくデジタル化するためには、通常の人間の3Dスキャンなどよりも気を遣っている。

現時点でも大きな課題は3Dスキャンにあるようだ。スキャン後の3Dモデルを使うコンテンツについては、すでにバンダイナムコはアーケード、各種家庭用ゲーム、VRコンテンツ、メタバースでこれまで散々コンテンツを提供するための技術を磨いてきた。それらの世界にガンプラを登場させるためのスキャンが一番の課題になる。

画質などの精度以外に重要なポイントは例えば光沢だ。ガンプラは一定の光沢がある。そして部位によっては塗装やデカール(シール)などもあって反射していることも。しかし、現在採用されている画像ベースのフォトグラメトリ(※現実のモノをさまざまな方向から複数枚撮影して、写真データをもとに3Dモデルに変換する技術)では技術的な限界がある。

3Dスキャンの世界では、ここ1,2年でフォトグラメトリの課題を克服する新たな手法「3Dガウシアン・スプラッティング」が登場し、光の反射もスキャンすることができるようになった。スキャンの新たな技術がガンプラの3Dスキャンにどのように組み込まれ進化するのか、今から楽しみでしょうがない。

また、この『ROAD TO GUNPLA BATTLE』は、今回のようにイベント会場で体験できるもの以外にも、「GUNPLA SCAN SERVICE」として期間限定でガンダムベースで有料で提供されてる。他にも、過去にはユーザーのスマートフォンを使ってスキャンを行い、コンテストを行うβテストも行われてきた。

「現時点ではそれぞれの企画が個別に動いている」とのこと。今後、IDを使ってスキャンしたガンプラが登録されて、イベント会場で遊べるようになる……さらに家庭用ゲームやVRゲーム、メタバースでもアカウント連携で…となるとまさにリアルでもバーチャルでもガンプラが縦横無尽に活躍できるようになる。

小さなパーツを大事に切り離して一つ一つ丁寧に組み立てていって機体が完成した時の感動は、壊して作り直して何度も試行錯誤するレゴやマインクラフトともまた違う。どこか職人になったかのような気持ちにさせられる。そんな気持ちが籠もるガンプラがリアルとバーチャルを跨ぐのは非常に興味深い試みだ。リアルとバーチャルを繋ぐチャレンジにこれからも期待したい。


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード