「VRChat」では、友人と遊べるゲームワールドから、ゆっくりするのに最適な風景系ワールドまで、様々なコンテンツが日夜公開されています。本連載では、膨大なワールドの中から、特に“映える”ワールドをピックアップしてお伝えします。
今回紹介するのは、アパレルブランドBEAMSの第1号店が再現された公式ワールド「1976 BEAMS」です。
BEAMSは1976年に創業したブランドで、いわゆるアメリカンカジュアル(アメカジ)を軸にしたファッションアイテムを数多く揃え、全国展開しています。「VRChat」には2020年ごろより参画しており、VRChatイベント「バーチャルマーケット(VKet)」 に店舗を設置するという試みを実施。2024年には、BEAMS店舗とその周辺の繁華街をテーマにした公式ワールド第1弾「Tokyo Mood by BEAMS」 を公開しました。
またマーケットプレイスBOOTHでは、実際にBEAMSが展開する衣服をアバター向けにした商品を展開するなど、「VRChat」向けに幅広いコンテンツ展開を行っていることで知られています。
今回公開された「1976 BEAMS」は、BEAMSの50周年を記念して制作された場所で、同ブランドの原宿1号店を「VRChat」内に再現したというもの。そもそもBEAMSは、梱包資材を取り扱う新光株式会社を経営していた設楽悦三氏が、事業の多角化のために始めたブランドで、衣服のほか、ヘルメットやスケートボードなどアメリカから買い付けた商品を総合的に展開するショップとしてスタートしました。
70年代の日本では手に入りにくかった、ナイキのスニーカーやLee(リー)のジーンズといった製品を展開したことでファッション業界での知名度は次第に向上。BEAMS自体も、衣服のセレクトショップ事業に注力するようになります。
原宿1号店は、そんなBEAMSの文字通り原点にあたる店舗です。モノのセレクトや見せ方といったセレクトショップとしての“編集的な感覚”が、最も色濃く現れていた場所と言われています。ただ2026年現在、同店舗は現存しておらず、図面や当時の写真が一部残るのみ。50周年をきっかけに、限られた資料から“伝説の店”を再現するという試みが本ワールドの制作プロジェクトというわけです。
現在のBEAMというと、駅ビルやショッピングモール、商業施設などに大きな店舗を構えていますが「1976 BEAMS」はかなり小ぶりな作り。小さな店舗に、所狭しと服や靴などが並べられている、新進気鋭のショップらしさに満ち溢れています。
ちなみにBEAMSの公式サイトによると、本ワールドの構成は店舗の周囲も含めて可能な限り再現する形で制作されているとのこと。
店内に置かれているスケートボードや服といったアイテムは手に取ることが可能で、デザインをチェックしたり、自分のアバターに似合うか試したりすることができます。70年代の原宿は、アメカジ文化を含むファッションの実験場的な立ち位置にあり、若者はもちろん、様々な芸能人も最先端の衣服に身を包んで街に現れていました。原宿1号店が、一種の総合店舗として始まったのも、そういった街の“情勢”が影響した結果と言えるでしょう。
個人的には、これらのアイテム類をBOOTHで直接購入できるギミックなどが追加されても面白いかと思いました。このワールドでBEAMSに興味を持った人が、自然にBEAMS製品を手に取る機会になるからです。
「1976 BEAMS」は、BEAMSの“原点”と言える場所をVRで訪れることができるワールドです。なお、BEAMSの公式サイトではワールド制作に関する裏話がインタビュー形式で公開されており、当時の資料が少ないなか再現を試みた経緯や、VRでの違和感が出ないよう試行錯誤を繰り返したことなどが語られています。
ちなみに本ワールドの制作は、「カデシュ・プロジェクト」が担当。同プロジェクトは、架空の老舗高級ホテル「ホテル・カデシュ」を題材にしたシェアード・ワールド創作企画。映像コンテンツの展開のほか、キャラクター創作やVR空間でのなりきりイベントなども実施していることで知られています。先述した「Tokyo Mood by BEAMS」の制作も「カデシュ・プロジェクト」が担当しました。
本ワールドが気に入った人は、「Tokyo Mood by BEAMS」もあわせて訪れて、同ブランドの変遷を体感してみるのも面白いかもしれません。
「1976 BEAMS」で、BEAMSの始まりを覗いてみませんか?
執筆:井文








