2026年5月16日・17日、幕張メッセにて「にじさんじフェス2026」(以下にじフェス)が開催されました。2021年のスタートから数えて5回目となるにじフェスですが、筆者にとっては今回が初めての「VTuberの大規模イベント」への参加となります。
にじさんじ自体、以前は切り抜き動画を時折目にする程度でしたが、2026年に入りニュース記事制作の仕事で深く関わるようになったことをきっかけに本格的に動画や配信を視聴するようになりました。
画面越しに生まれるライバーとファンの双方向のやり取りが、”リアル”のイベントという場では、どのような熱量として存在するのか。ファンがこれほどまでに情熱を注ぎ込む「にじさんじ特有の魅力」や「文化の正体」は何なのか。
初心者ながらも一人の取材者として、その盛り上がりの正体をこの目で確かめるべく会場へ足を運びました。その様子をレポートしていきます。
推しを”纏う”ファンたち
会場に足を踏み入れた瞬間、まず目に飛び込んできたのは圧倒されるほどの人の波でした。設置された動線やスタッフの誘導により、身動きが取れなくなるような事態は避けられていたものの、会場を埋め尽くすファンの熱量には思わず気圧されそうになるほどでした。
しかし、実際に歩き進めてみると、至る所がファンの楽しげな熱気に包まれており、その心地よい雰囲気のおかげで、混雑の中でも展示を回るのを苦に感じることはありませんでした。
参加者の男女比はおよそ7:3くらいで、20代前半がほとんど。友人と二人で来ている人が多く、事前に集合していた大人数のグループも最終的に会場内で分かれて行動しているようでした。多様なファンがいましたが、その中で共通して見られたのが痛バッグ(缶バッジ等で装飾されたバッグ)をはじめ、それぞれの推しグッズを身に纏った姿です。また、グッズの色合いにあわせて服装や髪型でおしゃれをしている人もいました。グッズ以外の部分でも推しを表現したいというファンの拘りを感じました。
数あるアイテムの中でも、特に公式グッズの「クラスジャージ」と「ぬい(ぬいぐるみの略)」を愛用しているファンが目立っていました。
にじフェスは「にじさんじの学園祭」、今回は「体育祭」にフォーカス
にじフェスは2022年から「学園祭」をモチーフとして展示やグッズが作られてきました。これまでは「文化祭」の面を強調したクラスTシャツが展開されてきましたが、今回は学園祭のコンセプトをそのままに新しい要素として「体育祭」にフォーカス。体育祭を強調する「クラスジャージ」が公式グッズとして登場しました。
(グッズの見本コーナー。右奥からカラフルに並んでいるのがクラスジャージ)
これまでのクラスTシャツと同様に、一致団結した気分を味わえるグッズとなっています。デザインが良い上にカラーバリエーションも多く、身に着けたファンによって会場がより彩られていました。実際に着ている人を多く見てしまったせいか、筆者も欲しいと感じています。
クラスジャージが誕生した経緯はANYCOLOR MAGAZINEで語られています。ANYCOLORのスタッフたちの拘りが綴られています。
チーフディレクターA:「にじフェス」は2021年にスタートして、今年で5回目の開催になるんですが、おなじみになっている文化祭というテーマは「にじさんじフェス2022」で初めて披露されたんです。そこからメインビジュアルの変更などはフェスごとに行っていますが、基本的にはクラスTシャツを着たライバーさんたちをモチーフに、文化祭要素を強調して「にじさんじの学園祭」を表現してきました。クラスTを用いた文化祭というテーマが馴染んだこと自体はとてもいいと思いつつファンの方々や社内から「目新しさがなくなってきた」という声をちらほらと聞くようになったんです。
ただ、「にじさんじの学園祭」という根本のコンセプトを変えるのは違う、という思いがスタッフ間であったので、そこを守りながら新しい見せ方を模索することにしたんです。社内のデザインチームを始めとしたいろんな部署と話し合い、「150名以上いらっしゃるライバーさんの誰もが着られるもの」で、「学園で着ていても違和感がないもの」を考えて、体操服、特にジャージに落ち着きました。そこで、ジャージスタイルのビジュアルを作るのであれば、文化祭ではなく、学校行事の中でも体育祭にフォーカスしようということに決まった、という経緯です。
VTuber業界でも熱を帯びる「ぬい撮り」文化と公式グッズを持つ意味
出かけた先で風景や食事と一緒にお気に入りのぬいを撮影する「ぬい撮り」。SNSの普及とともに、「推し活」の1つとして人気を集めています。様々な業界で流行っている「ぬい撮り」ですが、近年VTuber業界でも熱くなっています。
(ルンルンさんのぬい)
にじフェス2026でも例に漏れず、「ぬい撮り」するファンの姿を会場のあちこちで目撃しました。ほとんどのファンが持っていたのでは、と錯覚するほどでした。公式の「ぬい」を購入することは、ライバーへの直接的な応援の証となります。ファンにとっては、それを身に着け、持ち歩くこと自体が「私はこのライバーを推している」というアピールやコミュニケーションのきっかけになっているようです。
缶バッジなどの他のグッズと異なり、「ぬい」には「イベントを一緒に体験する」というパートナーのような側面があります。ライブや展示を同じ目線で楽しみ、その思い出を写真に収めSNSにアップする。こうした「推しと一緒に疑似的に同じ体験をしている」と感じられる点こそが、ファンを惹きつけてやまない理由なのでしょう。
また、ファンに応えるように、運営もぬいに力を入れているのがわかりました。昨年はぬい向けのフォトスポットが設けられていましたが、今年は「ワールド・オブ・にじさんじ」や「NIJI×BUDDYブース」、「にじさんじぬいストア出張版 in にじフェス2026」と、ぬいの展示が増えていました。
(いろいろな世界観とぱぺっとたちが見られる「ワールド・オブ・にじさんじ」)
(クラスジャージを身に着けた約180体のにじぱぺっとが展示された「にじぱぺっと」)
ファンの中には、1つや2つにとどまらない大量のぬいを身に着けている猛者もいました。鎧のようにぬいを身に纏うその姿は、重課金兵なら重ぬい兵でした。
アクリルスタンドやフィギュアとはまた異なる、独特の愛らしさを持つ「ぬい」。今回その人気ぶりを目の当たりにし、支持される理由を肌で感じることができました。次のイベントでは、筆者もぬいとともに参戦しているかもしれません。
すさまじい熱量を感じた「スタンディパネル」
会場の各所に設置されたライバーの「スタンディパネル(等身大パネル)」も、ぬい撮りに並ぶ人気の記念撮影スポットとなっていました。
パネルがあるエリアで目にしたのは、ファンの凄まじい熱量です。どのパネルの前にも驚くほどの長蛇の列が形成されており、時間帯によってはスタッフが誘導にあたるほどの混雑ぶりでした。たとえ長い待ち時間があっても、「この場所でしか作れない思い出を形に残したい」という、待機列に並ぶファン一人ひとりの強い情熱がひしひしと伝わってきました。
(剣持刀也さんのパネルに並ぶファンたち。写真におさまりきらないほどの人数が並んでいる)
(台車で運ばれている段階から列が形成されることも)
(筆者もシスター・クレアさんのパネルを記念に撮影)
推しを身近に感じる展示
展示だけでなく、会場の至る所に推しの存在を感じることができる工夫がありました。
会場内のらくがき
ライバーたちのらくがきが会場のあちこちにされていました。ファンへのメッセージやらくがき上でやり取りしたり、さらには絵しりとりの展示があるのに壁で絵しりとりをしていたり……さらに2日目には1日目にはなかった落書きが追加されているなど、「推しが来ていた」事実をより感じられるものになっていました。
(会場の至る所にあった、ライバーたちによるらくがき)
私物展示
多くのファンの注目を集めていたのが、ライバーたちの個性が光る「私物展示」です。
実際に展示を目の当たりにして感じたのは、「やっぱり本当に”居る”んだ」という感覚です。普段はディスプレイ越しに声や姿を追っている存在が、実際に手に取り、使い込んできた物がそこにある。その事実は、VTuberという存在の「実在感」を何よりも強く物語っているようです。配信で聞いたエピソードに登場するアイテムを発見したときには、特に感動するのではないでしょうか。
また、ライバーの性格も展示に色濃く出ていました。愛用品や記念に買ったもの、手作りのアイテムといった展示もあれば、大喜利を仕掛けている展示もあり、それぞれのらしさが発揮されていました。
(いつも愛用しているという雨宮こころさんの私物「ギターとフィギュア」)
(2日目に検閲が入っていた夕陽リリさんの私物「未来の空気」)
ガラスケースの向こう側に並ぶ私物の数々は、単なる物の展示を超えて、普段は画面の向こう側にいる「推し」の存在をより身近に、より鮮明に感じさせてくれるようでした。「物語」や「生活感」を共有できるこの展示は、ファンにとって推しとの距離をグッと縮めてくれる、にじフェスならではの贅沢な体験と言えます。
ARフォトスポット
STYLYのモバイルアプリを使った展示で、自分のスマートフォンから設置されたQRを読み込むとライバーと一緒に撮影をすることができます。登場したライバーはこちらに話しかけてくれたり、パフォーマンスを見せてくれます。目の前に出現する推しに感動したのか、思わず歓喜の叫びをあげているファンもいました。
正面だけでなく、横や後ろに回り込んでみることもできます。推しを様々な角度から、しかも目の前で見られるというのは、確かに叫んでしまう体験なのかもしれません。
(STYLYで撮影した樋口楓さんの「ハカ」。歌詞も一緒に展示されており、一緒に踊ることができました)
おさんぽふらっふぃい
メイン会場を出たコンコースで、ひときわ多くの「かわいい!」という歓声を集めていたのが「おさんぽふらふぃい」です。黒井しばさん、でびでび・でびるさん、ルンルンさんが会場内をベビーカーでおさんぽする企画です。ベビーカーに揺られる姿は、まさに言葉を失うほどのかわいらしさでした。
(おさんぽの時間以外はキャンプを楽しむ姿が見られました)
しかし、この企画の真の醍醐味は、単なるもふもふなぬいぐるみの展示に留まりません。なんとスマートフォン越しに本人と直接お話しができるという、極上のコミュニケーション体験にあります。居合わせた幸運なファンは、おしゃべりしたりグッズを見せたりと、交流を楽しんでいました。
(筆者は黒井しばさんに遭遇。もふもふでした)
にじさんじおなじみの企画と同じ体験ができるアトラクション
アトラクションの中でも、会場の中心かつ広いスペースが設けられていたのが、「にじさんじ学院 昼休みのひと時体験エリア」です。2025年12月31日に公開された「にじさんじ学院24時 最強クラス決定戦」で登場したにじさんじ学院の、昼休みを体験できるエリアとなっています。
アトラクションは全部で5つで、どれも数十分待ちの人気ぶりでした。また、にじフェス2026開催に合わせてライバーたちが各企画に参加する動画も公開されています。
筆者は「紙飛行機を遠くに飛ばすだけのゲーム」と「最速スマッシャーは君だ!」の2つに参加してきました。
紙飛行機を遠くに飛ばすだけのゲーム
進路表を紙飛行機にして飛ばしてしまおう、という企画です。動画では社築さん、フレン・E・ルスタリオさん、渡会雲雀さん、石神のぞみさんが参加しています。
(https://www.youtube.com/watch?v=oAA9gHn_74I)
紙飛行機を折るのが十年ぶりくらいだった筆者。折り方を間違えまくってしまいましたが、なんとか形にし、1mという記録を出しました。思ったよりも飛びませんでしたが、フレンさんの記録には勝っていました。
(配布された進路希望調査用紙)
(かろうじてフレンさんの記録を超えた筆者の紙飛行機)
最速スマッシャーは君だ!
様々なものをラケット代わりにして、卓球のスマッシュの速度を競い合う企画です。挑戦しているのは樋口楓さん、ベルモンド・バンデラスさん、倉持めるとさん、北見遊征さんです。
(https://www.youtube.com/watch?v=iahUYUQzYRI)
(ラケットの代わりとなる道具たち)
筆者は黒板けしを選択。余裕で打てると思っていましたが、まさかの全5球中の1球しか当たらないという結果に。動画内で同じく黒板けしを使っていた樋口さんは余裕で当てており、筆者との運動神経の違いを実感させられました。
(筆者が唯一スマッシュを打てた1球の速度)
結果そのものは散々な内容ではありましたが、紙飛行機もスマッシュも存分に満喫することができました。ライバーと同じ競技に挑み、その記録と競い合える体験は、ファンにとってこの上ない喜びです。
エリアには他にも、ブートキャンプやピッチング、体力測定といった多彩なアトラクションが用意されており、VTuber関連の催しとしては異例とも言える充実ぶりでした。どのアトラクションも非常にクオリティが高く、参加しているファンたちの表情には笑顔が溢れていました。体を動かすもの多くで体力を要しますが、どのコーナーも絶えず活気に満ちていました。筆者も時間が許せばすべて体験してみたかったです。
並んでいる間も退屈させない工夫
どのアトラクションや展示ブースも数十分待ちの行列ができていましたが、ファンが退屈しないための様々な工夫が見受けられました。
例えば、列に並んでいる壁にはライバーのらくがきやイラストが展示されており、眺めて楽しむことができます。また、ライバーによる場内放送が流れ、スマートフォンをかかげて録音するファンが多数いるなど、待ち時間もコンテンツの一部となっていました。
さらに、入場時に配布された「謎解き」も、ファンを飽きさせない要素の一つでした。加えてスタッフの数も多く、スムーズな運営のおかげで並ぶ際に表示されていた待ち時間よりも早く進むことがあったことも、快適さを高めていました。
(樋口楓さんのイラストとらくがき)
イベントを終えて
VTuber大規模イベント「にじさんじフェス2026」に初参加した筆者は、熱狂的な「推し活文化」と、「推しのライバーがそこにいる体験」の醍醐味を肌で感じ、イベントを心から楽しむことができました。
運営(ANYCOLOR)の細部にわたるコンセプトとこだわりが強く感じられ、各キャラクター(にじフェスにおいてはライバー)の個性が光るような展示・アトラクションとなっていました。
また、筆者の知る他のイベントと比べ、参加者が「体験できる」ものが非常に多かったです。例えばコミックマーケットであれば同人誌を「買う」ことが、東京ゲームショウであれば最新ゲームの情報を「知る」ことが多くの参加者の目的だと思います。当然「買う」、「知る」もイベントにおける楽しみの1つですが、推しと一緒に踊る、同じ企画で遊ぶ…「体験できる」が豊富なにじフェスは、現地での思い出をより深めるイベントといえます。
さらに等身大パネルでの記念撮影、ぬい撮りをすれば思い出を形にできます。こうした楽しみこそが、ファンを熱狂させ、たとえ行列でも笑顔でいられる理由の1つなのでしょう。会場に足を運ばなければわからないことを知れた、大変有意義な取材となりました。
イベント後にはにじさんじ甲子園や大型ライブなどの告知もされており、今後も目が離せない展開が続きそうです。
参考
https://fes.nijisanji.jp/2026/
https://magazine.anycolor.co.jp/articles/1330426303
https://magazine.anycolor.co.jp/articles/20828537



























