Meta社の公式メタバース「Horizon Worlds」が、日本国内から遊べるようになりました。すでに2021年に北米圏を中心にリリースされていましたが、その後数年間は、プレイできる地域は一部地域に限定されており、最近になって、ようやく日本からでもアクセスが可能になった経緯があります(※2024年7月現在、日本ユーザーには順次開放となっており、一部のユーザーには開放されていない場合もあります)。
そのため、Meta社の提唱するメタバースとは具体的にどのようなものなのか、今一つ実感を持てないままでいたのも事実。日本では、VRChatやRobloxなどに注目が集まっている状況ですが、果たして、それらのプラットフォームと同様に盛り上がりを見せることになるのでしょうか?
本記事では、筆者がMeta Quest Proを使って体験してきた、「Horizon Worlds」の内容をお伝えします。
アバターには“脚”がある
起動すると、まず眼の前にメインメニューが開き、ワールドを選択したり、開催中のイベントを確かめたりできます。
ひとまず、自分のアバターの確認からはじめてみます。メニューから、アバター用のストアにアクセス可能で、無料配布されているアイテムをそのままアバターに装着できます。「VRChat」のような、「Unity」を介してアバターをアップロードする作業などは必要ありません。
そもそも「Horizon Worlds」では、Meta Questシリーズを購入したときに設定した“Metaアバター”を使います。そのため、アバターのデザインを変えたいときはQuestのメインメニューでいつでも調整できます。外観を気にする人は事前に(再)調整しましょう。
さて、あらためてアバターの容姿を確認してみましょう。その時点で気づけると思いますが、現在の「Horizon Worlds」には、“脚”があります。リリース当初、このメタバースでは、アバターに脚がないことが殊更に注目され、ネタとして取り沙汰されることもありましたが、そうした心配は現状ないと言えます。
また、アバター全体のデザインは基本的に、リアルの人間をデフォルメしたようなシンプルなもの。他プラットフォームにあるような、完璧に別の動物になったり無機物になったりはできないのも特徴です。基本的な体系の調整(痩せ型、ぽっちゃり型)や髭、肌感など、人の身体の再現には凝れるようになっています。そういった意味では、このメタバースは、比較的フォーマルなコミュニケーションなどに向いているものと言えるかもしれません。
(アバターストアでジャケットをゲット。その場で着用できます)
(アバターの表情は、ヘッドセットの顔認識機能を利用して操作できます)
今は英語圏のワールドがメイン、日本向けワールドは少なめ
ワールドは、主メニューに表示される“レコメンド”から選ぶか、自分で検索ワードを入力して表示された結果から選びます。初めて遊ぶ人はMeta社の公式ワールド「Horizon Central」にまず向かってみるのがオススメです。
「Horizon Central」は、「Horizon Worlds」のチュートリアルワールドに近い場所で、他ワールドへのポータルや触って遊べる帽子や傘といった小道具が設置されています。ここでプレイ感覚に慣れてから、他ワールドに移るのが良いでしょう。
「Horizon Worlds」では、ワールドを選択して「入室」を選ぶと、そのままパブリック(他ユーザーもいる)のルームに移動します。現時点では「Horizon Worlds」を遊んでいるのは英語圏のユーザーが多く、ワールド入った途端、全方向から英語が聞こえてくるという場合があります。
筆者は日本時間の昼と夜にテストプレイしたのですが、お昼の時間帯には「Horizon Central」に、かなりの人が集まっている印象を受けました。ユーザー層については(声を聞いた限りでは)若めのプレイヤーが多かった感覚です。
ワールド内は、(筆者のように)単独で散策している人と、グループで動いている人たちが混在しており、「VRChat」のパブリックインスタンスに近い雰囲気です。テスト中、話しかけられることはありませんでしたが、積極的に喋っている人はいたので、会話する準備はしておいた方がよいかもしれません。なお「Horizon Worlds」で使用できるのはMeta社の公式アバターに限定されるので、「VRChat」のような“アバターを使った荒し行為”などはありませんでした。
1人もしくは友人たちのみでゆっくりと遊びたい場合は、入室時に詳細メニューを開き「非公開セッションを開始」を選んでください。このモードでは、招待したフレンド以外は入室できないようになります。
今回筆者は、その他に「Fireworks Show(4th of July)」と「Wild Wild Quest」といったワールドを訪れてみました。
「Fireworks Show(4th of July)」は、花火が空に打ち上がるというパフォーマンス系のワールド。入ってボタンを押すと演目が始まります。
今回は1人で眺めていましたが、空に広がる花火のバリエーションも多く、フレンドと一緒に見ると、より楽しめそうです。また、地面に敷かれているシート部分は当たり判定が工夫されており、上に乗ると座った(少し沈んだ)姿勢になるのが印象的でした。ゆったり誰かとチルアウトしながら過ごすのには良いワールドと言えるでしょう。
「Wild Wild Quest」は、西部劇風のシューティングが楽しめるワールドです。プレイヤーにはデフォルトでピストルが与えられ、これを使用して他の参加者と戦うことができます。
軽く遊んだところ、ゲーム自体はしっかりと機能していたのですが、銃を撃つとかなりラグがあり、至近距離でやっと命中する状況でした。アクション性のあるワールドで快適に遊びたい場合は、ラグが短そうな日本を含むアジア圏の人で集まる必要がありそうです。
ちなみにメインメニューでは、ゲームワールドの“特集”も行われており、人気ワールドへ簡単にアクセス可能。今回紹介した場所以外にはホラーや怪獣との闘い、レース系といったワールドが公開されており、バリエーション豊かなゲームを体験できます。ただし、多くのワールドはマルチプレイが前提になってるので、パブリックで入るか、あらかじめメンバーを揃える必要がありそうです。
のんびりと遊びたい場合、個人的には、釣りワールド「Bobber Bay Fishing」がオススメです。フィールドに登場する魚たちを釣っていくというシンプルなワールドですが、すべてのプレイングを1人で完結できるので、自分の遊びたいペースでゲームを楽しめます。
なお、現在のところ、「Horizon Worlds」では日本人が集まる(VRChatのJPチュートリアルのような)ワールドは、まだ形成されていないようです。筆者は「JP」や「JAPAN」で検索したのですが、“集会場”のようなワールドはヒットしませんでした。
「Horizon Worlds」はパブリック状態の場合、入室する部屋(インスタンス)を選べないようなので、その辺りも影響しているのかもしれません。基本的には、どの地域からでもパブリックに参加するのが前提のメタバースになっている点には留意すべきかもしれません。今後、さまざまな言語圏のユーザーが増え続けていくことによって、独自のコミュニティやクラスターが生まれる可能性もあります。
(「JAPAN」で検索して表示されたワールド)
まとめ:初心者でも体験しやすい“手堅い”メタバース
「Horizon Worlds」は、Meta社が公式展開する「メタバースらしいメタバース」です。筆者が確認した限りでは、UIなどの日本語翻訳も問題なく行われていました。ワールドによってパフォーマンス(FPS)が極端に悪化することが無いのも良いポイント。FPSは、低下するとVR酔いを誘発するケースが多いのでMeta社も、かなり気を配ったのではないでしょうか。
基本的なプレイ感覚は「VRChat」に近いですが、「手のポーズでカメラが起動する」「周囲の声を“音を残したまま理解できなくする”オプション」といった、「Horizon Worlds」独自の要素も導入されています。全体的に、プレイ中に発生する(可能性のある)不快感やストレスを可能な限り抑えることで、Questを買ったばかりの人でも体験しやすい“手堅さ”を実現することを目標にしているように感じました。
そのように土台はしっかりしているので今後、国内のVRユーザーが定着すれば、より日本人にとって遊びやすい環境が出来上がりそうな印象を受けました。ただ今の段階に限って述べると「ワールド探索は楽しめるものの、友人同士でのコミュニケーションを楽しむのは難しい」というのが正直な感想です。
まず課題なのは「日本人同士」が出会える“導線”が少ないことです。「VRChat」の場合、一定以上の日本人コミュニティが確立しており、チュートリアルワールドのような、1人でメタバースについて学んだり、日本人が会いやすい場所があります。もし「Horizon Worlds」で同様の環境が整えば、国内ユーザーも増加し、定着していくのではないでしょうか?
個人的な意見としては、将来、Meta社の技術力で“自動翻訳ツール”のようなシステムが導入されることがあれば、「国内外のユーザーが積極的に交流しやすいプラットフォーム」のような、他のメタバースとは違った路線で成長できる可能性を感じました。そうなれば、国内企業による利用も進むでしょう。
(聞きたい時だけ言葉が“しっかり聴こえる”というユニークなシステム)
「Horizon Worlds」は、Webブラウザやスマートフォンからも体験できます(スマホ版はQuest公式アプリからプレイ可能)。今のところ、日本ユーザーの間でも参加できるのは限られているようですが、もし開放された際には、ぜひ一度訪れてみてください。
執筆:井文