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話題 2022.08.11

今はなき伝説の国産メタバース「meet-me」とは何だったのか? 当時を知るユーザーに話を聞いた

2008年から2018年までの約10年間、運営し続けられていた国産メタバースを知っているだろうか? その名は「meet-me」。株式会社ココア(※トランスコスモス、フロムソフトウェア、産経新聞社の3社による合弁会社)の運営していた3D空間のメタバースサービスだ。

現実の日本の国土をベースに、東京都23区を再現したバーチャル空間となっており、土地をレンタルして自分のデザインした家を建設したり、アバターで他のユーザーと交流したりが可能だった。

サービス運営中には公式によるイベント行事が積極的に行われていたが、そもそものアクティブユーザー数が少なく、世の中で話題になることは少なかった。

しかし、2016年頃に、ニコニコ動画のユーザーたちが注目しはじめ、バーチャル空間のゲームで遊んだり、イベントに参加したりといった様子を撮影した動画が次々と投稿。それにあわせて、徐々にユーザーが増え、独自の文化が活発化していた。サービス終了間際には、終了までの思い出を記録した動画が多数投稿されていたことも印象的だ。

現在アクセスすることは不可能で、その当時を語る人も少なくなりつつある。そこで、当時を知るユーザーのひとり「まうすでる」さんに体験していた頃の思い出を語っていただいた。

――いつ頃から「meet-me」の存在を知りましたか? また実際に体験したきっかけもお聞かせください。

まうすでる:
2007年頃です。当時SecondLifeなどのメタバースが世間を賑わしていて仮想空間というものへの興味が強かったのですが、その中でmeet-meを知りました。

はじめたきっかけは09年ごろにパソコンを買い換えたことです。それまで興味はあったものの、持っていたパソコンではまともに動作せず、ただテレビ番組やCMのmeet-meを眺めていただけでした。

――「meet-me」の最初の印象はどのようなものでしたか? どのような感じで遊んでいたかもお聞かせください。

まうすでる:
最初の印象は、過疎の一言に尽きます。

また、meet-me内の天気と時刻が現実の時刻と天気に連動していたのですが、日が暮れてからログインすることが多かった当時は、meet-meでも日が暮れていたため暗い世界という印象も持っていました。

初回ログイン後に読み込みが終わり世界が広がると、誰もいない代々木公園の前に突っ立っていたことを覚えています。『来年には終わっている』なんて当時から言われていました。

meet-meは運営スタッフが定期的に初心者の案内をしていたのですが、初めてすぐの頃は案内場所で釣りをよくしていた記憶があります。

CMで宣伝していたので観光もしてみましたが、渋谷や銀座など外観はよくできているエリアもあるものの、ほとんどの建物は中に入れないハリボテで、多くの場所は何もない平地だったためすぐに飽きてしまい、公式イベントの時にポイント目当てでログインすることが多かったです。

始めてからしばらく経って知り合いができてからは、動画チューナーというゲーム内アイテムでYouTubeなどの動画をみながらテキストチャットでおしゃべりしたり、恐竜と戯れるなど様々なコンテンツをみんなで遊んだりすることも増えました。

作業用ゲームとも呼ばれていたような世界なので、meet-meで何かして遊ぶというよりは、ただなんとなく集まって駄弁っていたことが多かった気がします。

meet-meには捕まえた魚や虫や植物などを図鑑に登録するゲーム的なやり込み要素や、それら集めたものをカードにして戦うカードバトル、フロム味の強い冒険者の砦と呼ばれていたアクションRPG、家の内外装を作る建築やアバター機能用いて誰か(キャラクター)を再現するなど、それらに力を入れている人もいました。

日課と呼ばれていた抽選所の巡回と水やりなどの作業は行なっている人が多かったと思いますが、メタバースというだけあって決まった目標などはなく、それぞれ好きなように過ごしていたと思います。

――「meet-me」の中でとくに印象に残っている出来事や思い出のコンテンツは何でしたか?

まうすでる:
meet-meの中のモノで、特に印象に残っているものは、『カギのなる木』と呼ばれていたアイテムです。

これは部屋に配置できる観葉植物なのですが、水やりを行うことで苗から徐々に成長しゲーム内に配置された宝箱を開けるための鍵を定期的にカギの日に実らせ、収穫すると苗に戻ります。

水やりは誰でもできたので、知人の家や隣近所に水やりする人がいましたし、カギの日までに成長させるために掲示板で水やりをしてくれる人を募集している人もいました。

適当に入った家で家主と鉢合わせして話題に困っても水やりしてた言ってしまえたり、集まった人の家を巡回して水やりするツアーをしている人たちも居て、ほかの人の家に入るハードルを下げて、交流を生み出していたmeet-meの面白いアイテムの一つとして思い出深いです。

――2016年頃、「meet-me」はニコニコ動画ユーザーから注目され、観光案内動画やコンテンツを紹介する動画も数多く投稿されていたイメージです。体験ユーザーの数も増えていたと思いますが、当時のことなどで記憶に残っていることは何かありますか?

まうすでる:
色々な人が増えて楽しくなりました。投稿される動画も独特なものからセンスの良さを感じるものまで様々で、面白かったです。

ニコニコ動画で注目される直前は、目に見えてアクティブユーザーが減っていたのですが、ある日突然新規ユーザーだと分かるシンボルをつけているアバターが、次々に現れたのは、meet-meで印象に残っている出来事です。

全盛期ほどアクティブユーザーの数は戻らなかったようですが、あちこちに人が増え家が立ち並んだエリアも増えて、meet-meが全体的にフレッシュな印象になったと自分は感じました。

イベントなどは苦行と評されることが多い上に基本的に使い回しだったのですが、新しく来た人たちがクソゲーと言いながらも、meet-meを味わっているのは微笑ましいものでした。
積極的に身内向けの非公式イベントを開いて遊びを見つけていたのはすごいと思いました。

こっそり混ざって遊んでもらいましたが、とても楽しかったです。

ちなみに、このユーザの増加がmeet-meを多少延命させたと、ログインしていた運営会社Co-Coreの社長が話していました。

――あらためて「meet-me」の魅力、面白さはどのようなところにあったと思いますか? また現在盛り上がっているメタバースと比較しての感想などありますか?

まうすでる:
meet-meには、たまたま色々な人が集まっていて、それが面白さになっていました。

先発のSecondLifeと比較しても、ユーザー体験が貧弱だったのですが、その中で工夫して遊んだり、目的を見つけることができるのが魅力だったと思います。

現代の自由度の高いメタバースを体験した今思えば、仮想世界としては不自由だったからこそ、リアルから切り離された自由な世界になっていたのではと感じています。

現在盛り上がっているメタバースと比較すると、良くも悪くも多くの人と出逢いやすかったです。23区が地続きの単一のワールドで、同じ場所に自分のアバターで千人くらい集まれて、会話することもできる仕様だったので。もちろん自宅などプライベートな場所はパスワードなどでアクセス制御できました。

地続きと言う特徴は移動する時にも現れていて、その気になれば徒歩で23区の端から端までシームレスに移動することもできたので、お出かけがかなり気軽だった気がします。

長距離移動する場合は、近くの駅やバス停に行って目的の駅などにテレポートしていました。住所や駅名で集合できたのは、今思えば面白かったです。

――ありがとうございます。

写真提供:まうすでる


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