前回「体験レポ編」で紹介したGear VR向けゲーム『Land’s End』。今回は『Land’s End』を手がけたustwoのプロデューサー、Dan Gray氏のインタビューをお送りします。非常にチャレンジングなゲームづくりを進めるustwoのゲーム制作への想いが詰まっています。
公式トレーラー
https://www.youtube.com/watch?v=XwJ9fiH2Ksw
「VRだからこそ楽しいゲーム」を目指して
――大ヒットした『モニュメントバレー』の後、VRゲームの開発を始めたのは何故でしょうか。
- Dan:
- モニュメントバレー2を作ることはあまりに簡単な選択肢でした。僕らは常に何か新しいことに挑戦したいと思っています。モニュメントバレーで僕らが目指し、挑戦したことは、「iPadで遊ぶからこそ楽しいゲームを創ること」でした。僕らはそれを実現出来たと思っています。そして、面白そうだったのがVRです。「VRだからこそ楽しいVRゲームを創ること」に挑戦してみようと思ったのです。GearVR向けのゲームでそういうものにまだ出会ったことはありません。
世界的に注目されたスマホゲーム『モニュメント・バレー』
――かなり前から開発を始めていたのでしょうか。
- Dan:
- 1年半前から開発を始めました。チームも最初は3人でしたが、3ヶ月前に一気に増え、今では20人位で開発を行っています。10月30日のローンチに向けて開発に充てられるのは、後3週間位しかなく、大詰めです。Oculusからもパートナーとしてフォードバックをもらったりしながら開発を進めています。
――『モニュメント・バレー』をVRに移植することは考えなかったのですか?
- Dan:
- 正直に言うと、最初はそういう案もあって試してみました。でもモニュメントバレーは、タブレット用に最適化したゲームです。うまくいきませんでした。VRに適したゲームを作るには、移植ではなくて一から作る必要があります。
――VRに適したゲームとはどういうゲームなのでしょうか。
- Dan:
- VRは現実ではありません。でもそこを現実だと感じてしまう、その感覚をとにかく大事にしたかったのです。
――コントローラーとタッチパッドを一切使わず、ただ「見る」だけの操作にはびっくりしました。
- Dan:
- たとえ、Gear VRの側面を指で擦るというシンプルな操作でも、ヘッドセットに指が触れただけで現実に意識が戻っててしまいます。VRで遊んでいるときは、現実のことを思い出させないほうがいいですよね(笑)僕らは完璧なVR体験を目指したい。だから、『Land’s End』は目線だけで操作するのです。
誰もが楽しめるVRゲームづくり
――より没入感の深いOculus RiftではなくてGear VRを選んだのはなぜでしょうか。
- Dan:
- 僕らは『Land’s End』を誰にでも、どこででもVRを体験してもらいたい、と思っています。『モニュメント・バレー』もそうでした。ゲームが好きではない人にも遊んでほしいと思ってゲームを作っています。プレイした後、ゲーム好きでもない人に「やってみてよ!」ってすぐに被せたくなるようなゲームにしたいですね。
ゲーム自体も非常にシンプルにして誰でもとっつきやすくしました。そう考えるとスマートフォンがあれば手軽にできるGear VRは最適な選択肢でした。高いパソコンも必要ないですし、煩わしいケーブルもないですし、どこでも友達や家族に被せることができます!
――確かに『Land’s End』でも前作と同じく操作性のシンプルさや雰囲気の柔らかさなど、誰でも遊べる工夫を随所に感じました。そんな本作『Land’s End』のコンセプトは何でしょうか。
- Dan:
- 『Land’s End』の初期コンセプトは、現実にはありえないような美しい風景を体験することでした。VRで体験するアドベンチャーゲームです。文明が滅びた後の世界で、美しい風景の中を歩きながら、プレイヤーは過去の亡霊と出会い、世界の謎に迫っていきます。
――『モニュメント・バレー』と同じく文字ではストーリーが語られません。いまどこにいるか、何をしなければいけないのか、説明はありませんね。どうやって語られるのでしょうか。
- Dan:
- プレイヤーは自然と理解できると思いますよ。『Land’s End』で描かれる世界は非常に現実的(リアリスティック)です。そして何をしなければいけないのか、ゲームを始めればすぐに分かります。
―――『モニュメント・バレー』でも同じように最小限の説明にとどめていましたね。
- Dan:
- Gear VRではかなり没入感の高い体験をすることができます。ストーリーのことは気にしなくていいような体験にしたいと思っています。この『Land’s End』は多くの人にとって、始めて遊ぶVRゲームになるでしょう。ストーリーを気にするのではなく、体験していく中で自然と分かるように、ゲームの中のいたるところを工夫しています。僕らはゲームデザインを、プレイしていても分からないように、透明にするのです。ミニマルなゲームデザインですね。
――操作はシンプルですが、石版を動かして道筋を作り、光をつないでいくパズルも楽しかったです。
- Dan:
- あのパズルは星座を意識しているんです。僕らはスターラインパズルと呼んでいます。
――そんな風に頭を動かすだけで石版を動かしたり、光を操れてしまうプレイヤーは誰なんでしょうね。超能力者?魔法使い?
- Dan:
- いい質問ですね。僕らは設定(答え)を用意していますが、「自分が誰なのか」はぜひプレイした皆さんに考えてみてほしいと思っています。
――キャラクターも全然登場しないですよね。
- Dan:
- そうですね。登場するのは、亡霊くらいです。
――あれ、亡霊がいるんですか。デモにはまだ出てきませんでしたが…話したりするんでしょうか。
- Dan:
- 話したらいいですよね、僕らも話したらいいのではないかと、思っていますよ。あと3週間ですからね(笑)
――10月30日のリリースを楽しみにしたいと思います。今回はありがとうございました。