マイクロソフトは、バルセロナで開催されているMWCにて新型MRデバイスHoloLens 2を発表しました。2016年に発売された前世代機と比べて様々な点を改良しています。全体的な性能向上のほか、多くの機能を搭載し、没入感、快適性、そして産業での利用しやすさが追求されました。商用版の価格は3,500ドル、アメリカをはじめ販売国には日本を名前を連ねています。
HoloLensはマイクロソフトがMixed Reality(複合現実)を実現するデバイスとして2015年に発表されました。物理的な現実にバーチャルな3Dオブジェクトをあたかもそこに存在するかのように見せることができるデバイスです。 2016年に開発者版が発売されて以降、日本でも2017年に発売。産業利用を中心にワークフローに変革をもたらすデバイスとして実験的な導入が進められてきました。
HoloLens 2のスペック
発表会に登壇したHoloLensの生みの親アレックス・キップマン氏によると、HoloLens 2は3つの点で前世代機を超えるMR体験を実現しています。 ・没入感(Immersion) ・快適性(Confort) ・すぐに使える(Time-to-value )
没入感を高める広い視野角で高精細なグラフィックス
HoloLens 2では片目2Kの解像度を実現しています。初代HoloLensに比べ、対角での視野角が2倍以上広くなり、ピクセル密度も2倍以上になりました。広視野角で高精細なグラフィックスが実現しています。 また前世代機では非常に限られていたジェスチャ操作が大幅に改善し、両手の10本の指の動きを認識します。これにより、表示されている3Dオブジェクトを文字通り掴んだり、干渉することができるようになりました。 (発表会では、つまみを掴んで動かしたり、大小のボタンに重みをもたせたUIも紹介。最後には現実には存在しないピアノを弾く様子も披露された。)
さらに視線追跡機能の追加により、視線による操作や採虹彩認証によるログインが可能です。
3倍快適を謳う
HoloLens 2には様々な性別、人種の数千人の頭の形状を元にした設計が施されています。後頭部でダイヤルを回して固定する形式は多くのVRヘッドセットでも主流の固定方法です。
(後頭部のダイヤル)
(電源は後頭部側面に、バッテリーやプロセッサーは後頭部に)
また、ディスプレイは不要な時は上に跳ね上げることのできるフリップアップを採用しています。 キップマン氏は前世代機に比べ「3倍快適になった」として、より長時間快適にMRの体験を続けれるようになったと語りました。
産業用にすぐに使えるアプリを増加
HoloLens 2は産業向けに設計されており、箱を開けたときから使えるアプリケーションがマイクロソフトにより提供されます。 現場での用途としてニーズが高い「レイアウト」、「リモートアシスタント」がすでにHoloLens用にDynamics 365を通じて提供されていますが、これもHoloLens 2に最適化されて利用可能になります。また、作業内容などマニュアルや操作方法を表示する「Dynamics 365 Guides」も発表されました。
Azureとの連携で大幅強化
またマイクロソフトが展開するクラウドサービスAzureとの連携により、「Spatial Anchor」(スペーシャル・アンカー)と「Remote Rendering」(リモート・レンダリング)の2つの開発ツールが発表されました。 Spatial Anchorは、キップマン氏が「Internet of holograms(ホログラムのインターネット)」と呼んでいる機能で、空間情報を端末間で共有するものです。iOSのARKitやAndroidのARCoreとも連携し、プラットフォームを超えて空間情報を複数人で共有できるほか、空間への保存が可能です。 Remote Renderingは、HoloLens単体では難しい高ポリゴンの3Dモデルをクラウド上でレンダリングする機能です。HoloLens 2では、プロセッサにクァルコムのSnapdragon 850が採用されています。発表会ではHoloLens単体では10万ポリゴンでしか表示できない3DスティックモデルをRemote Renderingを使って1億ポリゴンで描画する様子が披露されました。 (左が10万ポリゴン、右が1億ポリゴン)
HoloLens 2はカスタム可能
産業用の現場ではヘルメットなどの装備とHoloLensを組み合わせる試みがされてきました。HoloLens 2では、カスタマイズが可能なHoloLens 2 Customization Programが設けられます。 (発表会ではTrimble社のカスタムHoloLens 2が披露された)
オープンなプラットフォームを目指すHoloLens
マイクロソフトは、HoloLensをより“オープン”にしていくことを明らかにしました。オープンになるのは、ストア、ウェブブラウジング、プラットフォームの3つです。
アプリの配信はマイクロソフトの専用ストア以外でも可能となります。キップマン氏は「Steamのようなプラットフォームでも配信できる」と話しました。
ウェブブラウジングはマイクロソフトが提供するEdge以外にもブラウザが利用できることを意味します。合わせてMozillaがFirefoxのHoloLens版を発表しています。
プラットフォームは、開発者に向けてより開かれた開発環境を提供します。発表会では、エピック・ゲームズのCEOティム・スウィーニー氏が登壇し、Unreal Engine 4がHoloLens 2に対応することを発表しました。
料金プランは2種類
「Dynamics 365 Remote Assist with HoloLens 2」は月額125ドルで、商用版のデバイス単体では3,500ドルで提供されます。 予約は2月25日より開始されていましたが、22019年3月4日時点、公式サイトからプレオーダー案内ページへのリンクは削除されています。
HoloLens 2スペック
公式サイトで明らかになっているスペックは以下の通りです。
ディスプレイ
光学方式 | シースルー・ホログラフィック・レンズ(ウェーブガイド方式) |
解像度 | 2k 3:2 light engines |
ホログラフィック密度 | >2.5k radiants (light points per radian) |
目をベースにしたレンダリング | Display optimization for 3D eye position |
センサー
ハンドトラッキング | ー |
アイトラッキング | ー |
デプス | Azure Kinect sensor |
IMU | 加速度センサー、ジャイロセンサー、地磁気センサー |
カメラ | 8MP(静止画) 1080p30 (動画) |
オーディオ&マイク
マイクアレイ | 5ch |
スピーカー | 内蔵、空間音響対応 |
人間の動きの把握
ハンドトラッキング | Two-handed fully articulated model, direct manipulation |
アイトラッキング | リアルタイムトラッキング |
音声認識 | Command and control on-device, Natural Language with internet connectivity |
環境認識
6DoF tracking | World-scale positional tracking |
Spatial mapping | Real-time environment mesh |
Mixed reality capture | Mixed hologram and physical environment photos and videos |
プロセッサと接続
SoC | Qualcomm Snapdragon 850 Compute Platform |
HPU | 2nd generation custom-built holographic processing unit |
WiFi | 802.11ac 2×2 |
Bluetooth | 5.0 |
USB | USB Type-C |
装着
・Single size(サイズは1種類)
・Fits over glasses(メガネでも装着可能)
ソフトウェア
・Windows Holographic Operating System
・Edge
・Dynamics 365 Remote Assist
・Dynamics 365 Layout
・Dynamics 365 Guides
・3D Viewer ・OneDrive for Business
(参考)マイクロソフト公式
2019/2/25 15:10 日本からの予約に関する記述を追記しました。
2019/3/4 13:06 予約に関する記述を修正しました。