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ゲーム・アプリ 2021.10.17

人気のスマホパズルゲーム「The Room」がVRでも大ヒットした理由  開発の舞台裏を聞く

2012年にスマホ向けアプリとしてリリースされた脱出パズルゲーム「The Room」。世界各国で遊ばれ、シリーズ累計1,000万ダウンロードを記録しています。2020年3月にはVR版「The Room VR: A Dark Matter」がリリース。Oculus Storeで「5つ星」94%と、高い評価を得ています。

スマホゲームからのVRゲーム化という異色の作品ですが、開発にはどのような経緯があったのでしょうか? 「Fireproof Games」取締役Barry Meade(バリー・ミード)氏に、VRゲーム開発の裏側について聞きました。

Fireproof Games取締役Barry Meade(バリー・ミード)氏インタビュー

プロフィール:
1992年、PC対応ヘルス向けタイトル 「エデュテインメント」発表を皮切りに、「Magic Carpet 1&2」「Syndicate Wars」「Dungeon Keeper」などのデザイナー、アーティスト、アニメーターとして活躍。2008年に友人5名とアートチーム「Fireproof Studios」を結成し、2012年に「The Room」をリリース。60カ国以上でゲームアプリランキング1位を獲得している。

――パズルゲームとして大ヒットした「The Room」シリーズの制作のきっかけをお聞かせください。

バリー・ミード氏(以下、ミード):

2011年、Fireproofは10人の小規模なフリーランスのアーティストチームで、他の人のゲーム制作を手伝って生計を立てていました。ただ私たちには「いつか自分たちのゲームに挑戦する」という夢があったのです。(ゲームを制作するなら)PlayStationやXbox用に開発したいと思っていたのですが、(当時は)十分な資金が無く、より手頃な価格のモバイルゲームを選びました。

そもそもモバイルゲームについて何も知らなかったので、(制作した「The Room」は)一般的なものとは非常に異なるゲームになりました。雰囲気のある部屋がゲームの舞台で、斬新な方法でタッチスクリーンを使用し、非常に詳細で美しい3D映像となっています。また無料ではなく、リリース時にはプレイするためには4.99ドルかかりました。(その結果)数年後、私たちは6つのフルゲームを作成し、リリースしました。

――その後VR版として発表された「The Room VR: A Dark Matter」も、ヒット作と言って良いかと思いますが、その成功の要因は何だったのでしょうか?

ミード:

私たちが手がけるゲームのアイデアは「ヒットする可能性がある」と信じて選んでいますが、これはヒットすると「仮定した」場合とは異なります。プレイヤーの方々に楽しんでいただけるゲームを作るために、できる限りのことをして、発売時にはベストを尽くしたいと考えています。

「The Room VR」の場合、このゲームが成功すると確信した理由は、何年も前から、モバイルシリーズの「The Room」の触覚的でインタラクティブなパズルが、VRのリアルな空間に非常によくマッチすることがわかっていたからです。しかし「The Room」は制作費が高く、マーケティング予算のない小さなスタジオだったので、VR市場が十分に成長して元を取れるようになるまで、5、6年は待つ必要がありました。

最終的に「The Room VR」の売上が好調だったのは、私たちの得意とする手触りのあるパズルのクオリティを、プレイヤーの楽しんで過ごせるミステリアスな新3D空間に変換できたからだと思います。

――本作は、レバーやスイッチなどの仕掛けを手で掴んだり、引っ張ったりと、自分の手を動かすことに特化したパズルゲームという印象です。こうしたシステムを採用した理由はどういったものでしょうか?

ミード:

「The Room」シリーズは、最初にモバイルデバイス上で有名になり、VR専用タイトルを作成する前に、4つのゲームを発表しました。モバイルで人気になった理由の1つは、私たちがモバイルデバイス上のタッチでのインタラクションを強調し、タッチスクリーンでの操作を中心としたパズルの多いゲームを作成したからです。

触れて操作するオブジェクトにリアルな物理現象を加えることで、プレイヤーはマシンがタッチスクリーンのガラスのすぐ下にあるかのように、「半ば現実」であるかのように感じはじめました。

2015年頃から「The Room」は、VRで非常にうまく機能すると思っていました。なぜなら、このゲームシリーズは、いろんな種類の物体や機械を引っ張ったり、押したり、回したり、ダイアルしたり、持ち上げたり落としたりするインタラクションを中心にしていたからです。

しかし(当時は)このゲームがVRで非常にうまく機能することは分かっていたものの、そのような小さな市場に向けて作るには費用がかかり過ぎました。2020年頃になってVR市場が十分に成長してきたと感じ、VR向けのゲームを実行しようと考えました。

 ーー1908年のイギリス・ロンドンの施設が美しいグラフィックもファンから好評です。ゲームのビジュアルアートにはどういったこだわりがありますか?

ミード:

そう言っていただけるとうれしいです。ありがとうございます! なぜビクトリア時代の設定とビジュアルを選んだかといえば、一作目の「The Room」を制作したときに、このゲームを少し不気味なものにしたいと考えたからです。

ホラーゲームそのものを作るわけではなく、雰囲気を不気味にしたいということです。ビクトリア時代のビジュアルは、その求めていた気味の悪さにぴったりだと感じました。有名なホラー小説家のハワード・フィリップス・ラヴクラフトも、ビクトリア時代を多く引用していますね。

もともと弊社は6人のアーティストによって設立されたため、ビジュアルを非常に重要視しており、ゲームの中に、美しいオブジェクトや装飾を取り入れることを楽しんでいるんです。

ーーゲーム制作時に特に力を入れた部分や時間をかけた部分はどういったところでしょうか?

ミード:

弊社には経験豊富な開発者や、25年前からキャリアを積んでいる人もいますが、VRでゲームを制作するのは初めてで、準備はできていませんでした。
開発の最初の6~8ヶ月は、プレイヤーの位置や移動、オブジェクトをゲームの世界に配置する最適な方法を理解するだけでなく、アクセスしやすくシンプルなユーザーインターフェイスにフォーカスすることに多くの時間を費やしました。

(プレイヤーにとっての)オブジェクトの大きさとやスケールといった側面は、脳を混乱させ、時には直感に反することもあります。私たちがフラットゲームで使っていたトリックの多くは、VRでは最適ではありませんでした。例えば、カメラを動かしてカットシーンやレベルリビールを表示するといった演出です。プレーヤーの頭にカメラがついたことで、それができなくなり、より「プレイヤーに見てほしいものに注目させる方法」を考えなければなりませんでした。

ーーOculus Quest 2の登場はどんなインパクトがありましたか?

ミード:

「A Dark Matter」は2020年初めに初代Oculus Questでリリースし、ゲームはかなりよく売れましたが、Oculus Quest 2のリリースで大幅に売り上げが伸びました。ゲームがリリースされてから何ヶ月も経っていたので、リリースサイクルの後半に販売が急増するとは予想していませんでしたが、(Quest 2の影響で)達成できました。とても素晴らしいサプライズで、VR市場を根本的に変えたと思います。

Oculus Quest 2はVRを体験するのに規格が最適に近いと思います。ワイヤレスで使いやすく、ハードウェア的にも非常に強力です。さらに、真のモバイルゲームプラットフォームとして、どこでもプレイできます。非常に多くの特性を持っているので、より強力に進化し、ハードウェアがさらに競争を引き起こすことを願っています。

ーーVRゲームだからこそ実現できることはどういったことだとお考えですか? VRゲーム全般の魅力についてお聞かせください。

ミード:

VRの中の 「存在感」 や、ゲームの世界にいるように感じること、ただ見ているだけではないことなど、多くのことがありますね。しかし、それだけではありません。バーチャルリアリティは基本的にゲーム体験を強化するものだと思います。

(VRは)魔法のような不思議な現実感が感情を高めてくれて、まるで別世界に1~2時間旅行したかのような気分になれます。VR以外でその感覚を味わえるゲームをプレイする方法は無いといえるでしょう。

ーーありがとうございました。

「The Room VR: A Dark Matter」の購入はこちら。
https://www.oculus.com/experiences/rift/2009355295817444/


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