VRChatやclusterで増え続けているミュージックライブやDJイベント。さらにMetaの Horizon WorldsもVR180映像のインポートに対応し、XRヘッドセットは「音楽と触れ合うためのデバイス」として身近になってきた、といえます。
とはいえ気になるのが……そう、ヘッドセット内蔵スピーカーの音質です。
スピーカーレスの小型モデルを除けば、そこそこ良いサウンドを鳴らすXRヘッドセットが増えてきました。とはいえ「内蔵スピーカーにしては」という前置きを外せないのが現状。耳をすっぽり覆うヘッドホンや、耳道を埋めるイヤホンと比べれば、音の純度も音圧もまだまだ差があります。
いつかは「NTTソノリティ nwm(ヌーム)」のように、開放状態でも高品質なサウンドを届けられる技術が標準になるはず……と期待しつつ、現時点でベストな体験を求めるなら外部イヤホン/ヘッドホン併用が鉄板です。
そこで登場するのが、日本のオーディオメーカー finalのワイヤレスイヤホン「VR3000 Wireless」。その名に「VR」を関するだけあって、バーチャル空間との相性も気になるところ。今回はQuest 3Sと組み合わせ、実際にVRで音楽を聞いてみました。さて、その品質はいかがなものでしょうか。
合わせて、ボイスチャット用途を想定してマイク品質もチェックしてみました。
低遅延接続が可能な「VR3000 Wireless」
「VR3000 Wireless」は、Bluetooth接続のほか、付属しているUSBトランシーバーを用いたワイヤレス接続も可能なイヤホンです。公式には20ms(0.02秒)以下の超低遅延接続が可能とされており、音の遅れが目立つワイヤレスイヤホンのなかでは極めてVR向きのモデルといえます。
それもそのはず、「VR3000 Wireless」はFPSや音楽ゲームでの利用を想定したゲーミングイヤホンなんですね。
対応機種はUSB-C端子を搭載したPCやスマートフォン、PlayStation 5やNintendo Switchなどの家庭⽤ゲーム機となっていますが、筆者が確認した限りはMeta Quest3/3S、PICO 4/PICO 4 Enterpriseでも動作しました。近年のAndroidベースのOSを搭載したデバイスであれば問題なく動かせるでしょう。
幹線道路や鉄道の線路に近い環境ならば頼もしく感じる、ノイズキャンセリングモードも搭載しています。精度に関しても及第点。この分野で最強種といえるソニーやBOSEのノイズキャンセリングイヤホンと比較するとマスキングしきれない音がありますが、エアコンや冷蔵庫、PCなどのノイズも低減してくれるので、自宅で運用することが多いXRヘッドセット用の音響機器とするならば、十二分な性能を発揮してくれます。
厚みのあるリズムが音楽の楽しさを体感レベルで引き上げる
バスドラムや、ベースサウンドがキャッチーだな! それでいて膨らみすぎることなく、タイト寄りの音圧が気持ちいい。高域もシャープにまとまってる。
「VR3000 Wireless」をQuest 3Sに接続し、VR内で使ってみて感じたファーストインプレッションがこちら。専用のスマートフォンアプリを用いて、記事執筆時点(2025年5月)で最新版のファームウェアをインストールし、イコライザーの設定はご覧のようにフルフラットな状態でテストしました。
近代的なEDMのように、低域から高域まで余すことなくみっちりと音が詰まっている曲との相性が極めて良し。キックドラムやベースのアタックがキュッと締まっており、鼓膜だけではなく身体全体に響くかのよう。
高域に耳を傾けると、シンバルやハイハットの余韻がしっかりと残っているのがわかります。音楽におけるシズル感を十二分に味わえる性能がありますね。
中域、ボーカルの帯域に関しては、ややナローな印象があります。とはいえそれは音の数が増えているシーンで感じたもの。弾き語りであれば、音だけでボーカルの存在が際立つ感覚が得られたし、PCと接続してハイレゾ曲を聞いたときには感じないものだったので、VRゲームやソーシャルVRで扱われている圧縮音源との関係性によるもの、と考えてよいでしょう。
特筆するべきは、圧縮されているであろう2chステレオであっても立体感があり、イヤホンとしては広い音場で奏でてくれること。記憶にある有線イヤホンのVR3000よりも前・左右方向の音場が広くて気持ちがいいんです。
「VR3000 Wireless」にはfinalが開発した10mmのドライバーが使われていますが、これはワイヤレスイヤホンのなかでは大径といえるもの。余裕のあるサイズがサウンドの再生能力と、音楽面における立体的な表現力を高めたのでしょう。
なおVRChatで会話するときに使うと、フレンドの声がいっそう近くなったと感じる反面、遠くにいる他のユーザーの声も近くから聞こえてくると感じます。これはXRヘッドセットのスピーカーよりも、鼓膜に近い場所にドライバーがあるイヤホンならではの現象といえるものなので注意が必要です。
VRChatで重視したいマイク品質はQuest 3S内蔵マイクより劣る
「VR3000 Wireless」には、左右のハウジングの上部に1機ずつのマイクを内蔵しています。公式サイトを参照するとマイク側にもノイズリダクションが効くとのことですが、実際のマイク音質はいかがなものでしょうか。
前半がQuest 3S内蔵マイクを使ったときの音質、後半が「VR3000 Wireless」のマイク音質です。声の明瞭感で比べるなら、Quest 3S内蔵マイクのほうが良いですね。「VR3000 Wireless」は高域のシャープさが薄れ、こもっています。
どちらも小型で低消費電力、低ノイズで高感度なMENSマイクが使われているものと考えられますが、音の違いから判断するに、マイクの位置による差が出たのでしょう。前述したように「VR3000 Wireless」はハウジングの上部にある、すなわち装着時には外側を向く位置に収まっています。対してQuest 3S内蔵マイクは本体下部にあり、装着時は口の方向を向いている。ゆえにQuest 3Sのほうがダイレクトに声を捉えることができるんですね。
これは「VR3000 Wireless」に限らず、ワイヤレスイヤホンあるあるの現象。ケーブルの途中にマイクがついている有線イヤホンマイクのほうが、音質が良いと感じる理由もここにあります。滑舌よく元気な声をフレンドに届けるには、マイクの位置がまず大事となるんですね。
以上のことを考えるに、VRライブやVR DJイベントに参加するときに使うには最高なイヤホンといえる反面、コミュニケーション時に使うにはXRヘッドセットのスピーカーとの違いを理解しておいたほうが良いかもしれません。同時にASMRが楽しめるキャストイベントだと、より近くに感じる声にノックアウトされそうなので、使うシーンを選ぶことでコスパの良いVRイヤホンとなるでしょうね。
初代Oculus Quest時代からVRを意識していたFinal
ところで世界各国に数多のオーディオメーカーがありますが、finalは本体の左右にイヤホン端子を備えていた初代Oculus Quest専用イヤホンとして、3.5mmプラグ×2を持つ有線イヤホン「VR1000」をリリースしていた稀有なメーカーです。
早い段階からASMR/バイノーラル録音を研究し、セパレーションに優れた音場を作る。イヤーピース取り付け角度の自由度を高くすることで、外耳道が直線ではなくカーブが強いといわれるアジア人の頭部構造に合わせる。などなど、イヤホンにおける音場の改善に取り組みまくってきたfinal。VRで音楽を聴きたいというなら、finalのVRシリーズをチェックすると良いですよ。
「VR3000 Wireless」の公式サイトはこちら:https://final-inc.com/products/vr3000wl-jp





