演劇やライブといった舞台公演とVR/ARによる演出の組み合わせは、国内ではDMM VR THEATERなどで鑑賞することができます。最新技術の導入がこれまでの舞台ファンにも受け入れられるのか、イスラエルのスタートアップの取り組みを紹介します。
[ads]
AR演出と舞台との融合
イスラエルの舞台芸術家Sasha Kreindlin氏は、舞台演出にビデオ投影を15年間活用してきました。 やがてSasha氏はAR技術に目をつけ、スタートアップを設立することとなりました。
Sasha氏が設立したスタートアップ・ARShowがリリースしたのは、劇場での上映に特化したARシステムです。このシステムでは、ライブの舞台にARの演出やキャラクターを組み合わせることができます。舞台上でのショーとARの融合です。
arshow preview from isaac on Vimeo.
Kreindlin氏は「これこそが我々の待ち望んでいたツールです。俳優たちの背後に2Dの動画を映すのではなく、3Dオブジェクトをバーチャル空間に投影する――こうして、会場全体が舞台になります」と話しています。
これまでにも、舞台にARの要素を加えた作品が公演されたことはあります。しかし観客は、自身のスマートフォンを通してAR画像を見なければなりませんでした。ARShowはこの手間をなくすために、ARヘッドセットを一人一人に配布しています。そしてAR映像と音響、照明といった効果を一体にして作品を届けます。
ARShowのシステムは現在試験段階で、イスラエルのテルアビブにある劇場で公演を行っています。子供向けの舞台「ガリバー旅行記」は、現実とファンタジーの世界を融合し、子供たちの好評を得ていると言います。
資金調達、米国への進出を計画
ARShowはKreindlin氏のほか、エンジニアやデジタルデザイナーのメンバーで構成されています。同社はシステム構築のためにシードラウンドの調達を行いましたが、更にヘッドセット整備に向けて800万ドルの資金調達を考えているとのこと。Kreindlin氏は、サムスンのようなヘッドセットメーカーをスポンサーにつけ、ヘッドセットの供給を得ることを希望しています。
同社は今後、子供向けの作品だけでなく米国の演劇市場への進出を計画しています。しかし保守的な傾向が強いとされるこの市場で、最新技術を使った作品が受け入れられるのか、険しい道のりが予想されます。
Kreindlin氏はこの懸念に対して、6か月先までチケットが完売しているという成功を挙げています。そして舞台作品に(ARという最新技術の)特殊効果を持ち込む危うさを認めた上で、次のように語りました。
「全てはバランスです——もし技術だけに夢中になってしまえば、良い作品は作れません」
(参考)Fast Company