都会の空の上を複数の航空機が猛スピードで飛び回る。もしもそんな映画のような光景を、空想ではなく自分の目で見られたとしたらきっとすごく爽快だろう。ただ、現実には様々な規制が課せられている日本の都市の上空で、それを実現させるのが難しいということはあまりにも自明だ。しかし、XR技術を活用して、現実のなかにフィクションを混ぜられるのであれば……?
9月6日(土)、「AIR RACE X 2025」ラウンド3が大阪・うめきたにて、デジタルレースとして開催されます。それに伴い、6月24日(火)、大会前の記者発表会とAR観戦体験会が実施されました。
そもそも、AIR RACE Xとは?
AIR RACE Xとは、本物のパイロット達が本物の小型航空機を操縦してタイムと正確さを競い合う空のモータースポーツです。
元々開催されていたレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップが2019年に終了したことを受け、優勝経験のある日本人選手の室屋義秀氏を含めた3名のパイロットらが発起人となり、2023年から現在まで継続的に開催されています。
従来のエアレースとは違う点は、パイロット達が一つの会場に集まって同一のコースをフライトするのではなく、世界各国にあるパイロット達自身のそれぞれの拠点で大会規定のコースを大会ルールに準じて飛び、計測された高精度なフライトデータを元に、リモートでタイムを競っているという形式になっていることです。
そして、「もし、今回のレースで、全員が現実に存在する特定の街の上空を飛んでいたらとしたら?」というシュミレーションの模様を映像コンテンツやARコンテンツとして発信。リモート対戦でありながら、よりレースをリアルなものに感じられるような観戦体験が可能になるそうです。
エアレース機の時速約400kmのスピード感をリアルに体験!
それが実際にどのようなものなのかを確かめるべく、
うめきた公園にてSTYLYアプリを用いて実際にこのAR観戦を体験してきました。

(うめきた公園内の会場の様子。真ん中の大きなビルは、今回のタイトルパートナーである積水ハウス本社の入る梅田スカイビル)
やり方は非常に簡単で、STYLYアプリの入った手持ちのタブレットやスマートフォンで現地に配置されたQRコードを読み込むだけでSTYLYアプリがAR体験できるモードに変わるので、あとはそれで観戦を楽しんだり、スクリーンショットの撮影や動画の撮影を各自自由に楽しんでOKという形でした。
縦横の切り替えもカメラの持ち替えだけで行えて、UI上にカメラとムービーの切り替えボタンやシャッターボタン、倍率切り替えのボタンなども表示されているので、特別な説明を受けなくても誰でも直感的に撮影が楽しめそうです。
実際に試してみた感想としては、レース機の時速約400kmのスピードもリアルに再現されているので、人間の目よりも視界の狭いスマホのカメラ越しにそれを捉えるのは思ったよりも難しく思いました。ただ、そのことで逆にリアルにレース機の速さを強く実感することができます。
またうめきた公園の緑豊かな環境で風を感じながら、スマホ越しにレース機が飛んでいるところを見ていると、YouTubeなどの映像で見る以上に「うめきたの街の空をレース機が高速で飛んでいる」ということがリアルに感じられました。
ポイントとしては、会場にいると他の人達がスマホやタブレットを空にかざして観戦している様子が見られるので、そこで「一緒にうめきたの空を飛ぶレースを観戦している感」が想像以上に得られたのが興味深かったです。この感覚は家の中で一人でモニターで見ているのでは得られない、人が集うリアル会場だからこその面白さがあるように感じられました。
今回のAR体験会においての観戦体験は、おそらくイベント当日の環境とは異なる限定的なものでしたが、もし例えばSTYLYアプリでのAR観戦に付随して、充実した音響設備の中で、解説者が臨場感のある解説を行いながら、大きなモニターでレース中のパイロット達の様子なども一緒に見られたりできたら、さらにAR観戦が充実したものになっていくのではないでしょうか。
そのように様々な要素を積み上げて行けば行くほどにこのAR観戦は体験として豊かなものになっていきそうな印象でした。当日の会場でのAR観戦が実際どのような形式で開催されるのかに期待が膨らみます。
(なお現時点では、当日現地でのAR観戦について、このSTYLYアプリを使用すること以外の部分がどのような形になるかについての詳細は出ていない模様です)

©︎Suguru Saito/AIR RACE X
日本でのリアル大会が終了してしまったエアレースをもう一度
記者発表会では、今回のタイトルパートナーである積水ハウス(株)が本社を構える大阪市北区の梅田スカイビル タワーイーストにて開催されました。現地ではメディア関係者だけに留まらず積水ハウス関係者も多く出席している様子で、発表会本編では積水ハウスの業務役員である北田佳余氏も登壇。今回のデジタルレースを盛り上げるため、タイトルパートナーの立場から積水ハウスが積極的に本大会に関与しているようです。
また今回の「AIR RACE X」大阪大会実行委員長である長田 新子氏は、2015年から17年までレッドブルに所属し、レッドブル・エアレースの日本側の責任者として大会運営に関わっていたとのこと。そんな過去から、エアレースがAIR RACE Xとして復活できるということに対して深い思いがあるという旨が語られました。
なお、レッドブル主催のエアレースは日本でも千葉県を会場に開催される機会も多くありましたが、2019年シーズンを持ってシリーズそのものが終了し、そのシリーズ終了を持ってレッドブルはエアレース主催の立場から撤退しています。
そこからARを含めた新たな技術を用いて新たな形でエアレースを再び始められたことを考えると、その意義深さがより深く感じられました。
AIR RACE Xを実現させる3つのテクノロジー
また本発表会で特に印象的だったのは、「AIR RACE X」フェデレーションCOOのデズモンド・バリー氏から、AIR RACE Xを実現するために開発されたコアテクノロジーについての詳しい解説もあったことです。
1、世界中どこでも同一のレーストラックを再現できるシステム
高精度GPSを用いて、各パイロットの拠点に全く同じレーストラックを再現ができるとのこと。従来のエアレースで使用していたパイロンの代わりに正確にマーカーを配置すれば、どの場所でも同一条件でレースを行える。
2、超高精細な計測・採点技術
全てのレース用機体には、AIR RACE Xが独自に設計・開発したリモートデータユニット、通称RDUを搭載。GPSやジャイロスコープなどのセンサーも内蔵し、機体の位置や動きを常に把握可能となっており、気候やレース機のスピード、姿勢、位置、G(重力加速度)などを3cm以内の誤差で正確に取得している。飛行データはRDUにより即座に解析され、飛行タイムの他、ペナルティやハンディキャップが算出される。
なおAIR RACE Xのハンディキャップシステムは特許も取得しており、具体的なシステムの内容としては、パフォーマンスに影響を与える各地の気圧や標高を自動的に判別し、国際標準大気からの差異を独自のアルゴリズムによって算出し、ハンディキャップタイムとして付与しているとのこと。

©︎Masanori Naruse / PATHFINDER

©︎Masanori Naruse / PATHFINDER
3、観客をレースの中に引き込むAR・VRビジュアルシステム
コース上での飛行機の動きを細部に到るまで画面上に正確に表示できるようにすることで、実際はそれぞれの拠点で一機単独でフライトするレース機達が、同じ場所で同時にレースをしているような視覚的な体験を観客に提供できる。
上記の「観客をレースの中に引き込むAR・VRビジュアルシステム」の部分に関してはAIR RACE Xアライアンスパートナーとして、ビジュアライズの部分を担っているSTYLY社の執行役員 SVP COOの渡邊 信彦氏からも解説がありました。
各地でRDUによって計測された飛行データを集約し、それをARデータにして実際の街の上空でフライトしているところを再現して映像化する部分をSTYLY社が担当。具体的にはまず、国交省のリーディングプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」のうめきた・万博会場の3Dデータ上で飛行のデータをマッピング。そのマッピングした飛行データのみを用いて実際のうめきた・万博会場にAR投影しています。
その際のポイントとしては建物の後ろに航空機が隠れた時に、AR表現上でもきちんと航空機が見えなくなる(オクルージョンがかかる)ように実装している点とのことでした。
また今回はAR観戦会場がうめきたと大阪万博の2箇所ということになり、どちらの場所にAR投影しても成立するよう、コース設計したとの話もありました。

(PLATEAUの3Dデータ上で飛行データをマッピングしている画面)
AIR RACE Xが内包する、未来へ向けた可能性
データを元にレース映像を制作するAIR RACE Xでは、実機そのものではなく3Dモデルのレース機が、現実に設置されたパイロンではなくバーチャルなパイロンの間を縫って飛ぶところを、オンタイムではない形で観戦するため、現時点では従来のエアレースを知るエアレースファンが望んでいる観戦の形との乖離はどうしてもあるのだと思います。
ただ、元々全くエアレースの知識がなかった筆者は、「エアレースとは、どこか知らない場所の空を飛んでいる航空機のレースを、航空機に関する専門的な知識や教養をある程度以上きちんと持っている観客たちの間で楽しむものなのだろう……」と、当初は自分からはかなり遠いものとしてエアレースのことを捉えているふしがありました。しかし、うめきた公園でのAR観戦体験において、自分のスマートフォン越しに目の前で滑空する航空機を見ながら動画やスクリーンショットを撮影していると、感覚的に今までよりもぐっと身近なものとしてエアレースを捉えられるようになりました。
さらに上記のAR観戦に置いては「対戦者同士がもし同時に同じコースをフライトしていたら」という形で観戦できるので、両機のコース取りやスピードの違いなどが視覚的にわかりやすく観戦できるところも親切に感じました。
そのように、エアレースにこれまで全く興味のなかった人達を新たに巻き込んで行ける余地があるところに、デジタルレースの可能性があるのではないでしょうか。
そのAIR RACE Xのデジタルレースならではのわかりやすさや身近さによって新たなファンを獲得しつつ、既存のエアレースファンも熱狂できる観戦環境が整えられるように今後より発展していくことが、一番理想的なのだと思います。
AR部分に着目してみると、現実にフィクションを重ねるARではなく、現実の街に現実のレース結果を重ねる、つまり「現実にまた別の現実を重ねるAR」であるところに面白さを感じました。
AIR RACE Xの面白さの最大の肝は、間違いなく「本物のパイロットが本物の航空機を使い高い操縦技術を持ってフライトしている点」だと思います。
ですから今後多くの人達が身近な街でのAR観戦を入口に、パイロット達の操縦技術やレース機本体にも興味を持つようになる、という流れができていけばまたそこから新たな発展がありそうです。
そして現実の街を舞台にしているからこそ全国各地の地元企業の協力を得ながら大会やイベントを行いやすいというのは、今回の大阪大会の制作布陣を見ても明らかです。
AIR RACE Xのデジタルレースの「現実の都市×レースバトルのAR観戦」のフォーマット自体にも色々な可能性や余地があって面白そうだと感じました。他のレースや、eスポーツとの相性もよさそうで、そういった形での発展の余地も今後大いにあり得るのではないでしょうか。
そのように様々な未来への可能性や余地を秘めたAIR RACE Xですが、その伸びしろを今後どのぐらい生かしていけるかどうかについては、AIR RACE X自体の盛り上がり、引いては今回大阪で実施されるAR観戦会がどのぐらい盛り上がるかにもかかっていることかと思います。
興味がある方は2025年9月6日(土)、AR観戦会場となる大阪うめきたエリアや万博会場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
【開催概要】
| 項目 | 内容 |
| 開催名称(日本語表記) | エアレース X 2025 積水ハウス 大阪うめきたデジタルレースin グラングリーン大阪&グランフロント大阪 |
| 開催名称(英文表記) | AIR RACE X 2025 SEKISUI HOUSE OSAKA UMEKITA Digital Race in Grand Green Osaka & Grand Front Osaka |
| 日程 | 2025年9月6日(土)11時~19時(予定) |
| 開催場所 | 【AR観戦会場】 ・グラングリーン大阪 (うめきた公園) ・グランフロント大阪 (うめきた広場)【連携パブリックビューイング会場】 ・関西・大阪万博夢洲会場内・ポップアップ北ステージ |
| 観戦方法 | ・AR観戦(STYLYアプリを使用/公式観戦エリアにて体験可能) ・公式YouTubeチャンネルでの無料配信 |
| 主催 | AIR RACE X / AIR RACE X 2025 大阪大会実行委員会 |
| 共催 | グラングリーン大阪・グランフロント大阪 |
| タイトルパートナー | 積水ハウス株式会社 |
| XRアライアンスパートナー | 株式会社STYLY |
| メディアパートナー | 株式会社クロスアーキテクツ(META STEP MAGAZINE) |
| 大会公式情報 | ・公式サイト: https://www.airracex.com/ja/ ・公式YouTube: https://www.youtube.com/@AIRRACEX ・公式SNS: https://linktr.ee/airrace_x |










