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VTuber 2025.07.29

「タイパ」より「共感」 Twitchの若年層ユーザー500名調査で解き明かされた生配信需要の本質とは?

「タイパ(タイムパフォーマンス)」が消費のキーワードとなる中、ライブ配信サービス大手のTwitchがZ世代(※今記事では10~20代の若年ユーザー層を指します)のインサイトを明らかにした。7月24日の記者説明会で同社が発表した調査によれば、Z世代がライブ配信に求めるのは、効率よりも「共感」や「一体感」だという。本記事では、その詳細とTwitchの日本市場戦略をレポートする。

「日本はアジア最大のマーケット」Twitchが示す成長戦略

会見の冒頭、Twitchコンテンツ・ディレクターの北垣氏は「特に急速に成長を続ける日本のライブ配信市場において、Z世代がどのような視聴体験を求めているのか、そして我々がどのような戦略で日本市場に取り組んでいるのかを具体的なデータと共にここにご紹介いたします」と述べ、プレゼンテーションを開始した。

Twitchは現在、月間視聴者数が1億500万人を超え、総視聴時間は203億時間に達する世界最大級のライブ配信サービスである。2017年に日本法人を設立して以来、日本市場は急速な成長を遂げ、2023年にはTwitchで最も成長の早い市場となった。北垣氏によると、日本のライブ配信市場は2020年のコロナ禍をきっかけに拡大し、特にゲーム配信の視聴時間は当時から約2倍に増加しているという。

その成長を牽引するのが日本独自のコンテンツだ。2024年の日本における総視聴時間は前年比で17%の成長を記録。特にVTuberコンテンツは総視聴時間が30%増加、総配信時間も23%増加と、著しい成長を見せている。2024年のVTuber市場は推定8000億円規模に達したとのデータも示された。

「日本から生まれた配信やVTuberコンテンツは全世界で11億時間以上視聴されています。日本の視聴者がTwitch全体にとって非常に重要な存在であることがデータからも明らかであり、日本はアジア最大のマーケットとして存在感を示しています」

日本におけるストリーマー(配信者)の総配信時間は年間3700万時間以上に達し、アジア太平洋地域でトップを誇る。加藤純一氏やらっだぁ氏といったトップストリーマーだけでなく、音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」のボーカル・詩羽氏が、VTuberカワクラとしてゲーム配信を行うなど、多様なバックグラウンドを持つ配信者が次々と登場し、コミュニティを拡大している。

北垣氏はTwitchの強みを「ゲーム業界での確固たる存在感」「リアルタイムでのコミュニケーション」「コミュニティ作り」「収益化のハードルの低さ」の4点だと説明。これらの特徴が、日本の活発な市場を支えているとした。

タイパより大事な「仲間との繋がり」、Z世代の求める場所

今回Twitchが日本で初めて実施したZ世代(16〜25歳)向けの意識調査では、彼らがライブ配信に惹かれる理由が浮き彫りになった。

調査結果によると、Z世代にとってライブ配信は単なるエンターテインメントではなく、「コミュニティと一体感」を得られる「居場所」としての役割を果たしているという。編集された動画コンテンツとは異なり、配信者の「編集のないありのままの姿が見られる」ライブ配信は、情報だけでなく感情も共有できる場として受け入れられているのだ。

「費用対効果を重視するタイパ思考が強いと言われるZ世代ですが、それ以上に仲間との繋がりや自分の居場所を大切にしている傾向が見て取れます。ライブ配信はそうした繋がりのハブとしてZ世代に深く浸透しているのです」

このインサイトを裏付けるように、調査では約70%の回答者が「ライブ配信を通じて自分のサブカルチャー(推し活、ゲーム、音楽など)のコミュニティを見つけやすいと感じる」と回答している。Z世代は、自分の「好き」を共有できる仲間と繋がり、そこに自身のアイデンティティを見出している。ライブ配信は、そのための最も重要なプラットフォームの一つとなっているのである。

「他の視聴者と話すのが楽しい」65%が回答した意外な本音

では、Z世代は具体的にライブ配信のどこに魅力を感じているのか。調査では、より詳細な視聴動向が明らかになった。

毎日2〜5時間Twitchなどの配信を視聴しているヘビーユーザーに注目すると、65%が「視聴者同士の交流を楽しんでいる」と回答。さらに60%は「配信者との交流そのものを楽しんでいる」と答えており、双方向のコミュニケーションが視聴体験の中核をなしていることがわかる。この「65%が視聴者同士のチャットを楽しんでいる」という結果について、北垣氏は会見後の質疑応答で「私たちが非常に意外だったと思っている点」だと語った。

「以前は配信者の方から『視聴者同士のチャットはあまり好まない』という意見が多く聞かれており、それが今は視聴者同士で楽しんでいるというのは、視聴者だけでなく、配信者の視聴者とのコミュニケーションの作り方だったり、コンテンツの作り方に違いが出てきていると感じています」

かつては配信者と視聴者の1対Nの関係が主だったが、現在では視聴者同士(N対N)の交流もまた、配信を構成する重要な要素となっている。この変化が、ライブ配信ならではの「一体感」を醸成しているのだ。調査の自由回答には、その「一体感」を求めるZ世代の声が寄せられている。

  • 「ライブ配信特有の一体感が好ましいから」(23歳、女性)
  • 「他の視聴者や配信者と一緒に配信を作っている感覚が孤独や不安を埋めてくれる」(回答者詳細不明)

また、視聴デバイスについては、93%がスマートフォンを利用していると回答。モバイルファーストの視聴スタイルが定着していることが改めて示された。さらに、Z世代の2人に1人がライブ配信のお気に入りの瞬間を他者と共有しており、熱狂的なファンが自ら「切り抜き」などを作成し、コンテンツの魅力を拡散していく文化も根付いている。タイパを重視する一方で、彼らは好きなコンテンツには時間を惜しまない。むしろ、その「生」の時間を仲間と共有し、共に体験を創り上げることに価値を見出しているのである。

ついに縦型配信へ、Z世代の93%が使うスマホ体験を強化

こうしたZ世代の視聴動向を踏まえ、Twitchは今後の機能アップデートや取り組みを発表した。先日開催された「TwitchCon EU」での発表内容として、北垣氏は主に3つのアップデートを紹介した。

1つ目は「モバイル体験の強化」だ。日本のZ世代の93%がスマートフォンで視聴しているという調査結果に応えるように、新たに「縦型配信」が可能になる。さらに、視聴中のリアルタイム交流をよりスムーズにする「モバイル共有チャット」も導入される。

2つ目は「エンゲージメント機能の拡張」。配信から離れることなく簡単にハイライト動画を作成できる新しい「クリップ機能」や、優れたクリップ作成者に「トップクリッパーバッチ」が付与される「クリップリーダーボード」が導入される。これは、Z世代の2人に1人が「ライムの瞬間を共有している」という調査結果に応えるアップデートだ。

そして3つ目として、新たなリアクション手段となる機能が登場することも明かされた。視聴者の応援表現を多様化させつつ、クリエイターの収益化にも繋がる仕組みだという。これらの新機能は、Z世代が求めるインタラクティブな体験をさらに加速させるものとなりそうだ。

VTuberのリアルイベント登壇も?日本発コンテンツを世界へ

今後の取り組みとして、北垣氏が特に強調したのが「日本発の独自コンテンツ」、とりわけVTuberへの注力だ。

「VTuberを始めとする日本初の独自コンテンツにも力を入れており、今後もその取り組みをさらに拡大していきます。Twitchの根幹にあるのはコミュニティという価値です。Z世代を中心にユーザーやカルチャーを尊重し、より使いやすく、より価値のある体験を提供し続けていきます」

質疑応答では、VTuberに関する具体的な施策について質問が及んだ。北垣氏は、Twitchで絶大な人気を誇る海外VTuberであるIronmouse(アイアンマウス)さんがアニメイベントに登壇した例を挙げ、「リアルイベントへの出席登壇の機会を増やす」ことが施策の一つであると回答。さらに「配信者とのミートアンドグリートを画面を通じて行う計画もある」と述べ、オンラインとオフラインの両面からVTuberとファンの繋がりを深めていく方針を示した。

取材後に感じたメインストリームの変化

記者は会見の席をあとにして、渋谷の街に立ち寄った。多くのタレントやアニメキャラクターの姿が目立つ場所に張り出された一帯のため、最初は気づかなかったのだが、街のさまざまな場所に下記のようなポスターが貼られていたのである。

e-sports運営組織「ZETA DIVISION」所属のk4sen氏と、SHAKA氏のポスターである。両氏とも日本のTwitchでもトップ層のストリーマーで、上記の若年層ユーザーにも高い人気を誇っている。特にSHAKA氏は7月にZETA DIVISION所属が発表されたばかりで、SNSでも大きな話題となっている最中だった。一応注釈を入れておくと、2名ともこのポスターのようなファッショナブルなインフルエンサー的なフィーチャーされるような存在ではない。どちらかといえば、ファンとの距離の近さ、親しみやすさ、トークの面白さが人気になっているストリーマーである(実際ファンの中ではこのポスターをネタ的に楽しむ雰囲気が作られていた)。ただし、そのような存在であるにもかかわらず、渋谷の若年層が集中して集まりやすいエリアにこのポスターが貼られていることは、若年層にとっての「人気者」の枠の中に、確実にTwitch発のストリーマーが入ってきていることの証拠だろう。


(上記のZETA DIVISIONの他にも、CRカップで有名なゲーム集団「Crazy Raccoon」のビジュアルも見受けられた)

今回発表された内容からは(残念ながら)若手視聴者たちがどのストリーマーにどのような興味関心を抱き、どういった消費行動や応援活動を展開しているのかまでは報告されなかった。しかし、E-Sports関連のストリーマー×VTuberの期間限定コラボ企画や、GTAを介した大規模なメタバース的コミュニケーション企画などでは、ただ視聴するだけではなく、リアルイベントへの参加やゲームイベントでの協力など、かなり積極的な行動を行っているファンの姿を多く見かけている。そういったファン同士のコミュニケーションがリアルイベントなどを介して活発になり、独自のコミュニティが生まれていることが「視聴者同士の交流」が盛り上がっている要因のひとつだろうと考えられる。そうした活動を積んだ彼らが、視聴者からストリーマー・VTuber側としてデビューしたり、何かしらのコンテンツ創作に貢献していくといったことも今後増えていくはずだ。そうした、配信者と視聴者の傾向についても今後注視していきたい。

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