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VR体験施設 2025.07.24

これは、鑑賞者の“感受性”を拡張する試みだ 横浜のXR施設「IMMERSIVE JOURNEY」第二弾作品先行レポ

2024年12月にオープンした横浜駅直結のXRエンターテインメント施設「IMMERSIVE JOURNEY(イマーシブ・ジャーニー)」にて、『Tonight with the Impressionists Paris 1874 -印象派画家と過ごす夜-』が7月18日に公開されました。
こちらはオープン時に公開された、「Horizon of Khufu」に続く第二弾作品となります。なお、第一弾作品の「Horizon of Khufu」も引き続き体験可能です。

本記事はIMMERSIVE JOURNEY第二弾作品『Tonight with the Impressionists Paris 1874 -印象派画家と過ごす夜-』を先行体験してきたレポートです。

開館から半年 IMMERSIVE JOURNEYの現在は?

取材当日は『Tonight with the Impressionists Paris 1874 -印象派画家と過ごす夜-』公開前の平日日中の通常営業日でした。IMMERSIVE JOURNEYは立地的にも飛び込みのお客さんがパッとその場で興味を持って入ってこれそうな環境ではないにも関わらず、絶えずお客さんが来場している様子で驚きました。開館からここまでの半年間、上映作品は「Horizon of Khufu」一作品のみだったにも関わらずです。

その様子に、この半年間でIMMERSIVE JOURNEYが着実に獲得してきた評判の良さを感じました。

受付時と入場時とVRヘッドセット装着時それぞれのポイントで諸注意や説明を受けます。ここも半年間の経験を経てなのか、開館当初よりさらに丁寧で行き届いた説明内容になっている印象でした。

『Tonight with the Impressionists Paris 1874 -印象派画家と過ごす夜-』を先行体験

体験の大枠の仕組み自体は「Horizon of Khufu」と同様で、体験者はVRヘッドセットを装着してコントローラは持たず手ぶらで「歩く(移動する)」というインタラクティブ性のみを持ってコンテンツを「眺める」「聴く」という形で鑑賞し、既存VRユーザーでなくても誰でも直感的にコンテンツを楽しめるようになっています。

内容としては、案内役のローズの案内を受けながら、モネ、ルノワール、モリゾ、セザンヌ、ピサロ、ドガといった、後に印象派の巨匠と称される面々が名を連ねる独立展に足を運びます。作家達から直々に絵の解説を受けたり、印象派作家たちが目に映る景色を見ながら名画の生まれる現場に立ち会い、印象派の誕生の瞬間を多面的に辿っていくような構成の物語になっています。

VRのパリの街を自分の足で辿り、過去の展覧会を見て、名画を描く時に作家達が見ていたであろう景色の中を歩き回れる体験は、美術館ではなかなか体感することのできない、新たな鑑賞体験でした。

それらが単なるフィクションではなく、オルセー美術館のキュレーターからの監修を受けながら当時の世界観を緻密に再現しようとした結果であるところも重要なポイントです。

美術館や博物館的体験を拡張する

従来のXR系の体験施設だと、アトラクション性・アクティビティ性・ゲーム性などが重んじられる傾向がありましたが、それに対してIMMERSIVE JOURNEYは一作目二作目共に一貫して「美術館や博物館的体験の拡張」にフォーカスしているところに新たな潮流を感じます。

一作目の「Horizon of Khufu」を楽しめた人ならきっと楽しめるであろうことはもちろん、印象派に詳しくなくても、美術館に興味のある人ならきっと誰でも興味深く体験できるようなものでした。

後世の(さらに言えば特に美術に明るくない)私のような人間から見れば、印象派作家達は巨匠で圧倒的権威で……という目でつい彼らのことを見てしまいますが、少なくとも当時は印象派作家達はとても新しい存在で、未来に印象派がどのように扱われるかわからない中で作品制作を続けていて……と、各々がその時を生きている一人の人間、一人の作家であったことをリアルに感じられるような内容です。

本作でさりげなく重要なポイントだと感じたのは、作中には「印象派作品」そのものも出ては来ますが、作品本体よりも「印象派作家」や「印象派の勃興」という、絵画の外の世界に対して、より注目している作りになっていた点でした。

「作品そのものをゆっくりと自分のペースで鑑賞する体験」というところは既存の美術館等に任せつつ、本作では「XR作品でしか成し得ない、鑑賞者の作品に対する感受性や想像力の拡張」というところを掘り下げて制作されています。その点がXR作品としての誠実さと面白さだったように感じます。

絵画×XR(VR)では、ぱっと思いつくのは「その絵の中に入れるのではないか?」というアイディアですが、本作では単純にそれを実現するのではなく、それとは少し違う視点で「作家は現実でどんな風景を見てこの絵を描いたのか?」という、作品制作中の作家の風景の中に体験者を没入させてくれるところも特に良かった点でした。

美術鑑賞の初心者が「いざ美術館に来たものの、その絵を見て何を思えばいいか、どう考えればいいかがわからない……」という状況に陥るのはよくあることだと思います。しかし、今回のXR体験を経てみると、美術鑑賞時の自分の引き出しに「作者は現実のどんな風景の中でこの作品を描いたのか想像する」という新たな視点が芽生えるのを感じました。

言葉での説明だけでなく、このような没入型の体験によって自然と美術鑑賞にまつわる新たな感覚が身につくところが面白かったです。

そして体験を終えてみると、様々な時代の様々な美術作家がいる中で、なぜ本作では印象派にフォーカスを当てたのかもなんだかわかってきた気がします。

従来の規範に従わず、新しい表現を追求する急進的な印象派画家達は、XRをはじめとした現代の新しい技術で新しい表現を追求する現代のクリエイターたちと重なるところが大いにあったからです。

作品内容そのものに関しては良かったのですが、ギミック的には少し気になる点もありました。一つは、本作は「Horizon of Khufu」と比べると作中の登場人物が格段に多く、多数の(いわゆるモブキャラクターも含めた)3Dキャラクターとすれ違う場面があるのですが、同時体験中のお客さんが増えれば増えるほど少し怖いかもな……と思いました。「作中の3Dキャラクターは本物の人ではないからぶつかっても問題ないが、会場にいる現実の人間の所在を示しているアバター表示とは接触してはいけない(現実の身体同士がぶつかってしまうから)ということが、視覚的には容易に判別可能ではあるものの、若干頭の中で混乱するかもしれません。

もう一つは、描写の極端な省略がある点です。例えば、作中の登場人物が着席してるソファには現実の人間は着席できないため、ソファに対して着席できないことを示す赤い「×」表示が出てしまいます。また主要登場人物以外のいわゆるモブキャラクターは、目など顔の描写が極端に削られてしまっていて、現実に引き戻されてしまうところがやや寂しく感じられました。

上記のような体験者の安全確保と没入感の両立に関しては、なんとかより良い落としどころの模索を続けて欲しいところです。

純粋に体験の良さやコンテンツの内容が評価されたからこそ次に繋がった

体験後にIMMERSIVE JOURNEYを運営しているCinemaLeap代表の大橋氏からお話しを聞いたところ、公開から半年が経ち、累計動員数が5万人を突破するほどの好評を受けて今回の第二弾作品の公開に繋がったとのことでした。。

来場するお客さんは女性比率が高めで、XRに興味があるというよりも古代エジプトやピラミッドなどコンテンツの内容そのものに対して興味を持っている様子のお客さんが多いとのことです。意外でしたが、たしかに実際私が訪問したタイミングも女性の方が多かった印象です。

ネット上での口コミであったり、最初に一人で来場したお客さんが「体験内容が良かったから」とご家族、ご友人等を連れて再来場するケースだったりなども見受けられ、「XRだから」ということではなく純粋に体験の良さやコンテンツの内容が評価されて、それが来場者数の多さに繋がっているようです。
また、第一弾作品の「Horizon of Khufu」は古代エジプトやピラミッドを題材にしているということもあり、ここ半年間に関東圏で開催された古代エジプトの展示を全体的に見て回っているような古代エジプトファンの目にも留まったのも、予期せぬ相乗効果があったようです。

いくつか選択肢があった中で、第二弾作品を本作『Tonight with the Impressionists Paris 1874 -印象派画家と過ごす夜-』に決めたのも、日本で印象派作品が人気ということに加えて、この半年間のお客さんを見ていて、美術館や博物館に興味をお持ちのお客さんの来場が多いように見受けられたことを受けての作品選択だったとのお話でした。

今後の展望については、海外を舞台にした海外製作品のローカライズという形だけでなく、日本を舞台にした作品の制作も視野に入れているということと、より多くの人が体験できることを目指して、横浜以外でもコンテンツの体験ができるような環境を整えていければとのことでした。

注目すべき、XR体験施設としての新しいあり方

今回の体験や取材を通して改めてXRであるということや最新技術を使っているということ以上に、コンテンツそのものに魅力があり、さらに思わず人に伝えたくなるような体験の良さがそこに伴っていれば、年齢や性別他あらゆる属性を越えて多くの人に訴求することができるということが、現地の様子から垣間見えました。

これまでアトラクション性ゲーム性などを重視したどちらかと言えば「動」のコンテンツが注目されることが多かったXR体験施設において、体験者のアクションを「歩く・移動する」「見る」「聴く」にだけ絞った、どちらかと言えば「静」のコンテンツを提供しているIMMERSIVE JOURNEYが、従来のVRユーザーの範疇を大きく越えた来場者の多数から高評価を得ているということは、大いに注目に値することではないでしょうか。

XRコンテンツに興味がある人はもちろんのこと、多くの人にぜひ一度体験してみて欲しいと感じました。

営業時間 平日11:00~21:00
土日祝10:00~22:00
場所 神奈川県横浜市西区高島2-14-9 アソビル3F
アクセス 横浜駅みなみ東口通路直通、横浜駅東口より徒歩2分
コンテンツ ・Horizon of Khufu
・Tonight with the Impressionists Paris 1874 -印象派画家と過ごす夜-
料金 【一般チケット(3名様まで/税込)】
平日:4,000円/1名
土日祝:5,000円/1名
【グループチケット(4名様以上/税込)】
平日:3,800円/1名
土日祝:4,500円/1名
*団体(50名様以上)の場合は問い合わせてください。
公式サイト https://immersivejourney.jp/

copyright © IMMERSIVE JOURNEY


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