Makuakeにて先行予約販売がスタートしたVR/MRヘッドセット「Play For Dream MR」。Androidベースの独自OSで動く、スタンドアローン機です。
この分野においては10万円以下のMeta Quest 3/3S、PICO 4 Ultra、10万円台のVIVE Focus Vision/VIVE XR Eliteといったモデルがありますが、記事執筆時点のPlay For Dream MRの価格は254,900円~(※Makuake 安心システム利用料は別)とかなり高価な機体となっています。
超超早割でもこの価格。一般販売時には35万8900円にもなるPlay For Dream MR。実機をお借りしたので、詳しくチェックしてみました。
Play For Dream MR 基本データ
| 性能項目 | 仕様・詳細 |
| SoC | Snapdragon XR2+ Gen2 |
| メモリ | 16GB LPDDR5X |
| ストレージ | 512GB |
| ディスプレイ | マイクロOLED |
| 解像度 | 3840x3552x2 |
| PPI | 3382 |
| PPD | 45PPD(中央エリア) |
| 視野角 | 103度 |
| カメラ/センサー | 11台/7種類(パススルーカメラ、6DoFカメラ、ハンドトラッキングカメラ、アイトラッキングカメラ、深度センサー、重力センサー、ジャイロスコープ、装着検知センサー) |
| ワイヤレス | Bluetooth 5.3、Wi-Fi 7 |
| IPD | 51-78mm 自動調整式 |
| 重量 | 650g |
外見はQuest Pro+Apple Vision Pro風味
装着時は、マグネットで固定されるヘッドガスケット+フェイスパッドで顔の前面を覆い、バッテリーを内蔵していると思われるパッドで後頭部を押さえて固定します。
後頭部のダイヤルを回してバンド長を調整します。ただしこのダイヤルにはやや難点があります。ラチェット機構(※一方向の回転のみができる機構)を採用しており、装着時に締めすぎるとテンションがかかってロックしてしまい、外す(逆方向に回す)のが難しくなってしまいます。
ならば緩めに締め付けたくなりますが、後述するようにレンズのスイートスポットが狭いため、適切な位置でしっかり締め付けないと、せっかくの片目4K高画質パネルのメリットを十分に得られません。
頭頂部にかかるバンドはありません。重量バランスは前3:後2となっており、装着感はなかなか良好なものの、全体の重さが650gもあるために、Apple Vision Proのデュアルループバンドみたいに、装着を補佐するバンドが欲しいと感じることもありました。
上部からみると、右側にダイヤルボタンがあるのがわかります。このコントローラの操作方法は、Apple Vision Proのデジタルクラウンと同じ。回す・押す・長押しができます。
有料オプションとして、額で本体を支えるためのフレームパッド(メガネ用)も用意されます。パッド部分がカッターで削られた形状となっているのは、急遽用意されたものだからとのこと。量産時には綺麗に整形されることでしょう。
注意点としては、フレームパッド(メガネ用)を装着し、メガネをかけてつかうと、アイトラッキングの精度が大幅に下がったことが挙げられます。これはメガネのフレームのサイズやレンズの厚みなどでも変わるものと考えられますが、アイトラッキングを活用したいのであればコンタクトの利用をおすすめします。
外観はかなりMeta Quest Pro(右)と似通っているうえに、Apple Vision Proの要素も取り入れた、と見えてしまうPlay For Dream MR。個人的にはオリジナリティを感じるデザインを求めたいところですが、センサーの配置や放熱性などからくる内部構造から、似通ってしまうものなのでしょうか。
コントローラもMeta Quest Touch Proコントローラーに酷似しています。とはいえジョイスティックの形状やレイアウトが長年変化しないように、直感的に操作できることを追求すると、同じサイズ感、ジョイスティックやボタンレイアウトとなっていくのでしょう。
なおバッテリー交換式ではなく、USB Type-Cによる充電式となっています。しかも軽量で扱いやすい。コントローラを多用するゲーマーにとって、満足がいく出来です。
メニューUIはスマートフォンが培ってきたものに近い
装着すると、最初にアイトラッキングセンサーを用いた自動セッティングが行われます。円を描くドットを見ながら、親指と人差し指をくっつけて認識させる仕草はApple Vision Proのもの。その後に表れるアプリランチャーもApple Vision Proのものに似ています。
強いて言うなら、iPhoneやAndroidなどのスマートフォンが培ってきたランチャーをDNAとして刻み込んでいる、となりますね。Meta QuestやPICOシリーズは、例えるならポータルサイトのトップページのように様々な情報を掲載したパネルを見せていますが、様々なアプリを切り替えながら使う時代となれば、同じようにアプリランチャー構造となるのかもしれません。
なおアイコンの選択はアイトラッキング+指パッチンでも、コントローラでも可能です。
設定画面を開くと、左側にカテゴリ、右側に詳細な設定項目が表示されるUIに切り替わります。
ダイヤルボタンを回すと、バーチャルとリアル(ビデオパススルー)を切り替えられます。
このMR時の画質は、お世辞にもよいとはいえません。黒つぶれ、白飛びが多く、映像としてのダイナミックレンジが狭い。またPCディスプレイを見ていると、ディスプレイパネルのリフレッシュレートの影響が出て縞模様が出てきます。
Apple Vision Proのほうがよい。それどころか、Meta Quest 3の品質にも至っていない。
これはパススルー用のカメラセンサーのクオリティによるものではなく、ビットレート/フレームレートを押さえた映像設定ではないかと感じています。PICO 4やMeta Quest 3も発売された当初のビデオパススルー画質には難がありましたし、もしかしたら今後のOS開発によって改善するかもしれません。
執筆時点で入手できるアプリはゲームが60タイトル、アプリが32タイトルでした。そのなかにはVR/MRではなく、スマートフォンアプリのような平面アプリも入っている様子。しかも日本語対応しているものは極めて少ないと感じました。UIや操作方法は似ているものの「Apple Vision Pro」のような空間コンピュータデバイスとして活用するには、現時点でさまざまな問題があると言えます。
スタンドアローン機ではありますが、Play For Dream MRで遊ぶためにはゲーミングPCと接続して、PC VR(SteamVR)アプリを使ったほうがよさそうです。
視野は広いがグレアが目立つパンケーキレンズ
ミラーレスやシネマカメラで撮影されたビデオ映像は、どう見えるでしょうか。お借りした本体に収録されていたコンテンツでチェックしました。
中心視野の画質はApple Vision Proを超えるのでは、と思えるほど綺麗です。クリアでシャープ。解像感の高さに驚きます。今まで体験してきた機材を思い返すに、「MeganeX SuperLight 8K」と同等クラス。
さすが解像度3840×3552のパネルを2枚使った、8K級のXRヘッドセットです。
視野角に関しては、103度と表記されていますが、同じコンテンツで比較できるように、PC VR版「VRChat」を用いました。緑色の枠がMeta Quest 3Sのもの。青色の枠がPlay For Dream MRです。
リーズナブルなスタンドアローン機は、水中メガネ越しに世界を見ているという感覚になりますが、Play For Dream MRは上下左右だけではなく、斜め方向にも広いので、没入感が高まります。同時期に比較したわけではありませんが、筆者の主観では「Bigscreen Beyond 2」と肩を並べるほど広いと感じました。(※なお、「Bigscreen Beyond 2」の視野角は対角線116度と表記されていますが、水平視野角の基準では無いため数値のみでは比較をできない点に注意です)
しかし暗い背景に強い光があるシーンではグレア(※強い光による刺激)が目立つし、ゴーストも発生する。そして周辺視野の色にじみ(※色収差)も、PSVR2のようなスイートスポットの狭さも気になってきます。
つまり、中央部分だけ見る分には極めて高品質ですが、せっかくの広視野角を活かした使い方をすると、満足度が下がってしまうんですね。
PC VRするならRTX 3090~5090が欲しくなる
3840×3552ピクセルx2ともなると、バーチャル空間のレンダリングにハイパワーなGPUが必要になります。推奨動作環境はCore i7-9700/Ryzen5 3600同等以上のCPU、メインメモリ16GB以上、RTX 2070/RX 6600XT同等以上のGPUが必要だとアナウンスされていますが、PC VRのアプリを使う場合、どれほどのスペックのPCが必要となるでしょうか。
Play For Dream MRのPC接続用アプリで「高画質プリセット」を選び、筆者のメインマシン(Core i7 13700K、64GB、RTX 4070Ti)とVRChatをPlay For Dream MRを有線接続して起動してみたところ、1人しかいない標準ホームワールドでもGPUの消費率が93パーセントに。
なおこの状態で「カスタム」を選ぶと、レンダリング解像度は2880×2656ピクセル、PCとPlay For Dream MR間の転送レートがわずか30Mbps。え? 高画質プリセットの内訳が、これ? と疑いながら同じ設定で負荷を調べたところ、同じく93パーセント前後のGPU消費率となっていました。この設定でRTX 4070 Tiの性能を喰い尽くしそうなの!?
片目4Kの解像度を活かすには、こんなものでは全然足りません。ハーフスロットルすぎじゃないですか。美麗なワールドで、多くのフレンドと遊ぶには、よりパワフルで、大容量のVRAMを積んだGPUが必須となるようです。
空間ビデオ/写真カメラとしても使える
Play For Dream MRはパススルー用のカメラを用いて、現実世界を立体映像/写真として記録できます。記事執筆時点ではPlay For Dream純正の編集アプリがなく、他社製のVR180編集アプリで読み込むことができなかったため、YouTubeにアップロードしても立体コンテンツとして再生することができませんでした。(なお、Infomedijiが運営する空間ビデオ/VR180/全天球映像のビデオプラットフォーム「DeoVR」のPICO 4用アプリでは再生できました)
その状況下のなかでインプレッションしますが、まずマイクの音質が悪い。PICO 4の初期の頃のように、マイクゲインが高く音割れしているという印象を受けます。
また映像のダイナミックレンジも狭い。通常のパススルー時と同様に、白飛びと黒つぶれが目立ちます。
前述したように、チューニングの変更で改善できる要素の1つでもあるから、Play For Dreamには録画画質・録音音質の向上に取り組んでほしいものです。
Android XRに対応するなら価値がアップするか
できるだけ広い視野角を実現したくて、頑張りすぎてしまったのでしょうか。グレアや周辺視野の画質低下が気になったPlay For Dream MR。
総じてみると、クセが強い!! ですが、ワイヤレスでPCと接続できるSteam VR対応XRヘッドセットのなかでは、トップを狙えるポテンシャルを持っていると感じます。高画質なディスプレイパネルによる中心視野の美しさは体験する価値がありますから。
ちなみにPlay For Dream MRと同じような高価格帯のVRヘッドセットでは、前述した「Bigscreen Beyond 2」や「MeganeX SuperLight 8K」などがありますが、このふたつはアウトサイドイン方式のため「SteamVR Base Station 2.0」のような外部装置との取り付けが必須となります。自宅にそういった環境を整備できない方向けの新たな選択肢ともなり得るでしょう。綺麗なグラフィックで、バーチャルな存在に近寄って見てみたいと感じる方ならば、手に入れる価値はあります。
PC VR環境の画質・音質改善に一役買うであろう「VirtualDesktop」も、すでにPlay For Dream MRのアカウント登録準備を進めています。Play For Dream MR側にクライアントアプリがリリースされたら、映像のガンマ設定、詳細な転送ビットレート、GPUに合わせた適切なプリセット、音割れを防ぐマイクのゲイン設定も可能となるでしょう。
そしてPlay For Dreamの担当者の方にお話をきくに、Googleとのコミュニケーションも進んでいるそうです。ということは、今年中の発表を控えているGoogleの独自OS「Android XR」への対応もあるのでは……と期待してよいでしょう。開かれたOSとなるならエンジニアもPlay For Dream MRに注目するでしょうし、スタンドアローン環境での両目8Kクオリティを活かしたアプリも出るかもしれません(※確定ではない点にご注意ください)。
ネガティブな要素もあるけど、現時点においては唯一無二の存在でもあるPlay For Dream MR。面白い1台ですよ。



















