Home » なぜ鏑木ろこはファンに待望されていたのか? VTA時代から発揮されていたカリスマ性


VTuber 2023.01.20

なぜ鏑木ろこはファンに待望されていたのか? VTA時代から発揮されていたカリスマ性

にじさんじから新人7人がデビューしました。久しぶりの大人数一気デビューです。その中で一際目立っていたのが鏑木ろこです。彼女の名前が出た途端に、Twitterでトレンド入り。堰を切ったように大量のファンアートがアップされ、話題が爆発しました。

複数人でのにじさんじデビューの場合、ここまでひとり特に目立つというのは珍しいことです。これについては、彼女が特殊な状況を歩んできたのをファンならずとも知っているくらいの状況だったため、納得した人が多かったと思います。

真っ先に反応したのは「Ranunculus(ラナンキュラス)」の3人でした。

鏑木ろこのデビューがなぜここまで話題になったのか。現時点では彼女の「バーチャル・タレント・アカデミー」時代のアーカイブはすべて消えてしまっているので細かい部分の証拠を出せないのですが、空気感がわかるように流れだけ簡単にまとめてみます。

「バーチャル・タレント・アカデミー」

ここしばらくのにじさんじの新人は、「バーチャル・タレント・アカデミー(以下VTA)」で学んだ生徒のデビューが続いていました。Ranunculusの3名、天ヶ瀬むゆ、海妹四葉、先斗寧。VOLTACTIONの4名、風楽奏斗、渡会雲雀、四季凪アキラ、セラフ・ダズルガーデン。この7名と鏑木ろこが、VTAで活動を継続していた1期生の同期です。

VTAの授業については詳しい部分は公開されていませんが、少なくともVTA生の話によると、コンプライアンスなどの座学、ダンス、ボーカルなどを班ごとにがっちり学ぶスタイルのようです。VTA公式チャンネルでは週に1回30分の枠が設けられ、配信を行う実践の時間もあります。Twitterは公式から週1回のみ投稿できます。自身のチャンネルやTwitterは持っていません。受講料はかからない、という手厚い対応です。

とはいえ一期生はまだ今後にじさんじからデビューするかどうかもわからない、確約があるわけじゃない、という一番最初だからこその先の見えなさがありました。これはファンも同じで「今配信見ているけど今後どうなるんだ?」という不安はありました。

ある日、VTAのアーカイブから天ヶ瀬むゆ、海妹四葉、先斗寧の配信が消えました。その後、3人は「Ranunculus」としてにじさんじより華々しくデビューします。

この時点で、一部のファンは首をかしげました。女子は4人で、そのうち3人だけデビュー。天ヶ瀬むゆはこのときのことを配信で、あくまでも天ヶ瀬むゆ個人の感想として「最初にラナキュラが決まったときは『なんで?』って気持ちになったからずっと。バイバイするとき全然泣いたし。今だから笑って話せますが、複雑だった」と述べています。

残ったのは鏑木ろこだけ。残りの男子4人と組んでデビューするということもなく、男子4人はVOLTACTIONとしてデビュー。二期生が入ってきたあと、一期生では鏑木ろこのみが残ることになり、ひとりだけの先輩となりました。

一期生は元々仲が良かったようです。以前はショート動画でワイワイみんなが楽しそうに録音している様子もアップされていました。

その後、10月末に鏑木ろこのアーカイブが、VTAから消えました。つまり、デビューが決まったのだ、とファンは大喜び。今まではアーカイブが消えてからまもなくしてデビューするのがルーティーンだったからです。

ところが、いつまでたっても、鏑木ろこデビューの報が出ません。その間、VTAには三期生まで入りました。年を越しても音沙汰なしです。Twitterには「鏑木ろこのデビューはまだなの!?」と渇望するファンもいれば、VTAのルーティーンが崩れて、もうデビューしないのではないかとすら囁かれました。

そこに飛び込んできたのが、今回の鏑木ろこのデビューの報でした。

VTA一期生時代からのファンがどれだけ待ち続けてきたかを考えると、今回のTwitterでの感情の爆発はよく分かると思います。いつ鏑木ろこがデビューして一期生がそろうのだろうかとモヤモヤしつつも、RanunculusやVOLTACTIONの面々に対して気を使って名前を出せなかった人は、多かったようです。

それはRanunculusやVOLTACTIONも同じでしょう。待っていた人にしてみたら、名前を出せず腫れ物に触れるような時間が続いたことこそが辛いものです。

先に挙げた動画で天ヶ瀬むゆは、このように語っていました。「ろこは後輩じゃないよ。同期。やっと配信でろこの名前が出せるなって」「みんなもずっと気になっていたと思うんですよ」

鏑木ろこを待ち望んでいた人が多かったのは、その才能にファンが多かったからなのと同時に、VTAという「学校」感が特別に強かったからかもしれません。VTA一期生はにじさんじの中でも初の「学級」の生徒で、苦楽を教室で共にしたメンバーです。そのグループ感が崩れることへの不安はどうしてもありますし、お互いに仲良かった片鱗をちらちらと見せていたからこそ、デビューできない=引き裂かれてしまう、という杞憂はどうしても生まれてしまいます。

もちろんVTAもにじさんじライバーも、人前に出るタレントなので、絶対クビにならないという保証はありませんが、鏑木ろこはめちゃくちゃにVTA一期生時代頑張っていたのをファンはみんな知っていました。「彼女ほどの人がクビになることがあるんだろうか?」と思わせるほどのカリスマがすでにこのときからあったからこその、今回のトレンド入りとも言えます。

鏑木ろこのカリスマ性

VTAの生徒は基本的にLive2Dでは動きません。立ち絵のみです。

そんな中、ずーっと動き続けている生徒がいました。鏑木ろこです。立ち絵を縦横無尽に常に動かしている、という力技でした。画面の派手さ、うるささ、ユーモラスさは強烈なインパクトがありました。

彼女はがっちり下準備をして、ネタをばらまくタイプの企画屋でした。自分の恋愛シミュレーションゲームを作ってリスナーにやらせたり、スパチャは送れないからニセのスパチャを画面に流したり。Ranunculusがデビューしたときは同期の「ここすき」を立ち絵にペン入れしながら熱弁しすぎてしまい、伝説を残しました。週一で、彼女はリスナーに、ありとあらゆる手で爪痕を残し続けていました。

大量のイラストを用いた日記型の経験報告配信も人気でした。キックボクシング、和太鼓、キャンプ、アコーディオンなど、彼女は興味があると何にでもアタックするパワーを持っていました。考えもしなかったような挑戦をして充実した日々を送っていたのを、エッセイ漫画のような絵柄と、わかりやすい笑わせどころを入れたうまい構成で、リスナーに伝えてくれました。

コツコツとアニメーション制作をしていたこともあります。週一のツイートでは1ページ漫画を描いていました。準備と実践の積み重ね量は確実に多く、見えないところでの努力家っぷりは十分すぎるほど伝わっていました。彼女はVTA内での、クリエイター型エンターテイナーの先駆けだったように思えます。

配信30分の中にしっかりオチがついている、という構成も見事でした。一期生ひとりだけ残ったという、触れていいのかどうか迷うような話題に関しても、なんちゃってマフィアの「ドン鏑木」というコスプレでネタとして昇華。非常にバランス感覚に長けた存在でした。

今は見られない過去の鏑木ろこの配信では、彼女はにじさんじを何度も受けていたと語っています。しかしなかなか受からず、VTAの募集を見つけて応募した、とのことでした。本気でにじさんじに入りたい、という熱意をずっと持ち続けていたのがわかるエピソードです。

現在残っている鏑木ろこが登場する動画は、未来丹音羽とのコラボ回だけです。これを見ると一期生・二期生の間に立つ存在としての、鏑木ろこの安定感がよくわかります。同時に企画にトークにイラストにと多才な未来丹音羽との、同じ学校だからこその先輩後半シナジーをエンタメにできているふたりの芸達者っぷりもよくわかります。

デビュー時の軽快な立ち回り

鏑木ろこはデビューを不安がられていた時期もずっとツイートされ続けており、イラストもちらほら描かれ続けるくらいにファンに愛されていました(もちろん、それに対して鏑木ろこが反応することは不可能です)。だからこそ、デビューが決まった瞬間のファンアートの爆発っぷりは尋常ではありませんでした。

ここで鏑木ろこは即動きます。

普段なら初配信で決めるファンアートタグを、先に提示してまとめる、という判断です。「#らくがきろこ」というタグを速攻でだしたことで、このタグを使用したファンアートはさらに加速し、増え続けます。話題としてひとつにまとめたことで、Twitter上で「鏑木ろこ」の名が大きな波になっていく様子が見られました。SNSの特性を活かした、かなりうまい立ち回りです。

タグの名前のとおり「らくがき」でもいいことを明示してくれたことで、描く人たちのハードルはぐんと下がりました。今までのファンだけでなく、興味を持った人たちもじゃんじゃん描き始めました。すぐさまファンアートをガシガシRTしはじめて、彼女のTwitterはみるみる華やかになっていきました。デビューする前から130件近くツイートをするという、稀に見るスピード感です。

先輩たちもガンガン新人7人にTwitterで声をかけました。その中でも鏑木ろこと早瀬走の「18歳なんですね^^同い年です」というレスからの「しっかりしてください」という会話は、先輩と後輩のコメディ4コマとしてのクオリティが完璧で、これも話題になりました。イブラヒムは読みながら「100点超えて120点です」と大絶賛しているので、配信内での面白さの解説を聞いてみてください(39:20~)

今回の同期、獅子堂あかりとのやりとりが秀逸です。新人が言うにはでかすぎるジョークを、嫌味なく自らのキャラ性に落とし込んでいるので、楽しく観ることができる一文です。彼女が今まで苦労を重ねてきたことを知っていると、なおのことビッグマウスジョークは味がでてきます。

元VTA一期生のラストのデビューということで話題が広がりまくり、改めて新人としてにじさんじデビューする鏑木ろこですが、元VTA一期生側は同期だったことには変わりありません。そして今回一緒にデビューする7人も同期です。

今までの「完全新人」とはちょっと違った、色んな種類の「同期」に囲まれたスタートダッシュが見られそうです。

初配信はこちら。


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード