VTuberの活動において、近年切っても切り離せない存在となりつつあるショート動画。その動画バリエーションの幅は広く、特にクリエイティブな動画が伸びつつあります。今回はここ最近で話題となっているショート動画をピックアップし、どのようなものが流行したのか紐解いていきます。
ダンス動画
VTuberのショート動画の中でも、見る機会が非常に多くなったジャンルがダンス動画。VTuberの3Dモデルと撮影スタジオを持つ大手事務所を中心に、一気に浸透した印象があります。元々TikTokではダンス動画をメインコンテンツとする動画配信者が多く見られていましたが、VTuberの親しみやすい見た目とダンスの相性が良く、キャラクターコンテンツに興味がある層へリーチしたようです。
基本的には、人気ダンサーやアイドルの振り付けをコピーして挑戦するという方式がメジャーとなっており、特に難易度の高いダンスに個人的なアレンジを加えたうえで披露するタイプの動画は非常に人気があります。なかでも、ここ最近で急速な伸びをみせているのが、ヴイアライヴのアイドル・上水流宇宙さんです。
ダンス集団「アバンギャルディ」の高速でステップするダンス「OKP」を巧みにダンスする姿が大きな話題となり、その後さまざまなダンスショート動画も注目されるように。同じくダンスを得意とする綺羅星ぺんた(※ダンサー・足太ぺんたさんのVTuberの姿)さんや、にじさんじENのマリアマニオネットさんとコラボ動画を投稿するなど、ダンスを軸にして大きく飛躍しはじめています。
また、すでに存在する振り付けをカバーするのではなく、オリジナルの振り付けを流行させるVTuberも見られます。ホロライブの轟はじめさん発案のゆるい空気感の「コンココンコンココンコンコン」ダンスもそれに当たります。非常にシンプルな振り付けと覚えやすい繰り返しのフレーズが話題となり、VTuber外のダンサーやTikTokerにヒット。元ネタを知らない層にまで広く普及していきました。
また、一時期話題になった「にぎにぎにじたうん!」のダンス動画もVTuberグループにじさんじから生まれたものです。そもそもは、にじさんじライバーをモチーフにしたどうぶつマスコット「にじたうん」の販促を含めた楽曲ですが、にじさんじのVTuberが次々とダンス動画を投稿していったことで注目され、にじさんじ以外のVTuberにも波及しています。
このようなダンス動画の流行の背景には、業務用のフルトラッキングスーツやデバイスを導入する事務所が増えたことが挙げられます。事前に収録したダンスアクションを3Dモデルに反映させるという手段では実現できない、VTuberそれぞれに生まれる微妙な違い(個性)を楽しめるようになったと言えます。近年では日常でも気軽に利用できるトラッキングデバイスが普及しつつあり、今後このような高度なダンス動画を気軽に投稿できるようになっていくかもしれません。
マニアックな知識の披露
VTuberとして活動する人が増えるにつれ、それぞれが得意とする専門ジャンルも細分化しつつあります。ニッチな知識を紹介する講座系の動画はYouTube全般で人気のジャンルですが、VTuberからも知識披露を中心とした動画コンテンツは以前よりも増加しつつあります。特に、教育機関や研究機関に関わりながら、VTuberとしてポップに分かりやすく様々な事例を紹介してくれる通称“学術系VTuber”への注目もあり、今後伸びてくる可能性の高いジャンルです。
例えば、惑星科学者VTuberの星見まどかさんは天体に関する知識をショート動画で投稿。「土星の輪が消える!?」など、数秒でも気を引くようなテーマを冒頭に提示し、その後丁寧になぜそうなるのかを説明するといったスタイルをとっています。一方的に専門的な情報を高速で説明するのではなく、初心者にも分かるような丁寧な内容に仕上がっています。
また、昨年から大きな話題となったのが、イオンモールに関するマニアックな知識でヒットした静馬レイさん。全国のイオンモールの情報をデータベース化して覚えており、アキネーター風にどこのイオンモールかを当てるクイズが新規視聴者にリーチしました。このような、知識を披露するだけではなく、持っている知識をクイズ形式にして自ら挑戦するスタイルを取るタイプのものも人気を集めています。
短時間でしっかり見せるイラスト作成
イラストを得意とするVTuberや、プロの漫画家が自身の作品制作の過程を紹介する動画や生放送は以前よりありましたが、最近ではショート動画でも増えています。また描き方のハウツーの需要も高まりつつあります。
甘狼このみさんは、自身のイラスト技術を動画投稿に活かしてきたVTuberのひとり。可愛いらしいイラストが完成するまでの長時間の過程を、一気に凝縮して、勢いのあるかたちで動画化している点が特徴で、さらにLive2D化して動かすといったところまで見せることも。完成品のクオリティの高さもさることながら、それをショート動画として面白く見せられている点が、何よりの魅力です。
羽壱まほさんの場合、イラストの描き方をショート動画化。フリルや髪の毛など初心者が難しく感じるところをステップで分かりやすく解説しており、すぐに実践してみたくなる内容となっています。ときには視聴者への絵の質問に対して、ショート動画を作成して回答することも。おすすめの道具やテクニックまで、とことん丁寧に紹介している点が特徴です。
配信エピソードのマンガ化
VTuberの長時間配信を一部抜粋して面白い動画を作る「切り抜き動画」は、VTuberの主力コンテンツとも言える人気ジャンルですが、切り抜きや日常エピソードの一場面をイラストに起こし、マンガやアニメ風に表現する動画は注目されやすい傾向にあります。
例えば、樋口楓さんや宝鐘マリンさんのようにエピソードをマンガ化することで、より状況が理解しやすくなることも。これまではファンが切り抜き動画として投稿する二次創作的な作品が多い印象でしたが、そういった作者やクリエイターをVTuber自身が公式動画として抜てきする場合も増えています。また「にじさんじ公式切り抜きチャンネル」のようなグループ運営のアカウントでも、生配信エピソードを漫画化したショート動画は増えており、生配信中の2Dアバターだけでは表現できない、本人の細かい仕草や表情まで想像できるようになっています。
まとめ
現在のYouTubeでは、一般的な流行に乗った企画や人気のゲームの配信配信だけでは中々伸びにくい状況となっており、短時間で自分の個性・強みを知ってもらえるショート動画に活路を見出すクリエイターが多く見られています。VTuberもその例外ではなく、流行に乗りつつも自分が流行の発信源になるためのアイデアを日々探している状況です。
そのため、これまでに見られないようなクリエイティブな動画が求められていますが、単にクオリティーの高さが求められているのではなく、個々の個性を短時間でどのように見せるかが重要となっています。近年、VTuberのショート動画はティーン層へ広がりつつあり、かわいらしさ、キャッチーさは大きなアドバンテージとなっています。今後、VTuberのショート動画がどのように進化していくのか注目です。
