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Meta Quest 2023.01.12

Meta Quest 2向けのワイヤレスイヤホン「VR P10」は遅延無しで安定的に使えるのか? 試してみた

2022年末、Soundcoreからゲーム特化のワイヤレスゲーミングイヤホン「VR P10」がリリースされました(価格は税込14,990円)。ワイヤレスイヤホンといえば音声の遅延が泣き所というイメージですが、本製品は、遅延を最小限に抑えることを目的に開発された意欲作です。

特にVRヘッドセットMeta Quest 2への接続を想定しているのが特徴。Meta社側も、同社基準を満たした製品として「Made for Meta(Quest 2向け製品)」に認定しています。しかし、これまでQuest 2はワイヤレスイヤホン全般との相性が悪く、遅延の無い安定的な動作を期待できませんでした。

そこで本記事では、Quest 2向けに開発された「VR P10」が、どのように機能するかを徹底レビュー。気になる音声の遅延具合、PC接続とQuest接続の違いなどを検証していきます。

ドングルで遅延を最小化

「VR P10」を手掛けたSoundcoreは、USBケーブルなど、PC向けの周辺機器で知られるAnker(アンカー)の音楽ブランド。これまでにも多くのワイヤレスイヤホンや、スピーカーなどを手掛けてきました。

ゲームでイヤホンを使う場合、原則的に有線モデルを使用するべきと言われています。ワイヤレスイヤホンは、無線でデバイスと接続する都合上、どうしても音声に遅れが発生するからです。特に“世界に没入”するVRゲームではこの問題は致命的。音がズレると雰囲気が大きく損なわれてしまいます。


(充電用USBケーブルなどの付属品。イヤーピースはS、M、Lの3サイズ)。

「VR P10」はこの遅延問題について、「“ドングル(送受信機)”をデバイスを接続する」というアプローチで対策しました。同ドングルは、2.4Ghz帯でイヤホン本体と通信。LightningSyncというAnkerの独自技術によって、30msの超低遅延を実現します。

セットアップはスマホアプリから

「VR P10」には、イヤホン左右セットのほか、収納(充電)ケースとドングルがひとつ付属します。ケース自体は、白一色のシンプルなデザイン。どことなく「ポータル」シリーズのタレットっぽい雰囲気がオシャレです。


(USBケーブルを差し込むと光ります)。

「VR P10」はドングルを使用したいデバイスに差し込むことで使用できますが、スマートフォン向け専用アプリ「Soundcore」と連携させることで、より幅広い設定や機能変更が行えるようになります。アプリは日本語化されているので、指示に従って操作すれば、スムーズに初期設定を行えます。

アプリを起動すると、スマホのBluetooth欄で設定を行うよう促されるので、Bluetoothがオンになっているのを確認した後、「VR P10」ケース裏のボタンを約3秒間押し続けます。こうすることで、デバイスがペアリングモードに移行し、スマホと紐づけ可能になります。

注意が必要なのが、イヤホン本体の絶縁シールを剥がしておくこと。貼ったままだとケースがイヤホンを収納していると認識せず、ペアリングモードが起動しません(筆者はこれに気づかず、約10分、時間を浪費してしまいました……)。

紐づけした後は「Soundcore」で「VR P10」の各種設定を行えます。FPSで重要な足音などを最大化する「スーパーヒアリング」モードや、マイク機能のオンオフなどは、ここから行うことが可能。イコライザーで音を好みに調節もできます。

アプリでは「VR P10」の内蔵LEDの発光設定を切り替えも可能。ただ、装着してしまうと(自分からは)見えないので、バッテリー節約のためにも、発光を止める設定に変えておくことをオススメします。


(アプリの「VR P10」管理画面)

VRゲームやVRChatでも安定的に動作するか?

ここからは実際にVRアプリを使って「VR P10」を使った感想をお伝えします。今回はテストとしてリズムゲーム「Beat Saber」と「VRChat」を使用しました。

Beat Saber

「Beat Saber」のようなリズムゲーでは、音ズレの有無が特に重要になります。曲と、実際に流れてくるブロックのタイミングが異なってしまうと、リズムを掴むのが非常に難しくなるからです。

結論から言うと、ドングルを接続した状態では「VR P10」から聞こえる音に、遅延は全くありませんでした。筆者は「Beat Saber」を遊ぶ際、腰を振ってリズムを取るクセがあるのですが、きっちりとタイミングがマッチしました。高難度設定でも十分に遊べます。

音質については、Quest 2の純正スピーカーよりも格段に良い印象。低音もしっかり響いてくるので「同じ曲なのにこれだけ変わるのか」と驚いてしまいました。

またワイヤレスなので、腕を振り回した際、ケーブルを引き抜いてしまう心配がないのも、地味に高ポイントです。

VRChat

「VRChat」では、バッテリーの持続時間とマイクの音質にフォーカスして検証しました。特に前者は、長時間遊ぶことの多い本作では重要なポイント。盛り上がっているときにバッテリー切れは避けたいところだからです。

肝心の容量ですが、数週間「VR P10」を使ってプレイしたところ、残量低下の警告が出たのは、フル充電で使用を開始してから、約5時間半~6時間後でした。喋っている(=イヤホンが機能している)時間によって、ややバッテリー消費が変動する印象です。

多くの人が「VRChat」を遊ぶ時間は、長くても数時間と思われます。よって十分“合格ライン”は越えているのではないでしょうか。


(ドングルは格納ケースに収納可)。

マイク音質は、正直あまり良くはなく、少なくともQuest 2の純正マイクよりは劣るという印象です。利用環境にもよるかと思いますが、基本的には、Quest側のマイクを使用するのがベターでしょう。

一方で「離席してもトーク可能」なのは大きなメリット。イヤホンにマイクが内蔵されているので、ヘッドセットを外しても周囲と喋ることができます。筆者はこれまで、話の腰を折らないよう離席のタイミングを見計らっていたのですが、「VR P10」に変えてから、そういったストレスが軽減されました。

ただし、イヤホンをつけたまま自室を移動する際には、プライベートが漏れる可能性もあるので、ミュートするか、本体を外すことを忘れないようにしましょう。

番外編:Web通話(Slack)

VRとの関連は薄いですが「Slack」を使った通話も試してみました。こちらでも特に音質に問題はありませんでした。PCとの距離次第ですが、リモートワークで通話しつつ家事をするといった使い方も可能です。

ちなみに筆者の家では、おおよそ3mほどPCから離れた時点で接続が途絶しました。壁など障害物がなければ、もう少し距離が開いても使用できるかもしれません。

Quest接続とPC接続の違い

「VR P10」をQuest 2に接続した状態と、PCに繋げた状態で違いがあるかについても、確認を行いました。

感覚としては、特に音質や遅延などに変化はありませんでした。ただ、地味に面倒だったのがドングルの差し替え。筆者のPCはUSBがガチっとハマるタイプなので結構力を入れる必要があり、正直ヒヤヒヤものでした。


(LEDをオンにするとこんな感じ)

設定アプリにはドングルの切り替え機能が付いているのですが、記事執筆時点では、ドングル単体の販売は行われていない模様です。Quest 2とPCにそれぞれ挿せれば、かなり利便性が向上すると思うので、早めに販売を開始してほしいところです。

なおPC向けのVRゲームを遊ぶ場合は、Quest 2ではなく、PC本体にドングルを差し込みます。VRヘッドセットに挿しても、PCとの(ドングルによる)接続は成立しないので注意してください。


(公式サイトの画像 PCVRモードで利用する場合はNG)

まとめ:新世代イヤホンの遅延は全くなし

「VR P10」は、音声の遅延を限りなくゼロにしたゲーミング向けのワイヤレスイヤホンです。バッテリーの持ちも良く、よほど長時間ゲームを遊ばない限り、バッテリー切れを心配する必要はありません。会議通話など、ゲーム以外の場面でもしっかりと機能します。

唯一欠点があるとすれば、1万円を超える価格にも関わらず、ノイズキャンセリングを搭載していない点。ただ、VRを遊ぶのは、基本的に静かな屋内(自宅など)騒音が比較的少ない環境なので、個人的には不要に思っています。純粋に遅延の削減に特化したのは、英断と言えるのではないでしょうか。

VR以外での使用も可能で、PCのほか、Nintendo SwitchやPlayStation 4/5などUSB-Cポートがあるデバイスなら、基本的にドングルを接続可能。低遅延でのゲーム体験が楽しめます。

マイク音質については少し物足りない印象です。Slackでは大丈夫でしたが、少なくともQuest 2の使用時にはイヤホン機能だけを使用するのがよさそうです。

イヤホンのケーブルに煩わしさを感じているという方、ワイヤレスイヤホンの遅延に悩んでいる方、「VR P10」を一度手に取ってみてはどうでしょうか?

「VR P10」の購入はこちら。
https://www.ankerjapan.com/products/a3850


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