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VRゲーム・アプリ 2026.07.09

とりま、頭振っとけ! 全身ヘドバンで爆走する鳥スケボーVR『TORIMA HEADBANG』【体験レポ】


2026年5月、京都・みやこめっせで開催された日本最大級のインディーゲームイベント「BitSummit PUNCH」。会場の中央で大きな存在感を放っていたXRゲーム専用エリア「XR横丁」のすぐ隣に、ひときわ自由でエネルギッシュな空気を漂わせる一角がありました。今年新設された「BitSummit Game Jam XR部門」のブースです。

学生や若手クリエイターがチームを組み、限られた時間のなかで一気に作り上げた作品が、ところ狭しと並んでいます。プロの完成された作品とはまた違う、荒削りだけど勢いのある熱量。そのなかで筆者の心と頭をいちばんがっちり掴んでしまったのが、ただひたすら頭を振るゲーム——『TORIMA HEADBANG』でした。

■ 「BitSummit Game Jam XR部門」という遊び場

本編を紹介する前に、少しだけ舞台の話を。
「Game Jam」とは、決められた短い期間のなかで、その場でチームを組んでゲームを作り上げるイベントのこと。今年のBitSummitでは、これにXR(VRやARの総称)部門が新たに加わりました。ヘッドセットを使った作品をゼロから短期間で仕上げるというのは、なかなかにハードな挑戦のはず。それでもブースに並んだ作品は、どれも「やってみたい!」を素直に形にしたような、思いきりのいいものばかりでした。
そんな空気を象徴していたのが、この『TORIMA HEADBANG』。同部門の作品群のなかで、見事「BitSummit Student Gamejam Award」を受賞した作品でもあります。学生らしい振り切った発想が、しっかり審査員にも届いた一本です。
▲ BitSummit PUNCH授賞式の様子(画像提供:鳥蛮族)

■ 鳥になって、トサカで爆走するゲーム

『TORIMA HEADBANG』であなたが操るのは、なんと一羽の鳥。しかも、スケボーに乗っています。この時点ですでにツッコミどころ満載ですが、話はここからです。
開発したのは、日本と中国の学生からなる8人組のチーム「鳥蛮族(Birdbarian)」。「常識破りのVRヘドバンリズムランアクション」と自ら銘打つだけあって、設定もなかなか振り切れています。あなたが操るのは、イカした冠羽を生やした”ス鳥トリートパフォーマー“。鳥のギャングとなって、ミニスケボーでストリートを逆走するのが目的です。

▲ キービジュアル。主役はスケボーに乗ったイカした鳥だ(画像提供:鳥蛮族)
​​操作方法は、びっくりするほどシンプル。ヘッドセットをかぶって、頭を思いきり振る。たったそれだけ。鳥のトサカをブンブン振ったその風圧で、スケボーがぐんぐん進んでいきます。
ここで面白いのが、進む方向です。ヘドバンで生まれた風を推進力にするという設定なので、後頭部が先頭になって走っていく。つまり、自分は後ろ向きに猛スピードで突き進んでいくことになります。目の前の景色が、自分の背中側へどんどん流れて遠ざかっていく感覚は、ほかではなかなか味わえないものでした。
プレイのスタイルも独特です。椅子に腰かけ、足はスケボーの上に乗せた格好でプレイします。座っているのに頭は全力で振る。この組み合わせのアンバランスさが、なんともこのゲームらしいです。

■ 4つのヘドバンを使い分けて駆け抜けろ

公式情報によれば、このゲームには4種類のヘドバンが用意されています。縦に振る「普通のヘドバン」、左右にブンブンする「サイド・ヘドバン」、頭で円を描く「ウィンドミル・ヘドバン」、そして頭で8の字を描く「エイトクロス・ヘドバン」。それぞれ、加速や進路変更、爆風の発生など、効果も使い道も違うようです。
▲ 曲中には「ウィンドミル」の指示も飛んでくる(公式スクリーンショット)
筆者がプレイしているあいだ、基本は縦振りでひたすら加速していたのですが、ときどき画面から「ここで8の字!」「ここで円!」と指示が飛んできます。リズムに合わせて切り替えていくのが醍醐味……のはずなんですが……指示通りに動かしているつもりでも、動き回る景色の中だんだん文字も読めなくなってきます。気づけば自分がいま頭をどう振っているのか分からなくなってきて、もうぐちゃぐちゃでした。それでも前には進んでいるので、叫びながら振り続けていました。

■ 全力で頭を振れ! 待っていたのは想像以上の爽快感

ルールを聞いた時点では、頭を振るだけでゲームとして成立するのか半信半疑でした。

しかし心配は無用でした。振れば振るほど加速する。この手応えが気持ちよくて、自然と振り方に熱が入ります。沢山の通行人の横で全力のヘッドバンギング。傍から見たらかなり怪しい姿だったはずですが、本人はそんなことお構いなしでした。

背中側には扇風機も置かれていました。筆者のときは動いていませんでしたが、これはおそらく、ヘドバンで進むときの「風」の演出用。回っていれば加速するたびに本物の向かい風が背中に当たるわけです。次に遊べる機会があれば、ぜひ風のある状態で全力ヘドバンしてみたいです。

体験して何より面白かったのは、このゲームの肝の入力方法です。
VRやMRのゲームは、両手にコントローラーを握って操作するのが一般的で、最近は手の動きをそのまま読み取るハンドトラッキングも増えてきました。『TORIMA HEADBANG』はそのどちらでもなく、使うのは頭。かぶっているヘッドセットそのものが、コントローラーです。
ヘッドセットは常にプレイヤーの頭の動きを捉え、その「首を振る」動きを、そのまま推進力に変換する。仕組みは単純なのに、実際に体験するまで、こんな遊び方があるとは思いもしませんでした。VRの操作には、まだ体験したことのないやり方が残っている。この作品の一番の発見でした。
ちなみに公式情報によれば、コース上では取り締まり役の鳥たちにまとわりつかれたり、ミサイルが飛んできたりもするらしいのですが、それらは「マイクに向かってシャウトする」ことで撃ち落とせるとのこと。なかなかぶっ飛んだ仕掛けまで仕込まれているようです。筆者が体験したバージョンでは出会えなかったのですが、聞くだけでもさらにカオスになっていく予感がします。

■ 開発チームに聞いた、常識破りの誕生秘話

もっとこの作品のことが知りたくなったので、XのDMで開発チーム「鳥蛮族」に質問をぶつけてみました。ありがたいことに、想像以上に熱のこもった回答が返ってきたので、リーダーの有竹祐樹さんとのやり取りをそのまま紹介します。
——作品の着想を教えてください。
有竹:「BitSummit Game Jamのテーマ『High Impact: Break Through』を、僕らは『常識を打ち破るルール・入力方法・操作・視点で、プレイヤーや観覧者に衝撃を与えろ』という挑戦状だと受け取りました。そこで、VR空間において『頭を使った遊び』を、視点切り替えを駆使する『知的なパズル(思考)』と、全身で挑む『フィジカルな遊び(物理)』の2軸で構想を開始したんです。
当初は、頭を投げて視点を切り替える『デュラハンパズル案』と、頭を振って爆走する『ヘドバンレース案』で、チーム内でも約1ヶ月にわたって激しい議論を交わしました。両方のプロトタイプを制作して比較検討した結果、展示会場で最も『バズり』や『インパクト』を生み、誰もが直感的に楽しめるのはどちらかを検討して……『恥ずかしさ』という心理的障壁さえもエンターテインメントに昇華させる『ヘドバン』への一本化を決断しました。この時はレースゲームやランゲーム的な遊びがメインでしたが、開発の過程で、リズムゲーム要素を強く押し出す方向にブラッシュアップしています。
『ヘドバンで進む』というアイデアをゲームとして成立させるため、リーダーである僕が愛する『鳥』をモチーフに採用しました。大きな冠羽を持つタイハクオウムに着目して、冠羽を逆立ててヘドバンする動きを、風を扇ぐ動作に見立てて、そのまま推進力にしてしまうという勢いから、物理法則を逆手に取って『後方に爆走する』という、常識破りのVRヘドバンリズムランアクションが誕生しました」
▲ 開発チーム「鳥蛮族」のみなさん(画像提供:鳥蛮族)
——制作意図を教えてください。
有竹:「なぜVRヘッドセットを操作に使うのか、という疑問は開発中ずっとメンバー全員で考えていました。『Joy-ConやWebカメラでも可能ではないか』という指摘・議論もありましたが、それらはバックアッププランとして考えていたんです。僕らは、ヘッドセットこそが『ヘドバン中の視界喪失を補いつつ、自身の動きとゲーム内の状況を一体化して提示できる唯一の手段』であると考えて、VRでの実装にこだわりました。また、僕が別のプロジェクト(VRフライトゲーム『ハヤツバサ』)で開発していた風体感システムを流用して、風を背後から吹かせることで、視界が遮られる中でも『後ろ向きに猛スピードで進んでいる』感覚を刺激する設計にしています。
サウンドについては、ゲームジャム当初はサウンド専任のメンバーがいなかったため、その中で特に音を扱うリズムゲームを作ることは、作業規模感、実装の技術的可能性、世界観とのマッチ、様々な面が分からず、実に大変でした。結果として作曲は断念して、海外からの来場者も即座にグルーヴを理解できる『天国と地獄』をセレクトして、権利関係をクリアしつつインパクトを出すためにヘビメタ風にアレンジしたものをステージ曲にしました。また、ゲーム中の効果音やタイトルBGMには、チームメンバーの生の声や、得意とするビートボックスの音をふんだんに取り入れています。
そして、このゲームで特に大切にしたのは、『ヘドバンの多様性』の全肯定です。曲中では、通常の上下の振りだけでなく、大きな円を描く『ウィンドミル』や八の字に振る『エイトクロス』といった多様なヘドバンアクションを要求するレベルデザインを構築しました。僕らが大切にしたのは、『誰がどうやっても、本人がヘドバンだと思えばそれはヘドバンである』と全面的に肯定することです。リザルト画面では、その人のプレイで特に光っていた部分を称賛する、ユニークな称号システムを導入しました。
スタッフ向けの接客マニュアルを作成して、メンバー全員がチームTシャツを着用して展示に臨みました。足元にはゲーム内と同じようにスケートボードを設置して、ヘッドセットには激しい動きで取れないようにヘルメット用のあごひもを取り付けるなど、プレイヤーだけでなく観客にも『High Impact』を与えられるように細部まで作り込んでいます。
また、テーマパークのアトラクションで、絶叫中の乗客の様子を自動撮影し販売するサービスから着想を得て、プレイ中の様子をチェキで撮影する有償サービスも行いました。写真において本来よくないとされるブレが、逆にこのブースのチェキにおいては勢いが感じられて良いと、大変好評を博しました。

▲ ブースで販売されていたチェキ。ブレがむしろ勢いを物語る(画像提供:鳥蛮族)
現在は、今回のBitSummitで得た熱いフィードバックをもとに、さらなるブラッシュアップを進めています。直近では『神ゲー創造主エボリューション』に向けて、大学のサウンド専門研究室とのコラボレーションを行い、サウンド面の強化を画策しています。チュートリアルや新曲追加など、より多くの方にこの常識破りな体験を届けるべく、今後も開発を継続してまいります」

▲ リザルトではプレイぶりに応じたユニークな称号が贈られる(公式スクリーンショット)

■ まとめ:頭を振るほど好きになる一本

頭を振るほど速くなる、鳥のスケボーゲーム。文字にすると、やっぱり完全にネタゲーです。でも、実際に遊んでみると、確かな手応えと爽快感がありました。
アイデアの面白さ、振り切った潔さ、そしてXRならではの新しい入力への挑戦。短い制作期間のなかで、これだけ人の記憶に残る一本を作り上げてしまう。GaGame Jamという場の底力を感じました。
『TORIMA HEADBANG』が今後どう育っていくのか、いち体験者として今からとても楽しみです!
ちなみに本作、開発チームの公式itch.ioページから無料でダウンロード可能です。HMDを持っていない方も、マウス操作やスペースキー連打でヘドバンを再現して遊べる仕様。みなさんもぜひ一度、トサカの限界まで頭を振ってみてください!
公式X:https://x.com/TorimaHeadbang
配布ページ:https://bitsummit-gamejam.itch.io/bsgj2026-torima-headbang-e02

ソフトウェア概要

タイトル TORIMA HEADBANG / トリマヘドバン
発売・開発元 鳥蛮族(Birdbarian)
対応ヘッドセット PC向けVRヘッドセット ※HMDなしでもマウス・キーボードでプレイ可能
プレイ人数 1人
価格 無料(itch.ioで配布中)
受賞 BitSummit Student Gamejam Award(BitSummit PUNCH)

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