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【体験レポ】現実のテーブルがVRでは…?インテルの一体型VRヘッドセット「Project Alloy」で体験する“混合現実”

ラスベガスで開催されていたCES2017で、インテルは一体型VRヘッドセットのプロトタイプProject Alloyの体験展示を行っていました。

Project Alloyは、インテルが2016年8月に発表した一体型のVRヘッドセットです。PCやスマートフォンを使うことなくVR体験が可能です。そして、外部センサーを使った位置トラッキングすら不要で、さらに手のトラッキングも可能なためコントローラ-も不要というまさにVRでの移動、操作までも組み込んでしまった“一体型”のデバイスです。

今回展示されたのは、プロトタイプとのことで、改善点も多く感じられましたが、インテルが提唱するMerged Reality(※定訳が存在しないため、ここでは「混合現実」と仮訳をあてています)を垣間見る貴重な機会となりました。

今回体験できたのは旧モデル、新モデルでは…?

見た目はPlayStation VRとも似ています。前部にディスプレイとCPU等のプロセッサが組み込まれています。前面中央にはRealSenseセンサーがあり、手の判定と障害物の判定を行います。

前面左右端には魚眼レンズが各1つずつ付いており、この魚眼レンズとIMUによりインサイド・アウト方式と呼ばれる方法でプレイヤーの位置を認識します。バッテリーは後頭部に搭載され、バランスをとっています。

底部にはIPD(瞳孔間距離)調整機構

VRの中で現実に“触る”

筆者は今回、2回に分けてProject Alloyのデモを2つ体験しました。

1つ目は、塔の頂上にいて、攻めてくる敵ロボットを倒していくシューティングゲームでした。

デモルームと等倍のスペースになるようコンテンツが設計されており、部屋の広さと塔の頂上のスペースの面積は一致しています。現実では部屋の中央にテーブルが置かれていますが、VRではエネルギージェネレーターが設置されています。高さも一致しているため、手を伸ばすとジェネレーター=机に“触る”ことができます。なお、本ゲームではRealSenseは起動されていません。手にコントローラーを持ち、狙いを定めて敵を撃ちます。

グラフィックもそれなりに綺麗でGear VR以上のミドルレンジからOculus Rift等のハイエンドに匹敵するクオリティが出せることを示唆していました。

VRの中に自分の手を“持ち込む”

2つ目のデモは、RealSenseを起動し、実際に自分の手をVRの中で動かせるものでした。また、視界の先には現実の壁のある位置に緑色の柵が見えています。

地球が回っている暗い空間にいて、地球の3箇所の建造物を実際に見ることができるという体験でした。手を伸ばしてスイッチを押すと、VRでは目の前に建造物が現れます

RealSenseを通して現れる手は現実の手がそのまま見えます。建造物のモデルは、しゃがんで近づいてよく見てみると建物の横を人が行き交っている様子も再現されていました。

シンプルなデモですが、手と壁をしっかりと判別して認識していることが分かるデモでした。

感じられた課題と解決へのロードマップ

PCやスマートフォンを搭載しないVRヘッドセットとしての性能、位置トラッキング、手と障害物の判定、とインテルがProject Alloyで目指していることを確認できる体験でしたが、「課題は多い」(担当者)ことは、体験していてもあらゆる面で感じられる厳然とした事実でした。

今回感じられた課題は以下の通りです。

本当の意味でのMerged Reality(混合現実)の実現に向けて

今回、1つ目のデモで体験したシューティングゲームは、部屋のサイズとテーブルが既にゲーム内に設定されている状態でした。

これは、まだ擬似的なMerged Realityを作り出しているに過ぎません。というのも、現実のテーブルをずらしたときに、VRにあるエネルギージェネレーターが動くことはないからです。現実とVRは、まだ同期していません。

Merged Realityが最終的に目指すことは、VRでも現実が同期している状態の実現ではないでしょうか。2つ目のデモで壁が緑の柵で表示されたように、現実の物体を認識し、VR内の物体に置き換えていくような機能がいつごろ実現するのか非常に楽しみなところです。

現実の移動、VRでの移動の一致

続いて、インサイド・アウト方式による位置トラッキングについて。

位置のトラッキングにおいて、VRにいる実在感を壊さないために重要になると筆者が考えているのは、「自分が動いたと思っているようにVRでも動けているか、という感覚の一致」です。一歩前に踏み出したときに、「現実で移動する視界と同じだけVRでも視界が動いているかどうか、動き方は滑らかかどうか」が肝となります。Oculus RiftやHTC Viveなど外部の装置を使うハイエンドVRではトラッキングの精度が非常に高く、違和感を感じないレベルの移動が実現しています。

Project Alloyのトラッキングは距離的にはほぼ正確なものの、まだ依然として違和感を感じました。位置トラッキングの精度は高めていく必要があります。

処理性能と発熱

一体型で気をつけたいポイントとして処理性能と発熱があります。一体型では、PCやスマートフォンに処理を委ねずにヘッドセットそのもので処理を行うため、どうしてもデスクトップPC等と比べて処理が劣るのではないか、また処理負荷が高くヘッドセットが熱くなるのではないか、という懸念があります。

シューティングゲームのデモは、描画が美しいことが印象的でしたが、RealSenseの処理を行っていないため、その分の処理能力を描画処理に割り当てることができていたのではないかと推測されます。それで10分程度のプレイ後はヘッドセットの前頭部を触ると熱くなっていました。また、2つ目のデモではRealSenseを起動しているため、フレームレートが落ちており、全体的に処理負荷が高くなっていることがわかりました。温度はほんのり温かい程度でした。

新世代のCPUが搭載されることで今後、処理能力がどの程度向上するのか注目したいところです。

※なお、温度に関しては、展示用に数台の筐体を順番に使いまわしているとはいえ、長時間の連続駆動を行っていることを考慮し、参考程度。

装着感と重量

装着感はPlayStation VRと似ていますが全体的に重い印象でした。PC接続のヘッドセットと比べるとバッテリーとプロセッサーが搭載されている分、重くなるのは必然ですが、重すぎると圧迫感や首や肩に疲労感を感じます。製品版では重さを感じないバランスのよいデザインが求められます。

早くも新モデル「Project Alloy 2」が開発中

課題は多いものの、インテルの担当者によると、今回体験できたのは旧モデルとのこと。CPUには前世代となるCore第6世代のSkylakeを使っており、センサー類も今後改良の余地が大きいとコメントしていました。

現在開発している新モデル「Project Alloy 2」では、2017年より市場投入が始まった第7世代Kaby Lakeを搭載し、センサーも新たなものになります。特に、現実空間の認識に使うセンサーにはMovidius社のチップが次モデルから搭載されるとのこと。Movidius社はコンピュータービジョン向けのチップを開発しており、グーグルのAR技術Tango向け等にチップを提供しています。2016年9月にインテルが買収しています。

最も印象的だったのは、インテルの本気度とスピード感

インテルはProject Alloyを製品版開発のレファンレンスモデルと位置づけており、前述した新モデルをパートナー企業に提供していくと発表しています。

課題は多いものの、4ヶ月前に発表したばかりのデバイスのプロトタイプをプレイアブルな状態で出展し、「2017年中には製品を世に送り出す」と発表しているインテルのスピード感には目を見張るものがあります。

1月4日に行われたインテルの45分間に及ぶプレスカンファレンスはほぼ全てVR(Merged Realityを含む)に関する内容に終始しました。VRというこれまでにない処理量を行うコンテンツが登場することで、インテルのコアビジネスであるプロセッサ需要が喚起されることは間違いありません。それにしても、リファレンスモデルを公開し、Merged Realityという新たな概念までも提唱している姿勢には、この分野に非常に強く力を入れているという印象を受けました。

Project Alloyが新モデルでどの程度改善するのか、またCES2017で開催されたプレスカンファレンスで発表されたように2017年末までに製品版がどういったものになるのか、非常に楽しみです。

なお、インサイド・アウト方式の位置トラッキングを採用した一体型VRヘッドセットはOculusやQualcommも開発を行っています。


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