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話題 2022.10.27

【コラム】「ポケモン」シリーズの「ファッション」の進化に注目 見た目のカスタマイズの歴史をたどる

「ポケットモンスター」シリーズには、プレイヤーキャラの見た目をカスタマイズできる要素が存在する。シリーズ開始当初は画一的な見た目だった主人公が、いまではプレイヤーの裁量で、千差万別の姿を得て冒険の旅に出ている。

最新作「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」では、この見た目カスタマイズ要素がさらに強化されたばかりか、自由にポーズし、撮影できるようになるようだ。シリーズ初のオープンワールド化と合わせて、「自由な姿で世界を旅する」ことができる楽しさが味わえるかもしれない。

そうした新要素・拡張が、ゲームとしての「ポケットモンスター」にどのような影響を与えるか。これまでのシリーズを振り返りつつ、昨今流行りのアバター、メタバースにも通ずる「主人公の見た目をカスタマイズできる」要素について考えてみる。

X・Yから始まったトレーナーのファッション

1996年に発売された「赤・緑」から数えると、11月18日に発売される「スカーレット・バイオレット」は、俗に「第9世代」と呼ばれる。「世代」は長いシリーズの歴史の「区切り」を意味しており、具体的には各世代ごとにゲームシステムに大きなアップデートが実施されてきた。

「とくせい」の実装。わざごとの物理、特殊の設定。グラフィックの3D化。メガシンカ、Zわざ、ダイマックスの導入。経験値システムの刷新。オープンワールドエリアの追加……毎追加される新要素は、各世代の第一弾タイトルの大きな目玉となる。

そして「第6世代」のはじまりとなった「X・Y」では、プレイヤーキャラクターの見た目に大きな変化があった。「コスチューム」システムの導入――「着せ替え」の登場だ。


(筆者「X」の主人公。3DSの画面を直接撮影)


(筆者の「X」における主人公だ。オタク、好きだろう……? こういうルックス)

「X・Y」における「コスチューム」の幅は広い。パーツは「帽子」「トップス」「ボトムス」「靴下」「靴」「バッグ」「帽子飾り」の7種類が存在する。女性主人公の場合は「ワンピース」も加わる。組み合わせの幅は非常に広い。

さらに、髪型を変更できる「サロン」や、任意タイミングで目のカラーリングを変更できる「コンタクトレンズ」、ゲーム開始時に選択できる肌の色(ゲーム内では変更不可)の組み合わせも加わると、かなり多様な見た目を生み出せる。

「X・Y」以前のシリーズでは、主人公の見た目は基本的に不変だった(「ブラック2・ホワイト2」の「ポケウッド」など例外はあるが)。「X・Y」以降の「着せ替え」要素は、「主人公のおしゃれ」という新しいゲームの楽しみ方が登場した。自分の好きな姿で冒険できる楽しさはもちろん、おしゃれそのものを楽しめるだけの”幅”が大きい。


(筆者「シールド」の主人公「リーグカード」)

ただし、「X・Y」や第7世代「サン・ムーン」「ウルトラサン・ウルトラムーン」は、ゲーム内の様子を共有しにくい「ニンテンドー3DS」タイトルだったため、着せ替えた姿のシェアは難しかった。

しかし、第8世代「ソード・シールド」はスクリーンショットや録画が簡単にできる「Nintendo Switch」で展開されたため、組み上げたコーデをシェアすることが容易になった。そして「ソード・シールド」には、プレイヤーの姿をポージングし、撮影した画像を設定できるプロフィール機能「リーグカード」も存在する。

「リーグカード」はプレイヤー同士で交換・収集できるが、スクリーンショットをシェアして、お気に入りの服をポーズ付きでSNSなどに発信することもできる。おしゃれに精を出しすぎて、ついつい各地のブティックに立ち寄ってしまい、ジムチャレンジの足が止まったプレイヤーも多いのではないだろうか。

「ポケモンシリーズ」は、世代を重ねるごとにプレイヤーキャラの「魅せ方」にも力を入れられるようになっている。「自分のアバター」としてのプレイヤーキャラへの需要が、それだけ高まっているという証左だろう。

メイクに自撮り、エモートも――最新作の先行情報を見る

さて、最新作「スカーレット・バイオレット」ではどうなるだろうか。今作の主人公は、とあるスクールに通う「学生」という設定が明らかになっている。つまり、最初から着ている服は「制服」ということになるだろう。男女のデザイン差がないのが特徴で、筆者は往年シリーズにおける「ボーイスカウト/ガールスカウト」を思い出した。


(「【公式】『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』紹介映像「パルデア地方冒険ガイド篇」」より)

上記の設定もあり、着せ替え要素がどこまで盛り込まれるかは未知数だ。一方で、従来どおりヘアサロンで髪型や色を変更できるほか、目の色やメイクなども(おそらく専用メニューから)変更できることが明らかになっている。


(「【公式】『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』紹介映像「パルデア地方冒険ガイド篇」」より)

目を見張るのがメイクの幅広さだ。開発段階だが、項目は目の形状、目の色、まつげ、眉毛、口まわり(口紅も?)などが確認できる。従来とくらべて「顔の造形」を非常に細かく調節できそうで、男性主人公でも女性らしい容姿にできそうなのが興味深い(あるいはその逆も)。



(「【公式】『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』紹介映像「パルデア地方冒険ガイド篇」」より)

さらに、「スカーレット・バイオレット」には「カメラアプリ」が登場し、風景はもちろん、「自撮り」もできるようだ。自撮りの際はしっかりとプレイヤーキャラが「カメラを手にしている」構図になっており細かい。フィルター機能までついているようなので、「映える」写真も狙えそうだ。


(「Pokemon Scarlet and Violet Hands-On Preview」より)

さらに、海外の先行プレイ報告から、マルチプレイではエモートを利用できることが明らかになっている。思い思いのポーズを「リーグカード」の中だけではなく、オープンワールド化した街やフィールドで自由にとることができるとなると、さらに撮影の幅が広まりそうだ。

「好きな姿であてのない旅に出る」という遊び方の芽生え?

「オープンワールド」と呼ばれるジャンルのゲームは、遊び方そのものが多様だ。メインストーリーを追うこともできるが、寄り道に進むこともできる。人によっては、フォトジェニックな場所を求め、スクリーンショット撮影に力を注ぐこともできる。

そうした需要か、最近は撮影機能を内蔵するオープンワールドもいくつか見られる。「Ghost of Tsushima」には、非常に多機能なフォトモードがあった。ゲーム内でいつでも起動でき、主人公の表情や、フィルター機能、時間や天候まで操作できる破格の多機能ぶりだが、そこまでしてでもおさめたい雄大で血なまぐさい「世界」が広がっているのが同作だ。

「スカーレット・バイオレット」は、オープンワールド化に際して、従来シリーズで存在した「攻略の順序」が撤廃されることが明かされている。どのように冒険するかはプレイヤーの自由、というわけだ。おそらくは攻略そっちのけでフィールドを探索することもできるだろう。

自由な探索は、自由にカスタムできるアバターや、ゲーム内撮影機能と相性が良い。カテゴリこそ違うが、ソーシャルVRの多くはこの三要素を宿している。「VRChat」は特に、探索できる世界とアバター、そしてカメラ機能がリッチだ。「バーチャルフォトグラファー」として活動する人もいるほど、探索と撮影に適している。

自分の好きな姿で、友人とともに、カメラを携えてあてのない冒険の旅に出る。「その世界にいること」自体を楽しむ遊び方が、あらゆる場所で「メタバース」が唱えられるさなかに「ポケットモンスター」シリーズにも芽生えるかもしれない。偶然かもしれないが、「ナンジャモの配信」という一風変わった、しかし時代を汲んだ試作を見ていると、ひとつの「時代の流れ」のようにも感じられる。

「スカーレット・バイオレット」発売後、どのような「写真」がSNSへ発信されるか、いまから心待ちにしたい。

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