9月20日(金)、株式会社PICOから新型VR/MRヘッドセット「PICO 4 Ultra」が発売されました。価格は89,800円(税込)です。
前機種の「PICO 4」にはなかったMR(Mixed Reality)機能が追加され、現実の景色の中にバーチャルなモノが出現するかのような体験が可能となっています。さらに、本機種からモーショントラッキングデバイスの「PICO Motion Tracker」が使える点が大きなポイントです。

(左からMeta Quest 3、PICO4Ultra、PICO4)
今回は「PICO 4 Ultra」の前機種「PICO 4」からの改良点や、現状の同列スペックモデルである「Meta Quest 3」との比較の観点でレビューしていきます。
ハードウェアの性能
まずは、本体を見てみましょう。
ディスプレイの見え方について
見た目としては、前機にあたる「PICO 4」とデザイン的な大きな差は見られませんが、フロント部分に2つのカラーシースルーカメラ(外側の景色が見えるカメラ)と、iToF深度センサーカメラ(距離感を測定するカメラ)が取り付けられています。これにより「PICO 4」にはなかった立体的なカラーパススルー体験(MR体験)ができるようになりました。

(左:「PICO 4 Ultra」のディスプレイ、右:「Meta Quest 3」のディスプレイ)
ディスプレイの解像度は、片目で2160×2160(両目合計:4320×2160)。Meta社が昨年発売したヘッドセットMeta Quest3と比較すると、画質はやや上という感じでしょうか(片目:2064×2208、両目:4128×2208)。装着してディスプレイの見え方を確認したところ、ヘッドセット越しであっても現実の景色はくっきりと見えていました。ヘッドセットを装着した状態で小さい文字を読むことは難しいですが、ある程度の大きさの文字であれば可能なレベルです。具体的にはPCモニターの文字は読むことができました。。
デバイス越しでは、若干部屋が暗めに見える印象なので、使用するときは照明の明るい部屋で行うほうが良いです。また、レンズ越しの景色をよく見渡しても、映像が歪んで映るといったことはなく、違和感や気持ち悪さはありませんでした。
リフレッシュレートは最大90Hzであり、使用中もそこまで画面の滑らかさが落ちるといったことは起きませんでした。運動系のアプリで激しく動いても、映像がブレるといった現象は起きませんでした。個人差はありますが、VR酔いも起こりにくいのではないかと思います。
前機の「PICO 4」のディスプレイでは、現実の景色を見ていても、深度カメラが着いていないため、自分とモノの距離感を掴むことはできませんでした。しかし、今機では距離感も正しく捉えられます。例えば、机の上にあるコントローラーを手に取る際、前機では恐る恐る手を伸ばしていましたが、「PICO 4 Ultra」では、自分で目視した場所に正しくコントローラーがあることを把握でき、簡単に手に取ることができました。PICO4のディスプレイの解像度は、「PICO 4 Ultra」と同じでしたが(※片目:2160×2160、両目:4320×2160)、この奥行きは大きなメリットです。
一方、「Meta Quest 3」と比較してみると、正直見え方に大きな差があるようには感じませんでした。先ほど、スペック的にはやや上回っていると説明しましたが、体感ではなかなか実感しにくいレベルだと思います。明るさも立体感も大きな違いは分かりませんでした。これは、昨年リリースされたMeta Quest 3がコンスタントにアップデートを重ねている影響で、「PICO 4 Ultra」にも見劣りしないレベルに発展し続けているとも言えます。「PICO 4 Ultra」はこの時点からがスタートなので、ここからどれだけのアップデートを重ねていくのかが重要なポイントになりそうです。
視野角についても、「PICO 4 Ultra」と「PICO 4」が105度、対して「Meta Quest 3」が110度とやや広いですが、正直その差を実感できる程ではなかったです。
装着感は良好!
「PICO 4 Ultra」は、装着の際とても軽く感じ、快適でした。これは、バンドの後頭部にあたる部分に、バッテリーを内蔵しているため、全体の重さが頭全体に分散されているためだと思います。この造りは、PICO4の頃からほとんど変わっていません。頬骨等顔の一部分に負荷がかかるような作りになっておらず、フィット感は大変良いです。また、後頭部部分にもクッションがついています。
Meta Quest 3の場合は、バッテリーも含めゴーグルの部分に集約されていて、重さが前方に集中します。フィット感についても、筆者の場合は頬骨に重さがかかるような感覚が苦手でしたが、「PICO 4 Ultra」ではそういった感覚はありません。
ヘッドバンドの調整は、後頭部部分にあるダイヤルで調整可能。装着してからも手で調整しやすくできています。PICO4からの良い設計は、そのまま引き継がれていますね。
ちなみに、3機のそれぞれ重さは、「PICO 4 Ultra」が約580g、「PICO 4」が約588g、「Meta Quest 3」が約515gとなっています。重さだけであれば、Meta Quest 3の方が軽量ですが、装着感については「PICO 4 Ultra」に軍配があがります。
コントローラーは、「PICO 4」からあったセンサーが組み込まれたハンドガードのようなパーツがなくなり、とてもスッキリしました。見た目のデザインはまるで一回り大きい「Meta Quest 3」のコントローラーです。使用する電池は、「PICO 4」と同じくコントローラー1つに対して単三電池2本。計4本必要になります。電池を入れた状態での重量は約160g。「Meta Quest 3」と比較すると一回り大きい分やはり重いようです(PICO 4 Ultra:約330g、Meta Quest 3:約260g、PICO 4:約370g)。
体験できるコンテンツは?
「PICO 4 Ultra」は、PICOストアで購入したアプリを使うことができます。9月22日現在、ストアにはVRアプリが650個、MRアプリが40個販売中。「VRChat」も公開されており、十分遊べる数のアプリがあるように思えますが、PICOストアにはVRゲームといえばで思いつくような「Beat Saber」や「Gorilla Tag」といった定番のタイトルが販売されていません。
今後対応する可能性はありますが、「PICO 4 Ultra」を購入して遊ぶ際に、遊びたかったタイトルがない場合もあるので、事前に調べておく必要があるでしょう。Metaストアで販売されているコンテンツは、9月22日時点で約3867個あり、桁違いです。
しかし、PICOには「PICO Connect」や「Virtual Desktop」といったPCと接続してSteamのゲームで遊べる方法もあります。これを使って定番VRゲームを楽しむことも可能です。
「PICO Connect」を使ってPC接続できる
先述した「PICO Connect」についてご紹介します。「PICO Connect」は、「PICO 4 Ultra」と自身のPCを接続して、「PICO 4 Ultra」内部で行われる処理をPC側で行うことができるアプリです。これにより、「PICO 4 Ultra」単体ではできない「Steam」にあるVRゲームや、PCの操作などを行うことができます。
「PICO Connect」は、「PICO 4 Ultra」とPCどちらにもインストールが必要です。選択して起動し、接続の準備を行ってください。
接続の方法は2つあり、PCにケーブルで差して接続する有線の方法と、同じWifiのアクセスポイントへ接続する無線の方法があります。無線で接続する際は、ヘッドセット側とPC側とで、同じアカウントで「PICO Connect」へログインが必要です。PC側の「PICO Connect」アプリを開くと、まず使用するPCが必要スペックを満たしているかのチェックが走ります。必要スペックは、グラフィック面などゲーミングPCと同等レベルのものが必要になるため注意です。
必要スペック
PCハードウェアおよびシステム構成
OS:Windows 10、バージョン22H2以上
プロセッサー:Intel Core i5-4590 / AMD FX8350と同等かそれ以上
RAM:8GB以上
グラフィックス:NVIDIA GeForce GTX 1060 6GB / AMD Radeon RX 480と同等かそれ以上
また、スペックチェックの際に、「SteamVR」のインストールも確認されるため、あらかじめインストールしておきましょう。
「PICO Motion Tracker」の接続を試してみる
「PICO 4 Ultra」の大きな特徴として、モーションキャプチャーデバイスの「PICO Motion Tracker」が使用できるようになりました。価格は、1箱2個入りで11,800円です。
トラッカーはとても小さく、直径約4㎝。重さは27gです。非常に軽く、持ち運びにも困りません。出先で遊ぶといったことも手軽にできるでしょう。
設定方法は、箱から取り出し、足に装着したら、本体側のアプリを立ち上げて画面の説明に沿ってペアリング、下を向いてトラッキングを行うだけです。お手軽すぎます。
トラッキングは、足を揃える、頭を下に向けるといった動作のみで行えます。大きく動いたりしなくてもいいので、非常に楽になっています。
トラッキングの際の注意点としては、ズボンのすそなどでセンサーが隠れるとうまく接続できない点です。スカートは特に隠れやすいアイテムだと思います。また、トラッキングが上手くいかないときは、ペアリングを解除することで解決する場合があります。
VRChatで「PICO Motion Tracker」を検証
さっそく「PICO 4 Ultra」単機(PC接続なし)でVRChatを試してみました。思いのほか綺麗に動きます。トラッキングが大きくずれることはほとんどなく、使用感は良好です。
足はしっかりと上がり、膝も自然な曲がり方を見せ、足裏まで見ることができます。少し早く動いてみましたが、しっかりと追いつき、遅れはほぼありません。椅子に座ったり、あぐらをかいたりしてもほぼズレませんでした。
(トラッカーを装着して踊る様子。これだけ動いてもVRChatではトラッキングができていました)
しかし、仰向けに寝るとズレていき、数分で仰向けの姿勢は維持できなくなりました。VR空間で睡眠をしたい方は注意すべき点です。横向きに寝ると態勢が崩れにくいように思いました。
また、「PICO Connect」アプリでPCと接続した状態でも、同様に綺麗にトラッキングすることができました。ただし、(スペック非推奨などの)PCによってはトラッキングが思ったほど精確にならない可能性もあるので、PCがVRChatの推奨スペックを満たしているかなどを事前に確認しておくと良いでしょう。
現状、VRChat以外のモーショントラッキング対応アプリについてはまだまだ数は少ないです。PICOストアを探しましたが、20種類前後でした。アプリの種類としても、音楽や格闘ゲームがほとんどで、バリエーションは多くありません。種類や数については発売直後ですので、今後に期待です。
また、「PICO Motion Tracker」は、1箱に2つ入っているため1個ずつの購入は現状できません。ちなみに、前機の「PICO 4」にも「PICO Connect」がインストールされているため、「PICO Motion Tracker」を使用することができます。
バーチャル空間でPC作業を パノラマワークスペースの実装
「PICO 4 Ultra」の発表記者会見で強く押されていた機能の一つに「パノラマワークスペース」があります。この機能は、本体とPCを「PICO Connect」を介して接続し、「PICO 4 Ultra」の画面でPCのウィンドウを見ることができるというものです。「Apple Vision Pro」で行えるような空間コンピューティングを「PICO 4 Ultra」でも体験できるようになります。
操作は、コントローラーだけでなく、ハンドトラッキングでも可能なため、ページをめくったりスクロール等の操作も直感的に簡単にできました。小さいボタンのタップなどの細かい操作は、ハンドトラッキングでもコントローラーでも難しいですが、慣れ次第だと思います。
また、スマートフォンでもこの機能を試せるようですが、まだ機能が実装されておらず、確認できませんでした。
空間ビデオ(空間フォト)の撮影
iPhone16などに実装されている3次元的な写真を撮影する機能「空間ビデオ(空間フォト)」。なんと「PICO 4 Ultra」でも対応しています。
空間ビデオは、奥行きを持たせて撮影ができる動画(画像の場合は「空間フォト」)です。「Meta Quest 3」でも空間ビデオを見ることはできましたが、撮影機能は有していませんでした。しかし「PICO 4 Ultra」では、撮影も再生も可能です。
空間ビデオは、ストアから「カメラ」というアプリをインストールすることで、使用できます。画像と動画どちらの撮影も可能で、普通のカメラ撮影と同じ要領で撮れます。
撮影した動画を見たところ、確かに奥行きを感じることができました。思い出を残す新しい方法として選択肢の一つとして良いと思います。
なお、VRゲーム内で空間ビデオ撮影はできません。他サービスへのシェアについては、現状、空間ビデオのみTikTokにシェア可能です。
まとめ
「PICO 4 Ultra」のスペック、使用感を前機の「PICO 4」や「Meta Quest 3」と比較して見てきました。総評として「PICO 4 Ultra」は、VRChatでの使用を前提とした購入であれば大変良いデバイスだと思いました。
スペックで言えば「Meta Quest 3」と大きな差はありませんでしたが、「PICO Motion Tracker」を使用することによって簡単にフルトラッキングを体験できる点は大きな差別化ポイントだと思います。
しかし、これからVRゲームを幅広く触れたいという方には、PICOストアのコンテンツの数が少なさは気になるところ。それであれば、定番のVRコンテンツが多く揃い、機能面も申し分なく充実している「Meta Quest 3」の方が良いかと思います。
「PICO 4」をお持ちの方で買い替え検討している場合、かつメインの用途がVRChatであるという方は、「PICO Motion Tracker」を購入し、「PICO 4」をそのまま使い続けても問題ないかと思います。VRChatだけでなく、MR体験にも興味があるのであれば、「PICO 4 Ultra」を選ぶと良いでしょう。
スペック表
| PICO 4 Ultra | Meta Quest 3 | PICO 4 | |
| 価格 | 89,800円 | 74,800円(128GB) 96,800円(512GB) |
49,000円(128GB) 59,400円(256GB) |
| SoC | Snapdragon XR2 Gen 2 | Snapdragon XR2 Gen 2 | Snapdragon XR2 Gen1 |
| ディスプレイ | 片目:2160×2160 両目:4320×2160 |
片目:2064×2208 両目:4128×2208 |
片目:2160×2160 両目:4320×2160 |
| ストレージ | 256GB | 128GB、512GB | 128GB、256GB |
| リフレッシュレート | 最大90Hz | 72Hz、80Hz、90Hz、120Hz | 72~90Hz |
| レンズ | パンケーキレンズ | パンケーキレンズ | パンケーキレンズ |
| 同行間距離 | 58mm~72mm | 53~75mm | 62~72mm |
| 重さ | 約580g | 約520g | 約600g |
参考:公式サイト















