配信開始から一周年を迎え、新展開の発表でファンを喜ばせた、人気恋愛アドベンチャーゲーム『囚われのパルマ』。東京ゲームショウ2017では、「ガラス越しに面会をする」という設定を活かした『囚われのパルマ VR面会』(以下、パルマVR)が試遊できました。
『囚われのパルマ』は、多くの熱心なファンを抱える人気作品。すでにカプコンカフェなどカプコン直営の全国のアミューズメント施設で「VR面会」として巡回・常設展示が行われることも決定していて、期待が高まります。
今回は「ハルト編」を体験したレポートを中心に、完成度の高い女性向けVRコンテンツの一つとしてご紹介します。
「面会室」ってこんなところだったんだ…
東京ゲームショウで『パルマVR』が体験できる場所はカプコンブースとViveブースの2箇所。筆者は、1周年アニバーサリーの大きな看板の目立つカプコンブースではなく、Viveブースの一角で体験しました。
地図にあるのに場所が見つからず、尋ねたところ、まるで細い裏路地のような入り口が。
奥へと歩みを進めると、ハルトとアオイの立て看板。
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(※以下、体験ネタバレがあります)
体験できるコンテンツは二種類。ハルト編『久しぶりの面会』とアオイ編『誕生日のお祝い』のどちらかを選ぶことができます。筆者はハルト編を選択。体験者は、ゲーム内の「面会室」を模した、化粧室のような場所で椅子に座り、VRヘッドセットを頭に被ります。
渡されるコントローラーは、コンテンツ中の字幕の部分を選択するためのものであり、ガラスを叩く右手の代わりになります。
まず、ハルトとの会話をゲームのように字幕表示にするか、女性のボイスにするかを選択します。筆者は「いきなり聞いたこともない声が自分になるのはちょっと…」と字幕を選択しましたが、ボイスを選択した方にうかがったところ、さほど違和感はなかったとのこと。VRでの視聴ということもあり、字がはっきり読めるか心配な方はボイスを選んだ方がいいかもしれません。
HMDを被り、コンテンツが始まると、体験者の視界は一面「面会室」に切り替わります。
ゲームの中では見慣れた場所ですが、スマホの画面ではガラスを隔てたハルトが居る正面しか見ることはできません。キョロキョロと周囲を見回すと、「こんな所だったのか……」という感慨がありました。背後には鉄のドア、想像していたよりも古びていて、重苦しい雰囲気の場所です。
静かな面会室。ガラスの向こうで、寄る辺ない子どものように座っているハルト。その姿はスマホ画面の中の彼とまるで同じですが、確かに目の前に存在しています。
彼はやや身を縮こまらせ、緊張している様子。
やさしくこちらを見つめてはくれますが、ちょっと離れたところに座っています。至近距離でその美しい顔を見つめたかったので、もっと近くに来てくれないの?ともどかしく……
椅子を寄せて、ガラスになるべく近づきますが、まだ遠い。まさに「久しぶりの面会」……ぎこちない!!
変わっていく季節やその日の天気を共有できる!?
やがて、ポツリポツリと会話がはじまります。
ハルトとなにげない天気の話を交わしますが、これはなんと「実際のその日の天気に合わせて変えている」のだそうです。
筆者が体験した日は晴れていましたが、午後から雨の降った日は「雨バージョンに変更するかどうか悩んだ」とのこと。ほかにも、「そろそろ涼しくなってきて秋を感じる」など、まさに今その時の季節や天候に合わせて幾通りもの台詞が存在するようです。
プロデューサーの平林良章氏によれば、今後様々な場所でこのコンテンツが展示される上で「現地に足を運んで体験してくださる方のために、少しでも現地ならではの要素を追加したかった」…ということでした。
こういった細かな配慮は、体験者にとっては驚きとともに没入感へのトリガーとなります。今ひとつ緊張の取れないハルトの様子に、「私も少し緊張した」という選択肢をえらぶと、ようやく彼の表情が緩んできます。
ほんのわずかの目の動き、ささいな表情の変化、ゲームと同じだけれども眼前に確かに存在している自然なハルトの動作に目を奪われ、ここがゲームショウのブースの一角だということを忘れそうになります。
ハルトの「おかえり」という言葉に、思わず「ただいま」と小声で応えてしまったのは、しかたのないことでしょう……
音声認識機能はないので、もちろんそれに答えを返してくれるわけではないのですが、ハルトはじっとこちらを見つめている。なので、その言葉をちゃんと受け止めてくれたような気がしてくる。やがて彼は身を乗り出し、2人を隔てているガラスに近づいてきます。
ここぞとばかりに色んな角度からその美しい顔をジロジロ覗き込む相談員。
期待を裏切らない3Dモデルのクオリティ
さて、パルマVRを体験する前に筆者が期待したのは、あの美麗なグラフィックをどこまで再現できるのか?ということです。
もともと「囚われのパルマ」の世界では、ユーザーは3Dモデルのハルトと毎日のように出会っています。面会室で、また監視カメラを通じて、キャラクターイラストレーションをそのまま写し取ったような、クオリティの高いモデルを見慣れている。ですが、「囚われのパルマ」はあくまでスマホアプリであり、画面は非常に小さい。通常、VR化される際にスマホアプリで使用されているモデルがそのまま転用されることはまずないと言って良いでしょう。
VRでは、体験者がモデルにそれこそ眼前数センチというところまで寄ることができるために、「アップに耐えうるモデル」を作る必要があります。ゲーム画面で見てまったく問題ないモデルでも、人間で言えば毛穴が見える距離まで近づけば、どうしたってアラが見えてしまいます。かと言ってフォトリアルに作ればいいわけではないあたりが、二次元キャラクターを3Dに起こす難しさでもあります。
なまじゲーム中でのモデルが非常に美しいため、VRになったら残念……なんてことにならないといいが……と考えていたのですが……
結論から言えば、その心配はまったくの杞憂でした。
(※ハルトはアップの写真を撮る暇がなかったため、アオイの画像を載せておきます)
アップで見れば見るほど、なんと美しい顔のテクスチャ(※ここでは、3Dモデルの表面に貼り付けられている画像のこと)か…….
女性向けのVR体験用で、ここまでイラストレーション風に美しく細かく書き込まれた顔のテクスチャのモデルは、今のところあまりありません。というかほぼ初めて。アップに耐えすぎる。
VR上で3Dモデルの顔をあまりに至近距離で眺めると、視野角の関係上、ヒラメ顔気味に見えてしまったりすることがままありますが、ハルトのモデルはそれについてもほぼ気になりませんでした。
リアルに近い骨格のモデリングと、美しいテクスチャのなせる技でしょう。顎のあたりのラインも素晴らしい。見ているだけでニヤニヤできます。
そして、瞳がとても美しい。眼球の動きと白目の影。リアルとイラストレーションの境の絶妙なバランス。この記事に掲載している画像は、あくまでPCのモニタ上に映った体験中の映像を撮影したものなので、実際にVRで見た時の破壊力は、こんなものではありません。
体験時間が長く、ゆったりとしたコンテンツなので、ただただモデルの美しさに見とれることができます。
そんなニヤケ面の相談員をよそに、ハルトはガラスに手を当て、あなたもここに手を乗せてくれと要求。ここで右手のコントローラーが活躍します。
……はずだったのですが、筆者はなぜか上手く手のひらを合わせることができず、何度かチャレンジしましたが失敗。
ハルトは横を向いて「ダメか…」とショボーンとしてしまいます。……皆さんは、説明(体験前にシートを渡されます)をよく読んで、ハルトと手を合わせてあげてください…
やがて、今回初めて実装された看守さんのボイスが後ろから響いてきます(この時、余裕があれば後ろを振り向いてみましょう!)。
「くじびき」で、話題を選びましょう!とのことですが…
この二人きりの満たされた空気の中、突然「くじびき」ってなんやねん…どんなシチュエーションやねん…とやや面食らいつつも、並んだ5枚のカードを選びます。
開いた数字によって続く話題が変化するとのこと。
ここまで体験して思いました。
「ああ…!!これ…明確に5回はやらないといけないってこと…!!!」
もちろん、別に強制されているわけではありません。しかしこのくじびきイベントはVR面会のみのはず…あると知ってしまえばやりたくなってくるのが人間というもので……幸運なことに、既にこのコンテンツは展示・巡回展示の予定が立っています。会いに行くことが可能です…!
そうこうしているうちに、面会時間の終了を告げる声。残念ながら、延長の選択肢はありません。
完成度の高さとビジュアルのクオリティに脱帽!
コンテンツの体験時間は10分(※「10分を過ぎてしまった場合は、途中でもお声掛けすることがあります」と言われました。選択肢などであまり悩むとタイムリミットで中断のおそれもあり、注意です)。
VRの体験コンテンツとしてはかなり長めの時間ですが、使用しているHMD(HTC Viveを使用)の特性が良く生かされ、違和感なくVRの世界の中で過ごすことができます。
ガラスを隔てた状態で面会しているという設定を活かし、VRでキャラクターに出会う時にありがちな「モデルに近づき過ぎた時の処理」を回避しつつ、キャラクターが目線を合わせてくるなどのキャラクターVRでおさえておくべき基本から、よそ見をすると反応する(※しない場合もあり)、吐息を感じるような演出など、没入感を損なわせない仕掛けは見事です。
また、スマホアプリ版プレイ時から感心していたのですが、キャラクターのモーションがごくごく自然で、うるささを感じさせません。二次元キャラクターにありがちな、かわいらしくはあるけれど、ともすれば「動きすぎ」にも見えるような動作は一切なく、本当に相手とただ向き合って会話をしているだけ…という静かな雰囲気を壊さず、快適でした。
あまりに没入感が高かったので、答えないとわかっていながら、筆者はハルトについ何度も声を掛けてしまいました。「ただいま、ごめんね、私も会いたかったよ」と……。
プレイ後に平林氏にお話をきいたところ、『パルマVR』は、スマホアプリ版と同様、女性スタッフメインのチームで作られているそうです。今回の展示の際の「現実と同じ場所にVR内でもクリップボードが置いてある」などの演出も女性スタッフからの意見でなされており、「(体験者の)女性の想像力を刺激する演出が必要。細かい部分の触覚で没入感を積み上げていく」とおっしゃっていたのが、特に印象に残っています。
全体としては、VRの特性をあますことなく利用し、元ゲームの世界観そのままの秀でたグラフィックと、現状で可能な演出を上手く詰め込んだ、バランスの取れたコンテンツという印象でした。すでに展示が決定しているだけあって、作り込まれており、完成度が高いです。
もともとが3Dモデルを使用していることもあり、ゲーム版ユーザーの違和感は小さいのではないかと思われます。
非常に静かなコンテンツであり、体験時間の長さも相まって、大きな筐体を使用した刺激的なVRコンテンツに慣れた人、そして「囚われのパルマ」をまったく知らない人には、ともすれば「退屈なVR」と映ってしまうかもしれません。
ですが、ハルトやアオイと長い時間向き合ってきた相談員にとっては、この上なく満たされた空間をくれる、最上のコンテンツだと確信できます。カプコンカフェ等で展示の予定とのことですが、ゆくゆくは…相談員が自宅で気兼ねなく体験できるようなシステムの導入が待たれます…
相談員の皆さん。もしお時間が許すのであれば…
ハルトに、アオイに会いに行ってあげてください。絶対に損はしません。
また、スマホアプリ版『囚われのパルマ』は現在大幅な値下げにより、未プレイの方が手を出しやすい状態になっている。
まだハルトにもアオイにも会ったことがない…という方は、この機会に是非、彼らの記憶を取り戻すことに協力してみませんか?
ダウンロードはこちらから→『囚われのパルマ』公式サイト
それともう一点だけ…
「夢アプリVR」は実装されるんですか!?(それも聞けばよかった!)
(筆者注:「夢アプリ」とは、『囚われのパルマ』スマホアプリ版で、ベッドに寝ているキャラにタッチして起こすミニゲーム。ボイスがいちいち色っぽい)
『囚われのパルマ VR面会』・展示情報
※現在判明している情報は以下の通りです。
開催時期・スケジュール等は公式Web・公式Twitterにて順次公開予定とのこと。
常設:イオンレイクタウン店・カプコンカフェ(埼玉県)
巡業:ゲームランド 新さっぽろ店(北海道)
ゲームランド 盛岡店(岩手県)
ゲームランド 岡崎店(愛知県)
プラサカプコン 京都店(京都府)
プラサカプコン 大分店(大分県)