最大の課題:グラフィック
ここまで、Questの良いところを中心に挙げてきました。課題があるとすれば、それはグラフィックのクオリティです。PC向けのRiftはハイエンドなゲーミングPCで動作することにより非常に美麗なVRの世界を描画しています。一方で、Questはモバイル向けのプロセッサであるクアルコム社のSnapdragon 835を搭載しています。このプロセッサはVR向けに最適化されているとはいえ、そのグラフィック性能はPC向けのGPUに遠く及びません。
その結果、同じVRゲームであっても開発者はQuest向けに3Dモデルのポリゴン数の削減などの最適化を行う必要があります。プレイヤー目線で見れば、Riftと同じタイトルだったとしても、同じグラフィッククオリティではプレイできないことが多い、ということになります。
なお、OC5で展示されていたQuestのVRゲームはいずれも比較的シンプルなグラフィックのものが多かった印象です。テニスはシンプルなグラフィック、「Superhot VR」はRiftからの移植ですがもともとのグラフィックがシンプルなため違いを感じさせないクオリティでした。同じくRiftからのアセットを使っている「Dead and Buried」はポリゴン数の削減など最適化処理を行っています。体験した感覚としては、プレイに影響があるものではありませんが「多少デフォルメされた」といったところでしょうか。

(RiftのゲームのQuestへの移植に関する講演ではDead and Buriedが例として紹介、左がRiftで使用した3Dモデル、右がQuest用に最適化した3Dモデル。テクスチャとポリゴンの数が大きく異なる)
もともとのグラフィッククオリティと最適化の技術にもよるため、今後登場するタイトルがどの程度のクオリティになるのか、見極めが必要です。「The Climb」のように美しい風景などリアルなグラフィックをウリにしているVRゲームがどのようになるのか、気になるところです。
気になるコンテンツ数と移植
続いて気になるのは対応コンテンツの種類と数です。OC5の基調講演では、2019年春に発売時のローンチタイトルは50以上とのことでした。この数はRift用コントローラーのOculus Touchを発売したときのタイトル数と同程度。そのほとんどはゲームとなります。

(基調講演時にOculus Questのコンテンツ開発へ取り組んでいる企業やスタジオ一覧。すでにRiftやGo向けのVRコンテンツを制作してきた企業も多数)
OculusのCTOジョン・カーマック氏は基調講演の中で、「Goは80%がメディア(動画視聴など)用途、20%がゲーム用途だ。Questは80%がゲームで20%がメディアを想定している」と述べており、ゲームなど本格的な没入体験を手軽に体験できるデバイスとしてQuestを位置づけています。
Goは先行するGear VRとの互換があったため、ローンチタイトルはGear VR向けのタイトルをほぼ全て含み1,000以上が存在しました。新たにアプリを移植しなければいけないQuest向けのストアにコンテンツがどの程度充実するのか、現時点では未知数です。
コンテンツとしてはRift向けの「Robo Recall」や「Climb」、「Moss」といったグラフィックの美麗なゲームも移植を予定しているほか、ルーカスフィルム傘下のILMxLABが本腰を入れて開発しているスター・ウォーズの新作VR体験「Vader Immortal」3部作など大作も予定されています。どれだけコンテンツ数が充実するかは、開発者が今後どの程度移植やQuest向けの開発を行うかにかかっています。
Oculusはコンテンツ開発への投資も行い、Rift向けの特に大作ゲームの開発をこれまでも数多く支援してきました。筆者は、Quest向けのゲームもグローバル規模では増えていく、と明るい見通しを持っています。
また、Questはモバイルベースのシステムとなるため、Go向けのコンテンツは比較的移植しやすいと考えられます。グラフィックの処理能力に関しては、「一般的なプロセッサの性能差に拠る。Oculus Insightの処理を行うとしても、Goと比べて20〜30%ほどグラフィックの処理能力は高くなるだろう」(リュー氏)と述べています。
ゲーム向け用途が多くなると話したジョン・カーマック氏も、講演の中では「ゲームコンソール機が今や50%以上が映画視聴などメディア用途で使われてるというデータもある。Questが20%以上メディアに使われても不思議ではない」としており、Questがゲームにとどまらず使用される可能性もあることを示唆しています。
期待高まる「MRモード」は実装時期未定
基調講演で発表されたQuestの機能で非常に印象的だったのが「MRモード」です。現実空間の様子をVR内でも見えるようにする機能で、ヘッドセットを装着しながら現実の様子を見ることができます。
会場でデモ展示されていた「Dead and Buried Arena」では、このMRモードを活用したVR銃撃戦ゲームを体験できましたが、最初は現実が白い世界に黒い輪郭で表示されており、ゲームが開始すると一気にその世界がVRの銃撃戦の舞台に変わります。眼の前にある箱すらVRの中では木箱になる様子は、さながら映画「マトリックス」のように現実とVRが入り混じりながら移行していく感覚はこれまでに体験したことのない、とてもワクワクするものでした。
リュー氏にこの機能の詳細を尋ねたところ、「現在はまだ実験的な段階。QuestのMRモードは発売時には実装されない」とのこと。基調講演の動画やデモ会場でも、Questの実機で動作はしていましたが、「未来に向けたプロジェクト」と断言していました。開発者がMR機能を使ったゲームを作ることもSDKではサポートする予定はなく、最初は「ユーザーを完全没入させる体験を作ってほしい」と話しています。MRの機能に関しては数年越しの取組になるとのことです。
発売国は「現時点では言えない」
今回の発表では、出荷対象となる国と地域は明らかになりませんでした。
日本ではGoの発売後、SNSやコミュニティを中心にGoへの関心が高まりました。Oculus社のCTOジョン・カーマック氏がGoの成功を語る中で「日本市場でGoが多く購入されていることに驚いた。日本では10代の学生でもGoを買っており、Goの価格設定の結果として興味深い可能性を示唆している」と具体的な国名としては唯一言及されたほどに出荷台数が目立っている模様です。
リュー氏も「日本でGoが売れているのは認識している。ただ、まだ出荷国を発表できる段階にはない」とのこと。Goで市場の存在感は伝わったと信じ、日本での販売には強く期待したいところです。
総評:デバイスとして非常に優秀、コスパは非常に良い
ここまで、Oculus Questを様々な観点から評価してきましたが、総評としては「手軽なハイエンドVR機」として非常に良いデバイスであるという印象です。

(QuestはちょうどGoとRiftの中間に位置付けられている)
グラフィックのクオリティやコンテンツ拡充に懸念はあるものの、持ち運べてすぐに被れて体験の質も高いQuestは399ドルという価格もあり、これまでのハイエンドVRの敷居の高さを一気に下げるデバイスです。解像度の高さやケーブルからの解放による自由なプレイ感、プレイまでの手軽さなどRiftを凌駕していることからも、よりVR空間に没頭するには最適なデバイスとなりそうです。
Part2ではMRモードやアリーナスケールなど、Oculus Questを使った将来の技術の可能性の詳細について紹介します。
