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ゲーム・アプリ 2021.02.06

「ICO」リスペクトな作風の「Mare」はVRゲーム入門編としてイチオシ!

2001年12月、PlayStation 2向けに発売され、幻想的なビジュアルと独特なゲームプレイで好評を博した「ICO(イコ)」。すでに20年近く前のアクションアドベンチャーゲームですが、その人気は今なお根強く、作風に影響を受けた作品も数多く誕生しています。

そんな「ICO」に近い雰囲気をまとったVRアドベンチャーゲームが登場しました。タイトルは「Mare」。2021年1月、Oculus Quest/Quest2向けに発売されました。一体、どういった点が「ICO」と共通しているのか、そもそもどんな内容なのか、紹介します。

謎の島を舞台に繰り広げられる、機械の鳥と少女の冒険

本編はプレイヤーの分身である主人公の目覚めからスタート。何故か機械仕掛けの鳥の姿になり、雲海の上にいました。周囲を見回すと、遠方には風見鶏のような、電柱のような、奇妙な装置が……。

どうやら自分の身体の動力は電気になっているようです。奇妙な装置からの送電や雲からの雷など、電気が送り届けられている間は、空を飛びながら移動できます。装置をたどりつつ移動していくと、気球の群れが出現。

気球には爆弾が吊り下げられており、陸地に向けて落下していきます。主人公は機械の小鳥たちを使役して、爆弾を破壊することに。

残るは大型の爆弾(?)を吊り下げた気球。しかし相次ぐトラブルに見舞われ、主人公は海へと転落してしまいます。

奇跡的に生き延びた主人公は、とある島へと到着。海岸には先ほどの大型爆弾がありました。どうやら本体は開閉できるようです。

開けてみると、なんと中から赤いワンピースを着た少女が登場! 目が覚めた少女から腕の拘束具の破壊をお願いされます。それに応えた後、主人公の後を付いてくることに。

一体この少女は何者で、どうして拘束されていたのか。そして、古城の廃墟と思しきこの島の正体とは……。

ここまでが物語冒頭の流れですが、この一連の展開はムービーではなく、実際にゲームをプレイしながら体験します。謎めいた世界観と劇的な物語の展開に、グッと心を鷲掴みにされました。

シンプル・イズ・ザ・ベストな操作性

遊び方はとても簡単。Oculus Touchコントローラーを使い、ポインターを電柱のような装置に合わせて、トリガーボタンを押すだけ。そうすれば目的の場所まで飛行できます。

飛ぶ以外にも電気を放つ、小鳥たちを使役すると言ったアクションもありますが、いずれも使うのはトリガーボタンのみ。少女もプレイヤーの後ろを自動で追いかけてきてくれるので、細々と指示する必要はありません。つまり、全てのアクションがトリガーボタンで完結します。

本編の流れもシンプルです。目的の場所まで辿り着けばイベントが起きてチャプタークリア。次のチャプターへと移ります。全てのチャプターを完了すれば、ゲームクリアです。

今時珍しいぐらい”シンプル・イズ・ザ・ベスト”な設計です。ゲームを始めてみれば、どう動いて何をすべきかが瞬時に分かります。

複雑な操作のゲームに慣れ親しんだ人なら、簡潔な作りには驚いてしまうかもしれません。ゲームを普段あまり遊ばない人にも取っ付きやすい作品と言えます。

申し分のないやり応え

本作の魅力、それはチャプターごとの起伏に富んだ展開の数々です。シンプルな操作とは裏腹に道中には様々な仕掛けとイベントが用意されていて、退屈させない内容にまとめられています。

特に少女の誘導方法は、なかなかひねりを効かせています。少女の行動できる地形は複雑に入り組んでいるため、主人公が単純に飛ぶだけでは付いてこれなくなります。しかし、置き去りにすると、最終的には少女がいないと開かない扉に阻まれて行き詰まります。

そのため、少女がステージでどう動くかを見越して、立ち止まったり後退したりといった工夫が必要。時には少女を怖がらせ、無理矢理移動させるというプレイヤーの良心を抉るようなことが求められたりも……。


(怖がらせると悲鳴を挙げるのですが、もの凄く悲痛な声で罪悪感を募らせます……)

また、チャプターによっては主人公だけで単独行動することも。その場合、少女はどうなるのか……実際にプレイしてみてください。色んな意味で釘付けになるはずです。


(単独行動の一幕。少女の姿は見えるが、何かがおかしい……?)

また少女に「黒い鳥」が襲い掛かるイベントも起きます。ダメージが入ったりはしませんが、誘導の邪魔になるため、電気を放って追い払わなくてはいけません。彼らは人の姿になって現れるのですが、それが「ICO」でヒロインを襲った「黒い影」ととても近い雰囲気。「ICO」を知るプレイヤーなら、そのオマージュっぷりにニヤリとするかもしれません。

紹介してきたように変化に富んだ展開が連続するので、申し分のないやり応えと緊張感、興奮が詰まっています。操作がシンプルだからこそ、ワンパターン化を避けようという制作側の確固たる姿勢とこだわりが見受けられました。

探索、謎解き要素強めのアドベンチャーゲームが好きな人なら刺さること間違いなし。「ICO」を思わせる小ネタも満載なので、最後の最後まで至福のひと時を堪能できるはずです。

テキスト無しでも十分に伝わるストーリーの魅力

ゲーム部分に限らず、世界観とストーリーも大変魅力的です。本作はデフォルトで日本語に対応しているのですが、ポーズ画面の選択肢以外には字幕がありません。チャプターごとの展開も全て映像のみなので、考察意欲が刺激されます。


(唯一の日本語字幕が表示される場面)

そんな断片的な情報しかなくとも、ストーリーの魅力が十分に伝わってくる点が、この作品の圧巻な部分と言えるでしょう。

島に降り注ぐ気球爆弾、その大型爆弾の中に監禁されていた少女、機械の鳥である主人公、そして「黒い鳥」と多くの謎が示されつつ、先の読めない展開が繰り広げられていきます。一体、この旅の果てに主人公と少女は何を見るのか……。実際にプレイして確かめてみてください。誇張抜きに、衝撃的なエンディングを目撃することになるでしょう。

アイテム回収要素には少しモヤモヤ


(この光り輝く像みたいなものが「遺物」)

本作の世界観の秘密を明かすには「失われた遺物」なるアイテムの回収も必要になります。フィールドのどこかに隠されていて、少女を導けば取得可能。これを全て回収した後にチャプター選択画面にあるアイテムを選んでみると……思わず「あれ?」と声が出るかもしれません。

ただ、アイテム回収は、若干作業的に感じてしまう所も。集め切った後の結末もテキストでは一切説明されないため、具体的な解説が欲しくなってしまいました。

正直、スッキリ終わらせたい方には、鬱憤が貯まってしまうかもしれません。曖昧な終わり方でも良しと思ったとしても「結局、あれはなんだったの?」とモヤモヤが残ることは避けられないので、少し覚悟は必要です。


(チャプタークリアのたび映る、この装置の正体は……?)

裏を返せば「遺物」はそれだけ強烈な印象を残します。アイテムを全回収せず普通にプレイした時のエンディングは最たるもので、人によってはちょっとトラウマかもしれません。(念のためですが、残酷な表現はほぼありません

もうひとつネガティブな感想を挙げると、少女の呼びかけの台詞はわずかなパターンしかなく、ゲーム後半辺りで段々と鬱陶しく感じてくるのが引っかかりました。もう少し、バリエーションがあれば印象も違っていたと思います。

総評:遊びやすさに秀でた良作

本編のボリュームはエンディングまで大体4~5時間ほど。難易度は誘導絡みで試行錯誤が求められるこそあれど、全体的には抑えたバランスで、ストレスなく楽しめます。チャプターごとのボリュームも長すぎず、短すぎずの絶妙な塩梅。ちなみに目まぐるしく動く表現が少ないため、VR酔いの心配もありません。

本作の「ICO」に近い雰囲気を象徴するグラフィックも見事な出来。少し霧がかかった感じがそれっぽく、経験者なら懐かしい気持ちに浸れるでしょう。よく見てみると、デザイン周りには簡略化されているのですが、色使いや光の表現を工夫し、美しく、幻想的なものに仕上げているのが凄いところ。絵作りのセンスを実感させられること間違いなしです。

環境音主体ですが、音楽も雰囲気や場面にマッチした曲を用意。演出面でも危機的状況では相応の曲を流したり、少女も常にこちらに呼びかけながらついてきたりと、細かい面でこだわっています。

これをわずか2人のチームが作り上げたという点でも驚きの本作。Oculus Quest/Quest2をお持ちの方なら、ぜひプレイいただきたい良作です。「ICO」に近い雰囲気を持つVRゲームをお探しの人なら、すぐにでも!



これからQuestを買う人、VRゲームデビューを考えている人にも最初の1本として、おすすめできます。謎に満ちた世界で機械の鳥となり、不思議な少女と一緒に旅に出てみましょう。

ソフトウェア概要

タイトル

Mare

発売・開発元

Visiontrick Media

対応ヘッドセット

Oculus Quest、Oculus Quest 2

プレイ人数

1人

価格(税込)

1,990円(Oculus Store

IARCレーティング

7歳以上

執筆:シェループ


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