XRやメタバース業界で伸びている企業の採用担当者やエンジニア、マーケターなど様々な分野からゲストを招いてお話を聞く採用イベント「XRメタバース転職説明会」。
その第8回が、2023年3月30日に開催されました。今回は「XRエンジニア採用特集『医療 vs エンタメ これから働くならどっち?』」と題して、株式会社ジョリーグッド(以下「ジョリーグッド」)サービス開発部部長の山下和彦氏とテクニカルエンジニアの土本啓貴氏、株式会社DENDOH(以下「DENDOH」)代表取締役CEOの押田大輝氏がゲストで登壇し、トークセッションが行われました。
この記事では、その模様をレポートしていきます。
医療VRのジョリーグッドと、3Dアバター作成アプリのDENDOH
――まずは、それぞれどんな会社なのか教えていただけますか?
山下和彦氏(以下、山下):ジョリーグッドは、2014年5月に創業した会社です。VRやAI技術を活用した企業向けのサービスを提供しています。社員は現在80名ほど。企業理念の通り、先端的な「テクノロジーはそれを必要とする人に使われて初めて価値がある」と考えながら、日々業務を行っています。
弊社の主な事業はふたつあります。ひとつは医療教育VRで、もうひとつがデジタル治療VRです。医療教育VR事業では、VRを活用した医療スタッフ教育のプロダクト「JOLLYGOOD+(ジョリーグッドプラス)」を提供しています。
「JOLLYGOOD+」は、国内外の医療機関、医療機器メーカーなどが製作した300以上の医療VRコンテンツが定額で体験し放題のサブスクリプションプラットフォームです。毎月、医療の進化に応じた新規コンテンツが追加され、その時々で医療業界で求められているコンテンツを活用し、質の高い医療教育を提供することができます。
デジタル治療VR事業では、うつ病や統合失調症など精神疾患を持つ人に対するVRでの治療や支援プログラムを提供しています。国内では、100台同時接続規模のVRセミナー運営を手がけるほか、大手製薬会社と業務提供し統合失調症患者向けのVR支援プログラムを提供しています。海外では、北米やタイで弊社のソリューションが使われています。
押田大輝氏(以下、押田):DENDOHは、3Dアバターの作成とデジタルファッションの着せ替えアプリ『molz』を開発しています。令和元年いい肉の日(11月29日)に設立して、4期目です。
元々は受託開発を行っていましたが、今はメタバースのアバターに特化したサービスを行っています。エンドユーザー向け事業はアバターを作れるアプリケーションの提供です。企業向けには、このプラットフォームを活用してデジタルファッションやアバターの制作事業を行っています。
従業員は副業やインターンも含めて15人ほどの、まだまだ小規模なスタートアップです。とはいえ、東京都や経産省のアクセラレーションプログラムにも公式採択されています。昨年に約1億円の資金調達を実施して、もくもくとプロダクトを作っているところです。
弊社のビジョンは「日本発、狂おしいほどかわいいアバターで世界を侵略する!」で、共感した人はぜひ僕のツイッターをフォローしてDMしてください(笑)。
アバターは、メタバースで活動する際のアイデンティティーになっています。メタバース以外でも、ツイッターのアイコンをアバターにする人も増えました。これまで以上に、オンラインの様々な場所で使われる自己表現ツールになっています。
米国の調査会社によるレポートでは、現実よりもアバターによる自己表現が重要だと考える人が5人中2人います。アバターとそのデジタルファッションに課金する人は、4人中3人です。ゲームなども含むと、バーチャル空間で過ごすユーザーはすでに世界で10億人います。
僕もメタバースを始めたばかりの頃は、イベントに参加するときもテンプレートのアバターを使用していました。ある日、みんなで一緒に楽しんでいるときに、「みんなカッコイイし可愛い……あれ? ヤバイ! 『原宿にパジャマのまま』来てしまった!」と気づきました。おしゃれをしないとダメな空間だったのです。
僕もキャラクターやファッション好きとして、自分のお気に入りのアバターを作りたくなりました。でも、めちゃくちゃ壁がありました。Unityは多少さわれましたが、モデリングや3Dデザインはできません。技術ハードルや制作コストが高すぎました。また、日本ではVRMというファイル形式が一般的ですが、アバターのデータが流用できないサービスも少なくありません。クォリティの高いアバターを作るのは難しい状況なのです。
そこで、簡単にアバターが作れて、複数のサービスを横断利用できるアバターコンバート機能を持ち、高クォリティなジャパンデザインのアプリを作りました。
自社サービスに注力したくて、転職/創業
――今の会社を選んだ理由を教えていただけますか?
山下:前職はWeb制作会社で、Webサイト制作やWebアプリケーション開発のプロジェクトマネジメントをしていました。元々エンジニア出身だったので、テクニカルディレクションを担当することが多かったです。企業のコーポレートサイトや採用サイト、LPサイトの制作、CMS構築などのシステム開発などを幅広く携わっていました。
転職理由は、ジョリーグッドがテクノロジーを活用し、社会貢献性の高い事業を展開していたためです。自身のスキルを社会課題解決に使いたいと思い、入社を決めました。また、今まではクライアントワークがメインで、自社プロダクトに注力して事業推進する経験が少なかったこともあり、キャリアの幅を広げるためにも、一つのプロダクトに注力して事業のグロースを経験できる点も転職理由のひとつです。
土本啓貴氏(以下、土本):前職は制作会社で、MRデバイス「Magic Leap」を使った体験型イベントの企画・開発を行っていました。医療分野は今の会社が初めてで、ジョリーグッドを選んだ理由は、社会貢献につながる事業領域に興味を持ったからです。
押田:今はDENDOHで、CEOとしての経営や採用、ちょっとしたデザイン、開発マネージャーをやっています。元々はエンジニアの端くれでした。大学院のときに、HoloLensやVR空間でユーザーの導線を可視化するシステムの追求や、それにまつわる特許の取得を行っていました。Unityで3Dゲームを作ってコミケに出展するといったこともやっていました。
その後、スタートアップで3Dゲームの開発に携わります。また、ファッションが好きだったので、アパレルメーカーで4年間アルバイト勤務していました。受託開発は学生の頃から行っていて、最初はひとりで、VRやARの開発から始めた感じです。
社会課題の解決に関わり、誰かに楽しんでもらえるのが楽しい
――今の仕事の面白さについて教えてください。
山下:社会課題を解決できるところですね。現在医師などの医療人材が枯渇しています。その理由のひとつに、医療教育が効率的に行われていないことが挙げられます。医療教育は、患者様を治療している現場で経験を積むことが大事です。ところがコロナ渦の影響で、病院で臨床実習ができなくなっています。このような課題に対して、これまで培った知見やスキルを使ったVRソリューションを提供することで、医療教育が効率化されることを肌で感じ取れます。そこがすごく面白くて、「解決している感」がありますね。
土本:弊社にはDTx(デジタルセラピューティクス)といって、デジタル技術で病気を治療する事業もあって、本当に革新的だなと思っています。これが実現できたら、世の中を変えるぐらいのインパクトがあります。そこに挑戦していることにワクワクしています。
押田:子供の頃からアニメと映画と漫画が好きで、シンプルにエンタメが一番熱量を注げる領域でした。なぜ楽しいのかと聞かれると、そういう風に育ったからです。高校時代のあだ名は「アニメ四天王」でした(笑)。
メタバースは新しい領域なので、家庭用ゲームが普及したときに「マリオ」が生まれたように、次なるIPが生まれるかもしれません。そう考えると、楽しいです。既存のエンタメとコラボができるのも楽しいですね。弊社役員はずっとエンタメ業界にいて、人々を楽しませることをずっと考えています。そんな人たちと一緒に働けるのも居心地がいいですね。
XRエンジニアに必要な7つのスキル
――事前に質問した、「XRエンジニアに必要な7つのスキル」を教えてください。
押田:今はエンジニアではないので、過去に自分がやってきたことと、僕の周りのイケてるエンジニアがやっていそうなことをあげてみました。
①趣味でもいいので、エンタメサービスやゲーム、XRアプリでリリースサイクルを回している人
②最新技術トレンドをキャッチアップしている
③新しいツールなどはすぐに試してアウトプットしている人
④副業ベースでも良いので、様々なプロジェクトに参画し幅広い経験を持っている
⑤自腹で機材とかをめっちゃ買って自分で試している
⑥週末にハッカソンなどに参加してプロジェクト開発をチームまたは個人で行っている
⑦新しい技術や領域が好きで、自分たちで作っていきたいマインドを持っていてすでに手を動かしている人
これをコンプした応募者の方がいたら、即採用です。①を最初に持ってきたのは、個人でもリリース経験のある人はいいなと思ったからですね。今すぐ転職をしなくとも、今後を見据えているなら、週末ハッカソンや機材購入、情報発信する、ツイッターフォローするといったことは、すぐに出来ます。
土本:弊社でもUnityで開発しているので、未経験者ならまずUnityを触って概要をつかんでいただくとよいかなと思っています。Unityで使うプログラミング言語がC#なので、それも合わせて学習していただくことはもちろんですが、特にUniRxとUniTaskというライブラリが頻繁に使われるので、しっかり理解することが重要です。自分でゲームを開発したり、他の人のコードを読んだりしていると身についていきます。
3つめの「オブジェクト指向設計」と「SOLID原則」も、この辺りの知識があるとありがたいですね。弊社プロダクトはゲーム開発寄りのところもありつつ、システム開発っぽいところもあるのでこういった設計の知識がある人がコードを書くと保守性が格段に上がります。また、弊社はアジャイル(スクラム)で開発を行っています。チームで協力してコードを書きますので、まずはがっつり学習するというより、「こういうものがある」ということを知っていることが重要だと思います。
XRやメタバースはオンラインでの利用が前提なのでネットワークの知識は必須かと思います。シェーダーの知識は「あればなおよい」です。3Dキャラクターは、モデラ―という職業の方が作っています。その3Dモデルの表面の質感をシェーダ―で仕上げます。3Dグラフィック領域を専門でやりたい方は、その知識を身に着けておくといいのかなと。Unityエンジニアとしては、深い領域なので詳しいと重宝されますね。
募集中のポジションはUnityエンジニア
山下:弊社で募集中の職種は、Unityエンジニアです。『JOLLYGOOD+』のアプリ開発をお願いすることになります。モックを作っていろんな関連部署と連携しながらプロダクトを作っていく体制です。他部門との連携や仕様策定も、担当していただきます。
選考は1次面接から3次(最終)面接までとなっています。技術的に気になるところや、事業内容をもっと知りたい方がいらっしゃいましたら、カジュアル面談をさせて頂きますので、お気軽にご連絡ください。インターンも募集していますので、お気軽にご連絡いただければ。
押田:弊社もUnityエンジニアを募集中です。弊社は主にアバターの出力部分をやっているので、Unity Humanoidを用いた着せ替え機能の開発を担当してもらいます。求める人物像は、土地イジりよりキャラいじりが好きな方。また、弊社のアプリケーションは運用ありきです。モバイルゲーム業界で設計・実装をやってきた人は歓迎ですね。
常に働けとはいいませんが、スタートアップなので、24時間臨戦態勢です。ハードワークが楽しめる人はいいと思います。本気でエンタメを作りにいきたい熱量で、技術をカバーできる人がいるのも、エンタメ領域の特徴です。カルチャーが合うのは、ツイッターのアイコンがアバターかキャラクターで、趣味でもいいのでclusterやVRChatで使えるアバターをオリジナルで用意していて、あと、セブ島に行ったことがない人です(笑)。
選考フローは、1次面接はカジュアルで僕と話して、その後エンジニアチームと話してスキルを見ます。その後で最後の3次面接という流れです。
イベント参加者からのQ&Aコーナー
――XRエンジニアで就職するには、まずUnityから始めた方がいいでしょうか?
押田:前提条件が難しいですね。うちはUnityなので、そちらに集中するのがいいと思います。ただ、スタジオ系の会社では、Unreal Engineが好きな人もいます。入りたい企業があれば求人募集に(必要なスキルが)書かれているので、それをやればいいんじゃないですかね(笑)。
――XRエンジニアになるために、始めにやっておくことを教えてください。
押田:Unityをインストールするじゃないですか。これは結構大事で、Unityを初めてインストールしたのは大学1年生のときで、3日ぐらい掛かりましたからね。ロボットゲームが好きで、友達とそれを作ろうと思ったんです。目標にするゲームをまず決めて、参考書を買ってそのパクりを作っていました。同じことを5周~6周やっていたら、出来るようになりました。本当のゼロイチは、それでいいのではないかと思います。
――医療知識を学ぶ必要はありますか?
山下:あるにこしたことはないですが、入社前に学ぶ必要はありません。私自身もありませんでした。入社してから徐々に学べる環境はあります。
――エンジニアも医療現場に出向いて意見を聞かれているのでしょうか?
山下:そうですね。現場の意見をヒアリングしやすい環境にはあります。学会などが開催するセミナーには、エンジニアが同席することもあります。VRコンテンツの撮影にも、同席することがあります。
――医療知識は不要というお話でしたが、過去にバリバリオペをしてきたお医者さんが、XR業界でクリエーターとして活躍しようとしいていたらとしたら、どう思いますか?
山下:ぜひ、弊社に参画していただければなと(笑)。弊社のプロダクトは、我々のテクノロジーと、開発に参画してくださるお医者様の知識の掛け合わせで作っています。パートナーとして、一緒に医療教育を変えていくスタンスです。XR業界で活躍したいのであれば、これほど嬉しいことはありません。
――XR技術を大学方面に導入していく活動をしています。文科省の資料を見ることもありますが、ジョリーグッドの事例も数年前から見ることがあります。行政への認知を取りに行くのはハードルが高いと思いますが、なにかコツはありますか?
山下:弊社の企業理念は「テクノロジーはそれを必要とする人に使われて初めて価値がある」で、開発したプロダクトを新聞やテレビなどに訴求するなど、広報にも力を入れています。結果的に目に止めていただき、お問い合わせいただいています。
――起業する過程で一番大変だったところを教えてください。
押田:初期の仲間集めですね。ひとりで作っちゃうタイプなんです。でも、絶対人が必要になってきます。
――キャラや服はNFTですか?
押田:NFTではありません。一部アイテムでは対応予定です。
――新卒を採用するにあたり、未経験や初心者を採用することはありますか?
押田:新卒かどうかは考えたことがないですね。やる気があって、もしスキルが足りなくても、僕が気に入ったら良いのかなと(笑)。
山下:新卒採用は、積極的には行っていません。学生インターンの受け入れは行っています。弊社に馴染んでいただいて、そのまま入社いただけるのであれば嬉しいなと思っています。
――VTuberやVRなどメタバース関連の仕事をするにあたり、給料の相場を教えてください。
山下:業界的にも、年収レンジの幅はあると思っています。これまで培ってきたスキルに応じて変わります。弊社でも、例えば第2新卒だからこの額、みたいなものは決まっていません。
押田:うちはもう……バリ安いですよ(笑)。10人ぐらいなので、給料とかいってる場合ではありません。ただ、メガベンチャーではないモバイルゲーム開発会社の人や、家庭用ゲーム機を作っている人の年収を聞いたときに、「バリ低っ!」と思いました。そうした業界から来る分には、結構もらえると思います。
――XR分野の今後の課題や、5年後はどうなっていると思いますか?
山下:医療教育市場は急成長しており、あと5年ほどで22兆円市場規模になるといわれています。その中の医療VR市場は3.9兆円と予測されています。まだまだ伸び代があると思っています。課題はデバイスですね。現行のVRゴーグルは大きいので、今後は軽量化していくのかなと。機器変更ごとのプロダクト改修やアップデートも、今後の課題です。
土本:あとはAIが大きいですね。医療分野には膨大な医療データが蓄積されていると思うので、AIと相性がいいと思っています。「AI × ○○」みたいな事例が、さらに出てきそうです。
押田:僕はこの質問一番嫌いです。5年後を作るのはあなたです。なので、一緒に作っていきましょう! といいたいところなのですが……まあ、5年後はわからないですよね。ChatGPTで(将来見通しが)狂ったなと見ていて、思ったよりも早く技術普及が進みそうでます。web3やメタバースがAIに食われているところもあり、この1年はちょっと冷え込むのではないかなと。次の冬がまた来る予感があります。迷っているなら早くしたほうがいいですね。
――最後にメッセージをお願いします!
山下:弊社と医療教育を変えてくれるエンジニアを絶賛募集しています。ぜひ、ご応募ください。
土本:医療×VRで社会的にインパクトのある事業を行っています。そちらに興味がある方は、ぜひ応募していただければなと思います。
押田:こうした機会を頂き感謝しております。カワイイアバターを作りたい人は、応募してください。
――本日はありがとうございました!