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Mogura VR Job 2023.03.22

なぜ私たちは物語を必要としているのか?ーーVRゲームを生み出す MyDearest株式会社 シナリオライター兼ディレクター 末岡青さん

ーーMyDearestに入社されたきっかけは?

末岡さん(以下、末岡):

広告代理店やローカライズなどの他業種でPMやディレクターを経験した後、専門学校でゲームを作っていたのですが、そこで賞をいただいたんです。そのおかげで、東京ゲームショウで展示できることになったのですが、ちょうど自分のブースの目の前にMyDearestのブースがありました。

じつは、VRの勉強を始める前に長い間、海外を放浪していて「これから何を作ろうかな」と考えていた時期があったんです。「物語」は子供のころから好きだったのですが、既存のメディアでは新しいものはなかなか生まれないと感じていて。でも、VRなら表現できる「物語」がまだあるんじゃないかと感じました。それが、この世界に入ったきっかけです。東京ゲームショウではCOOの千田さんに作品を体験してもらうことができました。お話を聞いて、MyDearestは物語とVRを追究しているしている会社だと感じたので、ピッタリだと思いました。

ーーそもそも物語性のあるVRゲームを作りたいと思った理由は?

末岡:
子供の頃からずっと物語に興味がありました。私は作品に触れる時、「なぜその物語が生まれたのか」をよく考えています。一人称にしろ、三人称にしろ、物語はある視点からの世界を描いたものだと思っていますが、そもそも「私」と「あなた」は別の人間なので本来は同じ世界を共有することはできません。でも、物語を通してなら私たちは同じ世界で生きていて、同じ社会を構成しているという共通認識をもつことができる。神話や宗教、小説や映画も、そのために生み出されてきたと思っています。これから技術が進み、人と人が視界を共有できるようになったら、物語を作る必要もなくなるかもしれない。でも、そんな時代になっても、もし人が必要とする物語があるとしたら、それはどんなものだろうと考えたんです。たとえば世界の見え方が根本から異なる存在、機械の視点でこの世界を見ることを「物語」とできないか、と考えたり。そして、そんな「物語」の描き方ができるのがVRという媒体なんじゃないかと考えて、VRゲームを作りはじめました。じつはMyDearestに入るまで、ゲームのシナリオを書いたことはなかったのですが、『ディスクロニア:CA』の企画が社内で通り、今はディレクションまで担当しています。

ーーMyDearestを一言で表すとどのような会社ですか?

末岡:
いろんな価値観の人を受け入れる素地がある会社だと思っています。基本的に私は普通の会社ではやっていけないんですが(笑)。素の状態でも受け入れてくれるのでありがたいです。MyDearestにはスマホゲームやコンシューマーゲーム業界、アニメ制作会社など、いろいろな会社から入社してくる方がいるのですが、基本的には柔軟な方が多くて、意見交換も活発です。ゲームの方向性は基本的に私が決めていますが、アートやエンジニアリングの知見が不足しているのは承知しているので、常にメンバーと意見を交換し、妥当性を判断しながらプロジェクトを進めています。とてもコミュニケーションを取りやすい環境ですし、アイディアを出しあいながら決めていくことができています。

ーー他の会社にない御社の強みは?

末岡:
プロモーションチームの機動力の高さが強みだと思っています。制作とプロモーションチームの距離がとても近く、経営メンバーともよく意見交換がされていると感じます。プロモーションのコンセプトを立てる際に、最初は開発側と若干のずれがあることもありますが、それに対して修正をかけるスピードがとてもはやくて驚きました。施策を打つスピード感もありますし、「ゲームを作ったら必ず売ってくれそうだ」というクリエイターからの信頼も厚いです。絶対に投げ出さないチームだと感じるので、やはりここが強みだと思います。

ーー今、どのようなプロジェクトを進めていますか?

末岡:
現在、『ディスクロニア:CA』のEpisode 3の制作を進めています。ご存じのない方にご紹介すると、ディスクロニアは未来の海上都市を舞台にしたVRのSFミステリーアドベンチャーゲームです。プレイヤーは過去を見ることができる特殊能力をもった捜査官となって、この都市で起こるはずのなかった不可解な殺人事件を解決していきます。私は開発全体を統括していて、日々上がってくる仕様やデザインをチェックしたり、実装された内容の確認をしたりしています。会社としては他にも進めているプロジェクトもあるのですが、ディスクロニアの開発に多くのリソースを割いています。

ーー普段、どのようなチームで働いていますか?

末岡:
開発メンバーに関しては、正社員や業務委託、インターンの方々を含めると90人近くが稼働しているのですが、コミュニケーションは非常に活発で、私自身、日々全セクションの方々とコミュニケーションをとっています。仕様を固める時期には、コンセプトアートやゲームデザインの担当者とのやり取りが深夜まで続くこともあります…。開発メンバーは席が近いので、確認したい箇所があったらすぐにその人のデスクまで歩いて行って話をしたりもよくしていますね。私だけでなく、会社全体がそんな雰囲気で、とても活気があります。

ーー普段どのようなスキルを磨いていますか?

末岡:
スキルといえるかはわからないですが、昔から物語を分析的に読む癖がついています。高校の頃からの癖で。私は高校の頃、推理小説が好きでずっと読んでいたんですが、ある時からすこしつまらなく感じるようになってしまって。というのも、推理小説はある程度フォーマットを知ってしまうとキャラの配置を見ただけで犯人がわかってしまうことがあるんです。この頃、物語の構造をメタ的に考える癖がついてしまったので、大人になってからは意識的にスイッチを切り替えています。映画や小説、ゲームにもたくさん触れますが、見終わったあとはこの演出はどういう意図だったんだろう、制作者が伝えたかったテーマやメッセージは何だろう、作者はどんな人なんだろう、というようなことを考えることが多いです。あとは、単純に知らないことを知るのが好きなので、エンジニア向けの技術書を読んだり、最新の科学や哲学の専門書を読んだりしています。シナリオを書く上で、表現手法のトレンドを知ることも、自身の興味をベースに新しい知識を仕入れ続けていくことも、とても大事だと思っています。

ーー休みの日などは何をしていらっしゃいますか?

末岡:
ディスクロニアの企画が動き始めてからあまり休んでないかもしれないですね(笑)。シナリオと並行しながら、Eposode 1の開発を進めて、調整してリリースまでこぎつけて、やっとひと息ついたと思ったら、次はEposode 2の開発の佳境が来るじゃないですか。ただ、こういうことを言うと仕事中毒っぽくなってしまうのですが、私はとても楽しめています。やりたいことをさせてもらっているので。

ーー最後に、どんな方に応募してほしいですか?

末岡:
個人的には想像力がある人かなと思います。VRゲームってまだまだ手法も発展途上ですし、開発を進めるなかでわかりやすい答えがない場合も多いじゃないですか。今回の『ディスクロニア:CA』は、本当にいろいろな職種の方と関わりながら開発したのですが、これまで経験したことがなく、明確な答えがないことでも、プレイヤーへの想像力があればアイディアが生まれたり、明確な判断基準をもって周囲を説得できると感じる場面が、自分にも実感としてありましたし、一緒に働いている人たちを見ていてもそうなんだと感じることがありました。知識がなくても、プレイヤーが自分の担当しているパートに触れた時、どういう感情になるのか、相手の視点に立って細かく想像できる人であれば問題ないと思います。

もちろん、ゲームメカニクスなどの知識も大事ではあるんですけど、メカニクスについて知っていることよりも、そのメカニクスによってプレイヤーにどういう感情になってほしいかを設計できることの方が重要で、そのために必要なのが想像力なんじゃないかな、と。

ゲームを面白くするために、遊んでくれる方の気持ちに想像力を働かせてくれる方と、ぜひ一緒にお仕事したいと思っています!

インタビューに答えてくださった方

末岡青さん(まつおか あお)

▼所属
MyDearest株式会社 シナリオライター兼ディレクター

▼プロフィール
MyDearestの新作VRゲーム『DYSCHRONIA: Chronos Alternate(ディスクロニア: クロノスオルタネイト)』でディレクター、原案、メインシナリオを担当。前作『ALTDEUS:Beyond Chronos(アルトデウス: ビヨンドクロノス)』ではリードゲームデザイナーを担当。本作ではディレクター、原案、メインシナリオを担当している。