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ゲーム・アプリ 2020.06.02

座りながらでも遊べるVRリズムゲーム「AUDICA」レビュー

2018年に誕生、大ヒットを記録した「Beat Saber」によってVRゲーム界隈では、リズムゲームが象徴的なジャンルとして確立されました。実際、同作の人気に続けと言わんばかりに同路線のゲームの発表、リリースが最近も相次いでいます。

大ヒット作が生まれれば、その”二匹目のドジョウ”を狙うものが作られる。それは今に始まったことでもなく、過去にもポケモンこと「ポケットモンスター」が誕生した頃にも同じようなことが起きました。そして、その流れの中「ドラゴンクエストモンスターズ」、「メダロット」と言った、昨今も人気を誇る作品が誕生するに至っています。

2006年にPlayStation 2用ソフトとして発売され、シリーズ展開が成された「ギターヒーロー」を開発したHarmonix Music Systemsの新作「AUDICA」も、そんな過去の例に倣う形で誕生した1本。”VRリズムシューター”を謳う作品です。

的当て感覚で遊ぶ、ガンシューティングスタイルのVRリズムゲーム

シューターの名が表す通り、本作はシューティング寄りのリズムゲーム。やることは単純で2丁の拳銃、その名も「リズムブラスター」を用い、フィールドの奥からこちらに飛んでくるターゲット(的)を楽曲のリズムに合わせて撃っていくだけです。

もう少し具体的に紹介すると、ターゲットにはブルーとオレンジの2種類が存在。リズムブラスターも同様に左手がブルー、右手がオレンジとなっています。要はブルーのターゲットなら左、オレンジのターゲットなら右と言った具合に銃を使い分けて対応。「Beat Saber」の光る剣を銃に置き換えた感じの仕組みになっています。

また、ターゲットは単に撃つだけのものに限りません。菱形の「サステイン」、星座状の「チェーン」、そして隕石状の「ミリー」と言った特殊な種類も用意されています。

対応法も異なり、サステインは数秒間ブラスターを照射、チェーンはターゲットを撃った後、トリガーボタンを押しっぱなしにして線をなぞるようにコントローラを動かす、そしてミリーはコントローラを振って銃のグリップ部分に備わった刃で斬る。シューターの呼称から撃ちっぱなしの印象を抱くかもしれませんが、そんな手を振る類の操作も求められるようになっていて、意外に身体を動かす作りになっています。

ただ、基本はコントローラで狙いを定め、トリガーボタンを押して射撃するのに徹する形。フィットネスゲームとしての一面を持ち合わせていることでも注目されるVRリズムゲームとしては、大人しめの作品と言えるかもしれません。

そのほか、ゲームモードは楽曲ごとの攻略に挑む「ソロプレイ」、ストーリーに沿って進める「キャンペーン」の2種類を主軸に、チュートリアル、オプションなどを収録。事実上の本編に当たるのは「キャンペーン」で、記憶喪失の主人公になって全5レベルごとに用意された楽曲を順番に攻略し、真相を追い求めていく形となります。

楽曲の攻略が中心な点では「ソロプレイ」と変わりませんが、一部、特殊な条件下で挑むもの(※作中では「修飾」と表記)が用意されているのが特徴。単純にターゲットを撃つだけに留まらない、一風変わった展開が楽しめます。また、楽曲を攻略するとスコアに応じて「オーブ」を獲得。これが一定量に達すると次のレベルが解禁され、新たな楽曲に挑めるようになります。

合わせて、背景パターンが変わることも。もちろん、特殊条件にも新種が登場します。

他に難易度も3種類+αが用意されているほか、ソロプレイ・キャンペーン共にリーダーボード機能も搭載。世界中のプレイヤーとスコア争いに興じられるなど、やり込み要素も豊富に揃っています。

基本的な作りはどことなく「Beat Saber」の銃バージョンですが、相応にあまり激しい動きが求められない、(僅かながら)ストーリー性のあるモードの存在などで個性を出していて、独特の遊び応えを表現しています。ガンシューティング的な趣も濃く、その手のゲームを遊び込んだ人には懐かしさを感じる手触りなのも特徴のひとつになっています。

注意書きとは裏腹に座ったままでも遊べる良心的(?)な作り

本作の魅力を一言で表すなら、要求される動きの少なさでしょう。率直に言えば、座りながらでも楽しめます。

ゲーム起動間もなく、こんなことが表示されますが……大事なことなので二度繰り返しますが、座りながらでも行けます。

VRリズムゲームは面白そうだけど、それなりに身体を動かす関係で体力が要りそうと、やや尻込みしてしまう所もあります。しかし、本作は基本、狙いを付けて撃つことに徹するので、気兼ねなく楽しめます。

唯一、ミリーに対応する時はコントローラを振らなければなりませんが、座っている状態で”クイッ”と動かすだけで簡単に対処可能。方向に応じて振る必要もなく、最小限の動きで済みます。

なので、プレイ時に確保するスペースが小さめで済むのが嬉しい。広い場所を確保したくてもできないプレイヤーには良心的な設計と言えるでしょう。とは言え、ミリーの存在が示す通り、コントローラを僅かでも振れる程度のスペースは必要。極端に狭い場所ではさすがに困難なのでご注意ください。

また、面白さで行くと立った姿勢が圧倒的。2丁の銃を自在に動かし、ターゲットを破壊していくのにはどことなく、名ガンマンになったかのような”なりきり感”が堪能できます。さらに「キャンペーン」には、その姿勢が推奨される特殊条件も。気になる条件とは「手を最低500m動かす」。楽曲が終了するまでの間、手を規定メートルに達するまで動かさなければなりません。要は手だけ動かして自由にダンスしろ。立ち姿勢なら、手以外の身体も使いながら動くことになるのです。

その時のプレイスタイルたるや、ガンマンを通り越してダンサー。しかも、自由に動かせばいいので、加減によっては端から見た際の様子が面白おかしいことにもなります。もし、それを誰かに見られてしまった時は……。

そんな具合に座った姿勢でも楽しめるけど、立てばより面白い。プレイスタイルを縛らない作りになっており、非常に取っ付きやすい仕上がりになっています。手を動かす条件の通り、やろうと思えば相応に激しい動きをしながらプレイするのも可能。特に難易度「ハード」以上で件の設定付きでプレイすれば、良い運動になるでしょう。

ガンシューティングのスタイルゆえ、正確に狙いを付ける技術が求められそうにも見えますが、この点の調整も優秀。強力なアシスト機能が備わっており、ある程度外れていてもバッチリ当たるので、気持ちよく銃でターゲットを撃ち落とし続けられます。あえてアシストを無効化させ、己の技術を頼りに挑むことも可能。ガンシューティングのリズムゲームなら、より本格的な調整で楽しみたいという欲求にも応えてくれます。

楽曲を攻略していく流れでは「ソロプレイ」と変わりませんが、特殊条件もあって意外に変化のある展開が楽しめる「キャンペーン」の構成も魅力的。進行に関しても「オーブ」さえ規定数に達すれば次に進めるので、全曲こなさずクリア目的で行くプレイスタイルにも対応しています。もちろん、先の手を動かす条件を無視し、ひたすら座ってやり続けるもよし。

ただ、リズムゲームとしての難易度はやや高めです標準難易度「スタンダード」でも、キャンペーンを例に挙げれば、後半レベルほど素早い判断と並行動作(撃ちながらミリーに対応したりなど)が求められます。リズムゲームがそれほど得意でない人に限らず、手慣れたプレイヤーもまずは最も低い「初心者」でプレイし、コツを掴んでからスタンダード以上に挑むのがおすすめです。

誤訳で四苦八苦

また、本作は日本語に対応していますが、残念ながら翻訳には難あり。特に日本語として破綻しているほど酷い訳ではないのですが、誤訳された箇所が存在するのが致命的です。その誤訳された所というのが特殊条件こと「修飾」の文。「見えないターゲットを撃つ」、「手を50m動かす」という2つの条件があるのですが、共に本来の条件から著しく外れています。前者は正確には「ターゲットから視線を外して撃つ」、後者は「手を動かした距離を50m以内に抑える」。どこかに撃つ対象があるのか探す、手を大きく動かすといった間違ったプレイを誘発するものになってしまっています。

これらの詳細を解説してくれるチュートリアルもないため、筆者の場合、詰み状態になって進められなくなり、2~3日放置する羽目になりました。結局、言語設定を英語にしたら、本来の意味が分かって突破できた格好です。仮にも日本語版で、日本語でプレイすると支障を被る作りになっているのは問題ありと言わざるを得ません。恐らくは翻訳文をそのまま反映させただけなのでしょうが、ちゃんと実装後の最終チェックをして頂きたかったの一言に尽きます。

他に細かい部分ですが、グラフィックのトーンが暗い関係で「チェーン」のターゲットは線の部分が視認しにくかったり、他のターゲットに関しても出現までの間隔がやや短めで、若干、アクションゲームやシューティングゲームのスキルが試されるのは好みが分かれるかもしれません。

あのアーケードゲーム好きにもおすすめの”VRリズムシューター”

本作はValve Index、HTC Vive、Oculus Rift、Windows Mixed RealityのPCVR版(Steam、Oculus Store、Viveportで配信中)のほか、PlayStation VR(PSVR)、Oculus Quest版があります。レビューはPSVR版を元にしましたが、PlayStation Moveモーションコントローラが2本必須のため、プレイハードルは残るプラットフォームよりも高めです。

ただ、最小限の動きで楽しめる良心的な設計と射撃の爽快感、リズムタイミングの適切さなど、ゲームとしての面白さは盤石で、本作のために用意するだけの価値は十分にあります。象徴的な存在となったVRのリズムゲームの中でも、入門編としては申し分のない内容。ガンシューティング、そしてかつてタイトーより発売されたアーケードゲーム「ミュージックガンガン」を遊んだ方にもおすすめできる1本です。

ソフトウェア概要

タイトル

AUDICA

発売・開発元

Harmonix Music Systems

対応ヘッドセット

Valve Index、HTC Vive、Oculus Rift、Windows Mixed Reality、PlayStation VR、Oculus Quest

プレイ人数

1人

価格(税込)

3,230円(Steam
2,990円(Oculus Store:Rift / Quest
3,220円(Viveport
3,280円(PlayStation Store

備考

PlayStation VR版はPlayStation Move モーションコントローラーが2本必須(※DUAL SHOCK 4使用不可)

©2019 Harmonix Music Systems, Inc. All rights reserved. AUDICA, Harmonix and all related titles and logos are trademarks of Harmonix Music Systems, Inc. This product is covered by Patents identified at www.harmonixmusic.com/patents.


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