4月5日まで、虎ノ門ヒルズTOKYONODEで開催中の「攻殻機動隊展 Ghost and the Shell」。これまでの映画・アニメシリーズ全ての「攻殻機動隊」シリーズに焦点を当てた企画展示で、今回初公開となる膨大な原画や資料がズラリと並び、ファン必見の内容となっている。また、期間中は攻殻機動隊に影響を受けたクリエイターたちによるトークセッションやライブなども多数予定される予定だ。
もちろん、ただ歴史を振り返るだけの展示イベントではない。近未来の技術を予見し、さまざまな可能性を提示してきた「攻殻機動隊」シリーズであれば、ここ数年でどれだけその世界に近づいてきたのかをアピールするテクノロジーを用いた企画もあってしかるべきだ。今回の展示ではKDDIとXREALが共同で企画したARナビゲーション「電脳VISION」という体験が可能になっている。一体どのようなものかを編集部で試してきたので、レポートしていく。
電脳世界のネットワークを再現したナビゲーション
先に注意しておくと、今回レポするAR体験「電脳VISION」は、展示会入場チケットとは別売で、事前予約が必要となっている。また普段からメガネを使っている方は、コンタクトなどを事前用意しておくのがおすすめだ。そして何より重要だが「電脳VISION」を予約したなら、最初の観覧はそちらでの体験を優先してほしい(理由は後述する)。
受付でチェックが終わるとXREALのARグラス「XREAL Air 2 Ultra」と、専用端末の「XREAL Beam Pro」を手渡された。体験中は、端末とグラスをケーブルで繋いだまま胸にかけ、展示会場を巡ることになる。
そもそも「XREAL Air 2 Ultra」は2024年1月に発売された開発者向けのARグラスだ。左右のレンズの角の部分に2基のセンサーが搭載されているのが特徴で、このセンサーによって、周囲にある現実空間の情報を認識させて、3DCGのオブジェクトを位置ずれ無く、その場にあるかのように表示できる。これによって会場の特定の展示物をスキャンすると、その情報がARグラスのディスプレイに表示されるのだ。
また「XREAL Beam Pro」は、Android 14をベースとしたNebulaOSを搭載したデバイスで、この中に今回の展示のために実装されたAR用のアプリがインストールされている。ARグラス専用のスマホのようなものと思ってもらえれば問題ない。注意すべきは、グラスと端末を繋ぐ有線ケーブルは、移動中にとても抜けやすいので「何かおかしいな」と思ったら、ケーブル側を確認してほしい。
さて、あらためて体験の紹介に戻ろう。展示会場の各ポイントの床には、専用のマーカーが設置されている。これをARグラスをつけたままジッと見つめてスキャンすることで、専用のAR演出が表示される。具体的には、タチコマが登場する。
神山健治版のアニメシリーズ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」に登場した、あのタチコマだ。この時点で作品ファンにとっては非常に感慨深いものだろう。しかも、このタチコマの表示のされ方にも覚えがある。これは、公安9課が電脳空間に入り、ネットワーク上でコミュニケーションをとるときのUIと非常によく似ているのだ。つまり、ARグラスをかけている間、私たちは電脳空間にダイブしているのだ。
【制作報告】
東京・虎ノ門で開催中の『攻殻機動隊展 Ghost and the Shell』 にてXREAL Air 2 Ultraを用いたAR展示体験『電脳VISION』のコンテンツ制作/実装を担当してます!タチコマが原画の案内解説をしてくれます!!!
ぜひ体験来てください〜✌️#攻殻機動隊展 pic.twitter.com/fpl5L37u9u— YORIMIYA (@jav6868) January 31, 2026
この演出には痺れる。たしかに我々の身体は現時点では義体化も電脳化も進んでおらず、常時ネット回線に繋いで視界にある情報をいちいちキャッチすることはできない。しかし、今回のARグラスの体験は限りなく、それに近づけていこうという意思を感じられた。もともと、アニメシリーズで表現されたUIが素晴らしかったところもあるが、その表現を現状の技術でできる限り再現しようと試みている。今回のコンテンツ制作と実装は、3DクリエイターのYORIMIYA氏が担当しているとのこと。限られた条件の中でこの表現を実現できたことには、YORIMIYAさん含む今回の企画に関わったクリエイターたちのシリーズへの強い愛情とこだわりが感じられた。
もっと具体的に見ていこう。ARグラスの装着中、ディスプレイには、青い線が床を伝っており、これらを歩きながら辿っていくことで、展示されている原画の補足情報をチェックできるようになっている。原画の前に立ってスキャンすると、当時の映画・アニメのワンシーンが再生され、それとともにタチコマが補足情報を話してくれる。本人は登場していないはずの押井守版まで解説してくれたり、開発陣のメタな裏側情報まで話してくれるのは思わず吹き出してしまったが、それもここでしか聞けないような貴重な情報だ。
また、原画とアニメ、その両方を見比べるのも贅沢な体験だ。「XREAL Air 2 Ultra」はディスプレイの解像度も申し分なく、アニメもタチコマの3DCDもハッキリと映りこむ。当時の視聴体験時の思い出が蘇るようで、コアなファンであれば嬉しいのは間違いない。もちろん、シリーズ初心者の方でも原画の情報が分かりやすくなる価値はあるだろう。
そして何よりラストの演出は必見だ。巡り終わった先、我々の眼前には草薙素子の姿がある。現実の展示会場は45階の高層ビル「虎ノ門ヒルズ」の中にあり、当然その周囲には東京の無骨なビルの乱立する都市空間がどこまでも広がっている。そんななか、草薙素子の身体はゆっくり空中を落下していき、その姿は光学迷彩で見えなくなる……。こればかりは、ぜひ、日が落ちた時間に体験してほしい。
会場は“必ず2周”すべし
総じて、ARのコンテンツの体験自体はクオリティが高く、満足のいくものだったと言っていい。特に攻殻機動隊シリーズを愛してやまないファンであれば、これほど嬉しい体験もなかなか無いと言えるだろう。
ただ、冒頭でも注意したが今回の展示は「電脳VISION」を事前予約して初見で楽しむのであれば、まずは必ずAR体験の方を優先してほしい。というのも、これはデバイスの体験に制限時間があるからだ。入場開始から90分ほどの制限時間なので、結構余裕があるように思えるが、ARグラスをつけずに展示の一つ一つを見ていくと、あっという間に時間が溶ける。どこもかしこも貴重な展示ばかりなので、最初はついついARグラスなしに現実の展示に目を向けがちになってしまうのだが(著者がそうだった)、これではどう考えても間に合わない。
今回のAR体験では、全ての原画がスキャンできるわけではないが、それでもスキャンできる原画は十分すぎるほど多い。アニメや解説を全て聞きながら回ると非常に長大なボリュームとなる。ただ、観覧後には見逃したポイントを確認できる仕様となっているので、一度で丁寧に巡る必要はない。後から見返しもできるので、まずはARで気になるものをザっとおいかけていくのが良いだろう。
もちろん、AR体験だけで展示に満足してしまうのも、それはそれで足りない。ARグラス体験が終了した後にでも、入口まで戻って時間の許す限り今度は裸眼で展示を確認すべきだ。あるいは、日をまたぐ想定で、一度目を裸眼で、二度目をAR体験で、と分けてもいい。ひとつ言えるのは、2周はマストであること。そのことだけは覚えてほしい。
また、コンテンツ体験自体は満足のいくものだったものの、現実の施設での体験そのものには課題も見られた。特に、ARグラスを装着しているときの取り回しの悪さである。「XREAL Air 2 Ultra」を「XREAL Beam Pro」を繋ぐケーブルが外れやすいことは指摘したとおりだが、さらに「XREAL Beam Pro」を充電するためのモバイルバッテリーの方のケーブルも外れやすい。取材中、同行した編集者がバッテリーが外れていることに気づかず、電池切れで体験が止まるというトラブルが起きていた。特に映像を視聴中は非常に気づきにくいので、ここに関しては今後対策が欲しいと思ったところだ。
そのほか、ARグラス装着中はサングラスと同様に周囲が暗くなり、AR演出によって視界も狭くなるため、ほかの体験者との接触事故には気を付けた方がいい。特に映像が流れている間は、その場に立ち止まっていた方が無難だ。
このあたりは、ARグラスの視野角が広がり、ケーブル不要でも稼働するようになる等、技術が段階的にアップグレードされていけば解決されていることだろう。しかし、現在を生きる我々はまだまだ「攻殻機動隊」の世界に至るにはほど遠く、解決すべき課題も多い。それでも、この展示で今、我々がどの地点にいるのかを探ってみることは、次の世代を考える上で重要になるはずだ。
会場・開催概要
| 名称 | 攻殻機動隊展 Ghost and the Shell |
| 会期 | 2026年1月30日(金)~ 4月5日(日) |
| 会場 | TOKYO NODE GALLERY A/B/C(虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 45F) 住所:東京都港区虎ノ門2-6-2 |
| チケット情報 | <LivePocket>https://sp.livepocket.jp/exhibition-ghostintheshell <ローチケ>https://l-tike.com/ghostintheshell-ex/※プレイガイド別に購入できるチケットが異なりますので、ご注意ください ※各チケット詳細は、公式ホームページにて、公開されます ※現地にて当日券もご購入いただけます |
| 主催 | 攻殻機動隊展 Ghost and the Shell 製作委員会 株式会社講談社 森ビル株式会社 KDDI株式会社 株式会社プロダクション・アイジー 株式会社パルコ 株式会社バンダイナムコフィルムワークス |
| 協力 | XREAL株式会社 株式会社STYLY |
| 公式HP | https://www.tokyonode.jp/sp/exhibition-ghostintheshell/ |
| 公式SNS | <Instagram>https://www.instagram.com/ghostandtheshell/ <X>https://x.com/Gats_exhibition |
©︎士郎正宗・講談社/攻殻機動隊展Ghost and the Shell製作委員会






