KAMITSUBAKI STUDIOが展開してきた大型メディアミックスプロジェクト「神椿市」。ネットを利用した謎解きコンテンツ、ゲーム、TVアニメと、その裾野を拡大してきましたが、満を持して登場したのがVRゲーム「神椿市建設中。VIRTUAL REALITY(以降、神椿市VR)」です。
本作は公表のクリアまでのプレイ時間が40時間、キャラクターたちの台詞がフルボイス、マルチエンディング採用など、神椿市関連作の中でもかなり力の入った作品となっています。
実際にプレイしたところ、他にも見逃せないポイントが詰まっており、シリーズファンにもオススメできる要素が多かったので、今回の記事ではネタバレ無しで本作の魅力を紹介したいと思います。
神椿市が作る物語の集大成としてのVRゲーム
そもそも「神椿市」とは、架空の都市を舞台としたIPプロジェクトで、バーチャルシンガーに似て異なる独自のキャラクターが活動しているという世界観を押し出し、謎解きやゲーム、MV、アニメなどを通して展開してきたコンテンツです。
ゲームにおいてもリズムゲームやドットイラストのアドベンチャーゲームなど多数のジャンルで展開してきましたが、その中でも特に好評だったのがテキストアドベンチャーゲームの「神椿市建設中。REGENERATE」です。壮大な神椿市の世界観をひとつのゲームとして落とし込んでおり、前後の作品に触れなくても遊べる神椿市の入門編として注目を集めました。
神椿市VRは、このREGENERATE版とシナリオが共通しており、グラフィックが3DかつVR化したことで、より物語に没入できる内容となりました。ゲーム全体が3D化したことで、ある意味、神椿市が作る物語の集大成としての側面が垣間見えます。
森先化歩たちが目の前にいる!ファン必見の臨場感
本作において最も大きなポイントが、神椿市や登場キャラクターを目の前に感じられる臨場感です。神椿市のコンテンツは美しい音楽とビジュアルを売りとしてきましたが、VRヘッドセット(筆者の場合はMeta Quest 3)で体感すると、神椿市の空気をより肌身に感じることができました。
本作ではメインキャラや何度も訪れる拠点といったメインのビジュアルだけでなく、ちゃんとストーリー展開に合わせてサブキャラや、1シナリオだけにしか登場しないエリアまで3D化されています。VRゲームでは物語のシーンがテキストのみで断片化されることがありがちですが、神椿市VRではひとつひとつの描写のためにアセットを用意してあるため、途切れることなく物語に集中できるのが強みとなっています。
プレイヤーは別世界からの“観測者”として、神椿市に関わっていくこととなりますが、本作はVRゲームなので、当然一人称視点でゲームが進みます。すると、本作のヒロインであり、神椿市の顔とも言える「森先化歩」との距離感が非常に近いことに驚きました。
序章で彼女の家族のエピソードを通し、主人公と親身になっていくため、関係性の深さを表しているのだと思いますが、それでもプレイヤーの隣で森先化歩が喜んだり悲しんだりする姿に感情移入しつつも、ふとした瞬間にときめいてしまいました。
また、各キャラクターのエピソードでは協力して神椿市にまつわる謎を解いていくのですが、彼女が側にいる感覚は探偵作品のバディのようでもあり、「魔法」と呼ばれる彼女の歌の能力も相まって、非常に頼れる存在として描かれています。
世界観を拡張していく「魔女の娘」の物語
もちろん森先化歩だけでなく、メインキャラとなる「魔女の娘」たちの描き方も丁寧。シナリオ自体かなり重厚で、切迫するサスペンスの部分だけでなく、日常シーンの細かなやり取りも描写されており、VRで没入体験するシナリオとしての完成度は間違いなく高いです。
序章が終わると物語が分岐し、それぞれの魔女の娘にフォーカスした個別のシナリオへと繋がります。それぞれ異なった視点から神椿市の謎に迫ることとなりますが、強大な敵に挑むまでのストーリー構成はどれも巧みで、特に章終盤の盛り上がりは大きなカタルシスを感じさせられました。
物語の合間に挟まれる音楽ライブパートも本作の特徴。もともとはキャラたちのモデル兼ボイスを担当するバーチャルシンガーたちの楽曲ですが、神椿市の世界観と歌詞が上手くリンクしているため、作中でも違和感なく物語に溶け込んでいます。
余談ですが、作中のキャラのもととなったアーティストの「VALIS」は無期限の活動休止、存流さんは活動終了しているため(2026年1月時点)、彼女らが物語の中で生き生きと動いているのは感慨深いものがあります。
目まぐるしく繰り広げられるシューティングバトルに挑め!
REGENERATE版と異なる神椿市VRのオリジナル要素が、戦闘シーンでのシューティングバトルパートの追加です。内容としては簡単な操作のミニゲーム程度ではなく、しっかりと作り込まれたVRシューティングとして成立しています。
物語の道中で行く手を阻み、魔女の娘たちを危険に晒す存在が「テセラクター」。それらとの戦闘において、主人公は自身の腕を銃に変形させて戦うこととなります。
作中には何体ものテセラクターが登場しますが、毎回バリエーション豊富な攻撃パターンを持っており、緊張感のある戦いが楽しめます。戦闘は全体的に忙しめで、銃を打つだけでなく、リロードしたり、盾を構えたり、剣で斬撃したりと、状況が代わる代わる変化するので、最初は目まぐるしくて大変かもしれません。ですが、慣れてくると大型の敵を小気味良く制していく気持ちよさを味わえました。
主人公1人で戦うのではなく、魔女の娘たちがその能力でサポートしてくれます。戦闘の盛り上がりとともに音楽がかかる場面もあり、少年漫画のような熱い展開にテンションが上がること間違いなし。
配慮の行き届いたVR体験と、VRゆえの避けられない課題
これまで神椿市に関連するIPは、複数のメディアを横断するため、気軽に体験しにくいという問題がありました。アドベンチャーゲーム「神椿市建設中。REGENERATE」の登場によって間口が広がりましたが、神椿市VRもそれに並ぶほど、多くのプレイヤーにオススメできる作品となっています。
本作ではシナリオ、謎解き、バトル、音楽と、神椿市において重要な要素を網羅しつつも、VRアドベンチャーゲームとしてのテンポを損なわずにまとめ上げています。スティック操作ですぐにクイックセーブやバックログの確認ができますし、各エピソードのパートへの再アクセスも容易です。戦闘につまずいたら繰り返し練習もできます。その一方でテンポを削ぐような余計な操作がないため、物語に没頭できるのが大きな強みとなっています。
一部の簡素なグラフィックのエリアや、メインキャストはあくまで声優ではないこと、一部のインタラクションが分かりにくいことなど、人によっては気になるかもしれませんが、シナリオの面白さで一気に引き込まれるため、それらは些細なことのように思えました。

(小型化が進んだとはいえ、長時間使用ではまだ重いスタンドアローン型のVRヘッドセット。写真はMeta Quest 3S)
ただしVRゲームでも稀に見る大ボリューム※ゆえ、長くプレイをし続けるのが大変であるという点は留意したほうがいいかもしれません。VRヘッドセットの重さで、1日に何時間もプレイするのが難しい人は少なくないと思います。幸い、いつでもクイックセーブでき、エピソードごとに小さな区切りもあるため、大変な人は少しずつ進めていくのが良いです。
(※ただし、人によってプレイ時間は公表の40時間よりも短めになることも。フルボイスをすべて聞いた時間での換算だと思うので、サクサク進めればもっと早く終わらせられそうです)
神椿市VRと比べるとREGENERATE版のほうが気軽に遊べると思いますが、プレイヤーの視点から神椿市の空気感やキャラの息遣いを感じられるのは本作でしか体験できない大きな魅力なので、それぞれ一長一短でしょう。
まとめ:神椿市ファンだけでなく、VRユーザーに広くオススメできる作品
神椿市VRは、神椿市コンテンツのファンや、森先化歩たちのモデルとなったバーチャルシンガーたちのファンに間違いなく勧められます。
ですが、既存のコンテンツを知っているか否かのみで止めてしまうのはもったいないです。神椿市VRは単純に1作品として非常に面白いコンテンツですし、そもそもストーリー重視のVR作品自体が希少でもあるからです。
これまでの神椿市のシリーズ作品やバーチャルライブのノウハウを丁寧に組み上げ、そこにVRの没入感が加わったことで、ファンだけでなく、VRユーザーに広くオススメできる作品に仕上がっています。VRで面白い物語を探しているユーザーは、ぜひ本作を手にとってみてください。
神椿市建設中。VIRTUAL REALITYの配信先はこちら。
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